『呉子』
春秋戦国時代に著されたとされる兵法書。武経七書の一つ。『孫子』と併称される兵法書。前四
世紀楚の宰相であった呉子の言を集録したものという。
2.治 兵(ちへい)
統率の原則はなんであろうか。部下が戦いやすいような条件を作ってやることであり、必死の気
持をおこさせることだ。
百万人いても役に立だない
武候ががたずねた。
「戦争の勝利は伺によって決まるのであろうか?」
呉超はこたえた。
「勝利は冶によって得ることができます」
「兵力の多寡によるのではないのか?」
「法令が明確でなく、賞罰が公正を欠き、停止の合図をしても止まらず、進発の合図をしても進
まなかったならば、百万の大軍があったとしても何の役に立ちましょうか。
冶というのは、次のようなことです。すなわち、平生においては秩序正しく礼が行なわれ、いざ
となれば威力を発揮し、進めば誰も阻止できず、退けば誰も追い得ず、進退は節度があり、左右
はたちまち合図に応じ、連絡を絡たれても陣容をくずさず、散開しても隊列をくずさない。将兵
が安危を共にし、結束していて離間させることはできず、いくら戦っても疲労することはない。
このような軍は、向うところ散なしです。これこそ、”父子の兵”というべきでしょう」
「進止の節」
およそ、軍を進めるには、進むべきときに進み、止まるべきときに止まるという「節」を失って
はならない。兵士を飢えさせてはならないが飽食させすぎてもならない。人馬はたえず一体とな
って力を発揮しなければならない。
この三つのことは、上に立つ者の指揮が適切であるかどうかにかかっている。指揮が適切であれ
ばそれによって「治」を得ることができるのである。
反対に、進むべきときに進まず、止まるべきときに止まらず、飽食しすぎたり飢えたりして兵糧
の管理が悪く、人馬がともに疲れはてながらなお休息せずにダラダラ進んでゆくようなら、上に
立つ者の指揮が適切でないのである。そういうことであれば、平常でも秩序が乱れ、戦えば敗れ
るということになろう。
成長とけじめ 「節」は竹の「ふし」から転じて、ものごとの区切りをいう。竹が「ふし」によって成長をはから
れ、けじめがつくように、すべて伸びるときと、しまるときがなければならないというわけである。
「死を必すれば生く」
戦場というものは屍をさらすところ、きびしさの極地である。死ぬ気になれば生きのこり、生き
ようとすれば死をまねく。良将とは、水の潤る船にのり、焼ける建物の中に寝ているように、い
つも必死の心構えをもっている者である。これにたいしては、どんな智者であろうと策を弄する
ことができず、どんな勇者であろうと立ち向かってくることができない。つまり、どんな敵でも
相手にすることができる。
だからこそ、軍を統率するに当たってば、何よりも優柔不断を排すべきである。将が遅疑すれば、
全軍に損害を与えるのだ。
連載が終了した『エネルギー革命元年』を最新事業開発の考察を継続しながら、新しい事業開発
の考察として『再生医療』の事業開発を掲載していくことにする。ところで、再生医療開発の考
察として『再生医療』の事業開発を掲載していくことにする。ところで、再生医療こと、再生医
学( Regenerative medicine)とは、人体の組織が欠損した場合に体が持っている自己修復力を上
手く引き出し、その機能回復の医学分野である。
No.6
【目 次】
・はじめに
・臨床ラッシュ 他人由来の細胞で治験へ 難病治療に広がる可能性/インタビュー 岡野栄之
(慶応義塾大学医学部長)/ロボットで脊髄損傷を治療 脳と神経のループを再構築
・パーキンソン病 インタビュー 高橋淳 京都大学iPS細胞研究所教授(神経再生学)
・3大疾病 がん 再生医療の「オプジーボ」? 免疫細胞を増強する新治療
・3大疾病 脳卒中 細胞が「薬」になって脳を刺激 慢性期脳梗塞の新治療法
・3大疾病 心筋梗塞 ヒトの「心筋」シート化 2018年度に治験開始へ
・毛髪再生 再生医療でフサフサ? 資生堂、京セラが参入
・カナダ・トロントリポート 官民の資金で成長後押し
・関連銘柄24 再生医療で広がる市場 迫る医療の「産業革命」
【毛髪再生:再生医療でフサフサ? 資生堂、京セラが参入】
細胞レベルで自分の髪の毛をよみがえらせる「究極の薄毛対策」現実になるかもしれない
(編集部)
失われた毛髪を再生医療で取り戻す技術の研究が進んでいる。2016年に資生堂と京セラがそ
れぞれ研究機関と共同で毛髪再生の研究を始めることを発表し、実用化の期待が高まっている。
両社が取り組むのは、髪の毛が生えている頭皮を切り取り、毛髪の細胞を取り出して培養、移植
する技術。自分の細胞を移植するので拒絶反応のリスクが少なく、また育毛剤や植毛などに比べ
て持続的な効果を期待できるという。
同社の技術は、対象にする細胞が異なる。京セラと理化学研究所(理研)、バイオベンチャーの
オーガンテクノロジーズ(東京都港区)は、毛髪から毛乳頭細胞と上皮性幹細胞という2つの細
胞を取り出し、組み合わせて髪の毛(毛包)のもと(原基)を作り、培養する(上図)。頭から髪の毛
を100本程度採取し、毛包原基を作り、数10から100倍に培養して毛のない部分に注射する
。すると毛穴ができ、そこから毛が生える(上図)。毛が抜けた後も繰り返し生える。周辺の筋
肉や神経と接続するので、毛の流れも再現するという。
マウスの実験では、すでに毛の再生に成功している。19年1~3月をめどにヒトでの臨床試験
を始める見通しだ。理研多細胞システム形成研究センターの辻孝チームリーダーは、同社が取り
組む毛髪再生を「毛の運命にあらがう技術」と表現する。辻氏によると、額の生え際や頭頂部が
薄くなる「男性型脱毛症」では、大くて硬い髪の毛が、細く短いうぶ毛になっていくのは遺伝の
要素が大きく関わる「運命」。そこで、うぶ毛にならない後頭部の毛髪の縦胞を脱毛部分に移す。
「頭頂部の毛頭が後頭部の毛頭の運命に転換する」(辻氏)という。
一方、資生堂が東京医科大学、東邦大学医療センター大橋病院とともに研究するのは「毛球部毛
根鞘細
胞」の培養。「発毛の司令塔」と言われる「毛乳頭縦胞」のもとになる細胞で、脱毛部分に注入
すると、髪の毛を太く長くしたり、生え変わりのサイクルを長くしたりする効果が期待できると
いう。昨年末からヒトを対象にした臨床試験を開始し、安全性や有効性を調べているところだ。
いわば、京セラ・理研の技術は「種」を作って畑に植える技術で、資生堂は畑に「肥料」をまい
て毛髪の育成を促す技術と言うことができる。 Sep. 15, 207
4000億円市場
男性型脱毛症をはじめ、薄毛に悩む人は全国に1800万人以上いるといわれる。矢野経済研究
所によると、植毛や育毛剤などのヘアケア市場の規模は4383億円(15年度)。市場規模の
大きさは、患者数の多さとそこに投じる金額の大きさを反映しているが、根本的な治療法はない。
持続的な効果が期待できる毛髪の再生技術は、薄毛に悩む患者にとって大きな希望になる。企業
にとっては、細胞培養事業に参入する入り口としての側面もある。資生堂は神戸に細胞加工の培
養センターを開設し、15年には厚生労働省から製造許可を取得した。京セラも細胞加工器機の開
発を進め、医療分野の事業拡大に弾みをつけようとしている。 資生堂も京セラも、20年前後を
めどに技術の確立に向けて動いている。
【関連特許技術事例】
❑ WO2010/021245 毛乳頭細胞の培養方法
❦ 特開2018-080206 皮膚化粧料、頭髪化粧料および飲食品 丸善製薬株式会社
この項つづく
第2章 「中国産」のトマトペースト
フランス、ヴオクリューズ県カマレーシュル=エーグ
第3章 伝説化されたアメリカの加エトマト産業
第7節 ピッツバーグ、ホームウッド墓地
20世紀初めのピッツバーグは、世界経済の中心地のひとつだった。多くの産業がこの地で栄え
た。当時、新興産業によって財を成した実業家は、町の「イーストエンド」と呼ばれるエリアで
暮らしていた[10]。多くの銀行家、ワシントンの上院下院の議員(ワシントンはピッツバーグ
からさほど遠くない)、会社経営者が、ここに居を構えた。ベスレヘムースチール代表のチャー
ルズーマイケルーシュワブ、カーネギー・スチールCEOのヘンリー・クレイ・フリック、そし
てカーネギー・スチールを経営し、当時は「世界最大の富豪」とされたアンドリュー・カーネギ
ーら、製鋼業界の大物たちもこのイーストエンドに住んでいた。電気産業の先駆者であるジョー
ジ・ウェスティングハウス、ガラス産業の父と称されるエドワード・リビーも例外ではない。そ
して、ハインツー族もこのエリアの名門として知られていた。
現在、静かで緑豊かなホームウッド墓地には、かつてこの地に暮らした大物たちが眠っている。
ハインツー族の霊廟は大きな立方体をしている。白亜の壁にステンドグラスの窓がつき、天井に
ドームをいただく立派な建物だ。ヘンリー・クレイ・フリックの墓地は、そこから数メートルの
ところにある。フリックは現役時代、労働者を厳しく管理したことで知られている。1892年
7月5日の夜、当時はカーネギー・スチールの工場責任者だったが、ウィンチェスターライフル
で武装した民兵を使って、ストライキをしていた9人の労働者を殺害したのだ。
第8節 ピッツバーグ、ハインツストリート
アレゲニー川にかかるヴェテランス橋を越えると、赤いレンガ造りの煙突が二本立っている
のが見える。一方に「ハインツ」、もう一方に「57」と書かれている。ピッツバーグのハインツ
エ場のシンボルだ。資本主義の歴史において、「五七種の商品」をスローガンにしたこの工場は
ほかのありきたりな食品工場とは一線を而している。なぜなら、ここは世界の食品産業の発祥地
なのだ。
産業化時代のヨーロッパとアメリカでは、缶詰工場で雇用されるのはほとんどが女性だった。当
時の性差別的偏見によって、食品を作るのは女性の仕事と考えられていたからだ。また、製鋼産
業が盛んだったピッツバーグでは、男性は溶鉱炉を使って鋼鉄を作るのに雇われたため、手が空
いているのは女性しかいなかったという事情もある。それに、経営者にとって、女性を雇用する
のは大きなメリットがあった。男性と同じ仕事をこなしてくれるのに賃金は2分の1ですむから
だ。当然、ハインツもこれを利用しない理由はなかった。
缶詰工場は、女性労働者の歴史を考えるうえで無視することのできない場所だ。1900年、ハ
インツでは、全従業具に女性が占める割合は58パーセントだった。女性の雇用条件は14歳以
上。女性従業員のほとんどが14歳から25歳の独身で、平均年齢は20歳を下回っていた。こ
れらの数字は「ピッツバーグ調査」報告書からの抜粋だ。1907年から1908年に実施され
たこの調査は、1911年に全六巻という膨大な報告書にまとめられ、アメリカ最古の社会学研
究のひとつとして知られている。社会学教師で写真家であったルイス・ハインによる、アメリカ
の青少年労働者を撮った写真も掲載された。70人もの調査員によってまとめられた、ピッツバ
ーグの労働者たちの貧困と苦しみを伝える資重な資料だ。正確な統計データを駆使し、きちんと
体系的にまとめられ、労働者たちの厳しい日常を赤裸々に伝えている。当時のメディアによるプ
ロパガンダや、企業広告のイメージとは正反対のこうした実態は、全米に大きな衝撃を与えた。
そしてこの調査報告書は、20年後の人権擁護を推進する「進歩主義時代」への重要なステッブ
のひとつとなった。
「ピッツバーグ調査」報告書の第一巻には、社会学者のエリザベス・ビアーズリー・バトラーに
よる女性労働者に間するレポートー女性と商業」が掲載されている。その冒頭に書かれているの
が、ハインツの缶詰工場における女性の労働条件の実態だ。ペンシルベニア州法では、週の労働
時間は60時間までと決められていたが、この工場では72時間に達することもあったという。
20世紀初頭のライン生産の様子を伝える資料写真といえば、自動車のアセンブリーラインを撮
ったものがほとんどなので、写っているのは男性従業員ばかりだ。そのため、われわれ現代の人
間は、当時の工場で大量生産を担っていたのは男性だったと思いがちだ。だが実際は、女性も同
じように働いていた。白い帽子をかぶったあどけない少女たちが、手にたくさんのやけどを負い
わずかな賃金をもらって、缶詰のラインで働いている。わたしたちはその姿を忘れてはならない
。こうした少女たちも、合法的に雇用されたプロレタリア階級の一員として、工場での過酷な労
働に耐えていた。あらゆる側面において、フオードの自動車工場で見ることのできたすべてが、
その10年前のインツの缶詰工場にはすでに存在していたのだ。「フオーディズム」ということ
ばは第一次世界大戦後に世界中に広まった。フオードが科学的管理法を応用して独自に開発した
生産システムのことだが、広義にはアメリカ経済を築いた。
新しい大量生産方式を指す。もともとは、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ
が命名したとされる。機械による人間の奴隷化、作業分割がもたらす弊害、搾取の増大といった
大量生産が社会にもたらす悪影響を分析するために用いられたのがきっかけだった。
ヘンリー・フォードは、1922年に出版された回想録『マイこフイフ・アンド・ワーク』で、
フォードの生産方式は食品業界に着想を得たものだと告白している。少年時代に見た、シカゴの
食肉工場の様子に影響を受けたというのだ。こうした工場において、多くが青少年である労働者
たちが搾取され、奴隷化される様子は、1906年に刊行されたアプトン・シンクレアの小説『
ジャングル』に詳しく描かれている。
ハインツとフォードの工場が似通っていたのは、決して偶然ではない。どちらもテイラリズムの
理念から、同じ生産管理法を導入していた。大量生産をベースとした経営戦略も、資本主義社会
に対するビジョンもまったく同じだった。食品メーカーと自動車メーカーのふたりの経営者は、
同じことを目標にし、同じことを思い描いていたのだ。唯一違う点があるとすれば、同じように
標準化された大量生産品でも、T型フォードよりトマトの缶詰やケチャップのほうが安価で手に
入れやすかったことだろう。そのため、ハインツの製品は早くからアメリカで購人・消費されて
いた。
こうして見てきてわかるように、ハインツは加エトマト業界で重要な役割を担っただけではなく
、一世紀以上にわたる資本主義の歴史においても特別な位置を占めている。ハインツは資本主義
社会におけるパイオニアだ。意外に感じるかもしれないが、それは確かなことだ。オートメーシ
ョン、モータリゼーション、標準化、合理化による生産性向上、新しい生産システムによる労働
力の強化、会社に忠実な従業員を育てるパターナリズム……ハインツは創業当時から、こうした
すべてを実施してきた。アメリカ国内だけでなく、世界中において。
第9節
「どんなに素萌らしい食品を生産しても、消費者に欲しいと思ってもらわなければ意味があり
ません」
一九五〇年代、新規雇用された従業員に配られたハインツのパンフレットにそう書かれてい
る。冒頭の「ハインツは世界に向けて語る」という章では、広報部の仕事の内容と、PR活動
の重要性が説明されている。
「ハインツの広報部は、消費者の購買意欲を刺激し、需要を維持するのに重要な役割を担って
います。その仕事が成功したかどうかを確かめるのは簡単です。売上高が上がったか、ハインッ
の社名と五ヒ種の商品が世界中に知られるようになったか、確認すればよいのです。(中略)5
0年以上前から、ハインツは雑誌に広告を掲載してきました。広告の巧みさに関してハインツは
高い評判を得ています。数千ヵ所のショッピングセンターや商店街には、看板やポスターを掲示
しています。いつでもどこでもハインツのことを思いだしてもらうためです。ラジオも重要なメ
ディアです。何百万人というリスナーに同時にメッセージを伝えられるのですから。そして広報
部以外にも、ハインツの宣伝のために重要なはたらきをしている部署はたくさんあります。教育
部では、女性雑誌や料理雑誌に記事を掲載したり、ラジオの料理番組で作られた料理にコメント
を出したり、工場生産された食品に推薦コメントを書いたり、食育のための情報を学校に提供し
たりしています。乳児用食品部では、医療機関、託児所、栄養士、家庭の主婦と提携した活動を
行なっています。展示会部では、飲食業向けの食品展示会や、医学会議などで、ハインツの商品
を紹介しています。そして経済活動部は、ハインツの広告、プレスリリース、パンフレットなど
で実施される何百種類というアプローチ方法を研究開発しています。もし誰かに”ハインツの広
報部ってどういう仕事をしているの?”と尋ねられたら、ぜひこう笞えてください。”ズインツ
のよさを世界に向けて語る仕事です”と。実際、そのとおりなのですから」
第4章 濃縮トマト輸出トップの会社
第1節 中国・北京
北京市中心部の朝陽区にある高級住宅街にやってきた。外部からのアクセスが制限されているコ
ミュニティで、エントランスはゲートで封鎖されている。隣にはゴルフ場がある。人口で黒服の
ガードマンに来訪先を告げると、無線でどこかに連絡をし、出入りを許可する手続きを取ってく
れた。敷地を囲う高い壁には電気柵が張りめぐらされ、およそ50メートル間隔で監視カメラが
設置されている。10分後、ようやくゲートが上がった。
敷地内は線に溢れていた。ガードマンたちが自転車に乗ってパトロールをしている。どの庭も手
入れが行き届いている。どうやら、壮麗な邸宅の前に停められた高後車と同じだけの庭師がいる
らしい。そして、またしてもゲート。検問所から別の黒服が顔を出し、再び入場許可の手続きを
する。先ほどと同じようにしばし待つ。無線からザーザーという音が聞こえてくる。
そして、再びゲートが上がった。
リウ・イ将官は、わたしとの待ち合わせ場所に自宅を指定していた。万全なセキュリティが確保
された高官向け住宅街だ。リウ将官は、中国の食品グルーブ、カルキス(中基)の創業者であり
元経営者だ。カルキスは、新疆の開発と防衛に携わる政府組織、新疆生産建設兵団によって経営
されている。「兵団一なので、リウには「将官」の肩書がついているのだ。2000年代、リウ
将官の指揮下にあったカルキスは、濃縮トマトの輸出で世界トップになった。2004年には、
フランスのプロヴアンス地方にある大手トマト加エメーカー、ル・カバノンを買収している。
カルキスは創業以来ずっと、外部の人間に工場を公開することはおろか、いかなる取材もすべて
拒否してきた。イタリアの《フード・ニュース》やフランスの《トマト・ニュース》などの業界
専門誌に記事を書いているジャーナリストでさえ、ガルキスに関する情報を何ひとつ入手できず
にいた。いずれの雑誌も、トマト加エメーカーを敵視しているわけでは決してないのだが。カル
キスは現在も、あたかも軍事機密を守るかのように、秘密主義をかたくなに貫いている。唯スカ
ルキスのドラム缶入り濃縮トマトを輸入する業者から、匿名の情報がちらほら流れてくるだけだ
。だが、耳に入ってくるのは、生産量や流通量といったたわいもない情報だけだ。投資額、経営
戦略、取引先との契約内容、内部の権力争いなどの話はどこからも漏れてこない。
この取材を始めたころの2014年6月、わたしは世界加工トマト評議会(WPTC)の会議に
出席した。場所は、イタリア北部にある町、シルミオーネ。国内晨大の湖、ガルダ湖畔に会場が
}設けられ、世界中のトマト業界の大物たちが一堂に会していた。ドラム缶入り濃縮トマトを生
産する大手トマト加エメーカー、濃縮トマトの輸出入を手がける商社、ハインツ、ネスレ、ユニ
リーバなど濃縮トマトの購入先である大手食品メーカー、商品パッケージング会社の経営者、運
送会社、海運業者、種子メーカー、農芸化学者、トマト加工工場の設計・施工も手がけるイタリ
アの食品機械メーカー………そう、年間数十万トンというドラム缶入り濃縮トマトを使って商品
を生産・販売しているこの業界の大物たちが、世界中からこの地に勢ぞろいしていたのだ。原則
としてテレビカメラは会場に入れず、唯一、欧州委員会農業担当委員によるテレビ電話講演と、イ
タリア農務大臣によるイタリア製品の品質を称賛する閉会演説だけ、撮影が許可されていた。わ
たしは会期中の三日間、どうにかして取材相手を見つけようと、たくさんの関係者に接触した。
ポケットを名刺でいっぱいにし、加エトマト業界に関してさまざまなレクチャーを受けたり、濃
縮トマトの勢力図の基礎をマスターしたりした。オーケストラ演奏つきのレセプションに忍びこ
んでビュッフェ料理も味わった。同郷の遺伝子組み換え作物(GMO)種子メーカー社員のおか
げて、招待状なしで入ることができたのだ。
そうやって根気よく情報収集を続けた二日目のこと、カクテルパーティーの会場で、とうとう最
大のターゲットに会うことができた。ガルキスの代表団だ。パーティーに参加していたのはふた
りだった。どちらもまったく目立たず、物陰にひっそりと佇んで、誰とも会話を交わしていなか
った。ひとりは間違いなくカルキスのナンバーツー、国社長のミン・ウーだ。上海大学で経済学
を修め、中国地質大学北京校で技術者も務めている。だが、わたしがいくら質問をしても、ミン
副社長はいっさい笞えてくれなかった。インタビューが嫌いなのか、あるいはわたしと話をする
のが嫌だったのか。
もうひとりは、リリ・ユー。エクス=マルセイユ大学で経済学を学び、フランス語を話す女性だ
った。かつて、ブロヴァンス地方のカマレーシュル=エーグで、ル・カバノンとカルキスの経営
陣を引き合わせる役割を担ったという。だが、2、3言社交辞令を交わした後でどこかへ姿を消
してしまい、ガルキスに関すろ話を引きだしたいという願いはとうとうかなわなかった。
だがそれから二年後、わたしはようやくその目的を果たすチ段を見つけたようだった。
この項つづく
【下の句トレッキング:せてさらさらと穀物の音する】
わがあたま夜ごとに載せてさらさらと穀物の音する 高橋公彦/「現代短歌」2018年5月号
日本は睡眠時間が少ない国とされ、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人(20歳以上)」は年々
増え続け40%近く、その経済損失は年間3.5兆円にものぼり、関連する医療費を含めれば実に
5兆円にも及ぶという試算もあるとか(「経済損失は約3.5兆円!! 寝ることは大切なビジネスス
キル」、ITmedia エンタープライズ、2017.04.14)。話を広げる。
睡眠不足の状態が続くと、集中力がや免疫力の低下、眠るほど、学力向上や生産性の向上、収入
が高くなるが、睡眠時間は、7時間~8時間が理想だが、量だけでなく質も重要で、「睡眠で人
生は変わる」といわれているが、睡眠の質を把握するのはやっかいで評価できなかったが、最近
のヘルスケア商品に、睡眠状態を自動的にトラッキングし、クラウド経由でスマートフォンC上
で視覚的に自分の睡眠内容を把握できるよになっている(例「フィットビットの「Fitbit Alta HR」
は個人/企業向けウェルネス活動量計)。
❦ 関連事例:特開2017-169972 生体情報計測装置 パナソニックIPマネジメント株式会社
Apr. 25, 2018
話をさらに広げる。
住吉(すみのえ)の 木浜(こはま)のしじみ開けもみず 隠りてのみや恋ひわたりなむ
作者未詳/『万葉集』
While closing the shells like basket clams at Kohama in Suminoe,
how long can I keep to unrequited love with you?
❦ 住吉の粉浜のしじみのように 蓋を閉じて、胸の思いを隠したまま 恋し続けるのでしょうか
3日は恒例の溝掃除。今年は事前に農業用水が流されていたので、超高齢町内会ではあるが比較的楽に
終えることができたのだが、清掃作業に終着点付近でちょっとしたワンド(湾処)が形成され土砂が山
積されているところがあるその場所に落合さんが一人で泥上げ作業をされていたので話しかけると、泥
の一部をみせ、ほら、こんなにシジミが棲息していろのだと言うので、そういえばこの溝周辺はに貝殻
が散乱していること気づいていたが、シジミの稚貝がどうしてこんな風に多いのか不思議だったが、近
くに、日本料理店「魚忠」や農業用水に紛れ込み孵化・棲息したんだろう。それんしても酸素が多くな
ければ生息できないからよほどきれいのだろ。半世紀前から琵琶湖総合開発や琵琶湖淀川水系の問題に
関わってきた昔を思い出し、星野芳郎立命館大教授をはじめ京大・阪大・滋賀大の教授・学生、あるい
は知人の面影が脳裏を駆けめぐり、そういえば瀬戸内海沿岸部で水がきれいすぎてプランクトンの生息
が少なくなり困り、都市排水処理場の水を混入させているというニュースを思い出し、ついでに東京大
学医学部の権威主義に異議申し立てた学生たちの全共闘運動が席捲た日大闘争を思いだし、同じ半世紀
を経ても、変わらなかった日大体育会系体質に思いを馳せた。