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空圧電池で〆

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     強暴の国に事(つか)うるは難く、強暴の国をしてわれに事えしむるは易し。

                                               荀子 「富国」

      ※ かねがあっでも、使い方を知らなければ無駄になる。豊かな資源と
        人力があっても、利用のしかたを知らなければ、国は衰えるばかり
        だ。強い国とは、いったいどんな国のことだろうか?

        いかなるものが現在の指導権なのか?と自問し、深く洞察すれば解
               は自ずと見つかるもの(「極東極楽」?これは手前味噌。この十篇
          では「鳥獲(うかく)と焦僥(しょうぎょう)の勝負」が例示)。

         

                                                        

                                                                     荀子
                               B.C. 313 ーB.C..238 

【RE100倶楽部:再エネ社会時代の幕開け】



● 新電力登場:熱発電モジュール

12月16日、ユーグレナインベストメントはベンチャーキャピタルファンド「リアルテック
ファンド」の新たな投資先として、フレキシブル熱電発電モジュールを開発するEサーモジェン
テック社に出資したことを発表する。全一次エネルギー供給量の約60%に相当する量の排熱
が発生しているといわれているなか、こうした広い分野で発生する排熱を再活用できば、大き
な省エネ効果が見込める。出資を受けたEサーモジェンテックは、こうした排熱を活用できる
熱発電モジュール「フレキーナ」の開発を進め13年2月に創業したベンチャー企業、京都府
南区に本拠を置く。10月には大阪大学産業科学研究所に開発拠点を開設する。

一口に排熱といっても、その温度はさまざまなあり、それに応じて最適な発電方法は異なる。E
サーモジェンテックが開発を進めているフレキーナは、300℃以下の「低温排熱」を利用し
て発電することを目指した熱発電モジュール。火力発電所や溶鉱炉などで生まれる300℃以
上の高温排熱は、既に水蒸気による熱回収技術が実用化されている一方、低温排熱は全排熱の
75%を占めるるが手つかずにいる。発電効率の低さを解消するカギとなるのが、フレキシブ
ルさがこれをカバーするのがこの製品の特徴である。

曲がる極薄のフレキシブル基板を採用し、その上に既存のBiTe系の熱電素子を、半導体技術を
活用して高速かつ高密度に実装する。これにより湾曲が自在で、工場内のパイプなどの汎用的
な円筒状の熱源に対し、高い密着性を持って装着できる。そのため低温排熱でも、熱を逃さず
に効率よく発電できるメリットが最大の特徴である。同社の試算では従来のセラミック基板を
利した熱電モジュールを比較すると、熱回収効率は約2~3倍、熱電変換効率は約2倍高い。
実用化に向け、70℃の温度差を利用し発電した場合のコストで、1キロワットアワー当たり
10円を目指す。

このような製品の量産が始まれば、瞬く間にコスト逓減し市場対象規模は拡大する。20年の
世界市場規模は5千億程度は設定可能だろうと考える。

●デンマーク 風力だけで消費電力をまかなう

12月1日、デンマークは、風力だけで消費電力の100%以上を発電するという記録を樹立
上図は、風力発電が消費電力に占める割合を縦軸にパーセント表示。最大値は111%に達す
る。風力発電の比率が100%を超えたことはもちろん、1日を通じて70%以上の比率を維
持しながら問題は生じなかったという。その後も100%を超える日が続き、風力の比率が高
い水準で推移している(スマートジャパン、2016.12.19)。

デンマーク国内には風力発電所の他に、大型のガス火力発電所と小型のガスコージェネレーシ
ョン発電所、太陽光発電所が複数ある。コージェネレーション発電所は電力と同時に熱を生み
出して都市に熱を供給する。下図ではほとんど変化していない。また、大型のガス火力の出力
には変動が見られるものの、風力の出力変化とは直接関係していない。さらに、日本国内では、
太陽光発電や風力発電の出力変化を吸収するため、火力発電の出力調整の他に、大規模蓄電池
の導入を計画しているが、デンマークは系統用の大型蓄電池は導入していない。



それでは、火力発電の規模がそれほど大きくない、さらに大規模蓄電池も導入していないデン
マークだが、出力と消費のバランスは国際連系(電力の貿易)で対応している。デンマークと
スウェーデンの間の国際連系は、カテガット海峡を挟んでいる。ノルウェーとの間にあるスカ
ゲラック海峡はさらに幅が広く水深がある。連系線の全長は全長240キロメートル。そのう
ち海面下だけでも約120キロメートル。最大水深は200メートル以上。これは北海道と本
州を結ぶ連系線の約5倍の距離を結ぶことになる。海面下120120kmの送電が可能であれば、
幅42キロメートルの宗谷海峡(北海道・サハリン間)や、幅550キロメートルと130キロ
メートルの2つの海峡からなる対馬海峡などを結ぶことも想定可能範囲に入る(最大水深は、
200メートル以内)。

以上、日本国内で再生可能エネルギーを利用した発電の比率を高めるには、連系線を増強する
一方、リアルタイムに近い運用が可能な仕組みづくりが課題となると同時に国際連系線の取り
組みも課題となるとこの記事は結んでいる。



● 再エネ社会の実現は空圧電池で〆

上記のデンマークの記事で記載されているように、蓄電システムに依存せず、国際連系(電力
の貿易)で電力変動を抑制することの成功事例が示されているが、再エネの地産地消のキーテ
クノロジーである蓄電システムを確立できれば「再エネ社会」はもはや夢でなく実現できるこ
とが、同上の「太陽光・風力発電のコストが急速に低下、海外で単価3円を切る電力の契約も」
(2016.12.12)の記事、これはブログ「黄金虫と鹿の糞と芝の環境学」(2012.12.12)でも紹
介しているいる通り、グリッドパリティはすでに一部では実現(最低電力料金で3セント達成
している。そこで、神戸製鋼所の空圧電池に注目する。

空圧電池とは、空気を使って電気を貯蔵する技術で。電気でいったん空気を圧縮してタンクや
地下の坑道などにため込んだ後、必要な時に空気を取り出してタービンを回して発電する。神
戸製鋼所や電力中央研究所などが開発に取り組み、一部は17年後にも実証試験が始まる。天
候に左右され発電量が安定しない課題がある再生可能エネルギーと組み合わせれば、その普及
を後押しできる。

空気で電気を貯蔵する仕組みは「圧縮空気エネルギー貯蔵」(CAES)と呼ばれる。アイデア
としては20年くらい前から研究されていたが、再生エネの普及に伴って本格的な実用化段階
に入ってきた。神戸製鋼が取り組むのはタンクに貯蔵する仕組み。風力や太陽光といった再生
エネなどで得られた電気で産業用のエアコンプレッサー(圧縮機)を動かしてタンクに空気を
押し込む。電気が欲しいときには空気を取り出してタービンを回し、発電機を稼働する。充放
電の効率は60~65%で、熱交換器も活用して約200℃に達する圧縮空気からの熱も利用
すれば、効率は70%を超えるというから、上で記載した、熱発電モジュール「フレキーナ」
が利用できる。下の2次電池の性能比較表をみると、大規模(例えば、50平方キロメートル
以上をカバーする)蓄電池システムとしては、安全性、大電流放電、耐用年数の3つの点で優
れていることがわかる。

空圧電池は圧縮行程で温熱、膨張行程で冷熱が発生する。この温熱・冷熱を活用できればエネ
ルギー効率が上がる。このため大型データセンターなど冷房需要や暖房需要、温水需要にも対
応できる。また工場や焼却場などの排熱を膨張過程に取り込めば発電量を増加できる。単に充
放電効率という見方ではなく、トータルでのエネルギー効率として考えれば、化学的電池より
効率が高くなる。

また煤煙や二酸化炭素(CO2)などを排出せず、フロンなども使用していない。危険物がない
上、環境保護の観点からも設置への反対運動は起きにくい。今後は60%超にとどまる充放電
効率を高める。また設置場所は機械設備と鋼製タンクで構成されるので比較的自由度が高いが、
化学的電池と比較して劣る設中山間地域の切り札「空圧電池」置面積は高圧化により縮小を目
指す。コストは試験機ベースでは1キロワット時当たり30万円以上だが、将来的には十数万
円、1キロワット時当たりでは数万円になる見込み。

神鋼は神戸総合技術研究所(神戸市)で小型実証機を作って配線・配管し、制御など見直しな
がら先行実験を開始。今後は500キロワットを標準ユニットにして静岡県内に1000キロ
ワットクラスの実証機を設置。2016年秋以降に稼働させ、17年度から本格拡販を図る計
画という。そこで、同社の最新知財特許を参考掲載する。


■ 特開2016-211515 圧縮空気貯蔵発電装置及び圧縮空気貯蔵発電方法

風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した発電は、気象条件に依存するため、
出力が安定しないことがある。このため、圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy stor-
age)発電システム等のエネルギー貯蔵システムを使用して出力を平準化する必要がある。従来
の圧縮空気貯蔵発電装置は、電力プラントのオフピーク時間中に電気エネルギーを圧縮空気と
して蓄圧タンクに蓄え、高電力需要時間中に圧縮空気により膨張機を駆動して発電機を作動さ
せて電気エネルギーを生成するのが一般的である。

特許文献1(特表2013-509529 圧縮器-膨張器可逆式ユニットを備える圧縮空気エネルギー貯
蔵システム)には、このようなCAES発電装置のうち、圧縮と膨張の両機能を有する圧縮膨
張兼用機からなるものが開示されている。特許文献1のCAES発電装置は、圧縮膨張兼用機
のみから構成されるため、圧縮専用機や圧縮膨張機を使用した場合に比べてコストが高くなる。
また、再生可能エネルギーによって発電される入力電力や需要先から要求される需要電力に応
じたシステムの最適な運用についても考慮されていない。さらに、圧縮膨張兼用機は、圧縮と
膨張を同時に行うことはできない。従って、CAES発電装置が圧縮膨張兼用機のみから構成
される場合、蓄圧と発電を同時に行うことができず、システム効率が低下するおそれがある。
本発明は、圧縮機または膨張機の設置台数が減り、小型化及びコストダウン可能なCAES発
電装置を提供する。

【要約】

圧縮空気貯蔵発電装置2は、複数の圧縮機6と、蓄圧タンク8と、複数の膨張機10とを備え
る。圧縮機6は、再生可能エネルギーにより駆動されて空気を圧縮する。蓄圧タンク8は、圧
縮機6により圧縮された空気を貯蔵する。膨張機10は、圧縮空気によって駆動される。膨張
機10には発電機22が機械的に接続され、需要先へ供給する電力を発電する。また、圧縮空
気貯蔵発電装置2は、第1熱交換器14と、熱媒を貯蔵する蓄熱タンク16と、第2熱交換器
16を備える。第1熱交換器14は、熱媒に圧縮熱を回収する。第2熱交換器18は、膨張前
の圧縮空気を加熱する。さらに圧縮空気貯蔵発電装置2は、圧縮機6及び膨張機10の両方の
機能を有する圧縮膨張兼用機28と、この圧縮と膨張を切り替える制御装置36とを備えるこ
とで、圧縮機又は膨張機の設置台数が減り、小型化及びコストダウン可能なCAES発電装置
を提供する。

Dec. 15, 2016

【符号の説明】

2 圧縮空気貯蔵発電装置(CAES発電装置)  4 電力系統 6 圧縮機(圧縮専用機)
6a 吸込口 6b 吐出口 8 蓄圧タンク 9 圧力センサ 10 膨張機(膨張専用機)
10a 吸込口 10b 吐出口 12 空気配管 14 第1熱交換器 16 蓄熱タンク
16a 高温蓄熱タンク 16b 戻りタンク 18 第2熱交換器 20 熱媒配管 22 発電機
24 電動機(モータ) 26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h
バルブ(切替弁) 28 圧縮膨張兼用機 30 発電電動機 32 ポンプ 34 第3熱交換器
36 制御装置

以上、今年を振り返えると、再生可能エネルギー社会の実現の道筋が明確になった年であった
といえるだろう。そこで、「空圧電池で〆」ることにすることとした。吾が意成れりである。

       

【量子ドット工学講座28:シャープ/太陽電池モジュール】

太陽電池モジュールの弱点は400ナノメートル以下の紫外光による劣化があり、これを防止
する対策として無機蛍光体を中心とした波長変換素子を用いて紫外光を長波長側にシフトさせ
る方法が提案されているが、波長変換層を付加することで太陽光を吸収し変換効率を低下する
というジレンマ(二重苦)を抱える。下図の知財特許はこれを解決する新規考案である。

太陽電池素子(結晶シリコン(c-Si)系太陽電池素子、GaAs系太陽電池素子、CIG
S系太陽電池素子、InGaP系太陽電池素子)の変換効率は、短波長側で大きく低下する。
特に、波長400nm以下の近紫外領域の光は、ほとんど発電に寄与しない。また、太陽電池
モジュールに耐候性の低い材料が用いられている場合、波長400nm以下の近紫外領域の光
は発電に貢献しないばかりでなく、材料の劣化を引き起こす。そこで、太陽電池素子と、太陽
電池素子の一方の面を覆う波長変換層とを備え、波長変換層において、近紫外領域から青色領
域の光を、可視領域から赤外領域の光へ波長変換する波長変換方式の太陽電池モジュールが考
案されている。

波長変換層としては、太陽電池素子の表面に、バインダーに無機蛍光体を分散してなる組成物
を塗布してなるものや、太陽電池素子の表面に、無機蛍光体の表面に塗布した接着材料で、無
機蛍光体を塗布してなるものが挙げられる。太陽光が波長変換層に入射すると、蛍光体とバイ
ンダー(接着材料)との屈折率差に起因して、光の散乱が生じる。蛍光体の屈折率が高く、蛍
光体の粒子径が大きく、波長変換層の厚さが大きい程、光の散乱の程度は大きくなる。そのた
め、本来、太陽光発電に大きく寄与する波長の光(可視領域から赤外領域の光)が波長変換層
で散乱(反射)され、波長変換層における可視領域から赤外領域の光の透過率が低下する。

その結果、太陽電池素子に入射する光の量が減少する。波長変換層において、可視領域から赤
外領域の光の透過率が低下することを防止するための方法としては、例えば、粒子径が100
nm以下の無機蛍光体を、太陽電池素子の表面に積層し、可視領域から赤外領域の光の透過率
を高くする方法が知られている(例えば、非特許文献1~3参照)。

【要約】

本発明の太陽電池モジュール100は、太陽電池素子10と、太陽電池素子10の一方の面
10aの一部を覆う波長変換層20と、太陽電池素子10の一方の面10aのうち波長変換層
20で覆われる領域以外の領域を覆う透明層30と、を備え、波長変換層20は、波長200
nm~400nmの光を吸収し、波長40、0nmよりも長波長の光を発光し、かつ少なくと
も波長500nm~1200nmの光を吸収せず、透明層30は、少なくとも波長320nm
~1200nmの光を透過することで 波長変換層に含まれる無機蛍光体に波長200nm~
400nmの光を充分に吸収し、かつ、波長変換層における波長400nmよりも長波長の光
の透過率が高く、発電効率に優れる太陽電池モジュールを提供する。

 Dec. 8, 2016

【符号の説明】

10 太陽電池素子、20 波長変換層、21 無機蛍光体、30 透明層、40 基材、
50 波長変換基板、100 太陽電池モジュール、310 基材、320 透明層、
321 切込、330 蛍光体樹脂組成物、340 波長変換層、400 太陽電池素子、
500 太陽電池モジュール、610 基材、611 切込、620 蛍光体樹脂組成物、
630 波長変換層、700 太陽電池素子、800 太陽電池モジュール。

以上、量子ドット工学、とりわけ30%超の高変換効率系量子ドット太陽電池の方も着実に量
産化のための技術開発が進展しつつあること確認してきた1年度でもあった。

 

     ● 今夜の一曲

甲斐バンドの「きんぽうげ」のドラマカバー演奏を聴く。70年代もますます遠くなる感じ。
10年、20年先、1曲でも残るのかどうなのかふとそんなことを思った。いま、耳から離れ
ない楽曲に服部隆之のNHK大河ドラマ『真田丸』の主題曲。いつまで残っているのかと考え
ると、つくづく人間って不思議なものである。


 

 


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