● 真空ミキサーの魅力って?
寝付けないときに何気なく深夜テレビをつけるとテレビショッピングの番組がやたらと多い。それほど
ネット販売が市民権をえたということだろうが、気になるとなぜこんな商品が販売されるのだろうと興味
が引かれるときがある。今夜は、真空ミキサー(テスコム社製)だ。容器内部を0.3気圧まで下げてから
攪拌することで、酸素による酸化を防ぎつつ、気泡による分散溶解障害を取り除き、口あたりがな滑らか
で栄養価も高い生ジュースができるという。ネット検索してみると2つのメーカーの比較表が掲載されて
いたが、加熱もできる真空ミキサー 「らくっく」(株式会社 エスキュービズム・エレクトリック)とい
う商品も追っかけるように発売されているから、競合のすごさをあらためて感心する。
されていたが、加熱もできる真空ミキサー 「らくっく」(株式会社 エスキュービズム・エレクトリッこ
の商品は、真空、攪拌機能に加え、加熱(煮込む、蒸す、茹でる)に加え、真空保存の機能を1台で兼用
できるというものだが、使い勝手という意味で普及していくのかどうか分からないというのが率直な感想
である。それにしても凄い時代に暮らしていることに小さな驚きを感じる毎日だ。
● 最新のバイオマス燃料転換生物工学
株式会社IHI、国立大学法人神戸大学、株式会社ネオ・モルガン研究所が、NEDOの委託事業「戦
略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業」の鹿児島県内にバイオ燃料用藻類(ボツリオコッカ
ス)の屋外大規模培養※の試験設備を建設し、運用開始するという。目的は将来的に、微細藻由来バイオ
燃料製造に係るコスト低減に資するプロセス全体の改良という。具体的には、増殖性に優れたボツリオコ
ッカス株を活用し、2013年度は100㎡ 規模での屋外安定培養に成功し、加えてコスト低減対策に、増殖性
の高さに加え、藻体径の増大、浮上性の向上といった事業化での製造コスト削減に資する有用形質を集約
した新株の獲得にも成功している。
鹿児島市七ツ島に、国内最大級の1,500㎡にスケールアップした培養池を有する屋外大規模培養試験設備
を設置、安定的な藻体量産技術の確立を進めていくという(2015年3月完成予定)。、屋外大規模培養試験
と並行し、将来の事業実施場所の選定(海外を想定)を進めると共に、燃料製造コスト低減に向けたプロ
セス全体の改良を進める。
※ 神戸大学榎本平教授が顧問を務める有限会社ジーン・アンド・ジーンテクノロジー(代表:榎本武)
が所有する高速増殖型ボツリオコッカス株。なお、NEDO本委託事業の成果を含め、株式会社IHI、株
式会社ネオ・モルガン研究所と有限会社ジーン・アンド・ジーンテクノロジーは、2011年にIHI NeoG
Algae合同会社を設立し(代表:藤田朋宏)、藻類を活用したバイオ燃料製造の技術開発に取り組ん
でいる。
● 微小藻類のインキュベート技術
微小藻類を成長させるための従来の方法の1つとしては、それを密閉遮光システムで従属栄養培養するも
のである。エネルギー源として光の代わりに有機炭素を用いることによる、従属栄養成長条件下での水生
微小藻類の大スケールでの生産のための技術が開発されている。クロレラ、スポンジオコッカムやプロト
セカなどの藻類からタンパク質や色素を従属栄養によって生産するためのプロセスが提案されている。加
えて、藻類の従属栄養培養では、光独立栄養培養よりも非常に高い密度を得ることができるが、限られた
数の微小藻類株のみ従属栄養条件で成長しているから、すべての微小藻類に適用可能というわけではない。
従属栄養条件で微小藻類を成長させる試みは、多くの場合、従属栄養条件で成長可能である株のスクリー
ニング、またはそのような条件下での成長を可能とする生物の遺伝子改変を含む。糖の適切な輸送システ
ムを有し、従属栄養条件で自然に成長可能な微小藻類は、成長速度が遅いか、または商業的興味のある物
質の産生が少ないことが多く、それは、藻類が、代謝の面を制御する環境シグナルとして太陽光を利用し、
光合成によって作り出されるエネルギーを利用するように長い年月をかけて進化してきたことによる。
微小藻類を含む光合成生物のほとんどは、自身の成長および生存を最適化するための環境シグナルとして
光を用いる。光シグナルは、赤/遠赤色光の光受容体(フィトクロム)および青色光の光受容体(クリプ
トクロムおよびNPH)を含む種々の光受容体で感知される。光は、生理学的および発達プロセスを制御
する環境シグナルとして働き、無機炭素の還元を促進するエネルギーを供給するが、特定の条件下では、
光は、有害となる可能性も有する。光阻害が発生するのは、葉緑体によって吸収された光子束が非常に多
い場合(強光条件下)、または光エネルギーの流入が消費能力を超える場合(細胞がエネルギー源として
還元炭素を用いる混合栄養条件下)のいずれかである。混合栄養条件下において、光合成生物は、独立栄
養条件よりも相当に低い光強度にて光阻害を示し、それは、カルビン回路のフィードバック機構により、
合成器官を通して吸収された電子を効率的に使用することができないからである。
吸収された光エネルギーは、色素ベッド内に励起されたクロロフィル分子を蓄積させ、光化学系を損傷さ
せることがある。過剰な励起の結果として色素ベッド内に蓄積された励起されたクロロフィル分子はまた、
スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、および一重項酸素などの活性酸素種の発生も促進し得る。具
体的な提案では、従属栄養成長条件下にて、微小藻類を成長させるのに十分な時間、微小藻類をインキュ
ベート――従属栄養成長条件は、炭素源を含有する培地を含み、従属栄養条件として低放射照度光も含み、
微小藻類は、ボツリオコッカス株であり、炭素源は、グルコースであり、低放射照度光は、1~10μモ
ル光子m-2s-1などである(下図参照)。
以上の提案を踏まえつつ、ボツリオコッカス株を実用的な培養方法として、このプロジェクトでは様々な
研究開発の成果が用いられている。その1つが「特開2008-099556 閉環状二本鎖DNAを用いた、目的
遺伝子の迅速な抽出・精製・クローニング方法」があり、遺伝子の分離、精製、クローニング方法」――プ
ローブDNA配列と固層粒子とを含むプローブDNA複合体粒子に閉環状二本鎖DNAをハイブリダイズさせるこ
とで目的遺伝子DNA配列が組み込まれた閉環状二本鎖DNAを、宿主細胞に直接トランスフェクション可能な
形状で固層粒子に回収し溶出溶液で溶出し、これを宿主細胞に導入して、目的遺伝子を迅速に抽出・精製・
クローニングする――ことで、目的遺伝子を含むあらゆる由来、サイズ、配列等の閉環状二本鎖DNAを、
迅速、正確、かつ効率よく分離、精製、クローニングができ、従来数日から数週間必要としたクローニン
グ操作を、わずか1日(24時間以内)で完了するというものである(下図参照)。
リグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを製造する技術として、バイオマスを加圧熱水で処
理(水熱処理)し、得られた固液混合物を糖化酵素で処理(酵素処理)し、さらに得られた固液混合物を
固体酸触媒で処理(固体酸触媒処理)して、バイオマス中に含まれるセルロース(多糖)をグルコース(
単糖)に加水分解(糖化)し、このグルコースを発酵(発酵処理)させることでバイオエタノールを製造
する技術が提案されているが、酵素処理後の固液混合物には、液体として、可溶化された多糖が含まれ、固体
として、可溶化されていない多糖(懸濁態多糖)が含まれる。ここで、固体酸触媒は固体であるが、可溶化
された多糖は液体であるため、固体酸触媒処理において、可溶化された多糖と固体酸触媒との接触効率は
高く、可溶化された多糖を効率よく単糖に加水分解することができる一方、固体である、可溶化されてい
ない多糖は、固体酸触媒との接触効率が低く、単糖への加水分解に長時間を要す。そこで、固体酸触媒処理
の多糖を効率よく加水分解することができ、単糖への加水分解に要する時間を短縮することが可能な糖液
製造装置、糖液製造方法やバイオマス由来物製造方法が下図のように提案されている。
それによると、糖液製造装置110は、リグノセルロース系バイオマスに対して水熱処理を施して、第1
固液混合物M1を生成する水熱処理部210と、第1固液混合物M1Aを酵素で加水分解させ、第2固液
混合物M2を生成する酵素処理部230と、第2固液混合物M2を粉砕する第1粉砕部(後段粉砕部24
0)と、第1粉砕部によって粉砕された第2固液混合物を、多糖から単糖への変換反応を促進する固体酸
触媒で加水分解させ、単糖を含む単糖液を生成する固体酸触媒部250とを備えることで、固体酸触媒処
理で多糖を効率よく加水分解することができ、単糖への加水分解に要する時間が短縮できる。
● バイオマスエタノール製造の最新技術
以上、バイオ燃料用藻類(ボツリオコッカス)に関わる技術を俯瞰してきたが、次にバイオエタノール製
造技術を俯瞰してみよう。下図の提案は、キシロースイソメラーゼ遺伝子とアセトアルデヒド脱水素酵素
遺伝子を導入した組換え酵母を、キシロースを含有する培地にて培養してエタノール発酵を行う工程を有
するエタノールの製造方法で、キシロース代謝能を有する酵母おけるキシロース資化及びエタノール発酵
に際して培地中の酢酸を代謝して酢酸濃度を低減でき、酢酸に起因する発酵阻害を効果的に回避すること
ができ、その結果、キシロースを糖源としたエタノール発酵の効率を高く維持することができ、優れたエ
タノール収率を達成することができる。
同様の目的で、今度は、実用的な高効率バイオエタノール生産法を構築するために、異種遺伝子を用いず
に キシルロース発酵能が強化されたSaccharomyces cerevisiae 酵母を開発――遺伝子組換え体の利用は、拡
散防止措置の必要性等から、実用化の際の障害となることが予想され、同種遺伝子のみを使用するセルフ
クローニングによってS. cerevisiae を改良し、C. glabrata 3163 dgXK1と同等の同時異性化発酵能を有する酵
母株を開発し、この酵母を使用して同時異性化発酵により、リグノセルロース系バイオマスに含まれるキ
シロースを効率良く発酵する方法が提案されている(下図参照)。この方法の成果ではスラリー濃度20%
(w/w)の稲わら糖化液に相当する 5.6 % (w/v) グルコース及び4.2 %(w/v) キシロースを含む培地を用いて
同時異性化発酵を行うことにより、St10 TEF1p-XKS1は、親株St10-1-1 やC. glabrata 3163 dgXK1よりも早く
キシロースを消費し、48時間発酵で4.3 % (w/v)のエタノールを生産する。St10 TEF1p-XKS1 のエタノー
ル収率は理論収率の85 %であり、3163 dgXK1 の収率(80%)を上回わる。
また、下図の提案では、バイオマス原料を糖化発酵処理する工程で用いる培養槽内の培養液に、少なくと
も1種類―例えばアジ化ナトリウム―以上の殺菌剤を添加してエタノールを生産する、バイオマス原料か
らのエタノール製造方法。リグノセルロースを含有するバイオマスからエタノールを製造する方法で、エ
タノール製造工程で発生する雑菌の増殖を簡易な方法で効率的に抑制することにより生産性の高いエタノ
ール製造方法を提供している。
特開2015-012857 バイオマス原料からのエタノール製造方法
● 大切な酵素糖化用原料の前処理
日本ではバイオエタノールの最小量は、1.5万kL規模と想定されているが、、稲わらでは、毎日50
メートルプール一杯のロールベールが必要となる計算されるが、稲わらは、嵩密度が小さく、輸送コスト
が高くなるという問題があり、稲わらをロールベールに成形し、屋外保管すると、腐敗してしまうという
問題もある。そこで、腐敗防止のために圃場で十分乾燥させて屋内に保管することが考えられるが、貯蔵
中の腐敗を防止するためには、収穫直後の含水率が60質量%程度である稲わらの含水率を15質量%以
下程度にまで下げる必要があり、含水率を30質量%以下にまで下げることは非常に難しく、稲刈り後の
天候が悪い北海道や日本海側の水田のような場所では、稲わらをそもそも乾燥させることができない問題
がある。また、稲わらを乾燥させることができない地域では、腐敗を防ぐために稲わらをラッピングし、
外気との接触を遮断した嫌気状態を保持した状態で屋外に保管する方法があるものの、ラッピングにかか
るコストが高いという問題がある。そのため、そもそもバイオエタノール製造に必要なバイオマスを安定
に調達が難しい状況である。
このためセルロースを含むバイオマス原料を加熱と加圧する工程と、得られた酵素糖化用原料を酵素糖化
する工程と、得られた糖を発酵しエタノールと乳酸とを製造する方法で、含水率が8質量%~25質量%
で、酵素糖化率が25%以上の酵素糖化用原料で、長期間貯蔵可能な、酵素糖化率に優れ、輸送コストが
低減可能な製造方法を提供する(下図参照)。
以上、今夜はバイオマス燃料およびエタノールの最新技術を俯瞰してみた。さて、クソして寝るか? ^^;。