『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろ
の成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかってい
る部分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳
出する。
柔 と 剛
『軍識』にはこう記されている。「柔は剛を抑え、弱は強に勝つ」と。柔とは他者を包み育む徳
にほかならず、剛とは他者を傷つけ損う悪にほかならない。弱者は誰からも擁護されるが、強者
は誰からも狙われる。
とはいえ、ただ柔のみを後生大事に守り、ただ弱のみを金科玉条としているのでは、何の意味も
ない。柔と削、弱と強の四者を兼備したうえで、時宜に応じ硬軟自在に対処することこそ肝要で
ある。
変転自在の働きをすると、その真意が何であるかは、外部からは察知できない。たとえてみれば
天地である。人智を超えたその霊妙さは、日々万物とともに推移し変化するところにある。用兵
もこの天地のごとく、固定した形をみせず流勤し、情勢に応じて千変万化しなければならない。
つまりこちらから進んで戦を仕掛けることなく、軟の出方を待ち敵情に応じて働くのである。
こうしてこそ、軍の働きは無限の自在さを獲得できる。自然の法則と一体化し、おのずと戦局を
有利に聯くことができる。天下の秩序を回復し、蛮夷の地を平定することができる。王者たる者
の軍とは、このような軍を指すのである。
だが人々はこの道理に気づかない。古人もいっているではないか。「人々はただ強のみを追い求
め、自然の法則を顧みない」と。自然の法則に従いさえすれば、身は終始安泰である。
だから、聖人は自然の法則を体得して、時機に応じて勁くのである。自然の法則は、拡大すれば
全世界をも包摂することができるが、縮小する時は林の中にも隠すことができろ。格納するため
の貪もいらず、守るための城もいらない。ただひとりの胸に秘めておくだけで、敵国はおのずと
服従するに至るのである。
『軍識』にはこうも述べられている。「柔剛両者を兼備すれば国威はますます傾き、弱強両者を
兼備すれば国運はますます盛んとなる。だが、柔弱一方ならば国は衰微し、剛強コカならば国は
滅亡する」と。(上略)
〈『卓識』〉古代の兵法書の名であるというが、現存せず、定かでない。仮託であるともいう。
夏 帯
【下の句×樹木トレッキング:朴葉の水をきみは差し出す×ホオノキ】
ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。大き
くなる木で、樹高30メートル、直径1メートル以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが
細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20センチメートル以上、時に40センチメート
ルにもなり、葉の大きさではトチノキ並ぶ。葉柄は3~4センチメートルと短い。葉の形は倒卵
状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状
に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かっ
て開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん
状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴
を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0~2個の種子が入って
いる。
ひとの業引き受け登るゴルゴダに 朴葉の水をきみは差し出す 高山 宙
※「ゴルゴダに」は「で」でなく「に」の選択は「神話」(信仰)から「現在」へ導出させ「差
し出すきみ」でなく敢えて「きみが差し出す」とし日々の慈しみとして表出する。
May 28, 2009
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Jul.. 27, 2018
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チョウが研究者たちの必死の努力により復活
死せるホーキング博士の提唱:多元的宇宙の縮小理論
5月7日、英国の宇宙物理学者、故スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の死後に発表され
た新たな論文によって、天文学者らを大きく二分してきた問いについての議論が再燃している。それは、
私たちが今いるこの宇宙は拡張し続ける無限の「多元的宇宙」のうちの一つにすぎないのではないかと
いう問題(AFP, 2018.05.07)。
それによると、論文はベルギーのルーベンカトリック大学(KU Leuven university)のトマス・
ヘルトーク(Thomas Hertog)と共同執筆、博士が亡くなった3月14日以前に提出された。今
週「Journal of High Energy Physics」に掲載。(ある学派の)宇宙はビッグバン(Big Bang)の後、
爆発的に拡張し始めたとするこの拡張あるいは「膨張」は大部分で永遠に続いていくが、この動
きが停止する所もいくつか存在する。私たち人類が今いるような宇宙はこうした場所につくられ
ている――とする。
これに対し、多元的宇宙論の懐疑派のホーキング博士は昨年行われたインタビューで、多元的宇
宙のファンであったことは一度もないと語たが、最後の論文では、この理論反論するのでははな
く、大幅に縮小した理論を提唱。博士が在籍していた英ケンブリッジ大学(Cambridge University)
は、単一宇宙にまで縮小したわけではないが、同グループの研究結果は、多元的宇宙の著しい縮
小、すなわち、存在するかもしれない宇宙の数は(無数ではなく、それより)はるかに小規模で
あることを示しているとする立場であることを表明している。前出のヘルトークはAFPの取材に
対し、新たな仮説は「ひも理論、弦理論」の理論物理学の一つの考えに基づいたものであるとし、
宇宙には多くの宇宙があるとしても、その数は「明らかに有限」だと結論付けている。
これに対し、わたし(たち)は到底考え及ばない<世界>だが思索のに労に率直に敬意を表したい。
合掌
7月20日、富士通は事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニ
シアチブ「RE100」に、国内で初めてゴールドメンバーとしてこのほど加盟した。国内外の富士通グループ
拠点で消費する電力を50年までに100%再エネ由来とすることを目指し、再エネの利用拡大を
推進する。加えて、エネルギーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証にも取り組み、社会全
体の再エネの普及拡大に貢献する方針であることを公表。RE100は国際的に活動するNGO団体である
The Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで、運営するイニシアチブ。使用電力を100
%再エネ由来とすることを目指す企業で構成されている。
富士通グループは、17年5月に策定した中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」
で、富士通グループ拠点における再エネ由来の電力利用を50年までに100%(中間目標30年ま
でに40%)を目標に掲げるなど自らのCO2ゼロエミッションを目指す。この目標の達成には、省
エネルギーに徹底して取り組むとともに、再エネの利用拡大が不可欠となる。そのため、グロー
バル規模で再エネの大幅な普及拡大を目指すRE100に参加し、富士通グループ全体で再エネの利
用拡大に向けた取り組みをさらに強化。具体的には、海外のデータセンターをはじめ国内外の拠
点で、各地域に応じた最適な手段を検討し、再エネ由来の電力調達を拡大する。また、エネルギ
ーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に取り組み、社会全体の再エネの普及拡大に
貢献することを目指す。
7月26日、東京大学らの研究グループは、IODPの第325次航海にて、グレートバリアリーフ
で科学掘削を実施、熱帯域のサンゴ化石試料を採取に成功。それにより、極域氷床と気候の急激
な変化について新しい知見――現在までに全くデータのなかった時代の南極やグリーンランドな
どの氷床融解に伴う海面上昇などの海水準変動を復元―――❶氷期から現在にかけての氷床変動
を解明、❷ゆっくりとしたものと考えられていた氷床の変化が、想定されていたよりも数倍のス
ピードで変化、❸人工衛星で得られる南極氷床変化の定量的な解釈を含め、現在進行中の地球温
暖化が引き起こす――海水面上昇の予測に反映できることを公表。
Title:Response of the Great Barrier Reef to sea-level and environmental changes over the past 30,000 years
【地球温暖化:50年までに米国とメキシコで何千の自殺者を生む】
7月23日、スタンフォード大学のマーシャル・パークらの研究グループは、気候と精神的健康
との関連付け化されてはいるが、定量化は不十分にある。特に世界的に主要な死因である自殺率
が、気候条件により影響を受けるかどうかは不明であるもの、米国とメキシコの両方で数十年間
の包括的なデータから、月平均気温が1℃上昇した場合、自殺率は米国郡で0.7%、メキシコ地
方で2.1%増加するいう分析結果を得ている。この結果は、より暑い地域と寒い地域とで近似し
歴史的適応が限定されており、時間とともに減少せず。うつ病の研究分析k結果から、暖かい時期
に悪化することを示唆。気候変動(RCP8.5)の増加は、50年までに米国とメキシコで9,40,000
件の自殺を引き起こすと予測する。
にわかに信じられないものの、このような側面からの「社会的損失」も考慮kしておくべきだとの
警告として受け止めた。
第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第2節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村
ざっと畑を同心回したところ、50人ほどの日雇い労働者が働いている。収穫されたトマトは、
加工されるのではなく市場へ売られていく。じつはここにいる労働者のほとんどが、自分でもト
マトを生産している。ただし土地を持っていないので、自宅の近くの狭い土地を地主から借りて
耕している。借りている土地の広さは、だいたいIエーカー(0・4ヘクタール)で、広くても
ニエーカーから三エーカーだ。年間賃料は、平均してIエーカー当たり100ユーロ。こうした
小作農は、収穫時など労働力を必要とするときに、今日のようにほかの小作農を雇っている。そ
して、トマトを収穫して市場に出荷し、販売し終えた後、つまり収穫当日の夜に報酬を支払う。
農業従事者たちは、自分の収穫日をずらして他の者の収穫を手伝うなどして互いに協力しあって
いる。
ここでは、FI種子を購入する者は誰もいない。FI種子とは、異なる性質の種を交配させた雑
種の一代目のことで、生育がよくて病気になりにくいので先進国ではたいていこのタイプの種子
が使われる。栽培しやすいが価格は高い。だがここでは毎年、前年実ったトマトから種を自家採
取して使っている。そうして種子のコストを節約しているのに、トマト生産者たちは借金をして
まで農薬を買う。だが彼らは、それがどういうものか、何か入っているかは知らない。政府調査
によると、トマト生産者の識字率は60パーセントだという。しかも、防護服やメガネといった
保護具をいっさい身につけずに散布している。
「おれは強くて丈夫だから、病気になんかならないさ。防護服なんて必要ない」と、ひとりの労
働者は入った。
「農薬を売ってくれろ人が、そういう化学物質に詳しいんだ。もし何かトラブルが起きてもその
人に相談すればどうにかしてくれろ。いい薬を見つけてくれる。店にずっといて畑には来ないの
に、どうしたら問題が解決するかすぐにわかるんだ。おれたちの先生なんだ。もし毛虫が出たら、
ちゃんと毛虫がいなくなる薬を出してくれる」
畑のまわりに並べられた木箱の下には、その「先生」が売ってくれたという農薬の容器が散乱し
ていた。キラキラ光るパッケージには「中国産」と記されている。殺虫剤や殺菌剤などの農薬に
は、クロルピリホスエチルという化学物質が使われていることが多い。数々の科学研究によって、
この物質が胎児の脳の発達に影響を及ぼすことが明らかにされている。
「おれたちの仕事で一番金がかかるのが農薬だよ。だって畑の賃料より高いんだから」
だが、そう口をそろえる日雇い労働昔たちも、それがどのくらいの金額になるかは答えられなか
った。
「正直言って、よくわからないんだ。トマトなんて博打のようなものだから」と、目の前の畑の
借主であるクワシ・フオスが言う。
「おれたちはみんなトマトで生活してるんだ。もうかる年もあれば、損する年もある。だいたい
とんとんの年もある。でもここ数年は損してばかりだ。だから最近はトマトにあまり金をつぎこ
まないようにしてるんだ」
博打?金をつぎこむ? よく意味がわからなかったので、わたしはさらに話を聞いてみた。
「トマト栽培にはふたつの運だめしがつきものだ。ひとつは収穫。天候が悪かったり、トマトが
病気にかかったりして、収穫量が激減する年がある。でも収穫直前までどうなるかわからない。
もうひとつは市場だ。たとえたくさん収穫できても、市場でちっとも高く売れない年がある。今
日は一箱当たり200セディ(45ユーロ)だった。でも去年はそのわずか4分の1だったんだ。
大赤字さ。だから今年はあまり広い土地を借りなかった。でも今年はなかなかいい値段で売れて
るから、赤字にはならないんじゃないかな。まあ、もう少し様子を見ないとわからないけどね。
ただ、ひとつ言えるのは、このあたりじゃ、みんなどんどんトマトをやめていってるよ。全然も
うからないからね。すでに多くがトマトの栽培をやめてるし、数年でもっと増えるだろうね」
クワシーフォスは、タオボダム村では金持ちで通っている。粗末な小屋で飲み屋を営業し、中国
製バイクを持っているからだ。エンジンがついた乗りものは、この村ではステータスシンボルだ。
「飲み屋のほうもさっぱりだよ。少しはもうけられると思ってはじめたんだけどね。このあたり
のやつらは貧乏すぎて、飲む金さえないんだ。トマトじゃ嫁げないからね」
クワシ・フォスの畑で収穫を手伝った日雇労働者たちは、飲み屋もバイクも持っていない。ある
のは自分の腕だけだ。借金をするのも難しいので、あまり農薬も買えない。だがそんな彼らも、
フォスと同じように「トマトは博打だ」と口をそろえる。それほどリスクが大きいのだ。とくに、土
地を持たない小作農は近年ますます慎重になっており、借りる畑の面積をどんどん減らしている。
畑で働いていたひとりの青年が、トマトにまつわる自らの不運について語った。
「数年前、ぼくはIエーカーの土地を借りて、大量のトマトを収穫しました。翌年、がんばって
もっといっぱいトマトを作ろうと、たくさん借金をして前の年より広い上地を借りました。
でも、その年の収穫期が終わったとき、ぼくはすべてを失いました。全然収穫できなかったんで
す。借金を返せなくなり、お金を貸してくれる人もいなくなりました。この村では、土地を持っ
ていない人間が破産すれば、誰かのために働くしかありません。何の展望もなく、ただ借金を返
すためだけに働きつづけるのです。それでリビアに渡ったんです。本当はそこからすぐにヨーロ
ッパヘ行こうと思っていたんですが、たまたまリビアに仕事が見つかりました。ぼくは節約して
お金を貯めることにしました。船で地中海を渡ってヨーロッパに行くためです。でも結局、船に
乗るのはやめました。海を渡るのがこわくなったんです。船が沈没して溺れてしまう気がして。
そんな危険はおかしたくない。でもどうにかお金を貯めることはできた。だから村へ戻ってきたん
です。椋いだお金で借金を返すことができました。そういうわけで、今ここにいるんです」
青年は、トマトが満杯に詰まった木箱に蓋をし、釘を打っている最中だった。「リビアを解放し
よう」と書かれた、オレンジ色のTシャツを看ている。わたしは、カダフィ大佐が失脚したのを
喜んでいるのかと尋ねた。青年は、ハンマーを二度振りおろす間にこう笞えた。
「まさか。ここではみんなカダフィ大佐を好きですよ。でもぼくがリビアにいたころ、あちこち
で反政府デモをやってて、このTシャツをただで配ってたんです。たまたまそれをもらっただけ
です」
第3節
トマトが詰められた木箱が、次々と三輪トラックに積みこまれる。ひとりの男が木箱をひもで荷
台に固定し、自分も荷台に乗りこむと、車はようやく出発した。これが今日最初の出荷だ。荷台
には、トマトの箱といっしょにふたりの男が乗っている。高く積まれた木箱を手でしっかり押さ
えておくのが男たちの仕事だ。でこぼこ道で車体がぐらぐらと瑶れたり、舗装道路の小さなくぼ
みにはまったりしても、ひとつもトマトを落とさずに市場まで運ばなくてはならない。
幹線道路沿いに、コンクリートブロックを製造中の人々がいた。働いているのは女性たちだ。小
さな作業場で手作りしている。炎の燃えさかる窯に薪をくべたり、セメントに砂利と水を混ぜた
り、生コンクリートを型に入れたりしている。みんな、保護服も手袋もつけずに素手のままだ。
焼かれた原材料から悪臭のする煙が上っているのに、マスクもつけていない。この建築材料で金
を椋ぐために、一日中胸がむかつく煙を扱いつづけているのだ。そこから少し離れたところに川
があり、母親と子どもたちがからだを況っていた。その上流では、ひとりの男性がプラスティッ
クタンクに水を汲み、農薬の原液を希釈していた。
ガーナでは、いまだに上下水道の整備が造んでいない。構造調整計画や経済回復計画の一環で、
1993年からおよそ20年にわたって上下水道の改革が行なわれてきた。政府だけでなく、民
間の業者にも委託して取り組んできた。だが、少しも状況は改善されていない。おそらく予算が
大幅に足りないのだろう、高い水道料金を徴収しないかがり、水質が劣化したり、水の供給が止
まったりするのはどうにもならない。
そのため、この国では水ビジネスが成り立っている。小さなビニール袋に水を詰め、トラックで
巡回して売っているのだ。水ビジネスに関して、ガーナではもはややりたい放題だ。ビニール袋
に水を充堀する機械さえ手に入れれば、誰でもどこでも始められる。あとはどこかで水を汲んで
くるだけだ。だが、それがどんな水であろうが気にするひとはほとんどいない。飲用に適さない
水が平気で売られているのが現状だ。しかし、決まった販売ルートがあるわけではないので摘発
するのが難しい。こうして、金もうけに目がくらんだ人間のせいで、飲用にふさわしくない水が売られ、とき
に大きな健康被害をもたらしている。小さなビニール袋から水を飲んでいる人の姿は、ガーナのあちこち
で見かける。一袋20セントから50セントくらいの価格で、全国で年間45億ユーロ相当の売上があるとい
う。
郊外の村では、衛生的なトイレが見つかることはほとんどない。だからガーナの人たちはよく道端で排尿
する。世界保健機関(WHO)によると、匪界人口の3分の1近くが自宅に適切なトイレを備えておらず、ガ
ーナはそうした家が多い国のワースト10カ国に入るという。ガーナ人の実に85パ-セントが衛生的なト
イレを使用できず、コレラなどの伝染病の大流行が危惧されている。
第4節
トマト市場は国道10号線沿いにある。大都市のクマシから隣国ブルキナ・ファソまで北に延び
る、主要幹線道路のひとつだ。三輪トラックはこの道路を通って、トマト畑と市場の間を日に何
度も往復する。
三輪トラックが市場に到着すると、荷台に立っていたふたりの男とドライバーが、トマトの荷下
ろしに取りかかる。すべての積荷を下ろしたら、次のトマトを運んでくるためにまた畑に戻る。
木箱を積んでは下ろし、積んでは下ろし……それが一日中何度も続く。そして17時ごろ、市場
に別のトラックがやってきて、運びこまれたトマトをクマシやアクラなど別の町の市場に運んで
いく。
男たちが荷下ろしをしているそばで、女たちが数量を確認し、袖に日よけをかぶせていた。太い
フェルトペンで、それぞれの箱に印をつける。「イエス」「神」といった誰でも知っている単語、
お祈りで使われる賛辞のことば、あるいは適当な記号を書いて、ひとつひとつの箱の区別がつく
ようにするのだ。女たちはここでは「女王」と呼ばれる。ガーナのトマト流通になくてはならな
い存在だ。傷みやすいトマトがなるべく素早く流通されるようはからい、燭台によっては卸売業
者のように遠くの村までトマトを買いつけに行くこともある。市場から遠く隨れた村のトマト生
産者は、「女王」が買いつけに来るのをじっと待っている。「女王」が来ないとトマトの収穫す
らしない者もいる。一女王」は自腹でトマトの代金を生産者に支払い、物流の手配もする。畑に
トラックを呼び、箱に詰めたトマトを荷台に載せて市場まで運ばせるのだ。
「女王」はトマト生産者だけでなく、大都市の商社のツテも持っている。取引はすべて相互合意
だ。トマト生産者にとって、取引の相手は商社ではなく「女王」なので、買値が低すぎると「女
王」に対して文句を言う。確かに「女王」のなかには、生産者の立場が弱いのを利用して、トマ
トを安く買いたたこうとする者もいる。だが基本的に、「女王」は自分勝手にトマトの値段を決
めることはできない。トマトの品質や市場のニーズから判断しているのだ。うまく立ち回って社
会的に成功する「女王」もいる。流通ネットワークにおいて高い地位を占め、業界に対して大き
な影響力を持つ者もいる。だが通常、「女王」が市場を独占しようと謀ったり、財産を蓄えたり
することはない。むしろ、生産者のために物流を手配し、売れるかどうか確証のないトマトを自
腹で購入することで、大きなリスクを負っている。
ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』
この項つづく
● 台風12号 焼岳へGO!延期
台風12号では延期することに。30日以降となる。今夜から明日にかけての被災拡大が心配だ。
● 今夜の一曲