5.公冶長 こうやちょう
ことば------------------------------------------------------------------
全28章のほとんどすべてが人物批評である。
人に禦る(あたる)に口給をもってすれば、しばしば人に憎まる」(5)
「道行なわれず、俘 (いかだ)に乗りて海に浮かばん」(7)
「回や一を聞きてもって十を知る。賜や一を聞きてもって二を知る」(9)
「われいまだその過ちを見て、内にみずから訟むる者を見ず」(27)
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27 自分の遜ちに気づいたら自分で自分を責める。こんな人間に一度も出くわ
したことがないとは、 なんと嘆かわしいことではないか。(孔子)
子曰、已矣乎、吾未見能見其過、而内自訟者也。
Confucius said,"How incurable! I have never seen a person who admits his
fault and regrets it."
【ポストエネルギー革命序論17】
金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)とは、金属と有機リガンドが相互作用を
もち、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質の配位ネットワーク構造を
もつ材料。ガス吸着や分離技術、センサーや触媒などへの応用が期待される、3次元ミクロポ
ーラス材料。最もよく研究されている2つのMOF───「MOF-5」と「HKUST-1」は1999年に初
めて報告され、MOF-5は、有機リンカーとしてテレフタル酸ジアニオンを持つZn(II)クラス
ターで構成(下図2左)。表面への多層ガス吸着が可能で、MOF-5のBET表面積は約3,500 m2/g、
また、後者のHKUST-1(別名:Basolite® C 300、688614)は、トリメシン酸トリアニオンでリ
ンクしたpaddlewheel型Cu(II)ダイマーで構成、その表面積は約1,900 m2/gです(下図1右)。
既知材料のなかで最も高表面積な物質の1つである「MOF-177(Basolite® Z377、794325」は、
MOF-5と同じ金属クラスターと、非直線的な構造の、H3BTBと呼ばれるトリトピック(tritopic)
カルボン酸の1,3,5-tris(4’-carboxyphenyl)benzene(686859)から構成(下図2)。MOF-177
は、MOF-5と同じ条件下(N,N-ジエチルホルムアミド、100℃)で合成され、そのBET表面積は
4,750 m2/gに達す。
MOF 1キログラムで太陽エネルギーだけで、乾燥空気から1日当たり、200mlの水を製造で
きる。昨年10月、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームがアリゾナの砂漠で、試作
した"ウォーターハーベスタ"で、太陽光電池の以外の電力を使わずに大気中から水の製造実証
の成功を公表。今回、2017年同チームが予測し、大型の次世代型収穫機の実証。水分収穫機は
毎日夜サイクル、低湿度環境下で低コストで製造でき、世界の乾燥地域で使用できる。。スコ
ッツデールでの試験では、相対湿度が夜間で最高40パーセントから昼間の最低8パーセントの
範囲で変動下で高価な金属ジルコニウムから作られた現在のMOF(MOF-801)で、最終的に1キ
ログラム(2.2ポンド)のMOF、または85グラムあたり約200ミリリットル(約198グラム)
の水が収穫できる。アルミニウムをベースにしたMOF-303のMOFでは1500倍安く、実験室試
験で、2倍の水を凝縮回収可能となる。れにより、新世代の収穫機は1キログラムのMOFから
1日当たり400ml(3カップ)以上の水のBerkeley News" href="https://news.berkeley.edu/2018/06/08/in-desert-trials-next-generation-water-harvester-delivers-fresh-water-from-air/" target="_blank">
このシステムは、既に商業用集水装置開発しスタートアップしている。アルミニウムMなため、サウジアラビアのリヤドにあるKing Abdul Aziz科学技術都市のナノマテリアルと
クリーンエネルギセンタで取り組みが始まっている。砂糖型立方体サイズのMOFは6つのフッ
トボール競技場のサイズの内部製造か可能となる。
ととし、加熱されることで素早く放出し、水素燃料自動車用吸収材料、二酸化炭素の吸収材、
メタン貯蔵材など、さまざまな種類MOFがテスト段階にある。
数年前、水を容易に吸収および放出するMOF-801を作成し、昨年、周囲空気から水を吸収し太
陽熱で除湿・水回収できるか実証試験したものの失敗。同収穫装置で、今年初めに砂漠で同
様に試験を行い成功する。今回の成果報告によると湿度、温度、日射強度を変え最新装置で
実証試験を行う。製造装置は、内側の箱で湿気を吸収するため、2平方フィート(約0.2平
方メートル)のMOF材格納層を肯定しておく。これは透明な上面と側面を持つ60センチメー
トルのプラスチック製の立方体に入れ。表面は空気を流入させMOFと接触させるため開放して
おき加熱・脱水回収するため、日中交換する。回収された水は外箱の内側に凝縮して底に落
ち、手動で吸引し回収。大規模な実証試験は、MOF材の種類や設置場所のさまざまな条件に合
わせハーベスタを構成できるように設計する。重要なのことは低湿度で操作していることで
ある。今後、アルミベースMOFをテストし、夏の終わりにデスバレー──昼間で43℃度~夜
間21℃の範囲、夜間湿度は25パーセント未満───で行う予定。
【サーマルタイル事業篇:距離場放射熱伝達装置】 ユタ大学の研究グループは、廃熱を使用可能エネルギーに変換するチップを開発。より多く
の熱放射を電気に変換する「デバイス」としても知られるシリコンチップを作製し、従来法
より多くの電気を生み出す方法を考案。これにより、ノートパソコンや携帯電話のようにバ
ッテリー寿命がずっと長くなり、太陽電池パネルのように放射熱をエネルギーに変換する効
率が大幅に向上する可能性がある。
毎年米国で消費されるエネルギーの3分の2もが熱損失される。 たとえば、自動車のエンジ
ン、ラップトップコンピュータ、携帯電話、さらには冷蔵庫など。7月1日、ユタ大学の研
究グループは、熱放射を電気に変換する「デバイス」のシリコンチップを作製し、想定以上
に廃熱から電気を生み出す方法を発見たことを公表。それによると、熱放射(熱)からどれ
だけのエネルギーを生み出すことができるか、理論的な「黒体限界」があると考えられてい
たが、2つのシリコン表面の接近するデバイスを作製することで、黒体限界をはるかに超え
てより多くのエネルギー変換できることを実証、2枚のシリコンウェハを5mm×5mmのチッ
プ(消しゴムの頭ほどの大きさ)にして、それらの間のナノスコピックギャプをたった100ナ
ノメートルの厚さにした。チップが真空中にある間、それらは一方の表面を加熱しそして他
方の表面を冷却し、電気を発生させる熱流束を作り出した。このようにエネルギーを生成す
るという概念は特殊なものではないが、同グループは、互いに触れずに2つのシリコン表面
を微視的なスケールで均一に密着させる方法を考案。互いに近ければ近いほど、より多くの
電気を生み出すことができることを実証する。
※国体限界:波長の光を吸収・放出できる理想的な物体からの放射の程度が導かれる.通常
の物体は黒体のように全ての波長の光を放出できす、放射の量は黒体を下回る.つまり,通
常の熱放射においては黒体の放射率が最も高い限界が定められている。この限界を超え,よ
り高効率に熱を逃がすことは出来ないかの反質に、実は,黒体放射の定式化にあって,計算
を簡単にするためいくつかの仮定が用いられている.❶その一つは「遠隔場のみを取り扱う。
光源から出る光には,遠くまで伝播していく遠隔場(いわゆる通常の光)とは別に,物体表
面(波長程度のサイズ)にまとわりつくような近接場光というものが同時に存在する.非常
に近接した距離に熱源(放射源)と受光体を置くと,この近接場光も介することで通常の放
射以上に熱を伝達でき,黒体放射を大きく超える熱伝導を成し遂げられることが近年実証さ
れている.❷もう一つの別の仮定は,放射源が波長に比べ十分大きいマクロな物体である,
というもの.つまり,ナノサイズの物体の場合はプランクの黒体放射の式は成り立たず,よ
り大きな放射が実現する可能性は排除できない.しかしながらこれまでの研究では,球状の
ナノ粒子や円柱状のナノワイヤーでは,黒体を超えるような放射は実現出来ないことが報告
されていが、厚みが波長より十分小さいナノシートを用いると,黒体放射の式より2桁も大
きな熱伝達が可能であったという実験結果および計算上の検証が提出されている(上図参照)。.
この報告は、❷のケースにあてはまり、ナノスケールでの原理実証を行った。将来的には、
このような技術がラップトップやスマートフォンのような携帯機器を冷却するだけでなく、
その熱をより多くのバッテリー寿命、おそらくは最大50%も多く消費利用できる。たとえ
ば、6時間の充電があるラップトップは9時間にジャンプする可能性があるというわけだ。
チップは太陽熱からの電気量を増やすことで、または自動車から電気システムに電力供給支
援のため、エンジンからの廃熱熱でソーラーパネル効率が改善できる。また、交換可能な電
池を必要としないペースメーカーのような埋め込み型医療機器に適用設計できる。
もう1つの利点は、このような技術が、コンピュータプロセッサを低温に飯地し、損耗を減
らすことでコンピュータプロセッサの寿命が延ばせ、それ以外の場合では、ファンがプロセ
ッサの冷却エネルギーが節約できる。それは環境改善に役立つかもしれない。電気としてシ
ステムに熱を回収し、今、ただ大気中に放出だけであり、部屋を暖めるには、ACを使い部屋
を冷やす必要がある。これはより多くのエネルギーを浪費する。
面白いですね。デジタル革命+ネオコンバーテック→エネルギー革命。
【ロシアの最新宇宙衛星用有機太陽電池技術】
ロシアのSkoltech科学技術研究所の科学者たちは、記録的に高い放射線安定性を持つ太陽電
池を実証。有機高分子化合物をベースにしたセルは、地球の低軌道で衛星に電力を供給する
という要件を満たすための有力な候補になる可能性があると語る。モスクワのSkolkovo科学
技術研究所(Skoltech)が率いるチームは、6,000グレイ単位(Gy)のガンマ線に耐えること
ができる有機太陽電池を実証した、と同研究所は記録的に高い成果を上げた。
性能が向上することで、セルが地球に近い軌道で衛星に電力を供給できることが期待される。
研究者らは、この装置が10年をはるかに超える運用寿命を提供できると理論付けた。
セルは、ACS(Applied Materials & Interfaces)に掲載されたフラーレン誘導体および
カルバゾール含有共役ポリマーに基づく有機太陽電池の印象的放射安定性に記載されている。
これらの装置は、カルバゾール系ポリマーとフラーレン誘導体との混合物に基づく。
試験は、これらの材料の複合フィルムが、最大吸収線量6,500 Gyにさらされた後でも、初期
の変換効率の80%以上を維持する。NASAは、地球中心軌道上の衛星は年間平均160 Gyの放射
線量にさらされていると推定しており、Skoltechチームによってテストされた有機化合物は
10年以上にわたってそのような環境で効果的に動作する強力な候補となる。
この論文は、衛星電力用途に有機PVを使用することのさらなる利点(高い電力対重量比、
および柔軟性を含む)に注目。柔軟なプラスチック太陽電池で作られた宇宙用ソーラーセイ
ルを展開することは、衛星の光電変換器のパワーを高めるための魅力的な機会である。同グ
ループが最近、鉛ベースのペロブスカイトのグループを同様の用途で評価し、5,000 Gyの放
射線にさらされるとセルが急速に劣化することがわかった。一方、中国の研究グループは、
地球の表面から35km離れたところに酸素が含まれていないことをペロブスカイトの利点に役
立つことを発見する。宇宙でエネルギー源を必要とする衛星は、主にⅢ-V族太陽電池に頼っ
てきた。有機PVやペロブスカイトなどの代替概念は、潜在的にはるかに安価な代替手段を提
供できる。
【続・引き寄せられる混沌Ⅴ:7040問題を考える】
第四章 少子化対策を成長の基盤にする
4-1 少子化対策という成長の基盤
少子高齢社会は、経済成長にとっては大きな困難をもたらします。そもそも経済成長の見込
みなどない社会だと言う人も少なくありません。これからの日本は、経済成長をめざすので
はなく、人口減少や縮小経済の中でどのように生きるかを考えるしかないとまで言う人もい
ます。少子高齢社会は、生産年齢人口が縮小する社会です。つまhへ生産に携わる労働力人
口が減少します。また、人口全体の縮小も起こり、消費の需要が縮小します。さらに社会保
障費の拡大を招き、いわゆる国民負担を増大させます。そのため、たしかに少子高齢社会は
経済成長にとってはネガティブな要因でしかないように思われます。では、少子高齢化とい
ういわば逆境を、むしろ成長への基盤へと転換する方法はないのでしょうか。
4-1-1 縮小する日本の人口
図表4‐1は、2012年に・国立例会保障・人目問題研究所が発 八した今後100年間の
人目指訓を表していますが、減少のスピ ードと規模は想像を超えろほどです。これによると、
今から33年後の2048年に人口は1億人を割り、52年後の2067年には8000万人を
下回っていき、2110年にはほぼ4300万人と、現在の3分の1に縮小してしまいます。
政府の一部では、将来人口の数値目標として、50年後にも1億人程度を維持するというこ
とが検討されています(2014年5月13日報道)。当時の50年後というと2064年です
が、その時点での人口の推計値は8245万人でしかありません。1億人を1755 万人
も下回っています。「50年後にも1他人」を維持するのは、正直、非常に難しい目標です、
人口減少が成長にとってマイナスなのは、疑う余地かおりません。人口減少は、生産の面で
も消費の面でも、経済規模の縮小を招く大きな要因です。したがって、少子高齢社会におけ
る成長戦略という課題にとって、まず第一に考えなければならないことは、少子化という趨
勢を食い止め出生数の増大へと導くということであるはずです。しかし「そんなことは不可
能だ」という声がすぐに聞こえてきます。実際、容易なことでないのは事実です。けれども
歴史的に見れば、一度大きく低下した出生率がその後大きく回復した社会がないわけでは
ありません。最も有名なのがフランスです。フランスは19世紀の末から、人口 の少なさに
苦しんできました。じつは、この時期の合計特殊出生率は、それほど低くはありません。正
確な統計データは手元にないの ですが、おおむね2・7くらいを維持していたと推測されま
す。人口も緩やかに増加しています。ただ、この時期に問題だったのは、 周囲の他国、とく
にドイツと比べて人口増加率が低迷していたことです。もっとも、第一次大戦期と第二次大
戦期にはフランスの人口は減少しています。
1930年代の戦間期にも、どちらかといえば人口減が見られます。19世紀末から第二次
大戦までは、合計特殊出生率はおおむね2・O以上を維持していたのですが、死亡率も高
かったために、人口増が見られなかったということになります、第二次大戦後になると合
計特殊出生率は大幅に増大して、3・0前後で推移していました。人口も順調に増加して
います。ところが、1960年代の後半から合計特殊出生率は低下し始め、1993年に
は1・66へと低下してしまいました。フランスが本格的に 少子化対策に乗り出すのは、
この頃からです。
そうした政策が功を奏したのかどうか、その後合計特殊出生率は 回復していき、2010
年には2・Oを上回っています。もう一つの例がスウェーデンです。20世紀以降のスウェ
ーデンの合計特殊出生率の推移を見ると、3度も落ち込みの波に襲われています。最初は、
第二次大戦前の1930年代で、それまで2・O以上を保っていたのが1934年には
1・67にまで低下しました。その後、上昇に転じ、大戦に巻き込まれなかったためか、
1945年には2・63という高出生率を示しています。しかし再び低下過程に入り、1
970年代~80年代はI・6~I・8の付近で推移しました,けれど、これもまた198
0年代後半から急速に回復して、1990年には2・13に達したのです。ところが、そ
の後3度目の低下に見舞われ、1998年には過去最低の1・50まで落ち込んでしまい
ました。しかし、これもまた上昇に転じ、2010 年には1・98となっています。フラ
ンスにしても、スウェーデンにしても、合計特殊出生率のこのような上下変動の要因が十
分に解明されているわけではありません。しかし、とりあえずここで重要なことは、「い
ったん落ち込んだ出生率も、再び増加し、2・O近くにまで回復する可能性はある」とい
うことです。
日本ですら、これまでの最低は2005年の1・26でした。それが、2013年には1・
43へと、わずかですが上昇してきているのです。
4-1-2 少子化対策とGDPの成長
少子化を食い止めること、できれば人口の減少を食い止めることは、日本社会の長期的な
繁栄にとって最大の要件をなしていると言っていいでしょう。そのためには、徹底的に資
源を投入しても構わないと考えてもいいのではないでしょうか。こういうたとえを嫌う人
もいるかもしれませんが、これは自衛戦争に似ていると考えてもいいように思います。自
衛戦争においては、まさに自分たちの独立した社会が維持できるかどうかの瀬戸際に立だ
されています。その場合、国力を挙げて自衛に取り組むというのは当たり前なことでしょ
う。直接的な戦闘員としてだけでなく、生産資源も徹底的に防衛産業に向けられることに
なります。そうしたとしても、そこにはムダはないといえます、自衛戦争では、社会の存
立が短期的な危機にさらされています。が、少子化は長期的に存立の危機を招いています。
その危機の克服 のために徹底的に資源を役人することは、決して悪いことではありません。
さて、少子化対策としての政策は、「短期的」な経済との関係で 分けると、大きく次の3
種類の可能性を考えることができます。
(1)GDPを拡大させる可能性のあるもの。
(2)GDPに対して中立的なもの。
(3)GDPを縮小させる可能性のあるもの。
少子化対策それ自体がGDPを拡大させるという(I)の可能性を強調しても、にわかに
は信じない人が多いかもしれません。多くの人は、社会保障費を増やすとGDPにとって
マイナスだと思い込んでいますが、これはまったくの誤解です。じつは、これは社会保障
とGDPとの関係の重要な点の一つです。直接的にGDPを拡大させる政策の代表には、
保育サービスの充実があります。保育園の増設、保育生の増員、保育定員の拡大等々は、
確実にGDPを増加させます。「保育サービスの提供=保育サービスの購入」は、付加価
値の生産になっているからです。たとえば、専業主婦の人が、無職を継続しながら子ども
を保育園に預けるとします。この場合には、GDPの拡大はそれほど大きくはありません
が、それでも多少のブラスになります。保育園に預けるということは、保育サービスを購
入することだからです。したがって、保育園に預けないという選択肢と、預けるという選
択肢を 比較すれば、明確に、預けることで子ども一人分の保育サービス生 産という付加
価値が生まれているのです。もちろん、この付加価値の大部分は保育生の報酬に分配され
ます。今は専業主婦ですが、子どもを保育園に預けることができれば働きに出たいと考え
ている母親の場合には、GDPを拡大させる効果はよりはっきりしたものになります。こ
の場合には、保育サービスが生産されることに加えて、母親の就労による付加価値の生産
が加わるからです。
※日本の少子化対策の問題状況については、松田茂樹氏の『少子化 論-なぜまだ結婚、出
産しやすい国にならないのかI(勁草書房、2013年)に詳しく分析されています。
4-1-3 保育の市場化の意味
ここでおそらく、多くの人はこう思うのではないでしょうか。「かつては子育ては家庭の
中で行われていた,保育というのは、母親の仕事であった。それが、単に他の人が保育に
携わるというだけで、何でGDPが増えるのか。かりに増えたとしても、それは実質的に
は経済全体としてプラスになったと見なすことはできないのではないか」この疑問は、あ
る意味では当然だといえるでしょう。同じ仕事でありながら、母親が家庭の中で行うとき
はGDPにはカウントされず、別の人が家庭の外で行うときはカウントされるというのは、
何 かおかしい感じがします。 しかし、じつは同じようなことは、保育に限らず、家事サ
ービス全般に関わっているのです。まず外食産業がそうです。自宅で臭さんの手料理を食
べるときは、材料費以外にはGDPに関係しませんが、レストランで外食するときはGD
Pに寄与しています。学習塾もそうです。自宅で親が子どもの勉強を見ているだけだと、
GDPには関係ありません。それが、学習塾に通うようになれば、塾サービスの生産が関
わってきます,ここで何か違ってきているかといえば、「経済取引」の量です。家庭内の
仕事は経済的な取引ではありません。それに対して、同じ仕事を家庭の外の人のサービス
として購入するときは、経済取引になります。したがって、社会全体の(貨幣価値で表し
た)経済取引 の量が増えることになります。 GDPというのは「国内で生産された付加
価値の総額」だと言いましたが、ここで「生産された」という意味は、「経済的に取引さ
れた」という意味も含んでいます。たとえば、ロビンソン・クルーソーのように、何から
何まで自分一人で生産し、それを消費して生活している人がいるとしましょう。その人の
「生産」したものは、「誰によっても購入されません」。そのため、その人が生産したも
のは、残念ながらGDPにはカウントされないのです。ある人が生産したもの(サービス
もきむ)を他の人が買うという取引があるということは、その生産という行為が、その人
だけの世界から、ほかの人が関係する世界へとつながっていることを意味します。そこで
生産されたものは、その人だけでなく、ほかの人にとっても価値のあるものだ、というこ
とです。そのように、経済取引が成立するということは、生産という行為が「他者にとっ
ても価値のある」行為であることの証しです。GDPという概念は、価格という指標を用
いて、そうした行為の全体的な総量を測定したものになっているのです。
盛山和夫著『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』
第四章 少子化対策を成長の基盤にする
この項つづく
● 今夜の一曲
竹内まりや 人生の扉
協和発酵(現・協和発酵キリン)CMソングとして発売前からOAされていた楽曲。NHKの番組
『SONGS』ではこの曲を山梨県のスタジオで披露。本作の核であり アルバムタイトルの「デ
ニム」はこの楽曲の歌詞から取られている。後に本作には収録されていないが、2007年8月
8日に当時の完全なる新曲である『チャンスの前髪』と両A面でジャケットを緒形拳の題字
でシングルカット。2008年10月30日に渋谷クラブクアトロで行なわれたセンチメンタル・シ
ティ・ロマンスの35周年記念ライブにゲスト出演しライブで初めて演奏。また、同年12月
28日に大阪フェスティバルホールにて行なわれた山下達郎のライブのアンコールに「私から
もフェスティバルホールにさよならを言わせて欲しい。」とゲスト出演した際にも演奏され
る。
● 今夜の寸評:デジタル課税と国際連帯税
フランスと米国がデジタル課税───国際的な大手IT企業に課税する各国の政策───を巡
る鬩ぎ合っている。。工場や事務所などに拠点を置く企業が現地で課される法人税を納めて
いるのに対し、これらのIT企業はタックスヘブン───法人所得や利子,配当,使用料など
に対して税制上の特典を設けている国または地域のことをいい、これらの国または地域では
,通常は税制上の優遇措置に加えて為替管理,会社法などの面でも特別の規定が定められて
おり,多国籍企業が名目だけの会社を設立し収益をそこに集中して税金逃れをはかったり,
資金操作に利用したりする例が多く、経済協力開発機構 OECDの「有害な税の競争」報告書
(1998)は,タックス・ヘイブンの(1) 無税または名目的な課税,(2) 他国と実効的な情報
交換を行なっていないこと,(3) 透明性の欠如,(4) 実質的活動の欠如などの識別要素──
をあげている───よろしく、税率の低い国や地域に利益を移すことで納税額を減らす脱税
行為に対する規制強化の動き───EUは加盟国共通のルールを創設するため、売上高の3%に
課税する案などを検討しているが、低税率を武器に企業を誘致してきたデンマークやアイル
ランドなどが反対したことで、当初目標としていた2018年末までの合意は断念───がある。
一方で、気候変動や貧困、疫病などの地球規模の問題への対策資金を創出するための、革新
的資金メカニズム(IFM)構想のひとつとして、国境を越えて展開される経済活動に対し課
税し、その税収を途上国向けの開発支援などに活用することを目的とした国際連帯税はいま
だ協議中で實視されていない。「グローバル化と格差拡大」の対抗政策と不正監視と不正抑
止を目的とした国際法の再構築を急ぐべき、世界の安寧と安定ののため日本政府は前向きに
行動すべきであろう。