おそらく、近代日本の社会にあって、もっともおそろしい思想的な力となっているのは、
社会的な関係や、社会の構造物がそのまま、自然物のような強固な秩序として認識
されるということであろう
吉本 隆明
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012
【最新熱サイクル媒体工学】
ヒートポンプやバイナリ発電を代表する空気調和装置などの熱サイクルにおける熱媒体・蓄熱剤の選択は
欠かせない。また、熱交換器などの構成部材の技術革新は、熱効率向上などの品質向上欠かせないテーマ
でありエンジニアリング(工学)は重要である。ここでは最新の国内関連特許を3件を掲載する。
● 蓄熱装置と蓄熱材の使用法
従来から、蓄熱媒体として、固相と液相との間の相変化時に吸収または放出される潜熱を利用する潜熱蓄
熱材が研究開発さてている。この潜熱蓄熱材の例として、酢酸ナトリウム三水和物があるが、このような、
潜熱蓄熱材は、凝固点を下回っても相変化を起こさず液相を維持して過冷却状態になる(参考特許:特開2012-0
32130「過冷却の維持・解除および放熱速度の制御装置」)。しかし、潜熱蓄熱材が過冷却状態に維持され
ることことで、長期にわたり熱が蓄えられるが、過冷却状態は不安定である。このため、本蓄熱装置は、
1対の電極と、電極に交流電圧を印加する交流電源とでサンドイッチ状配置し、交流電圧により過冷却状
態が維持される潜熱蓄熱材とで構成することで、潜熱蓄熱材が過冷却状態に安定的に維持できるというも
のである。
【要約】
蓄熱装置は、1対の電極と、1対の電極に交流電圧を印加する交流電源と、1対の電極の間に配置され、
交流電圧によって過冷却状態が維持される潜熱蓄熱材で構成することで潜熱蓄熱材を過冷却状態に維持す
るための技術を提供する(上図2参照)。また、原理式m実施例や実験は、上図をクリック参照してもら
うとして特許請求範囲を下記に掲載する。尚、「効果メリットデータは掲載されていない。
前記1対の電極に交流電圧を印加する交流電源と、
前記1対の電極の間に配置され、前記交流電圧によって過冷却状態が維持される潜熱蓄熱材と、
を備えた、蓄熱装置。 前記1対の電極は、それぞれ、導電性の電極本体と、前記電極本体の表面を被覆する絶縁被膜とを
有する、請求項1に記載の蓄熱装置。 前記交流電圧の電圧が、2V以上35V以下の範囲にある。請求項2に記載の蓄熱装置。 前記交流電圧の周波数が、10kHz以上100kHz以下の範囲にある。 請求項1から3のいず
れか1項に記載の蓄熱装置。 前記交流電源は、前記1対の電極に前記交流電圧を印加して前記潜熱蓄熱材を前記過冷却状態に維
持した後に、前記1対の電極に前記交流電圧を印加することを停止して前記潜熱蓄熱材を前記過冷
却状態から解除させる。 請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄熱装置。 前記潜熱蓄熱材の温度を直接又は間接的に検出する温度センサをさらに備え、前記交流電源は、可
変周波数電源であり、前記温度センサの検出結果に応じて、前記交流電圧の周波数が変更される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄熱装置。 前記潜熱蓄熱材の温度を直接又は間接的に検出する温度センサをさらに備え、
前記交流電源は、可変電圧電源であり、
前記温度センサの検出結果に応じて、前記交流電圧の電圧が変更される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄熱装置。 前記潜熱蓄熱材の温度を直接又は間接的に検出する温度センサをさらに備え、
前記交流電源は、前記温度センサの検出結果に応じて、前記1対の電極に前記交流電圧を印加する
か否かを選択する、請求項1から7のいずれか1項に記載の蓄熱装置。 前記交流電源は、前記潜熱蓄熱材の温度が前記潜熱蓄熱材の凝固点よりも高いとき、前記1対の電
極に前記交流電圧を印加せず、前記潜熱蓄熱材の温度が前記潜熱蓄熱材の凝固点以下のとき、前記
1対の電極に前記交流電圧を印加する、請求項8に記載の蓄熱装置。 前記蓄熱装置の外部から前記潜熱蓄熱材に熱が加えられた後に、前記交流電源は前記1対の電極に
前記交流電圧を印加して前記潜熱蓄熱材を前記過冷却状態に維持する、請求項1から9のいずれか
1項に記載の蓄熱装置。 前記潜熱蓄熱材が水和塩または糖アルコールを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の蓄
熱装置。 前記潜熱蓄熱材が酢酸ナトリウム三水和物である、請求項1から11のいずれか1項に記載の蓄熱
装置。 1対の電極の間に配置された潜熱蓄熱材に熱を加えて前記潜熱蓄熱材を溶融させる工程と、
前記潜熱蓄熱材が溶融状態から過冷却状態に変化した後、前記1対の電極に交流電圧を印加するこ
とによって、前記潜熱蓄熱材を前記過冷却状態に維持して、前記潜熱蓄熱材に前記熱を保持させる
工程と、
前記交流電圧の印加を停止することによって、前記潜熱蓄熱材を前記過冷却状態から解除させて、
前記潜熱蓄熱材から前記熱を放出させる工程と、
を含む、潜熱蓄熱材の使用方法。
※ 潜熱蓄熱材は、所定の交流電圧の印加で過冷却状態に維持される材料で構成。主成分の例として、酢
酸ナトリウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、炭酸ナトリ
ウム十水和物、及びチオ硫酸ナトリウム五水和物などの水和塩、並びに、マンニトール、エリスリト
ール、及びD-スレイトールなどの糖アルコールが挙げられる。本開示において、主成分とは、例え
ば60重量%以上含まれる成分を意味する。潜熱蓄熱材111は、例えば、酢酸ナトリウム三水和物
である。酢酸ナトリウム三水和物は、利用しやすい凝固点(58℃)及び大きい潜熱量(250J/
g)を有しているので、蓄熱装置に適している。
● 熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物及びシステム
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒ
ートパイプ?等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクル用の作動媒体としては、クロロトリフルオロ
メタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、クロロジフルオロメタン等
のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきたが、CFCおよびHCFCは、成層圏の
オゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。このようため熱サイクル用作動媒体に、
CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC-32)、テトラフ
ルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC-125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用い
られるようになった。
例えば、R410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は従来から
広く使用されてきた冷媒であるが、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。R41
0Aは、冷凍能力の高さからいわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等
に広く用いられてきたものの、地球温暖化係数(GWP)が2088と高く、そのため低GWP作動媒体
の開発が求められている。この際、R410Aを単に置き換えて、これまで用いられてきた機器をそのま
ま使用し続けることを前提にした作動媒体の開発が求められ、近年、炭素-炭素二重結合を有しその結合
が大気中のOHラジカルによって分解されやすいことから、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化
への影響が少ない作動媒体である、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、すなわち炭素-炭素二重結合
を有するHFCに期待が集まっている。
しかしながら、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)は地球温暖化係数
(GWP)の低い作動媒体として知られている。しかしHFO-1234yfはその成績係数は高いもの
の、冷凍能力がR410Aに比較して低く、いわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通
常の空調機器等、これまでR410Aが用いられてきた機器において用いることができないという欠点が
ある。 HFOを用いた作動媒体として、例えば、「WO2012-157764 作動媒体および熱サイクルシステム」
)には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO-11
23)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不
燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO-1123に、各種HFCを組み合わせて作動媒体とする
試みもされている。
HFO-1123の臨界温度が59.2℃であることが確認されているが、従来使用されてきたR410
Aの代替に用いるには、HFO-1123はその臨界温度が低く代替範囲が限定されることがわかってい
る。さらに、各種HFCを組み合わせた場合、必ずしも充分な成績係数・冷凍能力を達成できない場合も
ある。臨界温度のみならず、R410A代替に用いるために充分なサイクル性能を同時に実現する熱サイ
クル用の作動媒体と、これを含む熱サイクルシステム用組成物、並びにこの組成物を用いた熱サイクルシ
ステムが下図のように提案されている。
【要約】
トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとジフルオロメタンを含む熱サイクル
用作動媒体であって、作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプ
ロペンとジフルオロメタンの合計量の割合が90質量%を超え100質量%以下であり、トリフルオロエ
チレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとジフルオロメタンの合計量に対する、トリフルオロ
エチレンの割合が10質量%以上70質量%未満、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの割合が、
50質量%以下、かつジフルオロメタンの割合が30質量%を超え75質量%以下である熱サイクル用作
動媒体である、R410A代替可能で、地球温暖化係数が小さく耐久性の高い熱サイクル用の作動媒体、
およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供であ
る。
以上、詳細は上図をクリックして参照。
近年、ヒートポンプエアコン等に用いられる熱交換器は省エネルギー、小型化の要求が高まている。ヒー
トポンプエアコンに用いられる熱交換器には、フィンアンドチューブ型の熱交換器が主に使用されている。
このフィンアンドチューブ型の熱交換器は、予め伝熱管より径の大きい穴をあけたアルミ製のフィンに伝
熱管を挿入し、伝熱管内に拡管プラグを通し、管を拡管させることでアルミフィンと密着させることで成
形される。そして、このフィンアンドチューブ型の熱交換器は、その伝熱管の管内にHFC等の冷媒を流
してアルミ製のフィンの外部の空気と熱交換を行う。従来、フィンアンドチューブ型の熱交換器に用いら
れる伝熱管としては、高い熱伝導率を持つ銅合金が使用されてきたが、銅価格の高騰及び熱交換器自体の
軽量化要求もあって、銅に変わってアルミニウム製の配管が用いられるようになってきている。
熱交換器の配管として利用されている銅合金及びアルミニウム合金は、熱交換効率を高めるため内面にフィンの
付いた内面溝付管が用いられている。内面溝形状としては既に様々なものが提案されているが、特に軸方向に対
して一定の角度を持たせた螺旋管は熱交換効率に優れており、種々の溝形状が開発され、実用化されている。螺
旋溝付管をアルミニウム合金で作製する方法として、押出加工または引抜加工で管を成形後、「WO 20111
52384 押出性に優れた内面溝付管」に示されるような転造加工で溝を成形するのが一般的である。
一方で、内面溝が軸方向と平行であるストレート溝付管の場合、熱交換効率は螺旋溝付管と比較すると劣
る場合もあるが、押出加工または引抜加工のみで内面溝を付与することができ、コスト面では螺旋管に比
較して優れているため、今後の適用拡大が期待される。ただし、従来から検討されてきたフィン形状とし
ては、ほとんどが螺旋溝付管に関するものである。ストレート溝付管の溝形状としては、フィン組立て時
にフィンが潰れないように高さの異なるフィンを持つ内面溝付管が提案されているが、以下のような改善
点をもっていった。
第一に、螺旋溝付管では、押出後の素管にさらに別工程で加工を行うため、製造コストが高くなるという
問題。また、アルミニウム合金の場合、銅合金と比較して冷間加工性が劣り、転造加工速度が遅く、生産
性の点で改善の余地を有していた。
第二に、ストレート溝付管の溝形状としては、ストレート溝付管以外では十分な検討がなされていない。
さらに、ストレート溝付管は、フィン形状によっては押出出来ないものもあり、押出性という課題がある
が事例はない。
【要約】
管内表面に管の長手方向と並行に存在する突条型の複数のフィン102を持つアルミニウム合金製の内面
溝付管100であり、内面溝付管100の長手方向に直交する断面における複数のフィン102の形状と
配置が内面溝付管100の円周方向で略均一であり、断面における内周縁の長さF(mm)と断面におけ
る内周縁及び複数のフィン102頂部に接する円に囲まれた溝空間部の面積A(mm2)との比が10≦
F/A≦15の範囲内である、内面溝付管100の構造にすることで、従来のアルミニウム合金を用いた
内面ストレート溝付管に比較して押出性及び熱交換効率に優れた最適なフィン形状を提供する。
以上、3件目の詳細も上図をクリックし参照のこと。
こういった知財が蓄積されことで、安全(リスクフリー)で、小型(ダウンサイジング)で、廉価な、高
性能でいて堅牢なメイドジャパンの熱サイクルシステムが世界へと波及していく必然性を確認する。