ちょっと視点を変更すれば、発想を切り換えれば、マテリアルはあなたの
まわりにそれこそいくらでも転がっていることがわかるはずです。
それは、あなたの目にとまり、手に取られ、利用されるのを待っています。
村上春樹 『職業としての小説家』
● ニュートリノなピタス
東大宇宙線研究所の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞、理由は素粒子ニュートリノに質量が
あることを証明し、半世紀近くに及ぶ大きな謎を解き明かしたことにある。物質や宇宙の成り立ち
に迫る新たな研究の扉を開く成果で、素粒子物理学の飛躍的な発展をもたらしたからと。宇宙の誕
生を解明を一歩?進めた。02年にノーベル賞を受けた小柴昌俊氏が岐阜県の地下鉱山跡に建設し
た「カミオカンデ」で放射線の一種である宇宙線が地球に降り注ぐ際に、大気中の原子核とぶつか
って生成される「大気ニュートリノ」を観測したところ、ミュー型の数が理論的な予測より40%
少ない「異常」を見いだし88年に発表したが、後にタウ型への変化(これを変身と呼んでいる)
による。地球の天地方向の2つのニュートリノ数は、真上からのものに真下はものは半部しかなく
「振動現象」の存在を突き止めるという話だが、そもそもは、ダークマターと同様にこの宇宙の質
量が理論量より少ないという議論にはじまる。
時間があればゆっくり考えてみたが、頭の中はパニック状態の忙しさで、気分転換にジュブリタン
のパン工房のサーモンマリネ・ハムとレタス・トマトのピタ(あるいはポケット呼んでいる)(下
図クリック)と「いぶき牛乳」を食べたくなって、せめてネットで仮想スナックをとる。ピタパン
さえあれば、サンドウイッチと同様にツナマヨ、サラダ、具材は自由だが、ピクルス、マスタード
ソースは欠かせないとかなと考えてみる。ただし、サンドウイッチは具材がはみ出すのでこちらは
紙箱などに立てておけば、そこから取り出すだけで簡単にいただける。これは流行させる価値はあ
ると思うのだが。なんかへんてこな話になってしまった。
● 折々の読書 『職業としての小説家』16
僕は(僕自身の経験から)思うんですが、「書くべきことが何もない」というところから出
発する場合、エンジンがかかるまではけっこう人変ですが、いったんヴィークルが起動力を得
て前に進み始めると、そのあとはかえって楽になります。なぜなら乙名くべきことを持ち合わ
せていない」というのは、言い換えれば、「何だって自由に書ける」ということを意味するか
らです。たとえあなたの手にしているのが「軽量級」のマテリアルで、その眼が限られている
としてもその組み合わせ方のマジ″クさえ会得すれば、僕らはそれこそいくらでも物語を立ち
上げていくことができます。もしあなたがその作業に熟達すれば、そして健全な野心を失わな
ければということですが、そこから驚くばかりに「重く深いもの」を構築していくことかでき
るようになります。
それに比べると、般初から重いマテリアルを手にして出発した作家たちは、もちろんみんな
がみんなそうではありませんか、ある時点で「重さ負け」をしてしまう傾向がなきにしもあら
ずです。たとえば戦争体験を書くことから出発した作家たちは、それについていくつかの角度
からいくつかの作品を書いて発表してしまうと、そのあと多かれ少なかれ「次に何を書けばい
いのか?」という一旦停止状況に追い込まれることが多いようです、もちろんそこで思い切っ
て方向転換をし、新しいテーマをつかんで、作家として更に成長していく人もいます。また残
念なからうまく、方向転換ができずに、力を徐々に失っていく作家もいます。
アーネスト・ヘミングウェイは疑いの余地なく、二十世紀において最も大きな影響力を持っ
た作家の一人ですが、その作品は「初期の方か良い」というのは、いちおう世間の定説になっ
ています。僕も彼の作品の中では、最初の.二冊の長編『日はまた昇る』『武器よさらば』や、
ニック・アダムズの出てくる初期の短編小説なんかがいちばん好きです。そこには息を呑むよ
うな素晴らしい勢いかあります。でも後期の作品になると、うまいことはうまいんだけど、小
説としてのポテンシャルはいくぶん落ちているし、文章にも以前ほどの鮮やかさが感じられな
いようです。それはやはり、ヘミングウェイという人が素材の中から力をえて、物語を附いて
いくタイプの作家であったからではなかったかと僕は推測します。おそらくはそのために、進
んで戦争に参加したり(第.次大戦、スペイン内戦、第二次大戦)、アフリカで狩りをしたり、
釣りをしてまわったり、闘牛にのめり込んだりといった生活を続けることになりました。常に
外的な刺激を必要としたのでしょう。そういう生き方はひとつの伝説にはなりますか、年齢を
重ねるにつれ、体験の与えてくれるダイナミズムは、やはり少しずつ低ドしていきます。だか
ら、かどうかはもちろん本人にしかわかりませんが、ヘミングウェイはノーベル文学賞を得た
ものの(一九五四年)、酒に溺れ、一九六一年に名声の絶頂で自らの命を絶ってしまいます。
それに比べれば、素材の重さに頼ることなく、自分の内側から物語を紡ぎ出していける作家
は、遂に楽であるかもしれません。自分のまわりで自然に起こる出来事や、目々目にする光景
や、普段の生活の中で出会う人々をマテリアルとして自分の中に取り込み、想像力を駆使して
そのような素材をもとに自分自身の物語をこしらえていけばいいわけです。そう、それはいわ
ば「自然肖生エネルギー」みたいなものです。わざわざ戦争に出かける必.要もないし、闘牛
を経験する必要も、チーターとかヒョウを撃つ必要もありません。
誤解されると困るんですが、僕は、戦争や闘牛やハンティングみたいな経験に意味がないと
言っているのではありません。もちろん意味はあります。何ごとによらず、経験をするという
のは作家にとってすごく大事なことです。しかしそういうダイナミックな経験を持たない人で
も小説は書けるんだということを僕は個人的に言いたいだけです。どんな小さな経験からだっ
て人はやりようによってはびっくりするほどの力を引き出すことができます。
「木か沈み、石か浮く」という表現があります。`日常では起こりえないことが起こるという
ことですか、小説の世界では――あるいは芸術の世界ではと言い換えてもいいかもしれません
が――そういう逆転現象が現実にしばしば起こります。一般的に軽いと世間で見なされていた
ものが、時間の経過とともに無視できない重さを獲得し、一般的に重いと思われていたものが、
いつの間にかその重みを失って形骸化していきます。継続的創造性という目に見えない力が、
時間の助けを得て、そのようなドラスティックな逆転をもたらすのです。
ですから「自分は小説を潜くために必要なマテリアルを持ち合わせていない」と思っている
人も、あぎらめる必要はありません。ちょっと視点を変更すれば、発想を切り換えれば、マテ
リアルはあなたのまわりにそれこそいくらでも転がっていることがわかるはずです。それは、
あなたの目にとまり、手に取られ、利用されるのを待っています。人の営みというのは、一見
してどんなにつまらないものに見えようと、そういう興味深いものをあとからあとから自然に
生み出していくものなのです。そこでいちばん人事なことは、繰り返すようですか、「健全な
野心を失わない」ということです。それがキーポイソトです。
「第五回 さて、何を書けばいいのか?」
村上春樹 『職業としての小説家』
この項つづく
【最新有機太陽電池工学】
● 遅れて界面に来る励起子をなくせ!
時間分解された誘導吸収スペクトルを定量的に成分分解することにより、運動エネルギーの高い励
起子のみが電荷生成に寄与することを発見。有機太陽電池の光電効果の解明により、高効率化に向
けた設計指針が得られる。無機太陽電池に対し、有機太陽電池は励起子が極めて安定で、光から電
流への変換(光電効果)を起こすには、まず、トナー/アクセプター界面において励起子が電子と
正孔に分離するが、励起子がどのように分離するのか、その必要条件は何か、に関して――そうな
のだが、わたしが調査(>開発)を行っていた段階では、そこが詳細に――解明されていなかった。
このほど、筑波大学の守友浩教授らの研究グループは、励起子の数と電荷の数が時間とともにどの
ように変化するかを精密に調べ、遅れて界面に到達する励起子は電荷に分離できないことを突き止
め、運動エネルギーの低い励起子は電荷生成にしない根拠を実験ではじめてとらえること成功する。
さて、励起し分離プロセスは大きく2つの考え方がある。
1)励起子の運動エネルギーで分離:励起子がドナー/アクセプター界面に到達すると、電子はアク
セプターに、正孔はドナーに移動するが、電子と正孔の間にはクーロンカが働くが、励起子の運動
エネルギーで束縛を断ち切る。
2)電荷移動状態を介し分離:電子はアクセプターに、正孔はドナーに移動するが、電子と正孔はク
ーロンカで束縛され電荷移動状態を形成する。時間の経過とともに、この電荷移動状態が緩やかに
解離する。
ところで、興味深いのは、電荷の生成時間が温度依存性を示さないこと。低温における電荷の生成時
間も、室温と同じ、0.4ピコ秒。一般に、低温では励起子のドメイン内の移動速度が遅く、励起子が
界面に到達する時間が長くなるが、温度依存性がないため、励起子が移動していないことを意味す
る。これは界面付近で励起された励起子のみ電荷生成に寄与する。今後、ドナー分子とアクセブター
分子を分子レベルで混合する等により、運動エネルギーの低い励起子でも電荷生成できる界面の構築
で、高効率有機太陽電池の開発を行う。
賀県は太陽光発電を中心に分散型のエネルギー供給体制を強化して災害に強い地域づくりを推進し
ていく。30年には電力需要の8%を太陽光発電で供給できるようにし、農地には営農型のソーラ
ーシェアリングを広めながら、農業用水路を利用した小水力発電も普及させる計画だという(スマ
ート・ジャパン、2015.10.06.)。政府が30年のエネルギーミックス(電源構成)を決めるよりも
2年早く、滋賀県は県内の電力需要に占める再生可能エネルギーの比率を10%に引き上げる目標
を設定。家庭用の「エネファーム」など天然ガスと燃料電池を組み合わせたコージェネレーション
も拡大して、電力会社に依存しない分散型の電源を25%まで増やす計画(上図)。
再生可能エネルギーの中では太陽光発電が多くを占める。30年には太陽光だけでも県内の電力需
要の8%にあたる10億キロワット時を供給できるようにする。滋賀県では平野が広く、面積の6
分の1を琵琶湖が占めているために、風力や水力を導入できるポテンシャルが他県と比べて小さい。
代わりに太陽光発電の導入プロジェクトが各地域で急速に進んでいる――おかしな、工事費をけっ
ちったプチメガソーラーも見受けられるが!――すでに33か所でメガソーラーが運転を開始、加
えて、固定価格買取制度の認定を受けて開発中のメガソーラーが80か所もある。特に県が所有す
る遊休地を活用したメガソーラーの規模が大きいのが特徴。
運転を開始した中では、滋賀県で唯一の食肉流通拠点である「滋賀食肉センター」のメガソーラー
が代表例。食肉センターの構内にある2万5千平方メートルの土地に8千6百枚の太陽光パネルを
設置(下図)。発電能力は1.75メガワットで、13年12月から稼働。年間の発電量は184万
キロワット時になり、一般家庭の使用量(年間3千6百キロワット時)に換算して5百世帯分に相
当する。パネルは京セラ。
これは、滋賀食肉公社が遊休地の活用と再生可能エネルギーの拡大を目的に事業者を公募し、大阪
ガスグループと京セラグループが共同で建設・運営する。食肉公社は土地の使用料のほか、発電設
備の保守管理業務を請け負い収入を得るスキーム。初期投資が不要で長期間にわたって安定した収
入を得られるメリットがある。同様のスキームを使って、さらに大きなメガソーラーの建設プロジ
ェクトも進んでいる。琵琶湖の南端に近い場所に「矢橋帰帆島」。その島にある県の所有地に滋賀
県で最大のメガソーラーを建設する計画。平坦な土地で遊ぶパークゴルフ場があった場所で、広さ
は10万平方メートルに及ぶ。3万4千枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は8.3メガワットに
なる。15年内に運転を開始する予定で、年間の発電量は850万キロワット時で、2千3百世帯
分に相当する。この他に、長浜市の「農地ソーラーシェアリング推進実証実験」で、地域の農産物
直売組合が70平方メートルの農地に4キロワットの太陽光パネルを設置して、パネルの下で栽培
する野菜の生育状況を検証。野菜の販売収入と売電収入によって安定した所得を目指す新しい農業
のスタイルを創造する。
● 落差1メートルの小形水力発電
同じ長浜市内で農業用水路を利用した小水力発電設備が相次いで運転を開始している。市内を流れ
る「中央幹線用水路」には、落差工と呼ぶ階段状の構造が随所に設けられている。わずか1メート
ル程度の落差しかない場所が多いが、小さな落差でも発電設備を導入でき、すでに6カ所の落差工
で発電が始まっている。発電能力は1カ所あたり10~15キロワットで、年間の発電量は6カ所
を合計40万キロワット時になる。百世帯分の電力で、これまでの農業用水路が発電用途が加わり、
災害時には独立の電源として利用できる(下図)。
このように、小水力発電を普及させるプロジェクトの1つに、農村の「近いエネルギー」を推進事
業は、発電能力が1キロワットに満たない簡易型の小水力発電設備を設置して、農民の身近な場所
でエネルギーの地産地消を実施する試み。長浜市をはじめ県内の6カ所で運転・管理状況の検証が
進んでいる。また、ダムから下流の自然環境保護に放流している「河川維持流量」を利用し発電す
る事業は、農業用水路と違い52メートルの落差があるダムから水流を利用し、830キロワット
年間の発電量は470万キロワット、一般家庭で1千3百世帯分に相当する。
● 廃棄物使用のバイオマス発電事業
山室木材工業グループが、県内で初の木質バイオマス発電所を15年1月に稼働させた。同社は収
集した木質廃棄物からチップを製造して燃料に再生させる。木質チップを活用した発電事業を開始
するために、12年に「いぶきグリーンエナジー」を設立して発電所の建設に乗りだす。米原市内
で運転を開始した木質バイオマス発電所は3.55メガワットの電力を供給できる(下図)。1日
24時間の連続運転で、1年間に330日稼働予定で、年間の発電量が2千8百万キロワット時に
なり、7千8百世帯分の電力供給でき、米原市の総世帯数(1万4千世帯)の半分以上をカバーで
きる規模。1日に使用する木質チップは140万トンにのぼるが、森林資源が豊富な他県のように
間伐材などを大量に調達できる環境になく、廃棄物利用して木質バイオマス発電を拡大することが
できる。また、太陽光や小水力と比べてバイオマス発電の電力供給量は大きく、今後の知財蓄積が
焦点になる。
さて、地球温暖化の進行スピードと縮原発を考えると、政府計画では問題であり、またその計画を
ゼロから見直すことなく、ダウンストリームさせた滋賀県のエネルギー計画が正答であるか甚だ疑
わしい。が、少しでも積極的に展開させようとする環境立県の意気込みは感じられそうだ。