僖公二十三年:晋の文公、亡命十九年 / 晋の文公制覇の時代
※ 前七世紀末、天下の覇者となった晋の文公(重耳:ちょう
じ)には、即位するまえ、長い雌伏の時代があった。すな
わち、父献公の寵愛する驪姫の姦計(驪姫の禍)により出
奔を余儀なくされたかれは、諸国を流浪する。父に追われ、
異母兄弟にねらわれての逃避行のすえ、本国に帰って即位
したのは、嬉公二十四年のことである。その間の人間模様
がここに一括して記されている。この条、経文はない。
※ 天の贈りもの:まず一行は衛国に立ちよったが、衛の文公
が礼遇しなかったため、そうそうに都城を出て五鹿(ごろ
くという村にさしかかった。餓えを覚え、村人に食物を求
めたが、村人たちは食物のかわりに土くれを投げてよこし
た。カツとなった公子はその男を鞭でなぐりつけようとし
たが、子犯(しはん:狐偃のこと)がこれを制し、「天の
くだされた贈物です。ありかたく頂戴しましょう」と子犯
は「天のくだされた贈物です。ありかたく頂戴しましょう」
とうやうやしく一礼すると、その土くれを車中にしまった。
★ 子犯のことばは「土を得だのは国を得るしるしだ」として
公子の怒りを解き、かつこれを励ましたのである。不遇の
ときの心構えとしてよく引用される。
【RE100倶楽部:太陽光発電篇】
● ガラス壁からの太陽エネルギーを利用する
韓国の研究チームは、半透明なペロブスカイト型太陽電池を開発。この太陽電池は、発電する窓ガ
ラスとして使える可能性がある。また、研究グループは、現代建築物のガラス壁向け用途の透明/
半透明の太陽電池の開発模索を行っている。しかし、結晶シリコン系などの従来型の太陽電池では、
半透明にすることができない。これに対し、有機/色素増感型は変換効率が低い。ペロブスカイト
型は、製造コストが安く、製造が簡単なハイブリッド(有機/無機)の光電変換材料。しかも、こ
ペロブスカイト型太陽電池の変換効率は、数年間でシリコン型レベルにまで上昇し注目されている
(Harnessing energy from glass walls, ScienceDaily, May 29, 2017)。
韓国科学技術振興機構(KAIST)の尹承燁(ユン・スンギュプ)教授、成均館(ソンギュングァン)
大学の朴南(パク・ナムギュ)教授らが率いる韓国の研究チームは、ペロブスカイトを用いて、高
効率な半透明太陽電池を開発(※宮坂力桐蔭横浜大学教授が先行開発「結晶材料のナノスケールの
山と谷に隠された変換効率」2016.07.21)。この半透明太陽電池の開発の肝は、光活性材料と適合
セルの最上層の透明電極の開発にある。同グループは、ペロブスカイト型太陽電池に適した「トッ
プ透明電極」(TTE)の開発。 TTEは、高屈折率層と界面緩衝層との間に挟まれた金属膜からなる
多層スタックで構成。可視光だけを透過する従来の透明電極と異なり、このTTEは可視光を通過さ
せると同時に赤外線を反射する。
TTEで製造された半透明太陽電池は、平均赤外光の85.5%を反映する13.3%の高い電力変換
効率を示した。現在利用可能な結晶シリコン太陽電池は、最大25%程の変換効率を記録している
が不透明。このチームは、半透明のペロブスカイト型が実用化が進めば、電気エネルギー生成だけ
でなく、屋内環境でのスマートな熱管理が可能になり、建物や自動車用のソーラー窓に太陽電池を
利用できるという。すでに、このブログの連載シリーズ「エネルギーフリー社会を語ろう!」(No.
17、21、24、25)で触れている。
しかし、自動車、建築物向けの窓ガラス(あるいは熱吸収ブラインド窓)にしろ、ゼルロエネルギ
ー住宅/ゼロエネルギービルの外壁向けにしろ、耐熱/耐久性の課題(※兵庫県立大学伊藤省吾准
教授グループの研究参照「ペロブスカイト太陽電池の耐熱性を世界で初めて確認」2017.12.28など)
の克服は喫緊である。また、半透明にこだわらないなら、耐熱/耐久性ペロブスカイト型と無機化
合物半導体型などとのタンデム化による20%超の薄膜高変換効率型太陽電池の実用化も可能だ。
わたし(たち)はまずは、ゼロエネルギービルの外壁の事業プラットフォーム構築をこのシリーズ
で掲載している。建築産業(例えば竹中工務店)×電気産業(例えば三菱電機)×半導体製造産業
(例えば東芝+製造/計測評価設備企業)とのコラボの模索を提案している(目標MSは2020年)。
● 関連事例研究:US 9455093 B2 間接電荷移動に基づく色素増感型太陽電池
Sep. 27, 2016
図1は本発明の一実施形態による半導体ナノファイバ色素増感太陽電池(DSSC)の概略図
図2aは、CuPc堆積を用いないDSSCにおける再結合プロセスを概略図
図2bは、CuPc堆積を用いたDSSCにおける再結合プロセスを概略図
本件は透明導電性基板上に半導体ナノ粒子層が分散された電極と、このナノ粒子層上に分散された複
数の半導体ナノファイバーと、ナノ粒子層上に分散された第1の光吸収材料と光吸収帯域幅の光吸収
材料と、複数の半導体ナノファイバのうちの第1の光吸収材料上に堆積され、第2の光吸収帯域幅の
の光吸収材料とを含む複数の半導体ナノファイバ対向電極は、金属被覆透明導電性基板と、光吸収材
料及び対向電極と接触する電解質より構成する。
また、色素増感型太陽電池電極の製造方法は、❶透明導電性基板を準備する工程と、❷透明導電性基
板上に複数の半導体ナノ粒子を分散させる工程と、❸複数の半導体ナノファイバー、半導体ナノファ
イバー層上に第1の光吸収帯域の光吸収材料を半導体ナノファイバーで増感し、この光吸収材料上に
第2の光吸収材料を堆積させる工程であって、第1の光吸収帯域幅と相補的な第2の光吸収帯域幅を
保有。
さらに、本件の色素増感型太陽電池電極の製造方法は、複数の半導体ナノ粒子を分散させ、複数の半
導体ナノファイバーを半導体ナノ粒子層上に分散させ、半導体ナノファイバーを増感半導体ナノファ
イバーの伝導帯よりも高いエネルギーレベルと第1の光吸収帯域幅の光吸収材料を含む第1の光吸収
材料と、複数の光吸収材料を連続する各光吸収材料は、先行する光吸収材料の光吸収材料よりも高い
エネルギーレベルを保有する。
表1 銅フタロシアニン有無による太陽電池の特性比較表
【特許請求範囲】
透明導電性基板と、前記透明導電性基板上に分散された半導体ナノ粒子層と、前記半導体ナノ粒子層上に分散された複数の半導体ナノファイバーと、各半導体ナノファイバーの全面に吸着
された第1の光吸収材料であって、第1の光吸収帯域幅を有する第1の光吸収材料と、前記第1
の光吸収帯が前記第1の光吸収帯と実質的に相補的な第2の光吸収帯域を有することを特徴と
する半導体ナノファイバー。金属被覆透明導電性基板を含む対向電極と、前記第2の光吸収材料
及び前記対向電極に接する電解質と、を備える。 前記半導体ナノ粒子層は、二酸化チタンナノ粒子を含み、前記半導体ナノファイバー層は、二
酸化チタンナノファイバーを含む、請求項1に記載の太陽電池。 前記第1の光吸収材料は、ルテニウム系色素であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電
。 前記第2の光吸収材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、フタロシアニン増感剤、
およびポルフィリン増感剤を含む他の有機染料からなる群から選択される、請求項1に記載の
太陽電池。 前記半導体ナノファイバーは、少なくとも20nmの平均直径を有する、請求項1に記載の太陽電池。 前記半導体ナノファイバーの平均直径は、30nm~100nmの範囲にあることを特徴とする請求項5
に記載の太陽電池。 前記第2の光吸収材料は、拡散領域および急冷領域を含む、請求項1に記載の太陽電池。 前記電解質は、ヨウ化物/三ヨウ化物イオンおよびコバルトⅡ/ Ⅲイオンのうちの1つを含む液
体である、請求項1に記載の太陽電池。 前記第1の光吸収材料は、前記半導体ナノファイバーの伝導帯のエネルギー準位よりも高いエネ
ルギー準位を有し、前記第2の光吸収材料は、前記半導体ナノファイバーの伝導帯のエネルギー
準位よりも高いエネルギー準位を有する、請求項1に記載の太陽電池。第1の光吸収材料のエネ
ルギー準位。 前記第2の光吸収材料は、少なくとも5nmの厚さを有する、請求項1に記載の太陽電池。 前記第2の光吸収材料の厚さは、10nm~50nmの範囲にある、請求項11に記載の太陽電池。 前記第1の光吸収材料は、400nm~550nmの波長範囲の光波長を吸収し、前記第2の光吸収材料
は、550nm~700nmの波長範囲の光を吸収する、請求項1に記載の太陽電池。
図3aは薄いCuPcシェルを有するN719 / CuPc増感TiO 2ナノファイバー光アノードを用いたDSSCの正
孔移動プロセス図
図3bは、より厚いCuPcシェル保有N719 / CuPc増感TiO 2ナノファイバー光アノードを用いたDSSCの
ホール移動プロセス
図4は、CuPcの励起状態を消滅させる電解質の概略図と励起子濃度と、N719からN719に近づくまでの
距離との関係図
図5は、CuPc / TiO 2の光アノードを有するデバイスの光電流密度対電圧(J-V)特性のグラフ
図6aは、CuPcコーティングなしのTiOナノファイバーを示す。また、図6b、図6cおよび図6d
は、それぞれ20nm、30nmおよび40nmのCuPc堆積厚さを有するN719増感TiOナノファイバの図示
図7aは、CuPc層のコーティングの前にN719で増感されたTiOナノファイバの走査型電子顕微鏡(SE
M)画像写真
図7bは、コア-シェル構造の増感TiOナノファイバー上にCuPc層が堆積された後のTiOナノファイバ
ーのSEM画像写真
図7cは、CuPc層が増感されたTiO 2ナノファイバー上にシェル様構造で被覆された後のTiO 2ナノフ
ァイバーの透過型電子顕微鏡(TEM)画像写真
図8aは、N719 / TiO 2、CuPc / TiO 2、CuPc / N719 / TiO 2構造を有する光アノードの吸収スペクトル
図8bは、CuPc及びN719 / TiO 2の発光スペクトル
図9は、CuPc層を有するDSSCデバイスと、CuPc層を有するDSSCデバイスの光電流密度 - 電圧(J-V)
特性図
図10は、CuPc(30nm)を用いた場合と用いない場合のDSSCの波長に対するEQEを図。 30nmのCuPcによ
って引き起こされるEQE添加(ΔEQE)、およびTiO 2上のCuPcの対応する吸収スペクトル
図11図は、様々な厚さのCuPcを有するDSSC装置の光起電力特性を示す図――図11a:PCE対CuPcの様
々な厚さを示すグラフ。図11b:CuPcの種々の厚さに対するJ scを示すグラフ。図11c:CuPcの種々の
厚さに対するVocを示すグラフ。図11d:CuPcの種々の厚さに対するFFを示すグラフ
図12は、ナノ結晶TiO 2色素増感太陽電池の動作の一般原理図
※ その他の関連特許事例
✓ US9608159B2 Method of making a tandem solar cell having a germanium perovskite/germanium thin-film
ゲルマニウムペロブスカイト/ゲルマニウム薄膜を有するタンデム型太陽電池の製造方法
✓ US9653696B2 Tin perovskite/silicon thin-film tandem solar cell
錫ペロブスカイト/シリコン薄膜タンデム太陽電池
読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』
33.目に見えないものと同じくらい、目に見えるものが好きだ
それからしばらくのあいだ、私と秋川まりえは二人で外の鳥たちの聯りに耳を澄ませていた。
窓の外には見事な秋晴れの空か広がっていた。そこには一筋の雲も見えなかった。私たちはそれ
ぞれの内側で、それぞれの考えをとりとめもなく巡らせていた。
「あの裏返しになっている絵は何なの?」と少し後でまりえが私に尋ねた。
彼女が指さしているのは、白いスバル・フォレスターの男を描いた(描こうとしていた)油絵
だった。私はそのキャンバスを見えないように、裏返しにして壁に立てかけておいたのだ。
「描きかけの絵だよ。ある男の人を描こうとした。でも中断したままになっている」
「見せてもらっていい?」
「いいよ。まだ下絵の段階だけど」
私はキャンバスを表向きにしてイーゼルに載せた。まりえは食堂椅子から立ち上がり、イーゼ
ルの前にやってきて、腕組みをして正面からその絵を眺めた。絵を前にすると、彼女の目は再び
鋭利な輝きを取り戻した。その唇はまっすぐ堅く結ばれた。
絵は赤と緑と黒の絵の其だけで構成され、そこに描かれるはずの男は、まだ明確な輪郭を与え
られていなかった。木炭で描かれた男の姿はもう絵の其の下に隠されている。彼はそれ以上の肉
づけを拒絶し、色づけを拒否していた。しかしその男がそこにいることが私にはわかっていた。
私は彼の存在の根幹をそこに捉えている。海中の網が姿の見えない魚を捕えているように。その
引きずり出し方を私は見つけ出そうとし、相手はその試みを阻止しようとしていた。そんな押し
引きの中で中断がもたらされたのだ。
「ここで止まってしまった?」とまりえは尋ねた。
「そうだよ。下絵の段階からどうしても先に進めなくなった」
まりえは静かに言った。「でもこれでもう完成しているみたいに見える」
私は彼女の隣に立ち、同じ視点からその絵をあらためて眺めた。彼女の目には闇の中に海んで
いる男の姿が見えているのだろうか?
「これ以上、この絵に手を加える必要はないということ?」と私は尋ねた。
「うん。これはこのままでいいと思う」
私は小さく息を呑んだ。彼女が口にしたのは、白いスバル・フォレスターの男が私に向かって
語りかけたのとほとんど同じ内容だったからだ。絵はこのままにしておけ、これ以上この絵に手
を触れるんじやない。
「どうしてそう思うの?」と私はまりえに重ねて尋ねた。
まりえはしばらく返事をしなかった。またひとしきり集中して絵を眺めてから、腕組みをして
いた両手をほどき、両方の頬にあてた。そこにある火照りを冷ますかのように。それから言った。
「これはこのままでもう十分な力を持っている」
「十分な力?」
「そんな気がする」「それはあまり善くない種類の力なんだろうか?」
まりえはそれには答えなかった。彼女の両手はまだ頬にあてられて
「ここにいる男のひとのことを、先生はよく知っているの?」
私は首を振った。「いや。実を言うと何も知らないんだ。少し前に一人で長い旅をしていると
き、遠くの町でたまたま出会った人だ。口をきいたわけでもない。名前も知らない」
「ここにあるのが善い力なのか、善くない力なのか、それはわからない。そのときによって善く
なったり、悪くなったりするものかもしれない。ほら、見る角度によっていろいろちがって見え
てくるものみたいに」
「でもそれを絵の形にしない方がいいと君は思うんだね?」
彼女は私の目を見た。「もし形にして、もしそれが善くないものだったとしたら、先生はどう
するの? もしそれがこちらに手を伸ばしてきたとしたら?」
たしかにそうだ、と私は思った。もしそれが善くないものだったとしたら、もしそれが悪その
ものだったとしたら、そしてもしそれがこちらに手を伸ばしてきたとしたら、私はいったいどう
すればいいのだろう?
私は絵をイーゼルからおろし、裏返しにして元あった場所に戻した。その画面が視界から取り
除かれたことで、それまでスタジオの中に張り詰めていた緊張が急にほどかれたような感触があ
った。
この絵をしっかりと梱包して、屋根裏にしまい込んでしまうべきなのかもしれない、と私は思
った。ちょうど雨田典彦が『騎士団長殺し』を人目につかないようにそこに隠していたのと同じ
ように。
「じゃあ、君はあの絵についてはどう思う?」と私は壁にかかった雨田典彦の『騎士団長殺し』
を指さして言った。
「あの絵は好き」と秋川まりえは迷うことなく答えた。「誰のかいた絵なの?」
「描いたのは雨田典彦。この家の持ち主だよ」
「この絵は何かをうったえかけている。まるで鳥が挟い檻から外の世界に出たがっているみたい
な、そんな感じがする」
私は彼女の顔を見た。「鳥? それはいったいどんな鳥なんだろう?」
「どんな鳥なのか、どんな檻なのか、わたしにはわからない。その姿かたちもよく見えない。た
だそういうことを感じるだけ。この絵はわたしにはたぶん少しむずかしすぎるかもしれない」
「君ばかりじゃない。たぷんぼくにもむずかしすぎる。でも君が言うように、作者には何かしら
人々に訴えたいものごとがあり、その強い思いをこの両面に託している。ぼくもそう感じる。で
も彼がいったい何を訴えようとしているのか、それがどうしても理解できない」
「だれかがだれかを殺している。強い気持ちを持って」
「そのとおりだ。若い男は決意のもとに、相手の胸を剣でしっかり刺し貫いている。その一方で
殺される方は、自分か殺されかけていることにただただ驚いているみたいだ。まわりの人々はそ
の成り行きに息を呑んでいる」
「正しい人殺しというものはあるの?」
私はそれについて考えた。「わからないな。何か正しいか正しくないかというのは、基準の選
び方で追ってくるからね。たとえば死刑を、社会的に正しい人殺しだと考える人は世間にたくさ
んいる」
あるいは暗殺を、と私は思った。
まりえは少し間を置いてから言った。「でもこの絵は、ひとが殺されかけて、たくさんの血が
流されているのに、ヒトを暗い気持ちにさせない。この絵はわたしをどこか別のところにつれて
いこうとしている。正しいとか正しくないとか、そういうキジュンとは違う場所に」
その日結局、私は一度も絵筆を手に取らなかった。明るいスタジオの中で、秋川まりえと二人
でとりとめなく話をしただけだった。私は話をしながら、彼女の顔の表情の変化や、様々な仕草
をひとつひとつ脳裏に取り込んでいった。そのような記憶のストックが私の描くべき結の、いわ
ば血肉となる。
「今日は先生は何も描かなかった」とまりえは言った。
「そういう日もある」と私は言った。「時間が奪っていくものもあれば、時間が与えてくれるも
のもある。時間を味方につけることが大事な仕事になる」
彼女は何も言わず、ただ私の目を見ていた。窓ガラスに顔をつけて、家の中をのぞき込むみた
いに。時間の意味について考えているのだ。
「正しい人殺しというものはあるの?」のまりえの鋭い言葉が脳の最深部に浸潤するかのようにわたしを貫い
たところで、今夜はここで中断する。
この項つづく
時には母のない子のように
だまって海をみつめていたい
時には母のない子のように
ひとりで旅に出てみたい
だけと心はすくかわる
母のない子になったなら
だれにも屍を話せない
時には母のない子のよう
長い手紙を書いてみたい
時には母のない子のよう
大きな声で叫んでみたい
だけと心はすくかわる
母のない子になったなら
だれにも屍を話せない
時には母のない子のよう
時には母のない子のように
時には母のないこのように
作詞 寺山 修司
作曲 田中未 知
唄 カルメンーマキ
野に咲く花の名前は知らない
だけども野に咲く花が好き
ぼうしにいっぱいつみゆけば
なぜか涙が 涙が出るの
戦争の日を何も知らない
だけど私に父はいない
父を想えば あヽ荒野に
赤い夕陽が夕陽が沈む
いくさで死んだ悲しい父さん
私はあなたの娘です
二十年後のこの故郷で
明日お嫁にお嫁に行くの
見ていて下さいはるかな父さん
いわし雲とぶ空の下
いくさ知らずに二十才になって
嫁いで母に母になるの
戦争は知らない
作詞 寺山 修司
作曲 加藤 ヒロシ
唄 フォーククルセダーズ
茹アスパラガスのローストクルミ添え