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抗癌最終戦観戦記 Ⅶ

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               およそ性とは、天の就なり。学ぶべからず、事とすべからず。

                               「性悪」



       ※ 性善説への論駁:孟子の性善説に対する論駁である。天性は
         人力によって得ることも失うこともできないが、これを規制
         し、変化させることはできると荀子はいう。

 

                                                             

                                                                    荀子
                                B.C. 313 - B.C.238

                       

 

 Jun. 22, 2005

【抗癌最終戦観戦記 Ⅶ:最新DDS技術】

Nanoparticle drug delivery in cancer therapy

患者への有効成分を徐放、送達技術は、この数十年活発に研究されおり、高分子科学の最近の
多くの開発が活気を帯びている。また、徐放性ポリマーシステムは、他の薬剤送達法よりも長
期間にわたり、最適な範囲の薬剤レベルが提供できるよう設計でき、薬剤の有効性を増加させ、
患者への負担を最小限に留める。これらの生分解性粒子は、小分子薬、タンパク質およびペプ
チド薬、ならびに核酸の投与に使用される、持続性放出ビヒクル(展色剤)として開発されい
る。この剤は、例示的には、生分解性や生体適合性であるポリマーマトリックス中に封入され
る。ポリマーが分解すると、および/または薬剤がポリマーから出て拡散すると、この薬剤が
体内放出される。

尚、これらの技術領域は「DDS:ドラッグデリバリーシステム」と呼ばれ、薬を経口投与と
して口から投与したとき、この時の有効成分は腸から吸収されて体の中に取り込まれた後に全
身を巡り、その後、有効成分が各組織に分布することによって医薬品としての作用を示すよう
になるもので、DDSの種類は次のように3つに分類されている。

放出制御:薬の血中濃度を適切な濃度に保つ(方法:①徐放製剤化:薬をゆっくり溶け
出させることで、血液中の薬物濃度を一定に保たせる、②腸溶性製剤:胃では溶けずに
腸で溶けるように設計する) 吸収改善:消化管(腸など)や皮膚からの吸収を改善する(方法:①プロドラッグ化:
有効成分自体の構造を変換し、腸からの吸収改善を行う、②投与経路の変更 腸からで
はなく、鼻や肺などから薬を吸収させる) 標的指向化:目的とする部位へ効率よく薬剤を届ける(方法;①薬剤の修飾:高分子に
よる修飾などを行い、目的とする標的に効率よく薬剤を届ける、②目的部位に直接投与:
作用させたい標的部位に直接投与するように設計する)

さて、標的化徐放性ポリマーシステム――①特定の組織型あるいは、細胞型を標的とする、②
または特定の患部組織を標的とするが、正常組織は標的としない――が、標的とされない体内
組織に存在する薬剤の量を減少させるので望ましい。これは、周囲の非癌組織を死滅させず、
細胞毒性用量の薬剤が癌細胞に送達されように工夫される。効果的な薬剤の標的化は、抗癌治
療などにみられる生命を脅かす副作用を軽減する。この実現手法として、標的化されたナノ粒
子で特定の組織へ薬剤到達が可能となる。このように、患者の副作用を軽減する一方で、癌等
の疾患を治療するために、治療レベルの薬剤を送達できる送達システムの開発が急がれている。

この場合特に、前立腺癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、膠芽腫だけでなく、前立腺特異的膜抗
原(PSMA)を発現する癌、ならびに腫瘍新生血管のPSMAを発現する固形腫瘍の、癌の
単数/複数の症状の治療/予防/寛解(臨床的にコントロールされた状態)に有用な組成物の
必要性が依然として存在する。

これらの要求に応える新規技術例として、治療剤を含む複数の標的特異的ステルス型ナノ粒子
を含み、このナノ粒子に結合する低分子量PSMAリガンドの標的化部分を含有する医薬組成
物が下記のように提案されている。

● 特開2016-084354  ナノ粒子を用いた癌細胞の標的化

ミトキサントロンおよびドセタキセルなどの治療剤を含む複数の標的特異的ステルス型ナノ粒
子を含み、前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子に結合される標的化部分を含有し、前記標的化部分
が、以下の化合物から選択される低分子量前立腺特異的膜抗原(PSMA)リガンドである、
医薬組成物とする、前立腺癌の治療を必要とする対象の前立腺癌の治療に有効な量の標的化部
分を有する標的特異的ステルス型ナノ粒子を含む医薬組成物に関する新規考案が提案されてい
る(概要及び詳細は下図をダブクリ参照)。

  May. 19, 2016

  
【今夜も技術がてんこ盛り】

● 水素燃料電池トラック見参!

【符号の説明】

1:ラジエータ、2:フロントモーター、3:電力管理装置、4:リチウムイオンバッテリー、
5:冷却装置、6:燃料電池、7:水素燃料システム

12月1日、米国ユタ州のソルトレイクシティーで燃料電池トラック「Nikola One」のプロト
タイプが自動車業界やメディア関係者の前に初めて登場。車体の内部に高出力の燃料電池と大
容量のリチウムイオンバッテリーを搭載して、前方と後方のモーターで6×4輪駆動で走行す
る搭載した燃料電池の出力は300キロワット弱で、発電した電力はリチウムイオンバッテリ
ーに蓄電してからモーターに供給。リチウムイオンバッテリーは3万2千個の電池セルで構成。
最大320キロワット時の電力を貯めることができる。電気自動車メーカーのTesla Motorの最
新車種に搭載するリチウムイオンバッテリーは最大100キロワットアワーで、その3倍以上
の容量。Nikola Oneは後部にトレーラーを連結して走るセミトラックタイプで、モーターの出
力は千馬力に達する。従来のディーゼルエンジンで走るセミトラックと比べて2倍の馬力を発
揮する。燃料の水素を満タンにした状態で最長1200マイル(約1900キロメートル)の
走行が可能だ。水素の充填にはタンクが空の状態から10~15分かかる。出荷時期は19~
20年を見込んでいるとして、17年の前半に生産地を決定して工場の建設に着手する予定。


車両の価格はオプションによって35万~41.5万ドル。6年間のリースプログラムも月額
5千~7千ドルで用意する。リースプログラムには無制限の水素供給を含む。Nikola Motorは、
二酸化炭素フリーの水素を供給する事業も並行して実施する。発電能力が百メガワットクラス
の太陽光発電所を複数の場所に建設して、発電所の敷地内で液化水素を製造する予定だとのこ
と。しかし話はでかい。並行して米国とカナダに合計364カ所の水素ステーションを展開す
る構想を進め、広い範囲をカバーする水素ステーションのネットワークによって、航続距離が
1200キロメートルの燃料電池トラックは水素を切らさずに北米全域を走ることが可能にな
るというのだ。さすが、話がでかい。



● 約150℃の低温度下で水素生成に成功

12月1日、早大の関根泰教条らの研究グループは、わずか150℃程度の低温度において、
天然ガスの主成分であるメタンと水蒸気のパラジウム(Pd)触媒を用い反応系に弱電場をかける
ことで、速い反応速度かつ不可逆的に水素を生成に成功した。必要なときに簡便に水素を作り
出すことが可能となると見られる。

従来は、化学反応のうち、9割程度は触媒反応。触媒は反応速度を向上させるが、反応速度は
温度と活性化エネルギーに依存、多くの触媒反応は高温で実施される。これまでの水素製造は、
700℃以上の高温下でメタンと水蒸気を反応させることで行っていた。しかし、高い耐熱性
を有す材料や、高温の熱を使い切るための多段の熱交換器を用いる必要があり、高温に長時間
さらすことで触媒が劣化してしまうなど、さまざまな問題があり、実用には大きな障害がある。

  Dec. 1, 2016

今回の研究では、電場の中で反応中の触媒の状態を観察することで、触媒表面に吸着した水を
介し、プロトン(H+)が速やかに動き、プロトンの表面ホッピングが低温でも反応を促進して
いること、また、このプロトンと吸着分子との衝突が不可逆過程を生み出していることを発見。、
電場中では、表面に吸着した水を介して、プロトン(H+)が速やかに動いていること、このプ
ロトンの表面ホッピングが低温でも反応を促進していること、またこのプロトンとの衝突が不
可逆過程を生み出していること等がわかる。

ここで、表面は酸化セリウム(CeO)、大きな灰色の塊が鉛(Pd)、赤い球が水素原子あるいは
プロトン(H+)、薄黄色が酸素原子、青が炭素原子を表す。電場は図の酸化セリウム表面に沿う
ようにかかっている。水分子は隣同士の水と緩やかに水素結合していることが知られている。
H+がある水分子と結合すると元からあったO-Hが切れ隣の水にH+を渡す。これを繰り返すと上図
のようにH+は、水分子自身が移動しなくても、あたかも酸化セリウムの表面をバケツリレーの
ように非常に素早く移動することができる。H+は一方的にPdに衝突し、そこに捕まっているメ
タンと反応し水素分子と二酸化炭素が生成される。また、研究グループは電場を印加しながら
赤外光やX線を照射しうるセルを特別に作成し、これを用いて反応ガスを流し電場を印加した状
態の触媒表面を生け捕りにする方法を考案し実現した。これはoperando(生け捕り)分光と呼ば
れ、分析技術の世界でもホットな技術とのこと。

 Dec. 6, 2016

● 電気2重層キャパシターの容量密度を百倍に

12月5日、英国のサリー大学らの研究グループは、従来の百倍の容量密度を備えた電気2重層
キャパシターを実現可能な電解質材料を開発、電気自動車(EV)の航続距離を600キロメート
ル以上にできたり、スマートフォンを数秒で充電できたりする見通しという。電気2重層キャパ
シターは、正負の電極と電解液の界面に正負の電荷が集まることであたかも2重のコンデンサー
が形成されたかのように電力が蓄えられるキャパシター。典型的な特性は出力密度が数キロワッ
ト/キログラム前後、エネルギー密度が数ワット時/キログラム、ちょうど一般的なコンデンサ
ーとリチウムイオン2次電池(LIB)の中間的な特性だ。ただ、こうした特性は中途半端ともい
え、用途は限られている。

  Dec. 5, 2016

今回開発した材料は、ソフトコンタクトレンズに用いる高分子材料から成るゲル。電気2重層キ
ャパシターの電解質として用いることで、エネルギー密度を従来の約百倍の数百ワット時/キロ
グラムにできる見通しという。既存のLIBのエネルギー密度と比べても数倍と高い。出力密度の
高さや充放電サイクルでの劣化がほとんどないという特性は従来の電気2重層キャパシターを引
き継ぐ。この電気2重層キャパシターをEVに用いれば、ガソリン車の匹敵する航続距離を実現で
きるとする。「既存のEVはロンドンから(約90キロメートル離れた)ブライトンまでしか行け
ないが、この電気2重層キャパシターを使えば、ロンドンから(約600キロメートル離れた)
エディンバラまで再充電なしで行け、しかも、1回の満充電に必要な時間は2~3分と、ガソリ
ンの給油並みに短いという。

今夜のところはいまいち詳細がわからないからコメントできないが、保有特許が中国で一部行使
されているみたいだが限定的だというが、それらを保留してもこのスーパーキャパシター技術の
インパクトは大きい(残件扱い)。

※ 参考米国特許:

1.US 9447217 Method for producing a membrane electrode including forming the membrane in situ
2.US 9327244 Ionic membrane preparation
3.  US  9142851 Composite membranes having a hydrophilic material and a conductive material susceptible
    to dehydration and their use in electrochemical cells 
4. US 8945430 Photovoltaic cell containing a polymer electrolyte

 



【RE100倶楽部:グーグル17年中に再エネ百%実現へ】

12月7日、米グーグルは、17年中に同社のすべての施設で100%再生可能エネルギー利用を
達成すると公表。米アップルは、データセンターでの百%を達成しているが、グーグルはデー
タセンターだけでなく、世界の全オフィスでも再生可能エネルギー稼働に完全に切り替えると
している。

グーグルは、向こう6年間で風力および太陽エネルギーのコストは60~80%下がると予測。
電力コストが同社の営業コストに占める割合は大きく、再生可能エネルギーの長期的な価格安
定は重要だとしている。

 

  Aug. 24, 2016

【WE倶楽部:東京オリンピック・メダルは廃棄物でつくる?】

日本経済新聞によると、東京五輪組織委員会は今年6月、メダルに電子廃棄物を使う案を政府に
提案したという。五輪開催都市は、メダル用の金属を鉱山会社から入手するのが通常だが、独
自の鉱山資源に乏しい日本は、持続可能な未来というテーマをさらに前進させようとしている.。
国際オリンピック委員会(IOC)は五輪開催の方法について厳しい規則を定めており メダル製
造方法もそこに含まれる。たとえばリオデジャネイロ五輪では、水銀を使わずに抽出した金の
みを使用し、銀と銅の3割は使用済み素材から回収したもの。

廃棄されるスマートフォンやタブレットなどの家庭用電子機器には、プラチナ、パラジウム、金、銀、リチ
ウム、コバルト、すずなどの希少金属が微量にふくまれている。自動車や冷蔵庫などの家電でも、鉄や
銅、鉛、亜鉛などの卑金属に加えて、貴金属が使われている。リサイクル業者や精錬業者は、こうした
電子廃棄物や産業廃棄物をトン単位で回収、もしくは購入し、化学薬品を使った抽出作業によって様々
な金属を分離回収する。廃棄物からの金属抽出作業は主に、中国、インド、インドネシアなどの発展途
上国で行われている。

日本では毎年約65万トンもの小型電子機器や家電が廃棄されているが、リサイクル用に回収
されるのは10万トンに満たない。このため20年五輪に向けて日本では、外国や個別企業に、
貴金属回収の協力を呼びかけるこという。メダルに必要な金属の量は、メダルの大きさと数に
左右されるが、五輪メダルは近年、より大きく重くなる傾向にあるとか。リオ大会のメダルは
過去最大で、重さ500グラム。中心部は厚さ1センチだった。ブラジル造幣印刷局が鋳造した
メダルの数は合計5130個。ロンドン五輪用に英王立造幣局が造った47000個を大きく上
回った。20年東京五輪ではさらに、野球、空手、スケートボード、スポーツクライミング、
サーフィングの5競技が追加される。因みに、金メダルはスターリング・シルバー(純度92.
55%以上の銀)が主な材料で、銅メダルは赤銅から作られる。IOCは金メダルに最低6グラム
の金を使用することと定めている。もし金メダルが純金だったら、数千万ドルもの費用がかか
る。

金の価値は現在、銀の約70倍だが、20年には状況が変わっているかもしれないという市場
関係者もいる。シンガポールの貴金属業「シルバー・ブリオン」創業者のグレゴール・グレゲ
ルセンさんは、銀の需要は供給を上回っており、金の採掘量1オンスに対して銀は11オンスしか
採掘していないため、世界の銀備蓄量は減りつつあると指摘している。そこで、提案、メダル
有償回収制度を規定し、換金促進し再利用するというのはいかがなものか。

  ● 今夜の技術

兎にも角にも、そら恐ろしいというか驚愕の時代に生きていることを実感する日々。今日は、
神戸製鋼所の「空圧電池」(商標登録)を記載する予定だったが、急遽変更し「てんこ盛りシ
リーズ」をアップすることに。逆に言えば、面白い日々である。ところで、「空圧電池」とい
う言葉は神戸製鋼所が最初に使った言葉でないことは特許作業を専門としている人なら周知の
ことであるが、なかなか面白いと感心した次第。頭痛は酷いのでこの辺で。

                                       




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