言葉の幹と根は、沈黙である。
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924-16 Mar, 2012
カフカの時計
書簡から
私の得た職はサラリーがわずかに八〇コルナというもので、
永遠とも思える八時間から九時間、働きます。
私は会社の外では、野獣のように時間をむさぼり食います。
いつか外国で、椅子に座って、窓の外に見える
さとうきび畑や、イスラムの墓地なんかを
眺めることができたらなあと思います。
私は仕事に文句があるというよりは、ぐずぐずと流れる
時間がいやなのです。仕事時間というのは、分割することが
できません! いちにちの最後の半時間にだって、
私はまるまる八時聞か九時間ぶんの重みを、
ひしひしと肩に感じるのです。それはまるで夜も昼も
列車に乗っているような感じです。そのうちにあなたはとことん
うんざりしてしまうでしょう。あなたはエンジンの奮闘ぶりやあるいは
窓の外の丘陵や平野に思いをめぐらすことも
やめてしまうでしょう。起こることすべてが時計のせいに
思えてきます。あなたはいつも時計を
手のひらに握りしめます。それを振ってみます。そして信じられないという
顔つきで、ゆっくりと耳に持っていくのです。
Kafka's watch
I have a job with a tiny salary of 80 crowns, and
an infinite eight to nine hours of work.
I devour the time outside the office like a wild beast.
Someday I hope to sit in a chair in another
country, looking out the window at fields of sugarcane
or Mohammedan cemeteries.
I don’t complain about the work so much as about
the sluggishness of swampy time. The office hours
cannot be divided up! I feel the pressure
of the full eight or nine hours even in the last
half hour of the day. It’s like a train ride
lasting night and day. In the end you’re totally
crushed. You no longer think about the straining
of the engine, or about the hills or
flat countryside, but ascribe all that’s happening
to your watch alone. The watch which you continually hold
in the palm of your hand. Then shake. And bring slowly
to your ear in disbelief.
※ レイモンド・カーヴァーが他界する3年前、1985年にニューヨーカーに掲載された作品である。
【ちょっとだけ量子ドット工学講座 5】
現在の太陽電池の主流はシリコン太陽電池は、原料供給や製造コストが高いなど様々な問題を抱えている。その中で安
価、高効率な次世代太陽電池の候補としてpnヘテロ接合太陽電池がある。この太陽電池は、半導体量子ドット(QD)
と呼ばれるナノスケールの半導体を光吸収材料に用いることで、その特異な性質を利用しシリコン太陽電池を上回る変
換効率が期待されているとブログ掲載してきた。先々回このシリーズで紹介した「特開2016-048716 量子ドット太陽電
池」とよく似た「特開2016-051785 太陽電池」(国立大学法人電気通信大学)が開示されているので掲載する。
n型半導体とp型半導体を電極で挟んだ構造を有する。n型半導体に酸化亜鉛(ZnO)や酸化チタン(TiO2)な
どの酸化物半導体を用い、p型半導体として硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)量子ドットなどの16族原子
を用いたカルコゲナイド量子ドットが用いられる。この太陽電池の性能を決定する上で、量子ドットの種類や大きさに
より決定される吸収領域の選択、n型半導体の表面構造、それぞれの層の厚さが重要となっている。これまでの研究で
n型半導体を平面膜ではなくZnOナノロッド(ナノワイヤー)を適用しpn界面の比表面積を増大させることで光電
変換効率を向上させた報告を例示し※、PbS量子ドットとZnOナノロッドとのpn接合を含むヘテロ接合型の太陽
電池では、pn接合の界面準位に電荷がトラップされ――界面準位による電荷のトラップは、主にZnOナノロッドの
表面の酸素欠損等による欠陥(表面欠陥)が原因であると考えられる――電子と正孔の再結合による電荷損失が生じ、
十分な開放電圧が得られず。また、このような表面欠陥は、ZnOの代替材料でナノロッドを作製した場合にも同様
に生じ得るものであり、PbSの代替材料で量子ドットを作製した場合にも同様に生じるため、上述のようなヘテロ接合
型の太陽電池のエネルギー変換効率を改善するには、n型のナノロッドの表面欠陥を低減が必要である。
※ H. Wang, T. Kubo, J. Nakazaki, T. Kinoshita, H. Segawa, Jour. Phys. Chem. Lett. 4, 2455 (2013)MIT News, David L. Chandler,
MIT News Office, March 25, 2013
この問題を解決の具体事例に、光透過性を有する基板と、この基板の光入射面の反対側に形成される導電膜に積層する
正孔ブロック層とpnヘテロ接合型光電変換層とその上の電極とで構成。光電変換層は、正孔ブロック層の光入射側と
は反対側の面から光電変換層の厚さ方向に沿い伸延する複数のn型ロッドと、これを被覆する被覆層と、複数のn型ロ
ッド同士の間、及び複数のn型ロッドの間に形成したp型量子ドット層で構成し、n型ロッドは、ZnO、In2O3、
あるいはSnO2製で、また被覆層が、TiO2、Y2O3、Al2O3、ZnS、SiO2製で、p型量子ドット層は、
PbS、PbSe、あるいはCuInS2製で構成することで目的を果たす。
上図1の太陽電池100は、基板110、導電膜120、正孔ブロック層130、ZnOナノロッド140、被覆層1
50、量子ドット層160、及び電極170を含む。図1(A)、(B)では、太陽光は太陽電池100の下面から入
射する。基板110は、太陽電池100の光入射側に位置するため、太陽光を透過する透明な基板であればよい。基板
100としては、例えば、ガラス基板、又は、ポリカーボネート等の樹脂製の基板を用いることができる。なお、図1
(A)、(B)では基板110の下面が光入射面である。
導電膜120は、基板110の光入射面とは反対側の面(図1(A)、(B)における上面)に形成される。導電膜1
0は、例えば、FTO、または、ITO等の透明な薄膜状の導電膜を用いることができる。また
正孔ブロック層130は、導電膜120の光入射面とは反対側の面(図1(A)、(B)における上面)に形成される。
正孔ブロック層130は、ZnOナノロッド140と量子ドット層160とで構成される光電変換層から導電膜120
への正孔の流入を阻止するために設けられている。ところで、正孔ブロック層130は、一例として、ZnO(酸化亜
鉛)で作製される。正孔ブロック層130は、例えば、導電膜120の上にスピンコート法によってZnOの原料溶液
を塗布し、加熱処理を行うことによって作製することができる。加熱処理は、例えば、100℃~250℃程度で行え
ばよい。ここでは、150℃で行ってZnO膜を作製する。
ZnOナノロッド140は、例えば、純水中に硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O)とヘキサメチレンテト
ラミン(C6H12N4)を溶解して、それぞれの濃度が25mMとなるように調整した混合水溶液を用い、基板110、
導電膜120、及び正孔ブロック層130の積層体を、90℃に加熱した混合水溶液に含浸させた状態で数時間結晶成
長させた後、電気炉で加熱処理を350℃ですることにより、正孔ブロック層130の表面に形成させることができる。
尚、ZnOナノロッド140の太さ、長さ、及び成長方向は、加熱温度や混合溶液の濃度等の作製条件によって変化す
るため、これらのパラメータを最適化して成長させ最適化すること。
また、図1(A)、(B)には、説明の便宜上、ZnOナノロッド140が正孔ブロック層130の上面に対して垂直
な方向に伸延している状態を示すが、実際のZnOナノロッド140は、正孔ブロック層130の上面に対する垂直な
方向に対して湾曲するように成長する場合がある。ここでは、このような成長方向を光電変換層の厚さに沿った方向と
称し、ナノロッドと称すが、ナノワイヤーとして捉えることもできる。 図3は、蛍光強度スペクトル分布を示す図で
ある。横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(a.u.)である。図4は、電流電圧特性を示す図である。また、下表
1は、図4に対応するTiO2の原料溶液濃度、処理時間、短絡電流Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、
FF、PCE(%)を示す。なお、太陽電池100における被覆層150を作製するための処理時間は、すべて5秒で
ある。
上図2は、ZnOナノロッド140の表面に形成される被覆層150を示すTEM写真を示す図。 図2(A)には、
被覆層150を形成する前の状態における、太さ(直径)34nmのZnOナノロッド140を示す。図2(A)には
ZnOナノロッド140の表面が鮮明に写り、ZnOの格子定数は、0.26nmである。 図2(B)には、被覆層
150を形成したZnOナノロッド140を示す。図2(B)のTiO2膜による被覆層150は、図2(A)のZn
Oナノロッド140を、2.5mMのTiO2の原料溶液で5秒間含浸処理した後、電気炉において350℃で加熱処
理をすることによって作製された。 図2(A)に比べると、ZnOナノロッド140の表面に分子が付着しているこ
とが分かる。これがTiO2製の被覆層150である。ZnOナノロッド140の太さ(直径)が34nmに対し、約
3nm~5nm程度のTiO2膜をZnOナノロッド140の側面及び先端面に形成できることが確認できる。
被覆層150を含まない比較用の非TiO2太陽電池と、ZnO@1.0mM TiO2、ZnO@2.5mM TiO2、
ZnO@5.0mM TiO2、ZnO@12.5mM TiO2の太陽電池100とを比べると、短絡電流Jscは、被
覆層150を含む太陽電池100の短絡電流Jsc(23.5±1.0mA/cm2~26.5±1.0mA/cm2)
が、被覆層150を含まない非TiO2の短絡電流Jsc(28.7±0.6mA/cm2)よりも少し低い。また、
TiO2の原料溶液濃度が12.5mM以上になると、短絡電流Jscが低下する傾向がある。
また、開放電圧Vocについては、被覆層150を含む太陽電池100の開放電圧Voc(0.42±0.01V~±
0.05V)が、被覆層150を含まないWithout TiO2(0.28±0.02V)よりも少し高い。また、
TiO2の原料溶液濃度による影響は比較的小さい。FFについては、ZnO@12.5mM TiO2の太陽電池100
(0.43±0.01)は、被覆層150を含まないWithout TiO2(0.43±0.01)と等しいが、Zn
O@1.0mM TiO2、ZnO@2.5mM TiO2、ZnO@5.0mM TiO2の太陽電池100のFF(0
.45±0.002~±0.46±0.01)は、被覆層150を含まないWithout TiO2(0.43±
0.01)よりも少し高いことが分かった。また、TiO2の原料溶液濃度が12.5mM未満の場合に、FFが増大
する傾向がある。
以上より、PCEについては、被覆層150を含む太陽電池100(4.1±0.15%~5.1±0.15%)が、
被覆層150を含まない非TiO2(3.5±0.15%)よりも改善されていることが分かった。また、TiO2の
原料溶液濃度が12.5mM未満の場合に、PCEが増大する傾向があることが分かったという。
今回は長々と部分引用したが、このようにひとつづつ問題解決され、さらに新しい知見や改良がつづけられている事例
を紹介することで課題の共有を深めることができればと考えた次第である。
マンガに関わる人々の超骨太人間ドラマ!
「マンガ」は、漫画家だけのものじゃない。
編集者、営業、宣伝、製版、印刷、デザイナー、取次、書店員…。
数えきれないマンガの裏方たちのリレーで、読者の手に届くもの。
そう、裏方の熱き想いがあるからこそ「マンガは売れる」んです!
マンガに関わる一人ひとりの人間ドラマをぐいっと描く本作、
全ての仕事人へのエール漫画です!!!
黒木華主演の「重版出来!」(じゅうはんしゅったい)をたまたま観たが、これまでのおとなしいイメージと変わって
黒木華がチャキチャキの新入社員を演じていて釘付けになる。これは面白い!楽しみの番組がまたひとつ増えた。とこ
ろで重版とは出版物を初版と同じ版を使い、刷り直すこと。増刷と重刷と同じ意味で、その重版が出来てその書籍が販
売されることだが、「じゅうはんでき」とも読まれる。出版業界では昔から使われている言葉なので、今回も出版業界
の色を濃く出すこのドラマにはぴったりなタイトルとなっている。