【融雪・除雪作業の自動化】
先日、北海道を中心とした豪雪をきっかけに「雪寒地帯事業」の根本的な対策事業を行わなければと
いう思いに至る(『車両用非接触給電工学』 2014.12.17)。日本は 国土の約60%が積雪寒冷の度
がはなはだしい、いわゆる雪寒地域であり、約4分の1にあたる人が暮らしている。その地域の人口
密度は、112人/km2と他国に類を見ないほどに高く、豪雪地域の積雪被害の経済損失は全国で年間2、
3千億円程度ではないかと仮定した(道路の除雪・凍結防止を中心として、「雪対策施設の整備概要-
札幌市」(2006.07.06)の除雪費用が167億円/年であり、その20倍程度)。意外と去られてい
ないのが日本が世界でもまれにみる豪雪地帯だ。ということに対する、無知さを知った(上/下図参
照)。つまり、除雪・融雪・消雪の作業、あるいは、凍結防止作業の諸事業を根本的になくすことが
できれば、自動対応かできれば、転落死・圧死・凍死が防げ、そこに割かれるパワー(人間力)は他
にシフトさせることが可能となり、それはまた、総合的な生産性を高めることに繋がる成長戦略の1
つに位置つけることができるはずだ(10年で3兆円前後の付加価値が生まれる)。
● 除雪・消融雪方法
除雪事業は、機械除雪を主体に消雪パイプや流雪溝などの施設を有効に利用し、冬期の道路交通を確
保するもの。産業の振興と安全で安心な暮らしのために、除雪機械の増強・更新を図りつつ、道路除
雪を行っている。また、歩道除雪には、歩行者の安全確保や効率的な歩道除雪に取り組まれている。
下図は 除雪・消融雪対策の概説図。
● 最新の融雪技術
・省力化と自動化に容易に対応できる融雷技術
雪国ではさまざまな克雪技術か実施されてきたが、人々の居住地域で問題となるのは積雪処理であり
人力に頼らざるを剤ない除雪作業。一方、過疎地域に住む人々の加齢叱のスビードは都市部のそれを
大きく上回っており、人口減と高齢化による二次災害の発生か大きな間題となっている。降雪や積雪
部を消融雪する「融雪技術」の重要性はますます増している。融雪技術は、化学的あるいは熱的な手
段により雪を溶解し融雲水として除去し、対象面の両凍結を防止したりするものであり、一度設備化
すれば長期にわたって施工地域の積雪や凍結を安定して防止でき、雪国で暮らす人々に安全で快適な
生活を保障できるものとなる。融雪枝衝の利点は、省力化や自動化運転に容易に対応できるところに
あるか、一方で設脈化や運転・維持コストか高いという不利もある。コスト的課題は、低コスト熱源の活用や
各種センサや気象情報とリンクさせた高精度自動運転の実現により克服されつつある。
● 地中熱・空気熱利用の融雪技術
従来より、道路の凍結や積雪を防止するために道路表面近くの地中に融雪発熱体を埋設し、発熱体に
は、電気ヒータ等が使用されているか、または地上表面近くの路盤上の舗装体(アスファルト層やコンクリ
ート層)に埋設した配管に温水を循環させる方法が融雪ないし凍結防止手段として使用されている。
ところで、従来の温水による融雪は、地表近くに埋設した融雪管に空気を熱源とする温水加熱を目的
とするヒートポンプが使用されているが、電源遮断時には融雪が不可能となり何らかの対策が必要と
する。また、空気熱を熱源とするため、空気熱の供給源であるヒーティングタワーの伝熱面の着霜が
熱効率の低下に繋がりデフロストが必要だが、このデフロストには一時融雪を停止する問題がある。
また、一時的な異常気象による豪雪に対処は従来の融雪手段では熱容量に余裕がなく柔軟性に欠ける
問題もある。また、積雪地帯では、融雪に融雪用の電力契約があるが、該契約に伴う特定時間帯にお
ける電力遮断(ピークカット)を余儀なくさせられ、そのため融雪を停止せざるを得ない問題もある。
ところで、近年、地球温暖化、オゾン層破壊、省エネルギ等の環境問題が叫ばれ、自然冷媒・自然エネルギの
有効利用も求められている中で、大地はどこにも存在する安全で自然の材料であり、特別なスペースを必要と
しない等の特徴を持っており、この地中熱の有効利用並びに大地の蓄熱性の利用推進から、地中熱の
利用に対する技術提案が盛んである。 例えば、先日の『温度差エネルギー変換工学』(2014.11.25)
では、積水化学が、下水熱利用システム「エスロヒート下水熱-管底設置型」を12月1日より発売、
下水道管路の底部に敷設した集熱管で下水熱を回収し、地上に送るシステムで、あらゆる管形状に対
応が可能で、下水の温度は年間を通して外気温よりも安定しているため、冬場は温熱源として、夏場
は冷熱源として活用でき、空気熱源ヒートポンプシステムと比較して電力コストを約30%削減でき
る技術を紹介掲載。管底に敷設した集熱管を通し下水の熱を熱媒体(水・不凍液)に回収し、この熱
媒体を循環させて地上部へ熱を供給する。「エスロヒート下水熱-らせん型」(上図参照)と同等の
採熱性能を有し、高い省エネ性と二酸化炭素の排出削減効果が期待できるものである。
【事例研究】路面融雪構造
路面融雪手段として、その熱源を地熱に求める手段は種々提案され実施されている。例えば地中と路
面との間にヒートパイプを埋設し、地中部分で蒸発(吸熱)させ路面埋設部分で凝縮(放熱)するよ
うに作動液を循環させて路面融雪を実施している。また、地中を蓄熱部として利用する手段として、
路面下の地中に蓄熱型伝熱路を形成し、路面上の熱を地下に放熱して地熱の昇温に使用し、地熱の伝
熱路による熱移動で路面融雪を行うことや、地中に蓄熱槽を形成し、不凍液を循環させて、地中の蓄
熱槽配管で温めた不凍液を、舗装体内の循環管路に通して舗装体を温めて路面融雪を行う手段などが
提案されている。
尚、舗装体層内に電熱線や温水循環管等の発熱体を埋設し、電気や燃料などの外部エネルギーを使用
し、舗装体を直接加熱する融雪手段は、舗装体の熱が地中に逃散しないように、路面下に断熱層を形
成することが知られている。地熱利用を路面融雪装置における、ヒートポンプを使用する手段は、現
実的な融雪を実現するために、
(1)深さ10~20mの穴掘削を行い、このボーリング孔にヒートパイプを埋設し、且つ作動液が
漏洩すると機能しなくなるので、ヒートパイプ自体を堅牢にする必要があり、その建設コストが
非常に大きくなってしまう。
(2)また、単に蓄熱型伝熱路を構築する手段では、伝熱路以外の箇所の地中温度が、路面温度の影
響を受け、伝熱路自体以外の蓄熱効果を期待できない。
(3)さらに、地中の蓄熱部分が他の地中部分(路面温度の影響を受ける箇所)の影響を受けること
なく、地中部分に断熱層で囲繞した蓄熱槽を構築する手段は、設置工事が大規模になってしまい、
また不凍液の循環のためのランニングコストも必要となる。
・ 課題を解決の手段
所定の舗装体で舗装路面を構築する際に、舗装路面の直下の地中部分が地表温度の影響を受けないよ
うに相応の範囲で断熱層部を形成すると共に、断熱層部に透孔を適宜間隔毎に穿設し、透孔内に伝熱
部を組み込むと共に、伝熱部の表裏に伝熱部と熱伝導可能に組み込む受放熱部を設けることが1つ特徴
であり、また、舗装路面下の断熱層部の地中(地盤)は、表層部分である舗装体の温度の影響を受け
ない範囲で断熱層部が形成されているので、断熱層部直下においては、気温の影響を受けない地下数
メートル(5~10m)と同様の地中温度(平均的に15℃程度)となる。従って、伝熱部を介在し
て、断熱層部直下の地熱が舗装体に伝達され、舗装体の温度を高めて降雪時の路面融雪を実現する。
この路面融雪構造では特に、表側受放熱部が、断熱層部の表面に設けた受放熱板と、舗装体内に配置
した受放熱金属網を形成し、裏面受放熱部との熱伝導に際して、舗装体への熱伝導効率を高めている。
また、裏側受放熱部が、断熱層部の裏面に設けた受放熱板、又は地中に打設した受放熱杭で形成、表
側受放熱部との熱伝導に際して、地盤中への熱伝導効率を高める。さらに、特に伝熱部が、降雪気温
以上で伝熱遮断を行う熱動作部を備えてなるもので、降雪気温以上(4~6℃程度)においては、伝
熱部の熱伝導を遮断することで、気温によって平均的な地中温度(15℃程度)より低くなっている
舗装体に対し、地熱の伝導に伴う放熱を阻止することで、地中温度の低下を防止して、融雪効率を高
める。また、熱動作部を備えた伝熱部では、伝熱部が、所定の温暖気温以上で熱伝導を行う、熱動作
部を備えてなるもので、気温(舗装体温度)が例えば平均的な地中温度15℃以上となると、伝熱部
が熱遮断から熱伝導の状態に移行させ、舗装体の熱を地中に放熱して蓄熱を行う構造が特徴(上図)。
このように、所定の舗装体で舗装路面を構築する際に、舗装路面の直下の地中部分が地表温度の影響
を受けないように、相応の範囲で断熱層部を形成すると共に、前記断熱層部4に透孔を適宜間隔毎に
穿設し、透孔内に伝熱部を組み込むと共に、伝熱部の表裏に伝熱部と熱伝導可能に組み込む受放熱部
を設けてなることで、自然エネルギーのみを利用する路面融雪手段であって、特に簡易な構造で設置
工事が容易で、且つランニングコストを必要としない路面構造を提供する。
【事例研究】相変化物質 PCM
従来から、不用の熱を蓄えておき、必要なときに蓄えた熱を用いるための蓄熱システムが数多く提供
されているが、近年、蓄熱材として潜熱蓄熱材料であるPCM(Phase Change Material、相変化物質)
を用い、潜熱を利用して吸熱及び放熱を行う潜熱蓄熱システムが提供されている。潜熱蓄熱材料は、
放熱時に固相化し、流動性がなくなる。このため、潜熱蓄熱システムでは、一般に、吸熱(蓄熱)の
際に、熱源から熱を運んでくる伝熱媒体と蓄熱材料であるPCMとの間で効率的に熱交換することが
難しい。例えば、(1)潜熱蓄熱材料(エリスリトール)を油の中に混ぜることで流動性を持たせ、
吸熱・放熱時の熱交換の効率を上げているが、潜熱蓄熱材料を油と一緒に混ぜ、熱交換器等において
循環させる場合、何らかの要因により油が漏れたりすると、汚染や発火等の危険がある。(2)潜熱
型の蓄熱材として、水の融解-凝固に伴う状態変化における潜熱を用いたものがよく知られている。
潜熱型の蓄熱材は、顕熱型の蓄熱材と比較して一般的に蓄熱量が大きいという利点があるが、潜熱型
の蓄熱材として代表的な水の融点は大気圧下でほぼ0℃であり、0℃付近の温度帯にしか使用できな
い。潜熱型の蓄熱材には各蓄熱物質固有の相変化温度領域に使用が制限されるという問題がある。
(3)一方、水以外の潜熱を利用できる化合物として、工業的に有用な潜熱量と炭素数に応じた融点
をもつパラフィン化合物や脂肪酸エステルが知られている。これらは炭素数に応じた相変化温度を有
するため、所望の炭素数のものを選定することで使用したい温度領域で蓄熱効果を得ることができる。
脂肪酸エステルは、パラフィン化合物より化学的安定性に若干劣る、臭気が強い、という性質がある
ものの、一般にパラフィン化合物より引火点が高く、安価であるため蓄熱材としての有用性が認めら
れる。(4)脂肪酸エステルを蓄熱物質として蓄熱材に用いる場合、安全性の観点および工業上多様
な用途観点からポリマー等により固定化していることが好ましく、危険物に相当する脂肪酸エステル
を指定可燃物として取り扱うこともできるが、脂肪酸エステルと水添共役ジエン系共重合体を加えて
固定化する構成では、蓄熱材から脂肪酸エステルが染み出す(=「ブリード」)課題が残る(上表)。
以上の問題解決のための考案が提出され改良が日々なされている。
日本の国土の60%を占める雪寒地帯の生産性を高めることができれば、潜在的国民総生産力の掘り
起こしが可能となり結果、付加価値を高めることになる。今夜俯瞰してみて、技術的にも経済的にも
それは可能だろう考える。これは面白い!
● 頭脳と肉体の幾何学的の美しさ
日本大学選手権決勝「パナソニック杯 第69回毎日甲子園ボウル」は14日、兵庫県西宮市の阪神
甲子園球場で観衆3万2000人を集めて行われ、西日本代表の関学大(関西)が55−10で東日本
代表の日大(関東)を破り、4年連続27回目の優勝を飾った。自らの大会最多優勝記録を更新し関
西勢が8連勝となったが、ひときわ目立ったのが今年2年生のはランバック(running back)の橋本誠
司選手による中央突破だ。野球も幾何学的な美しさがあるが、アメフトのそれは機動的で集団的で密
集戦の頭脳と肉体の2・5次元の幾何学的の美しさだ。これは関学の連覇が続きそうな予感だ。