隠公二年、戎族との盟 / 鄭の荘公小覇の時代
※ 【春秋経】 二年春、隠公は戎(じゅう)族と潜(魯の地)で会
合した。夏五月、菖(きょ)国が向(きょう)国に攻め入った。
また、魯の卿の無騃(ぶがい)が軍隊をひきいて極(きょく)国
に攻め入った。秋八月庚辰の目、隠公は戎族と唐(魯の地)で盟
を結んだ。九月、紀国の大夫裂襦(れつじゅ)が魯国の姫君を迎
えに来た。冬十月、伯姫が紀国へ輿入れした。紀の子帛(しはく:
裂襦の宇)と菖国の君が密(みつ:菖の邑)で盟を結んだ。十二
月の乙卯(いつぽう)の日、魯の恵公夫人の子氏(しし)が亡く
なった。鄭の人が衛を伐った。
〈伯姫〉 伯は孟・伸・叔・季の孟と同じで、長女の意。姫は魯国の姓。
〈子氏〉 子家から輿入れした夫人の意で、すなわち伸子を指す。
【世界の朝食:クリスピーなベトナム豆腐春巻き】
⌘ 材 料(4人分:春巻き5枚)
❶ 春巻き☑ジュリエンヌ・ニンジン、コショウ、キュウリ:1/2カップ /新鮮なコリアンダー:1
束/パセリまたはライスヌードル(より薄い方が良い):4オンス/春巻き:8~10枚/ 新鮮ミント
:1束
❷ アーモンドバターペースト調味料(ディプソース)☑クリーム状の塩漬けアーモンドバター:1/3
カップ/醤油:小さじ1/ブラウンシュガー:小さじ1、2/アガベ蜜:適量/新鮮なライムジュー
ス:小さじ1/チリガーリック調味料:小さじ1/2
❸ クリスピー豆腐 ☑水切り脱水豆腐:8オンス/ゴマ油:小さじ1×4/アーモンドバターディ
ップソース:小さじ2杯半/醤油:小さじ1/ブラウンシュガーまたはアガベ蜜小さじ1/トウモロ
コシ粉:小さじ3
⌘ 作り方(準備15分+調理15分)
❶まず、お湯を入れた茹で麺を約10分間準備し、排水して保管。❷一方、中火で大きなフライパンを
加熱し、加圧脱水した豆腐をサイコロ切りする トウモロコシ粉小さじ3をごま油で、
すべての面をひっくり返して均一にこげめをつくまで、約5分間トーストし揚げ、フライパンから
取り出す。❸野菜準備し水を切る。すべてのソースを小さなミキシングボウルに加えて混ぜ合わせて
アーモンドバター調味料を準備し、お湯を加え粘りを調節。必要に応じてフレーバーでを調整(※チ
リガーリックとブラウンシュガーを適宜追加)。❹豆腐の味付け用に小さじ2杯半のソースを小さな
ボウルに入れ、醤油、ゴマ油、ブラウンシュガー(またはアガベ)の好みで追加、泡立てておく。❺
準備しておいた豆腐を中火でフライパンに加え、調味液(ソース)を加えてコート。数分間調理――
―すべてのソースが吸収されて豆腐が艶を帯びまで――攪拌する。準備された野菜と玄米ラーメンを
用意しておく。❻浅いフライパンに熱湯を注ぎ、初巻き浸して約10~15秒間柔らかくする。❼湿った
俎板や湿った布巾に移し、準備しておいた具材をおき、やさしく広げる。一握りの米麺とニンジン、
ピーマン、キュウリ、新鮮なハーブと2~3個の豆腐を上に加える。 静かに1回折り重ね、縁を挟み
込み、縫い目がシールされるまで絞り込む。❽春巻きの継ぎ目を下向きに置き、湿っぽく保温する布
巾で覆い、すべての具材を春巻きで巻きこれに繰り返す。❾最後にアーモンドバター調味液にチリソ
ース、岩塩などを加え好みのソースで頂く。春巻きのソースは酢醤油は定番だが、アーモンドバター
調味液と表面がぱりぱりとした堅めの豆腐を具材としたが特徴。忙しいひとには30分は少しきつい
かもしれないが、日本人のように、いやそれ以上に手先が器用なベトナムの人々のファーストフード
が世界の人々の口に合わないわけがない。世界的な食品が席巻すること間違いない。
【異常気象ウォチ倶楽部:今年後半に50~60%の確率でエルニーニョが発生】
世界気象機関(WMO)は、17年後半に50~60%の確率でエルニーニョが発生すると予報する。今
年年1月から現在までエルニーニ(南方振動:ENSO)の中立状態を保っていたが、2、3月には東部
熱帯太平洋で海面温度が平均より2℃以上高くなっている。多くの気候モデルによれば6月までは中
立状態が続くが、それ以降はエルニーニョ現象が発生する可能性がある。一方、ラニーニャ現象が起
きる可能性は非常に低いとみられる。この分析は、世界の主要な予報センターの情報に基づいた気候
モデルを専門家が評価したものである。ただし、今回の予報は5、6月より以前の早い時期に出されて
いるため、今後の予報に比べて確実性は下回る。エルニーニョ現象が地域的な気候に与える影響は、
エルニーニョ現象の強度や発生時期、その他の気候パターンとの相互作用によっても毎回変わってく
るという。ENSOの動向は注意深く監視が続けられており、世界各地の気候変動に関する詳細につい
て、今後、WMOの地域気候センターや各国の気象水文機関を通じて公表される。「世界環境リスク分
散機構 」の早期設立が待たれるところである。今でも遅くない。
【RE100倶楽部:71自治体が「100%エネルギー自給」を達成】
千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所(ISEP)は3月31、「永続地帯2016年版報告書」を
公表。永続地帯(sustainable zone)とは、「その区域で得られる再生可能エネルギーと食料によって、
その区域におけるエネルギーと食料の需要のすべてを賄える区域」と定義し、市町村や都道府県別に
調査・分析。固定価格買取制度(FIT)によって、メガソーラー(大規模太陽光発電所)が人口の少
ない農村地域にも建設され、稼働し始めたことから、エネルギー面の「永続地帯」が順調に増加して
いることが分かった。具体的に、エネルギーの「永続性」に関しては、「域内の民生・農林水産用エ
ネルギー需要を上回る量の再エネを生み出している市町村」を「100%エネルギー永続地帯」と定義。
この調査・分析は2011年度から統計を取っており、「100%エネルギー永続地帯」となった市町村は、
2011年度に50団体だったが、年々増加し、2015年度では71団体となるまた、「域内の民生・農林水産
用電力需要を上回る量の再エネ電力を生み出している市町村」を「100%電力永続地帯」と定義し、
それを達成した市町村は、2011年度の84団体から2015年度には111団体まで増える。
また、再エネ供給が域内の民生・農林水産用エネルギー需要の10%を超えている都道府県は、2011年
度に8団体だったが、2015年度には25団体まで増えた。エネルギー自給率でトップは大分県(32.2%
)で、以下、鹿児島県(24.9%)、秋田県(22.5%)、宮崎県(21.8%)、富山県(20.5%)となり
、太陽光の急増している九州の各県が上位に入る。
山形大学 有機エレクトロニクス研究センタの卓越研究教授の時任静士の研究グループは「有機エレ
クトロニクス」「プリンテッドエレクトロニクス」「フレキシブルエレクトロニクス」をキーワード
とし、材料創製からデバイス高性能化、製造プロセスまでの一体的な開発することで加速し、新しい
イノベーションを創出させようとしている。同研究室では、有機半導体材料を用いた電子デバイスの
開発や、印刷プロセスを使った電子デバイスの製造技術開発、およびそれらに関連した機能性材料の
研究開発を行っている(図2)。有機半導体は薄くて軽い、曲げられるなどの特徴を持っており、例
えばヘルスケアセンサーなどの新しい電子デバイスへの応用が期待されている。また、印刷技術は、
低温で大面積なシート基板に電子デバイスを作製できるため、産業的にも非常に重要な技術と位置付
けられている。
● 曲面に電子回路を形成、印刷プロセス新技術
現在では、プリンテッドエレクトロニクス(PE)は、次世代の革新的なものづくり技術であり、大き
なビジネスの創造が期待されている。プラスチックフィルム基板上に薄膜トランジスタを集積化した
スマートラベルやウエアラブルセンサーは、IoT、IoEやトリリオンセンサーユニバースなどと直結す
ることからも注目。また、有機ELディスプレーのビジネスと技術の動きが活発。これをビジネスの好
機と捉え、ものにするためには、世界の動きを知り、自らの強みと商機を正しく理解することが重要。
同研究室では、プリンテッドエレクトロニクス技術と相性の良い機能材料として有機半導体に注目し
有機半導体を用いた有機TFTは低温での作製が容易であることから、低コストプラスチック基板に適
用できる。有機TFTでの回路構築に必要となる材料として、基板表面の平坦性を高める平坦化材料や
層間絶縁材料、有機TFTの有機半導体、ソース・ドレインやゲート電極のための金属インク、ゲート
絶縁層の絶縁材料が挙げている。これらの材料は、塗布か印刷法で所定の形状に形成することになる。
各種印刷手法に適合した材料のインク化も重要な課題であり、また、印刷後の乾燥・焼成のプロセス
もそれら薄膜の特性に大きく影響する。汎用のプラスチック基板の耐熱性を考慮すれば、その処理温
度は150℃以下が望ましい。
インクジェット法は、印刷版が不要で、デジタルオンデマンドのプロセスのため理想的な印刷法だが、
その線幅は数10mμであり、10μm以下の実現は非常に困難る。印刷パターンは影響をうける。そこで、
インクジェット法と表面処理技術を組み合わせた手法で微細化を検討した。その結果、5μmレベル
の銀細線の形成に成功する。さらに、凸版反転印刷法の原理、装置外観および印刷パターンに影響を
与えるパラメーターの関係を、下図に示す。重要なファクターは、インク粘度fcと張力fb、fgである
。凸版反転印刷法による有機TFTのソースおよびドレイン電極パターンの作製結果から、サブミクロ
ンのチャネル形成が可能であることが分っている。従って、フォトリソグラフィーに匹敵する短チャ
ネル長のTFTを作製できるのである
【先端技術お復習い倶楽部:回生制御と48V化】
燃費・CO2排出規制の強化が予定される中、実用化が進み始めているのが自動車電源の48化。近年の
自動車電源の変革は、クルマの電動化に伴い、モータ出力(kW)の増大と高電圧化の方向にある。例
えば、48Vマイルド・ハイブリッド・システムは、従来の12V電源を用いたマイルド・ハイブリッド・
システムと比べて、エンジンの駆動力をアシストするモータの出力を高められる上、モータ走行やエ
ネルギー回生の領域を拡大、高電圧化による電流値の抑制を通じて配線や補機類を小型化したりする
ことで燃費・CO2排出量の改善できる。直流(DC)48Vは、国際安全規格(DC60V)内に入り、車両
搭載や電源システム構築上優位となる。このベース技術は、既に20年程前から「MITコンソーシアム」
などを通じ蓄積、2001年の42Vマイルドハイブリッド車(マイルドHEV)につなる。その後、パワー
エレクトロニクスの進化〔リチウム(Li)イオン電池、モータ技術、炭化ケイ素/窒化ガリウム(SiC/
GaN)パワー半導体〕と環境規制の強化が続き、Liイオン電池を活用した48V化の実用化が始まる。ク
ルマの電動化で大きな節目は、トヨタ自動車の量産ハイブリッド車(HEV)「プリウス」〔ニッケル
(Ni)水素電池:288V〕の発売(1997年)。それ以来、クルマの電動化への動きが加速、車載電池の
進化とともに自動車電源システムの変革が進む。
【映画:ブレードランナー2049】
1982年に公開されたSF映画『ブレードランナー』の「30年後」を舞台にした続編『ブレードランナー
2049』の全貌が明らかになる(米国公開は10月6日、日本公開は10月27日)。最新トレイラーでは、
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴが、自身のスタイルを発展させ、前作の世界の境界をはるかに超えたと
ころまで広げている(前作の監督だったリドリー・スコットは、今回は製作総指揮)。なおヴィルヌ
ーヴ監督の前作『Arriva』(日本では『メッセージ』で、5月19日に公開)はアカデミー賞8部門にノ
ミネートされ、話題を呼んだ[日本語版記事:「宇宙人の言葉」を読み解く、女性言語学者の物語─
─SF映画『Arrival』]。☈2019年を舞台にしていた前作の『ブレードランナー』では、視野が故意に
狭く設定されていた。つまり、われわれの見る世界は、雨が降り、空気の汚れたロサンゼルスの都会
の風景のなかに窮屈なほど閉じ込められていた。広がる眺望を目にしたのは、タイレル社の創業者で
あるエルドン・タイレル博士が住む光り輝く巨大なピラミッド型の本社ビルをエレヴェーターで上っ
ていくときだけだった。『ブレードランナー2049』のトレイラーでは、異なる世界が現れる。前作を
思い出させるような、ホログラフの女性たちがうごめく都会の風景や、宇宙を飲み込もうとしている
ような「ATARⅠ」のロゴも出てくるが、印象的な砂漠の場面もあり、深刻な気象変動を示唆してい
るという。☈ライアン・ゴズリングが演じるロス市警の捜査官「K」が、埋もれた木の枝に彫り込ま
れた日付の土をぬぐい取ったり、森(ホログラム?)の中で銃撃戦になったりする場面もある。☈さ
らに『ブレードランナー2049』では、前作で棚上げされた「奴隷状態のレプリカント」的問題を取り
上げている。ウォレス(ジャレッド・レト)は言う。「あらゆる文明は、使い捨ての労働者で成り立
つ」。彼が何者であるか明かされないが、奇妙な瞳を持ち、新しいレプリカントをつくっている。さ
らにウォレスは、それほど多くのレプリカントはつくれないと語るが、これは奴隷経済が崩壊しつつ
あるか、あるいは主要資源の枯渇のいずれかを暗示する。☈捜査官Kは、30年間失踪していた元ブレ
ードランナーのデッカード(ハリソン・フォード)を訪ねるが、その後に爆発が起きることを考える
と、デッカードを追跡する悪い連中を一緒に連れて来る。捜査官の目的は、「社会に残されたものを
混沌に導くかもしれない秘密」。その探求には、ウォレスがつくった、やけに感傷的なレプリカント
であるジョイ(アナ・デ・アルマス)の助けを借りる。デッカードがレプリカントなのかどうかとい
う謎解きもこの作品の魅力だろう。
23.みんなほんとにこの世界にいるんだよ
「騎士団長も満足されたでしょうか?」、シェフが下がったあとで免色が心配そうな顔で私にそ
う尋ねた。その表情には演技的な要素は見当たらなかった。少なくとも私の目には、彼は本当に
そのことを心配しているように見えた。
「きっと満足しているはずですよ」と私も真顔で言った。「こんな素晴らしい料理を口にできな
かったことはもちろん残念ですが、場の雰囲気だけでもじゆうぷん楽しめたはずです」
「だといいのですが」
もちろんずいぶん喜んでおるよ、と騎士団長が私の耳元で囁いた。
免色は食後酒を勧めたが、私は断った。これ以上はもう何も入らない。彼はブランディーを飲
んだ。
「ひとつあなたにうかがいたいことがありました」と免色は大ぷりなグラスをゆっくり回しなが
ら言った。「妙な質問なので、あるいはお気を悪くされるかもしれませんが」
「どうぞなんでも質問してください。ご遠慮なく」
彼はブランディーを軽く口に含み、昧わった。そしてグラスを静かにテーブルの上に置いた。
「雑木林の中のあの穴のことです」と免色は言った。「あの石室に先日、私は一時間ばかり入っ
ていました。懐中電灯も待たず、穴の底に一人きりで座っていました。そして穴には蓋がされ、
石の重しが置かれました。そして私はあなたに『一時間後に戻ってきて、私をここから出してく
ださい』とお願いしました。そうでしたね?」
「そのとおりです」
「どうしてそんなことを私がしたと思います?」
わからないと私は正直に言った。
「それが私にとって必要だったからです」と免色は言った。「うまく説明はできないのですが、
ときどきそれをすることが私には必要になります。挟い真っ暗な場所に、完全な沈黙の中に、一
人ぼっちで置き去りにされることです」
私は黙って次の言葉を待った。
免色は続けた。「そして私のあなたへの質問というのはこういうことです。あなたはその一時
間のあいだに、私をあの穴の中に置き去りにしたいという気持ちをちらりとでも抱きまぜんでし
たか? 私を暗い穴の底に、あのままずっと放っておこうという誘惑には駆られませんでした
か?」
彼の言わんとすることが私にはうまく理解できなかった。「置き去りにする?」
免色は右のこめかみに于をやり、そっとこすった。まるで何かの傷跡を確かめるみたいに。そ
れから言った。「つまりこういうことです。私はあの深さ三メートル近く、直径ニメートルほど
の穴の底にいました。梯子も引き上げられていました。まわりの石壁はずいぶん密に積まれてい
て、よじ登ることはとてもできません。しっかりと蓋もされています。あんな山の中ですから、
大きな声で叫んでも鈴を振り続けても、誰の耳にも届きません
もちろんあなたの耳には届く
かもしれませんが。つまり私が自分一人の力で地上に戻ることはかなわないということです。も
しあなたが戻ってこなければ、私はいつまでもあの穴の底にいなくてはならなかった。そうです
ね?」
「そういうことになるかもしれません」
彼の右手の指はまだこめかみの上にあった。それは動きを止めていた。「それで私が知りたい
のは、その一時間のあいだに、『そうだ、あの男を穴から出してやるのはよそう。ずっとあのま
まにしておいてやろう』という考えが、ちらりとでもあなたの頭をよぎりはしなかったかという
ことです。決して気を悪くしたりはしませんから、正直に答えていただきたいのです」
彼は指をこめかみから離し、ブランディー・グラスをもう一度手にとり、またゆっくりと宙で
回した。しかし今回はグラスに口をつけなかった。目を細めて匂いを嗅いで、テーブルの上に戻
しただけだった。
「そんなことはまったく順に浮かびませんでした」と私は正直に答えた。「ほんのちらりとも。
一時間経ったら、蓋をとってあなたを外に出さなくては、ということしか順にはなかったと思い
ます」
「本当に?」
「百パーセント本当です」
「もし仮に私があなたの立場であったなら……」と免色は打ち明けるように言った。その声はと
ても穏やかだった。「私はきっとそのことを考えていたはずです。あなたをあの穴の中に永遠に
置き去りにしたいという誘惑に駆られていたに違いありません。これはまたとない絶好の機会だ
よと」
私にはうまく言葉が出てこなかった。だから黙っていた。
免色は言った。「穴の中で私はずっとそのことを考えていました。もし自分かあなたの立場に
いたら、きっとそのように考えるに遠いないと。なんだか不思議なものですね。実際にはあなた
が地上にいて、私か穴の中にいたのに、私はずっと自分が地上にいて、あなたが穴の底にいるこ
とばかり想像していました」
「でも、もしあなたに穴の中に置き去りにされたら、ぼくはそのまま飢え死にしかねません。本
当に鈴を鳴らしながらミイラになってしまうかもしれない。それでもかまわないということです
か?」
「ただの想像です。妄想と言っていいかもしれない。もちろん実際にそんなことをするわけはあ
りません。ただ順の中で想像を働かせているだけです。死というものを、頭の中で仮説としても
てあそんでいるだけです。だから心配しないでください。というか、あなたがその上うな誘惑を
まったく惑じなかったということの方が、私にとってはむしろ不可解なくらいなのです」
私は言った。「免色さんはあのとき暗い穴の底にI人きりでいて、怖くはなかったのですか?
ぼくがそのよな誘惑に駆られて、あなたを穴の底に置き去りにするかもしれないという可能性
を順に置きながら」
免色は首を振った。「いいえ、怖くはありませんでした。というか、心の底ではあなたが実際
にそうするのを期待していたのかもしれません」
「期待していた?」と私は驚いて言った。「つまりぼくがあなたを穴の底に置き去りにすること
をですか?」
「そのとおりです」
「つまりあの穴の底で見殺しにされてもいいと考えておられたわけですか?」
「いや、死んでしまってもいいとまで考えていたわけじやありません。私だってまだこの生に少
しは未練があります。それに飢え死に、渇き死にするのは私の好みの死に方ではありません。私
はただあと少しでもいいから、より死に近接してみたかったというだけです。その境界線がとて
も微妙なものだということは承知の上で」
私はそれについて考えてみた。免色の言うことはまだうまく理解できなかった。私は騎士団長
の方にさりげなく目をやった。騎士団長はまだその飾り棚の上に腰掛けていた。彼の顔にはどの
ような表情も浮かんでいなかった。
あの日の些細なため息はざわめきに飲まれ迷子になったよ
ありふれた類だったからとこに転がったってその景色の日常
言葉は上手に便ったら気持ちの側まで近付けるけれど
同じものにはなれない抱えているうちに迷子になったよ
僕らはお揃いの服を著た別々の呼吸違う生き物
見つけたら鏡のように見つけてくれた事
触ったら応えるように触ってくれた事
何も言えなかった何を言えなかった
曲がって落ちた紙飛行機 見つめ返せなかったまっすくな瞳
タ焼けとサイレン帰り道 もう痛まないけと治らない傷
あの日の些細なため息はざわめきに飲まれ迷子になったよ
名前を呼んでくれただけで君と僕だけの世界になったよ
僕らの間にはさよならが出会った時から育っていた
笑うから鏡のように涙がこはれたよ
一度でも心の奥が繋がった気がしたよ
見つめ返せなかった忘れたくなかった
笑うから 鏡のように 涙がこはれたよ
一度でも 心の奥が繋がった 気がしたよ
冷えた手が 離れたあとも まだすっと熱い事
見つけたら 鏡のように見つけてくれた事
あの日 君がいた あの日 君といた
何も言えなかった 忘れたくなかった
作詞/作曲 藤原 基央
「アリア」は、BUMP OF CHICKEN の6作目の配信限定シングル。前作「パレード」以来およそ1
年9か月ぶりのリリース。作詞・作曲:藤原基央 編曲:BUMP OF CHICKEN TBS系ドラマ『仰げ
ば尊し』主題歌。「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」のツアーファイナル開催
地である横浜国際総合競技場のライブ写真である。ミュージックビデオは16年夏に開催されたフジ
テレビ「お台場みんなの夢大陸2016」のDMMプラネッツのブースにて撮影。楽曲のBPM(Beats Per
Minuteは220で、BUMP OF CHICKENの全楽曲の中で最速のテンポで。因みに、タイトルのアリア (
イタリア語: Aria) は、叙情的、旋律的な特徴の強い独唱曲で、オペラ、オラトリオ、カンタータな
どの中に含まれるものを指し、広義には、そのような独唱曲を想起させる曲を指す。