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雚読奜日

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     僖公二十䞃・八幎城濮じょうがくの戊い  晋の文公制芇の時代   

                            

     ※ 文公の恩返し晋は楚を牜制するため、曹を枚挙した。その戊いの挿話が
      ここに蚘録されおいる。

    ※ 曹を包囲した晋軍は、曹の城門近くたで攻め寄せお激戊を亀え、倚数の職
      死者を出した。曹偎では、これらの死䜓を城壁の䞊にならべお晒しものに
      した。これには䞉日の文公玉頭を悩たしたが、賎民のうたうはやり唄を耳
      にしお教えられるずころがあった。

      「墓堎にに移るず人に蚀え」

      さっそく行の軍勢は基地に移動した。墓をあばかれるのではあるたいか、
      曹軍はこの報埩を恐れお、晋の兵士の死䜓を、あらためお棺に収め、城門
      から出しお行軍に返した。この虚に乗じ、晋軍は攻撃に出、䞉月䞙午の日
      に曹城をおずしたのである。 さお、文公は曹郜に入るず、䜕よりも先に
      曹の䞍圓人事の責任を远求した。䞉癟人もの倧倫を任甚しながら、僖負矈
      きふきほどの人物を登甚しなかったのはなぜか、文公は倧倫䞉癟人ひ
      ずりひずりの成瞟衚提出を呜じた。同時に自軍に察しおは、僖負矈きふ
      きの家ぞの立入りを犁じ、かれの家族の安党を保障した。か぀お曹滞圚
      䞭にかれからうけた恩矩に報いたのである。

      魏犚ぎしゆう、顛頡おんけ぀の二人かれらは文公の亡呜に同行
      したが、この凊眮に䞍満を持った。二人は、「われわれの功瞟を無芖し
      おおいお、䜕か恩返しだ」ず、僖負矈の屋敷を焌打ちにした。そのさい、
      魏犚は胞に傷を負った。文公は、軍埋に照らしお魏犚を凊刑しようずした
      が、䞀方では人材の損倱を惜しむ気持も働いた。そこで、ひずたず芋舞い
      の䜿者を掟遣しお傷の深さを芋ずどけさせた。回埩の芋蟌みがないような
      ら凊刑しおも惜しくないず考えたのである。魏犚は、纏垯姿で䜿者ず䌚っ
      たが、「おかけさたでこのずおり」ず蚀っお、ぎょんぎょん螊りはねお芋
      せた。そこで文公は魏犚の凊刑をずりやめ、顛頡の方だけ凊刑しお、軍䞭
      にその眪をふれさせた。かれの埌任ずしお戎右には、舟之僑しゆうしき
      ようもず虢の臣、閔公二幎晋に奔るをあおた。

      〈僖負矈〉 亡呜䞭の文公に璧を莈っおいる。
 

  

 

● 月日、豊埌氎道地震解析



【地震予知工孊向䞊に重力図は利甚できないか】

通垞、重力を怜蚎する際に、海抜メヌトルから枬定点たでに平均的な岩石があるず仮定し
お、その岩石による匕力の圱響を取り陀く補正を行う。「ブヌゲヌ異垞」ずは、このような
補正を行った重力異垞のこずさす。この時に仮定する岩石の密床を「仮定密床」ず呌んでい
る。このように、重力倀の枬定方法に、「絶察枬定」ず「盞察枬定」の通りあり、「絶察
重力蚈」ず呌ばれる倧型の装眮を䜿った粟密な絶察重力倀が、「重力基準点」ずしお囜土地
理院により公開されおいるが、重力基準点の数はごく限られる䞊、枬定も倧掛かりなので、
絶察枬定の補完に陞䞊重力蚈による盞察枬定が行われおいる。これは、点間の重力の差を
求め盞察的に重力倀を枬定するもので、枬定機噚が小型で容易に屋倖での枬定ができる。重
力の枬定法には、人工衛星や飛行機によるものもあり、いずれも広域の重力分垃を枬定でき
るが、分解胜が䜎く、粟床ずいう面では絶察重力蚈や陞䞊重力蚈に倧きく劣る。しかし、分
解胜粟床を向䞊するこずで重力蚈の地殻倉動デヌタを地震予知工孊システムに組蟌むこず
で粟床を䞊げるこずができないかず考える。珟に、米航空宇宙局(NASA)ずドむツ航空宇宙
センタ(DLR)の共同ミッションのGRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)は機胜し
おいる䞋図ダブクリ参照。たた、

 GSJ

たた、今月日、産業技術総合研究所らの研究グルヌプが、断局の䜍眮や地䞋に眠る鉱物
資源の発芋、芳光開発に貢献する重力枬定マップ地䞋構造が掚定できる「重力図」の和歌
山地域版が完成したず公衚しおいるように、断局の䜍眮や地䞋の鉱物資源の有無が掚定し、
地域別重力図ずしお初のデゞタル版の公開により、りェブサむトから誰でも利甚可胜で、防
灜、枛灜、資源探査、芳光開発ぞの貢献できるずする。この成果の第は、デゞタルデヌタ
化したこずで、仮定密床を遞択でき、芋たい地域や堎所の実態に即した重力図を簡単に衚瀺
できる芋える化こである。䟋えば、火山地域では仮定密床を2.3 g/cm3よりも重い2.67
g/cm3に倉曎しお衚瀺したり、逆に、密床の䜎い火山性堆積物で地衚面が芆われおいるカルデ
ラのある堎所では軜い2.0 g/cm3に倉曎しお衚瀺したりできる䞋立䜓図参照。䜵せお、现
かい地名は衚瀺しない、枬定した地点は衚瀺しないずいったこずもでき、重力倀の分垃だけを芋るこ
ずもできる。さらに、重力図の説明文䞭では重力倀の倉化の倧きさを色で衚瀺するこずもで
き、重力倀が倉化しおいる堎所やその床合いが色によっお䞀目瞭然になずなる。 

 Absolute gravimete

June 23, 2017 

 

● 読曞録高橋掋䞀 著「幎金問題」は嘘ばかり 

         第章 これだけで幎金がほがわかる「䞉぀のポむント」

 著者は、序章で「幎金」を䞋蚘の぀に集玄し、今回はその説明を掲茉する。その埌はで
きる限り匕甚を掲茉せず、各章節ごずに芁玄評䟡しおいく。

   ☑ 幎金は「保険」である
   ☑「四〇幎間払った保険料」ず「二〇幎間で受け取る幎金」の額がほが同じ
   ☑「ねんきん定期䟿」は囜からのレシヌト

            幎金に぀いお「䞉぀のポむント」を知っおいるこずが倧切

    それに察しお、䞖の䞭には「死亡保険」ずいうものもありたす。「生呜保険」ずいう
 呌称のほうが通りがいいかもしれたせんが、぀たりは、早く死んでしたったずきに備え
 る保険です。死亡保険は、䞇が䞀、若くしお䞍枬の死を迎えおしたった堎合に、遺族に
 保険金が䞋りるかたちずなりたす。
  この保険に぀いおは、あたり説明は芁さないでしょう。幎金保険のような長寿の堎合
 ずは逆に、若くしお亡くなっおしたった堎合、特に扶逊する家族がいる堎合などは、残
 された家族が倧いに困っおしたいたす。自分が死んでしたったがために、残された家族
 が路頭に迷うようなこずがあっおはいけない子䟛たちに、お金がないから進孊できな
 いなどずいった苊境に陥っおほしくない。それに備えるために掛けおおくのが「死亡保
 険生呜保険」です。

 「幎金保険」の堎合は、早くなくなった方が支払った保険料が、長生きした方に支払わ
 れるかたちでした。䞀方、「死亡保険」の堎合は、無事に満期たで生きるこずができた
 人が支払った保険料が、亡くなった人の遺族に支払われるこずになりたす。
  普通に考えれば、「死亡保険」の堎合、満期である六〇歳前埌たで存呜する人のほう
 が圧倒的倚数です。逆に、満期たでに亡くなる人の数は、圧倒的に少なくなりたす。 
  そのため、支払う保険料に察しお、䞇が䞀の堎合にもらえる保障額は倚額になりたす
 満期たで生きのびた人が支払った保険料を、亡くなった人の遺族に支払うのですから、
 ざっくりいっお、毎月䞀䞇円皋床を四〇幎ほど支払うだけで、぀たり「䞀䞇円×十二ヵ
 月×四〇幎」四八〇䞇円皋床を支払うだけで、亡くなった堎合に数千䞇円もらえたり、
 終身保障が付いたりする保険商品が、䞖の䞭に数倚く出回っおいるのは、そのためです。
 「幎金保険」ず「死亡保険」の違いをたずめおみるず、

  幎金保険長生きするわからないリスク
  死亡保険早死にするわからないリスク

 ずいうこずになるでしょう。長生きした堎合に備えおおくのが、「幎金保険」。死亡し
 た堎合の遺族の生掻のために備えおおくのが「死亡保険生呜保険」です。こうした
 保険の仕組みをわかっおいれば、「囜が無条件に老埌を保障しおくれるもの」「幎金は
 犏祉である」ずいうむメヌゞが倉わっおくるのではないかず思いたす幎金保険は、自
 分たちの出した保険料を分け合う仕組みですある条件の䞋でもらえる「保険」であっ
 お、䞀埋にもらえるものではない、ずいうこずです。

              第章 「幎金保険」ず「死亡保険」は、どう違うのか

※ 幎金保険ねんきんほけんずは、

保険の仕組みを䜿い、保険料の拠出が前提ずなっおいる幎金制床。䞻ずしお私的幎金のこず
を蚀うが、公的幎金の仕組みを指すこずもある。先進囜の公的幎金はほずんどが保険料の拠
出を前提ずする制床を採甚しおおり、財源を皎のみで絊付する制床は被害者補償の幎金など
察象者が狭く限定される。公的な瀟䌚保険の堎合、医療保険・劎灜保険・雇甚保険・介護保
険ず䞊べお論じられる堎合が倚い。

※ 死亡保険(しがうほけんずは、

被保険者が死亡されたずきに保険金が支払われる保険のこず。生呜保険ずも呌ばれる。以䞊
のこずを敎頓し、次の様に第章のこの節を結ぶ。

  幎金はすべお「保険」です。公的幎金も、私的幎金も同じです。
  私的幎金ずは、䌁業幎金、確定拠出幎金、個人幎金保険䌚瀟や投資信蚗䌚瀟、蚌刞
 䌚瀟などが販売しおいる「幎金保険」商品などが䞀般的でしょう。私的幎金の䞭には
 貯蓄性の高い幎金もありたすが、あくたでも「保険」です。幎金は、どこからどう切り
 取っおも「保険」でしかおりたせん。保険は掛け金を支払っおおくこずによっお、いざ
 ずいうずきに保障を受け取るものです。

  では、どのくらいの保障を受けられるのでしょう。
  保険の原理では、掛け捚おになる人が倚ければ、保障額は倧きくなりたす。先ほどお
 話ししたように、「死亡保険」の堎合、倧半の人は死亡せずに生き延びお、その人たち
 が支払った分か亡くなった人の遺族に絊付されたすので、保障額は倧きくなりたす。反
 察に、掛け捚お郚分が少ない保険商品は、保障額が小さくなりたす。
  ちなみに、このような「掛け捚おの郚分」ず「保障額」のバランスがどのようになる
 かを粟密に蚈算しなければ、ずおもではありたせんが保険の仕組みは぀くれたせん。確
 率・統蚈の考え方今手法を駆䜿しお、このような蚈算をしおいくのが、保険数理の䞖界
 です
  プロロヌグで、倧孊時代に理孊郚数孊科で孊んでいた私が、卒業するずきに厚生省か
 ら「幎金数理官になりたせんか」ず誘われた話をご玹介したしたが、それは、保険数理
 がそのような䞖界だからなのです。
  そのような保険数理の现かい蚈算は暪に眮いおおくこずにしお、導き出される結論を
 単玔にたずめれば、次のようになりたす。

  《保険の原理》

  ・「掛け捚お」郚分が倧きい↓保障額が倧きい
  ・「掛け捚お」郚分が小さい↓保障額が小さい

  同じ保険に入る人の堎合、掛け金の額によっお保障額が倉わりたす。掛け金をたくさ
 ん出した人は、保障額が倚くなり、掛け金の少ない人は保障額が少なくなりたす。幎金
 も「保険」ですから、玍めた保険料が倚い人は、将来受け取る保障額が倚くなり、玍め
 た保険料が少ない人は受け取る保障額が少なくなりたす

  《保険の原理》

  ・保険料を倚く玍めた人↓保障額幎金倚い
  ・保険料を少し玍めた人↓保障額幎金少な
  ・保険料を玍めなかった人↓保障幎金なし

  公的保険は䟋倖あり

              第章 「幎金保険」ず「死亡保険」は、どう違うのか

 

  囜の公的幎金に぀いお、「こんなに幎金が少ないのか。これでは生掻しおいけない。
 囜は䜕をやっおいるんだ」ず批刀する人がいたす。しかし、保険原理からいえば答えは
 単玔です。受け取る保障額が少ないのは、玍めた保険料が少ないからです。
  二〇䞀六幎十䞀月に、幎金の受絊資栌を埗るために必芁な保険料の玍付期間を二五幎
 から十幎に短瞮する改正幎金機胜匷化法が囜䌚で成立したした 二〇䞀䞃幎八月斜行
 ぀たり、これたでは幎金を二五幎払っおいなければもらえなかったものを、十幎支
 払っおいれば受絊資栌かおるように倉曎したのです先に説明した、「消えた幎金問題」
 ぞの察凊ずしおの意味あいがありたす。
 
  この堎合、四〇幎以䞊保険料を玍めた人ず十幎しか保険料を玍めおいない人が、ずも
 に幎金をもらえるこずになりたすしかし、この䞡者は、玍めた保険料の総額が違いた
 す。十幎しか保険料を玍めおいない人は、玍めた保険料が少ないので、受け取れる額も
 少なくなりたす。「こんな額では生掻しおいけない」ず思うかもしれたせんが、保険料
 負担額が少ないず幎金絊付額も少なくなっおしたうのです
  保険原理に基づいお考えれば、珟圹時代に玍める保険料の負担をなるべく抑えようず
 すれば、それに連勀しお、老霢になっお受け取る幎金額も䜎くなりたす。たた、原則的
 には、保険料を玍めなかった人は幎金をもらえたせん。

  しかし、公的保険の堎合は䟋倖がありたす。日本の堎合、所埗が䜎くお保険料を玍め
 るこずができない人には、保険料免陀の制床がありたす。たた、第号披保険者も、保
 険料を玍める必芁かおりたせん
  第号披保険者ずいう蚀葉を聞き慣れない人もいらっしやるこずでしょう。日本の囜
 民幎金では、加入者は䞉皮類に分けおられおいたす。日本幎金機構の甚語解説に埓えば、
 次のような定矩になりたす。

  ・第号披保険者䞀二〇歳以䞊六〇歳未満の自営業者・蟲業者ずその家族、孊生、無
   職の人等、第号披保険者、第号披保険者でない者
  ・第号披保険省二氏問䌚瀟員や公務員など厚生幎金の加入者この人たちは、厚生
   幎金の加入者であるず同時に、囜民幎金の加入者にもなりたす
  ・第号披保険者こ早生幎金に加入しおいる第号披保険者に扶逊されおいる二〇歳
   以䞊六〇歳未満の配偶者幎収が䞀定金額未満の人

  ぀たり、第号披保険者ずは、簡単にいっおしたえば「サラリヌマンや公務員の配偶
 者で幎収が䞀定金額未満の人わかりやすい䟋が専業䞻婊《䞻倫》」ずいうこずです。
  なぜ、そのようになっおいるかずいえば、日本の囜が、「䜎所埗者や専業䞻婊䞻倫
 は、瀟䌚党䜓ずしお支えるべき存圚である」ずいう考え方をずっおいるからです。その
 考え方に基づき、このような方々の分の囜民幎金の保険料は、その他の第号被保険者
 や第号披保険者が肩代わりしたり、囜庫から負担金を出すこずによっお支えおいるの
 です。
  たた、歎史をさかのがるならば、保険料を玍めなくおも幎金を受け取れる堎合は、ほ
 かにもありたした。それは、囜民皆幎金制床発足圓初に、すでに受絊資栌のある高霢者
 だった方々です。さすがにこのような高霢者に察しお、「あなたは保険料を払っおいな
 いので、絊付したせん」ずいうわけにはいきたせんでした。圓時の高霢者は、保険料を
 払っおいなくおも、幎金を受け取るこずができたのです

  しかし、それらのケヌスは特䟋であり、基本的には、玍めた保険料の額に連動しお、
 老埌に受け取れる幎金額が決たっおいたす。いうたでもありたせんが、民間の私的保険
 は、保険料を玍めない人には、支絊はありたせん。

         第章 公的幎金には、保険料を払わず幎金をもらえる䟋倖がある


                                 この項぀づく

 

       

読曞録村䞊春暹著『階士団長殺し 第Ⅱ郚 遷ろうメタファヌ線』   

    あれではずおもむルカにはなれない

  日曜日の朝がやっおくるたでには、秋川たりえの肖像画のために甚意された新しいキャンバス
 に、自分がこれからどのような絵を描いおいくかずいう考えはほがたずたっおいた。いや、具䜓
 的にどんな絵を描くこずになるのかは、ただわからない。しかしどのように描き始めればいいか
 はわかっおいた。たず最初に、真っ癜なキャンバスの䞊にどの色の絵の具を、どの筆でどの方向
 に匕けばいいのか、そうしたアむデアが頭の䞭にどこからずもなく生たれ出おきお、それがやが
 お足堎を埗お、少しず぀私の䞭に事実ずしお確立されおいく。私はそのプロセスを愛した。

  冷え蟌んだ朝だった。冬がすぐそこに近づいおいるこずを教えおくれる朝だ。コヌヒヌを぀く
 り、簡単に朝食を枈たせるず、スタゞオに入っお必芁な画材を敎え、むヌれルに茉せられたキャ
 ンバスの前に立った。でもそのキャンバスの前には、鉛筆で雑朚林の䞭の穎を现密に描いたスケ
 ッチブックが眮かれおいた。数日前の朝、これずいう意図もなく目的もなく、気が向くたたに描
 いたスケッチだ。自分かそんな絵を描いたこず自䜓を、私は忘れおしたっおいた。
  でもむヌれルの前に立っお、そのスケッチを眺めるずもなく眺めおいるうちに、私はそこに描
 かれた光景に次第に心を惹かれおいった。雑朚林の䞭に人知れず口を開けた謎めいた石宀。呚囲
 の濡れた地面ず、そこに積もった色ずりどりの萜ち葉。暹本の枝のあいだから筋ずなっお差し蟌
 む陜光。そんな情景が私の脳裏に、圩色された画面ずなっお浮かびあがっおきた。想像力が起き
 䞊がり、具䜓的な现郚がひず぀ひず぀埋められおいった。私はそこにある空気を吞い蟌み、草の
 匂いを嗅ぎ、鳥たちの声を耳にするこずができた。

  倧型のスケッチブックに鉛筆で现密に描かれたその穎は、たるで私を䜕かに――あるいはどこ
 かに――匷く誘っおいるようだった。その穎は私に描かれるのを求めおいるのだ、私はそう感じ
 た。私が颚景雚を描きたいず思うのはずおも珍しいこずだった。私はなにしろこの十幎近く人物
 雚しか描いおこなかったのだ。たたには颚景雚も悪くないかもしれないな。「雑朚林の䞭の穎」。
 この鉛筆画はそのための䞋絵になるかもしれない。
  私はそのスケッチブックをむヌれルから䞋ろし、ペヌゞを閉じた。むヌれルの䞊には、真っ癜
 な新しいキャンバスだけが残った。これから秋川たりえの肖像画が描かれるはずのキャンバスが。



  十時少し前に、い぀ものようにブルヌのトペタ・プリりスが物静かに坂道を䞊っおきた。ドア
 が開き、そこから秋川たりえず、叔母の秋川笙子が降りおきた。秋川笙子は䞈の長い濃いグレヌ
 のヘリンボヌンのゞャケットに、淡いグレヌのりヌルのスカヌト、そしお暡様の入った黒いスト
 ッキングをはいおいた。銖にはミッ゜ヌニのカラフルなスカヌフが巻かれおいた。シックで郜䌚
 的な晩秋の装いだった。秋川たりえは倧振りなスタゞアム・ゞャンパヌにョットパヌカ、穎の開
 いたブルヌゞヌンズ、コンバヌスの玺色のスニヌカヌずいう、この前ずだいたい同じような栌奜
 だった。垜子はかよっおいない。空気は肌寒く、空はうっすらず雲に芆われおいた。

  簡単な挚拶が終わるず、秋川笙子は゜ファに腰を䞋ろし、䟋のごずくバッグから厚い文庫本を
 取りだし、それに意識を集䞭した。私ず秋川たりえは、圌女をあずに残しおスタゞオに入った。
 い぀ものように私は朚補のスツヌルに腰掛け、たりえは簡玠な食堂の怅子に座った。二人のあい
 だにはニメヌトルほどの距離があった。圌女はスタゞアム・ゞャンパヌを説いで畳んで足䞋に眮
 いた。ペットパヌカも説いだ。その䞋にはシャツを二枚重ね着しおいた。グレヌの長袖のシャ
 ツの䞊に、玺色の半袖のシャツを重ねお着おいた。胞の膚らみはただない。圌女はたっすぐな黒
 い 髪を指で槐いた。

 「寒くない」ず私は尋ねた。スタゞオには旧匏の石油ストヌブがあったが、火は぀けおいなか
 った。

  たりえはただ小さく銖を振った。別に寒くはないずいうこずだ。

 「今日からキャンバスに絵を描き始める」ず私は蚀った。「ずいっおも、君はずくに䜕もしなく
 おいい。ただそこに座っおいおくれればいい。あずはがくの問題だから」
 「䜕もしないわけにはいかない」ず圌女は私の目を芋぀めながら蚀った。
  私は膝の䞊に䞡手を眮いたたた圌女の顔を芋た。「それはどういう意味だろう」
 「だっお、わたしは生きおいるし、呌吞もしおいるし、いろんなこずを考える」
 「もちろん」ず私は蚀った。「君はもちろん奜きなだけ呌吞をすればいいし、奜きなだけものを
 考えればいい。がくが蚀いたいのは、君がずくべ぀に䜕かをする必芁はないずいうこずだよ。君
 が君であっおくれれば、がくの方はそれでいいんだ」
 しかしたりえはなおも私の目をたっすぐ芋おいた。そういう簡単な説明ではずおも玍埗できな
 いずいうように。

 「わたしは䜕かをしたいの」ずたりえは蚀った。
 「たずえばどんなこずを」
 「先生が絵を描くのを助けたいの」
 「それはずおもありかたいこずだけれど、でも助けるっお、どんな颚に」
 「もちろんセむシン的に」
 「なるほど」ず私は蚀った。しかし圌女がどのようにセむシン的に私を助けおくれるのか、具䜓
 的には思い浮かべられなかった。

  たりえは蚀った。「もしできるなら、わたしは先生の䞭に入り蟌みたい。わたしの絵を描いお
 いるずきの先生の䞭に。そしお先生の目からわたしを芋おみたい。そうすれば、わたしはわたし
 のこずをもっず深く理解できるかもしれない。そしおそうするこずで、先生もわたしのこずをも
 っず深く理解できるかもしれない」
 「そうなるずずおもいいず思う」ず私は蚀った。
 「ほんずうにそう思う」
 「もちろんほんずうにそう思うよ」
 「でもそれは堎合によっおはけっこう怖いこずかもしれない」
 「自分をよりよく理解するこずが」

  たりえは肯いた。「自分をよりよく理解するためには、もうひず぀なにか別のものをどこかか
 らひっぱっおこなくおはならないずいうこずが」
 「なにか別の、第䞉者的な芁玠が加わらないこずには、自分自身に぀ ずいうこずかな」
 「第䞉者的な芁玠」
 いお正確な理解はできない
  私は説明した。「぀たりずずいう関係の意味を正しく知るには、ずいう別の芳点がひず
 ぀必芁になっおくるずいうこず。䞉点枬定」
  たりえはそれに぀いお考え、小さく肩をすくめるような動䜜をした。「たぶん」
 「そしおそこに加わる䜕かは、堎合によっおは怖いものであるかもしれない。それが君の蚀いた
 いこずなのかな」

  たりえは肯いた。

 「君はこれたでに、そういう怖い思いをしたこずがあるの」
 たりえはその問いには答えなかった。
 「もしがくが君を正しく描くこずができたら」ず私は蚀った。「君はがくの目で芋た君の姿を、
 君自身の目で芋るこずができるかもしれない。もちろんうたくいけば、ずいうこずだけれど」
 「そのためにわたしたちは絵を必芁ずしおいる」
 「そう、がくらはそのために絵を必芁ずしおいる。あるいは文章や音楜や、そういうものを必芁
 ずしおいる」
  うたくいけば、ず私は自分自身に向かっお蚀った。
 「絵に取りかかろう」ず私はたりえに蚀った。そしお圌女の顔を芋ながら、䞋絵のための茶色を
 こしらえた。そしお最初の絵筆を遞んだ。

  仕事は緩やかに、しかし滞りなく造んだ。私はキャンバスの䞊に秋川たりえの䞊半身を描いお
 いった。矎しい少女だったが、私の絵には矎しさはずくに必芁ずはされおいなかった。私が必芁
 ずしおいるのは、その奥に隠されおいるものだった。別の蚀い方をするなら、その資質が補償ず
 しお芁求しおいるものだった。私はその䜕かを芋぀け出し、画面に持ち蟌たなくおはならなかっ
 た。それは矎しいものである必芁はなかった。堎合によっおは、醜いものであるかもしれない。
 いずれにせよ蚀うたでもなく、その䜕かを芋぀けるためには、私は圌女を正しく理解しなくおは
 ならない。蚀葉やロゞックずしおではなくひず぀の造圢ずしお、光ず圱の耇合䜓ずしお圌女を把
 握しなくおはならなかった。

  私は意識を集䞭し、線ず色ずをキャンバスの䞭に積み重ねおいった。時には玠早く、時には時
 間をかけお泚意深く。そのあいだたりえは衚情をたったく倉えるこずなく、怅子の䞊に静かに座
 っおいた。しかし圌女が意志の力を匷くひず぀にたずめ、それをじっず保持しおいるこずが私に
 はわかった。そこに働いおいる力を私は感じ取るこずができた。「䜕もしないわけにはいかない」
 ず圌女は蚀った。そしお圌女は䜕かをしおいるのだ。おそらく私を肋けるために。私ずその十䞉
 歳の少女ずのあいだには、亀流のようなものがたぎれもなく存圚しおいた。

  私はふず効の手のこずを思い出した。䞀緒に富士の颚穎に入ったずき、冷ややかな暗闇の䞭で
 効は私の手をしっかり握り続けおいた。小さく枩かく、しかし驚くほど力匷い指だった。私たち
 のあいだには俯かな生呜の亀流があった。私たちは䜕かを䞎えるず同時に、䜕かを受け取っおい
 た。それは限られた時間に、限られた堎所でしか起こらない亀流だった。やがおは薄らいで消え
 おしたう。しかし蚘憶は残る。蚘憶は時間を枩めるこずができる。そしお――もしうたくいけば
 芞術はその蚘憶を圢に倉えお、そこにずどめるこずができる。ファン・ゎツホが名もない田舎の
 郵䟿配達倫を、集合的蚘憶ずしお今日たで生きながらえさせおいるように。




  二時間ほど、私たちは口をきくこずもなくそれぞれの䜜業に意識を集䞭しおいた。
  私は油で薄く溶いた単色の絵の具で、圌女の姿をキャンバスの䞊に立ち䞊げおいった。それが
 䞋絵になる。たりえは食堂怅子の䞊で、じっず自分癜身であり続けおいた。正午になるず遠くか
 らい぀ものチャむムの音が聞こえおきた。私はそのチャむムを耳にしお、定められた時刻が蚪れ
 たこずを知り、䜜業を終えた。パレットず絵筆を䞋に眮き、スツヌルの䞊で背筋を思い切り䌞ば
 した。そしおそこでようやく、自分かひどく疲れおいるこずに気が぀いた。私が倧きく息を぀い
 お集䞭力を解くず、たりえもそこで初めお身䜓の力を絵めた。

  私の目の前のキャンバスには、たりえの䞊半身の像が単色で立ち䞊げられおいた。これから描
 かれる圌女の肖像の、根幹ずなるべきストラクチャヌがそこに構築されおいた。ただおおたかな
 枠組みに過ぎないが、その骚栌の芯にあるのは、圌女を圌女ずしお成り立たせおいる熱源のごず
 きものだ。それはただ奥の方に隠されおいるが、そのおおよそのありかさえ抌さえおおけばあず
 はなんずでも調敎が぀く。そこに必芁な肉付けを加えおいくだけのこずだ。
  その描きかけの絵に぀いおはたりえは䜕も尋ねなかったし、芋せおほしいずも蚀わなかった。
 私もずくに䜕も語らなかった。䜕かを口にするには私は疲れすぎおいた。我々は無蚀のたたスタ
 ゞオを出お、居間に移った。居間の゜ファの䞊では、秋川笙子がただ熱心に文庫本を読んでいた。
 圌女は栞をペヌゞにはさんで本を閉じ、黒総の県鏡をはずし、顔をあげお私たちを芋た。そしお
 少しびっくりしたような衚情を顔に浮かべた。私たち二人はよほど疲れた顔をしおいたに違いな
 い。

 「お仕事は進みたしたか」ず圌女は少し心配そうに私に尋ねた。
 「今のずころは順調です。ただ途䞭の段階ですが」
 「それはよかった」ず圌女は蚀った。「もしお嫌でなかったら、私が台所に行っおお茶をいれお
 もかたいたせんか 実はもうお湯は沞かしおありたす。玅茶の葉がどこにあるかもわかりた
 す」

  私は少し驚いお秋川笙子の顔を芋た。圌女の顔には䞊品な埮笑みが浮かんでいた。

 「厚かたしいようですが、そうしおいただけるずずおもありかたいです」ず私は蚀った。実のず
 ころ、私は枩かい玅茶がずおも飲みたかったが、腰を䞊げお台所に行っお湯を沞かす気にはどう
 しおもなれずにいたのだ。それほど疲れお
 いた。絵を描いおそんなに疲劎したのはずいぶん久し
 よりのこずだ。それはもちろん心地よい疲匊感ではあったのだが。
  十分ほどで秋川笙子は、䞉぀のカップずポットを茉せたトレむを持っお居間に戻っおきた。
 我々はそれぞれ静かに玅茶を飲んだ。たりえは居間に移っおからただ二癟も口をきいおいなかっ
 た。ずきどき手を䞊げお、額にかかった前髪を払うだけだ。圌女は分厚いスタゞアム・ゞャンパ
 ヌを再び着蟌んでいた。たるで䜕かから身を守ろうずしおいるみたいに。

  我々はそこで静かに瀌儀正しく玅茶を飲みながら誰も音を立おなかった、日曜日の昌䞋が
 りの時間の流れにがんやりず身をたかせおいた。しばらくのあいだ誰も口をきかなかった。しか
 しそこにある沈黙はあくたで自然で、理にかなっおいた。それからやがお聞き芚えのある音が私
 の耳に届いおきた。それは最初のうちは、遠くの海岞に矩務的に気怠く寄せる、気乗りのしない
 圌の音のように聞こえた。それが次第に倧きくなり、やがお明瞭な連続的機械音になった。・
 リッタヌ八気筒の䜙裕ある゚ンゞンが、いずも優雅にハむオクタンの化石燃料を消費しおいる
 音だ。私は怅子から起ち䞊がっお窓際に行き、カヌテンの隙間からその銀色の車が姿を珟すのを
 芋おいた。

                                     この項぀づく

● こんなものがあればいいのになぁ

ミリグラム単䜍で蚈れるスパむス専甚の家庭甚の蚈量噚がほしいね。

 

   

↧

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