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逆行するエネルギー政策

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     インターネットで「意見」があふれ返っている時代
                         だからこそ「物語」は余計に力を持たなくてはならない。

                                                                             村上 春樹

 



【ネクストディケイド:逆行するエネルギー政策】

● 原発か再エネか それが問題だ

ハムレットの台詞が似合いそうな日本のエネルギー政策の10年だが、欧米先進国
の動向を俯瞰すると見えてくるものがある。上グラフ参照――図は主要先進国の電
源構成各電源のキロワット時の割合の変遷であり、90年を基準として現在までの
各電源がどれだけ増減したかを示す。主要先進国全体の傾向としては(1)石油火
力と石炭火力を減らしながら(2)再エネ(とりわけ風力)とガス火力を増やすとい
うトレンドがある。その理由は (1)二酸化炭素削減、(2)ロシア・中東依存の
軽減などエネルギー安全保障に、(3)北海油田の枯渇に伴う海洋産業の産業転換
など、国家戦略に依存していると分析 (出典:「次の10年は冷静国際情報分析か
ら」」・安田 陽 環境ビジネス 2015年秋季号)。

これに対して日本は 「再エネを増やさず石炭を大きく増やしている」ことが、明
らかであり、主要先進国の動向と逆行する。また、再エネを増やすということは、
日本ではあたかも国民負担を増やし経済を疲弊させる主張が多いが、海外での認識は
真逆――再エネは経済の牽引役であり、電力インフラ投資の起爆剤とみなされてい
る――を行く。90年代にバブル経済がはじけて以降、電力需要が伸び悩み電カイ
ンフラヘの投資が20年以上冷え込みデフレに悩んでいる。欧州でもGDPや電力
需要の伸びは劇的に増えていないが、近年、海底ケーブルをはじめとする電カインフ
ラの投資が突出している。

下図は、欧州送電系統事業者ネットワ-ク(ENTSO-E)による「系統10ケ年計画」
(TYNDP)の一例であるが、ここでは陸上送電線および海底ケーブル両者とも
実に1万8千キロートル近くの新設が計画されている。電力需要が増えていないに
も関わらず、なぜ送電インフラの投資が活況になる理由が、電力自由化後の"適切な
市場設計・制度設計"だと指摘する。 



それによると、送電部門は発送電分離後も引き続き独占部門として規制機関の強い
監視下に置かれることになる。現在の日本では、このような独占部門に対して総括
原価方式が適用されているが、この方式は経営効率やイノベーションに対するイン
センティブが低いとされている一方、欧州や北米ではプライスキャップ方式やレベ
ニューキャップ方式と呼ばれる新たな規制方式が作られ、規制下でも企業努力により
収益が増えたり、努力を怠れば減益するという張感が生まれる。また、電力市場取
引により再エネによる電力を長距離輸送する国際連系線の利用が活発になり、投資
回収が速まり、再エネは燃料費が無料で、電力市場価格を押し下げる働きがあり、電力消
費者にとってもメリットがあるが、化石燃料のように価格変動リスクに悩まされるこ
とはもないため投資家にとっても資金回収しやすく堅実な投資対象――コストをか
けてもメリット(便益)があることが実現可能性研究(FS)や費用便益分析(CBA)
などの手法で裏付けられ――となっている。

● 日本はなにをするべきか

日本では、政策決定者やジャーナリスト、技術者や投資家に至るまで冷静な海外情
報分析がされず、一般国民に公平公正な情報がもたらされないという「情報鎖国」の
状態にあると言われる。日本にもたらされる欧州の情報は「うまくいっていない」
情報が圧倒的に多いが、実は送電インフラ投資のように「うまくいっている」こと
も当然ながら多数ある。もちろんその過程で試行錯誤もあり、例えばドイツの国内
送電線の建設の遅れなどもあるが、それらの問題を着実に克服してきている。
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次の10年、日本のエネルギービジネスには、(1)まず、先入観のない公平公正な
海外情報すること、(2)次に科学的な実現可能性研究や費用便益分析を行い、再
エネ大量導入や送電線建設の意義を確認することである。(3)再エネは、もはや
技術的問題ではない。制度や政策の問題であり、人々のマインドセットの問題であ
ることを確認しておくことが大切である。

※ プライス・キャップ方式とは、電話料金などで採用されている料金査定制度で、提供す
  るサービスごとの収入の上限だけを規制し、上限以下での価格設定は自由に行えるよ
  うにした方式。インセンティブ規制の一種で、設定価格に一定の自由度を与えることで、
  事業者の経営効率化の促進が行われることを目的としている。

 


JP 5555848 B2 2014.7.23


● 基板を加熱せずITO透明電極膜を作製!

 

山口大学の諸橋信一教授は独自開発のスパッタ(成膜)装置で、基板を加熱するこ
となく低抵抗率・高透過率の「インジウム・スズ酸化膜(ITO)透明電極膜」を
作製した発表。LEDや太陽電池用の電極膜が高額で複雑な設備を使わずに作製で
きる。 

LEDなどの薄膜材料は、硬くて重いガラス基板から薄くて軽いポリエチレンテレ
フタレート(PET)フィルムなどにシフトが進む。一般的なスパッタ装置では数
百度Cに基板を加熱する必要があるが、高温や処理剤で基材が損傷するなど作製過
程で課題が多い。諸橋教授のグループは方式が異なる2種類のスパッタ装置の原理
を応用した。ハイブリッド対向スパッタ」と名付けた装置は、内部の可動棒磁石を
左右対称・非対称に移動させることで対向ターゲット間の磁場分布を変化させ、薄
膜作製に最適な磁場分布やプラズマ状態を形成する。基板の水冷は不要。レジスト
の損傷もなく「毎分142ナノメートルの速度で堆積可能なITO透明電極膜が形
成できる。将来は、山口ティー・エル・オーを通じ民間企業に量産装置として技術
移転したい考えという。

わたしが、減圧ドライ成膜方法に調査研究を開始したのが15年前ごろであり、同
上教授は90年はじめから富士通で半導体素子の研究開発従事、10年後に減圧薄
膜装置の開発を開始しているから同じような時期に当たるが、ダメージ問題とスル
ープットが遅いという課題をそのように克服するか調査研究していた頃が懐かしく
思い出すが。

さて、スパッタは、基板材料の種類を問わずどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しない
で安全に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方面において広く使用されて
いる。 この技術開発は、 より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現するため、自発と誘
発電子ビーム励起プラズマを利用した薄膜作製装置で、磁束漏洩問題解決のため、回転
できる多面体型の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多面体ターゲット
ホルダー一対が対向する配置し、多面体ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面
に配置する磁石の作る磁束線が、多面体ターゲットホルダー内面において完全に閉じるよ
うに、磁石の極性が交互に変わるように配置することで(下図参照)、 高速・低温スパッタ
が可能な従来の対向ターゲット式スパッタの特長を持ち、磁束漏洩防止に大型化するう
構造問題を解決し、構造の小型化、マルチターゲット化と真空装置の小型化により、コスト
逓減に有利な多層薄膜構造もち、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現し、
In-situで多層薄膜構造の高真空・高速・低温スパッタを可能とするものである。

高速・低温スパッタが可能な従来の対向ターゲット式スパッタの特長を持ちながら、
磁束漏洩の防止のために大型化するという構造上の問題を解決し、構造の小型化、
マルチターゲット化及びそれに伴う真空装置の小型化により、コスト的に有利な多
層薄膜構造を作製でき、更に、対向するターゲット間の誘発電子ビームに自発電子
ビームを上乗することで、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現し、In-situ
で多層薄膜構造の高真空・高速・低温スパッタが可能な薄膜作製装置を提供できる
効果がある。

 

  特許5688664
膜厚方向に組成比が連続的に変化した薄膜の製造方法

また、一対のターゲットホルダーが対向して設けられ、各ターゲットホルダーには
それぞれ異なる材料よりなるTiターゲットとSiターゲットが配置され、各ター
ゲット上には、それぞれ磁束線のループを形成可能であり、また、両ターゲット間
にも磁束線形成可能である磁束分布可変型対向スパッタ装置を用い、各対向するタ
ーゲット上に形成されるループ状の磁束線及び両ターゲット間に形成される磁束線
の強度割合を連続的に変化させつつスパッタリングすることを特徴とし、基板上の
厚さ方向に組成が連続的に変化した傾斜型組成薄膜(グラデーション)の製造方法
を実現することで、厚さ方向に組成の変化する薄膜、例えばルゲートフィルタ等を
容易に作製し得る薄膜の製造方法を提供する新規考案である。

以上、今朝ざっくりと俯瞰してみたものをまとめた。この装置がどれほど実用に耐
えうるかはユーザ次第ではあるが、大変、面白い技術だ。


● オランダ・ズンデルトの花の山車2015

 

 

 

ゴッホが生まれた地として知られるズンデルトにて、年に一度の花パレードを開か
れた。花を使って作られた山車が町の中を練り歩いて、魅力的ですばらしい。ゴッ
ホひとりでこれだけ盛り上がるというのか、これは驚きだが、百年後には" 聖ゴッ
ホ・ディ"と呼ばれているのではないだろうか。

 


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