だし巻きに颪大根乗せてなる 見慣れたる朝こそ平和かな
和食ブームだというが、洋食のファーストフードのそれと比べ、一番の違いを考えたとき、味噌汁、豆腐、
干物、香の物などあるが、大根の颪ものを乗せただし巻きが最右翼だと思える。スクランブル、ポーチド、
ハードボイルドにソフトボイルド、フライドエッグあるいはサニーサイドアップにターンオーバーなどイメー
ジするが、やはり一手間の違いということでは、これに勝るものないであろうし、この差異が、日本人の
センス(文化的後背景力)の良さとして、キラリと光っているのだと腑に落とし朝餉に向かう。
● 石油価格下落の行方
OPECの原油産出緩和にともない、「シェール革命」は一過性ブームに終わるかの論調――例え
ば最大手のシェルが東テキサスのシェールオイル開発から撤退したことや、日本企業も含めて、
何社かが北米シェール権益を評価損計上する動き、あるいは今冬に北米ガス価格が高騰したこと(
や、さらに北米以外で本格的なシェール開発が進んでいないなど懸念材料とした――があったも
のの、北米ガス価格の昨年平均が3・7㌦/百万BTUと低水準であったにもかかわらず、昨年
1月の米国生産量は前年同月比3・8%増であり(年間生産量は1%増)、米国エネルギー情報
局(EIA)による最新の米国ガス長期生産見通しでも、2040年までに12年生産実績の6
割弱増、年率で平均1・6%伸びる見通しにある。3月中旬のEIA報告――米国のシェールガ
ス、オイル生産に関する過去数年間の生産効率に関する統計では、ドライ・シェールガス(オイ
ル生産のない)開発は、例えば東部にある米国最大のマーセラス鉱床では、1掘削リグ当たりの
生産量が、07年から本年初めまでに10倍以上に急拡大しており、一昨年4月から現在までの
直近1年間だけでも、約2割伸びている。同鉱床全体の生産量は、07年の12億立方フィート
/日から、現在140億立方フィート/日(LNG換算で約1億2000万t/年)へ、10倍
以上に爆発的に伸び、大方の見方では20年の200億立方フィートまで、4割以上の増産見通
しである。
つまり、この強気の背景には『デジタル革命渦論』をベースとした技術革新による生産性向上で、
対原油1バーレル当たり50ドル――比較的高い平均生産コスト推定、例えばシェールガスの平
均生産コストが4~5㌦/百万BTU、シェールオイルが80㌦/バレル以上というのは各鉱床
での、いわば初期生産レートでの計算――が採算限界とされていたものが、現在では20から2
5ドルにまで逓減してしているのではと想定されている。例えば、学術的な最新推定で、現在の
米国シェールガス生産量の約40年分に当たる、約400兆立方フィートの米国内シェールガス
資源量は、生産コスト5㌦未満と試算されているから、輸入消費諸国にとっては朗報となろう。
しかしながら、天然ガスも、シェールガスも地球温暖化ガスの排出源であることに変わりなく、
これらの対策費用を内部経済化(排出権)しなければならないのである。また、シェールガスに
よる価格下落は、同時に原油・天然ガス産出国とに微妙な軋轢を増加させる――例えば、サウジ
アラビアがよりアラブ・イスラム諸国寄り(反米)の政策転換する――反動の懸念もある。
3Dプリンタに興味をもったのはつい最近のことで、2000年初頭の開発部門で事業開発の調査中
のことで、製版プロセスの版下作成技術で使用される光造形法(1980年に現在の快友国際特許事
務所弁理士小玉秀男が発明しこれを元に3Dプリンタが開発せれることになる)で、紫外線を照
射し紫外線硬化型樹脂を高速で固め3D造形するというもの。それと併行してインクジェットプ
リンタ技術の商品開発競争が激しくなっている時であった。結局、この方向には進まず色素増感
型太陽電池の開発に向かう――当然、高性能な太陽光発電パネルの事業開発を最終目標としてお
り、ウエットプロセス領域がらドライプロセス領域へのシフトを目標としていた――こととなる。
ところで、3Dプリンタとは、通常の紙に平面的に印刷するプリンターに対して、3DCAD、3DCG
データを元に立体(3次元のオブジェクト)を造形する機器。産業用ロボットの一種。通常は積
層造形法(additive manufacturing)によるものを指し、切削造形法によるものは3Dプロッタと呼ぶ。
3次元のオブジェクトを造形することを3Dプリントと呼ぶ。
初期のものは1980年代に開発され実用化していったが、それらは高価であるばかりでなく、特殊
な制御を求められるもので、1980年、小玉秀男が光造形法を発明し、また1983年にチャック・ハ
ル(英語版)が.stl(Standard Triangulated Language)という3Dデータの保存方式を発明し、1986
年3D Systems Corpを起業して、翌1987年「SLA 1」として商品化。これが初の3Dプリンタと
されるこの後も、1990年代半ばまでに様々な技術開発と製品が出されたが、それぞれ別々の名で
呼ばれ、まだ3Dプリンタ(もしくは additive manufacturing)はそれらを表す共通の言葉とはな
っていなかった。
1990年、3D印刷ともっとも広く関連づけられるPlastics extrusion技術が、Stratasys社により"fused
deposition modeling (FDM)"(熱溶解積層法)として商品化。1995年、Z Corporation社が、MITが
開発した積層造形法に基づく製品を初めて"3D printing (3DP)"の商標で販売する。これにより、
Ink jet material depositionを行う機器をおおまかに他と区別して3Dプリンタと呼ぶようになって
いった。2000年代半ばまでは安くても数百万円するため企業など事業所で導入されるのが主であ
ったが、基本特許が切れたのに伴って数万円~数十万円のものが発売され始め、個人や家庭でも
導入される。2008年から2011年にかけて、低価格の個人用3Dプリンタ市場は毎年平均346%も
の爆発的成長を遂げ、2013年には7万台が販売される。2010年は、3D Systems,Stratasysなど上位
3社で業界シェアの80%以上を占め、特に、ストラタシス社のDimension/uPrintシリーズの業界
シェアが約50%と高く、事実上の業界標準となっていた。2012年に3D SystemsがZ Corporationを併
合し、2社の争いになっている。
「3Dプリンタの発明経緯とその後の苦戦」で発明者の小玉秀男は、特許戦争に敗れた原因とし
て、(1) 外国へ特許出願しなかった(2)原理を共通する派生技術の出願もれ(3)日本出
願に「審査請求」しなかった(4)弁理士に出願を依頼しなかったことの4つを挙げている。
青色発光ダイオードの開発者でノーベル賞受賞者の中村修二が語るように、ベンチャーを育成す
る文化的後背景力が小さいことも遠因しているのかもしれない。
ともあれ、この時期も24時間、頭はフル回転の、六面八臂、発狂寸前状態。辛うじて、赤提灯
で修復させていたが、今は、老人性?鬱病状態。実現出来なかった、3Dプリンタ組み立通販キ
ットて自慰行為に耽っているというわけだが、これも馬鹿にできないぞ!と思っているわけだが、
完成したらひこにゃんのフィギアチョコをつくろうと考えている。これはこのブログでも掲載し
ていたことだが、感染したらブログ掲載しよう。
脳神経が壊れるのが痴呆症で、脳神経がやせ細るあるいは活動低下するのが鬱病であると言われ
れているが、α-リノレン酸を適量摂取することで鬱病が改善することが明確になっている。し
かし、(1)これらの必須脂肪酸は、人間の体内で合成できないため、食品から摂取しなければ
ならない。(2)しかし、料理品から必須脂肪酸を摂取しようとすると過剰になり、特に、栄養
成分ではリノール酸が過剰に摂取されることになる。リノール酸は代謝の中でアラキドン酸に変
化し、このアラキドン酸がアレルギーの原因になるため摂取量を抑えるが必要となる。
α-リノレン酸を多く含有するるアマニ種子、エゴマ種子、シソ種子、月見草種子、ボラージ種
子のうち1種以上の種子に、ゴマ種子を混合して搾油し、その後、精製処理して食用油を製造し
ている。ゴマ種子の配合率を10%~80%とし、食用油のα-リノレン酸含量が15%~55
%にし、α-リノレン酸含量を15%~55%とすることで、α-リノレン酸を適度な量摂取で
きまた、ゴマ種子の配合率を10%~80%にすることで、食用油の酸化安定性と保存安定性が
向上される方法提案されているが、酸の含量を多くしてはいるが、リノール酸の含量を考慮して
いないため、必須脂肪酸のバランスが偏り、食用油の栄養バランスが悪いという問題があり、下
図のような案が提案されている。
原料種子を混合し、この混合した種子を搾油し、食用油Sとする食用油Sの製造方法では、原料種子とし
て、エゴマ種子E、ゴマ種子Gと、ナタネ種子Nのうち少なくとも2種類の種子を選択し、これら選択した種
子を、搾油後の食用油Sの成分のうちリノール酸とα-リノレン酸との組成比率が、リノール酸:
α-リノレン酸=(0.5~5):1となるよう各種子の混合比を求めその後混合することで、
必須脂肪酸のバランスを良くして食用油の栄養バランスを良くするとともに、酸化安定性と保存
安定性を向上させるというものである。
健常者とうつ病患者のαリノレン酸やDHA、EPAなど不飽和脂肪酸の蓄積量を調べたところ、うつ
病患者の方が有意に低かったことが明らかとなっている。αリノレン酸を摂取することで、うつ
を予防する作用があると考えられている。また、妊娠・出産期には、αリノレン酸やDHA、EPAな
どの枯渇リスクが高まる。その為、産後うつ病の危険性が高まると考えられるので、特に意識し
て摂取することが推奨されていている。
● 『吉本隆明の経済学』論 Ⅷ
吉本思想に存在する、独自の「経済学」とは何か。
資本主義の先を透視する!
吉本隆明の思考には、独自の「経済学」の体系が存在する。それはマルクスともケインズと
も異なる、類例のない経済学である。本書は、これまでまとったかたちで取り出されなかっ
たその思考の宇宙を、ひとつの「絵」として完成させる試みである。経済における詩的構造
とは何か。資本主義の現在と未来をどう見通すか。吉本隆明の残していった、豊饒な思想の
核心に迫る。
はじめに
第1部 吉本隆明の経済学
第1章 言語論と経済学
第2章 原生的疎外と経済
第3章 近代経済学の「うた・ものがたり・ドラマ」
第4章 労働価値論から贈与価値論へ
第5章 生産と消費
第6章 都市経済論
第7章 贈与価値論
第8章 超資本主義
第2部 経済の詩的構造
あとがき
第7章 贈与価値
Ⅱ
モースが触れているように、「信用」という概念の起源には「名誉」という概念がひかえ
ている。氏族「間」のあいだ、氏族「内」の成員のあいだでも、「だれが二布の金持で、そ
の富をもっとも派手に消費するかを我先にと競い合」って一切の物を消費しつくすところま
でゆく。戦争とおなじように財の戦い富の戦いで、物の受贈よりも返礼を期待していないこ
とを誇示するために、たんに物や財を破壊しているとしかみえないことがあるとモースはい
っている。ここには「名誉」という概念の起源があり、その背後には呪術的な有効性が絶大
な意味をもつと解釈しなければ納得しにくい。ここで呪術的な有効性とかんがえられている
ものは、いちおうは部族や氏族や親族や家族の共同幻想の優位の観念とみなせる。
これは個々の成員の心の構えに集約すれば虚栄ということになり、共同体の構えに集約す
れば犠牲という概念になるともいえる。いずれにしろ部族や氏族や親族や家族の共同体の歴
代の伝統から贈与された呪術的な有効性にたいする返礼とみなすほかないようにみえる。わ
かしには、モースが「権利」「義務」「強制」といった概念で述べていることが、半ば納得
できていない。モースはボアスが英領コロンビアのインディアンのポトラッチについて述べ
たところを、脚注で触れている。それによるとここのインディアンのポトラッチは、ふたつ
の要点をふくんでいる。第一は債務の弁済で、たくさんの儀式や公正文書で公けに行なわれ
る。第二の目的は労働によって蓄積した財を、じぶんや子どものために投資するという意味
をもつ。贈与された方は借人物とみなし、何年か経たのちに利子をつけて贈与者やその継承
者に返す義務を負う。
ボアスのようにかんがえれば「権利」「義務」「強制」といった概念は、「投資」という
概念といっしょに生きることになる。しかしポトラッチの本質から外れているか、大切な何
かを省略しているような気がする。贈与することで大きな霊の恐怖が呼び醒される。そして
この恐怖は返礼することによってしか解消されない。この大きな言と小さな霊との循環は、
「母」系的な初期社会では「母」と子どもの二世代だけでは解消されず(いいかえれば家族
内部では解消されず)、負荷はいねば原始的に転生しながら代々蓄積される。ここに贈与と
返礼とを司る要員がかくされている。いわばフロイトが二世代について考察したものが、こ
こでは無限世代の輪廻転生の主題になっている。
Ⅲ
マリノウスキーがトロブリアンド諸島の原住民(ポリネシアン)のあいだで体験し、調査
した特異な交換のすがたを普遍化してゆくと、贈与という概念が発生した唯一の根拠は、母
系 優位の初期社会だということになる。また遂に母系優位の初期社会は、かならず贈与とい
う概念を発生させるためのものだということにもなる。いいかえればトロブリアンドという
地域や、ポリネシアンという種族ともかかわりないところまではたどりつける。こんなこと
がいえる根拠はただひとつ、「父」(夫)と母(妻)のあいだの性(交)行為と母(妻)が
子どもを出産することのあいだに、因果関係の認識がなく、母(妻)の妊娠や出産は、もっ
ぱら氏族の親しい死者の霊と母(妻)とのあいだの転生の出来ごととかんがえられていたこ
とだ。
この認識上の盲点は母系優位のままに氏族の系譜がつくられ、父(夫)は当然べつの氏族
に属するという社会組織を生みだすことになった。マリノウスキーのいうとおりだとすれば、
かれがたまたま調査したポリネシアンの種族に属するトロブリアンド諸島の原住民だけが母
系優位の地域だったとかんがえるべき根拠はないとおもえてくる。なぜなら父(夫)と母(
妻)の性(交)行為と母(妻)の妊娠や出産のあいだに関係を見いだせない時期を人類はす
べて通過したにちがいないからだ。だがなぜか人類は未開、原始、アジア的な段階の初期の
特色をおおくのこす地域と、すみやかにその段階を通った地域とに分かれ、母系優位が一定
時期以上つづいた地域だけが、ながく母系優位の社会制度を固定し、それに対応する習俗や
神話などを抱えこむことになった。そしてそうでない地域は、すみやかにこの段階を消去し
ていったとみられる。
もうひとついえば、贈与という概念や、その制度と習俗をのこしたのは、この母系優位の
段階をよりおおく保存した地域だといういい方も成り立つ。なぜそうなるのか、この問いに
かかわるようにいえば、マリノウスキーはトロブリアンドの原住民の観察から、贈与の発生
条件についていくつかの特色を見つけだしたとみなせるからである。
ひとつは、トロブリアンドの母系社会では、母(妻)と産んだ子どもは同一の母系の親族
と氏族とをつくるが、産まれた子と何の関係もないとかんがえられた父(夫)はべつの氏族
に属しべつのところで氏族をおなじくする後見者、保護者として、義務や役割を果すことに
なる。
にもかかわらず、父(夫)は母(妻)にたいして(夫)として性愛を交わし、子どもにた
いしては父として家族愛にもとづいて情愛をつくし、子どものお守り、排泄の世話など、養
育をひきうける親和感をもっている。しかもマリノウスキーによればトロブリアンドでは父
(夫)処婚だから母(妻)も子どもも住居は父(夫)の氏族の方におかれる。
すると母系氏族制という社会制度上の掟と、家族としての父(夫)と母(妻)と子どもと
の親相性とは父(夫)親という存在にとって矛盾に近い二重性を負うことになる。具体的に
いえば父(夫)は家族の一員としての親和力からすれば、じぶんの子どもに特別の愛情をも
ち、財産や権利や社会的な特権を実の子どもに与えたくなってくる。だが母系的な氏族の制
度からいえば、この父(夫)は子どもとは別の氏族に属するため、地位、財産、特権などは
父(夫)の姉妹の子ども(甥)に譲られることになる。
そこで父(夫)にとって、氏族としては別になる実の子どもと氏族としてはおなじだが、
実の子でない譲渡者の甥とは、母系制度と家族の親和力との矛盾を体現した宿命の利書冊立
者になってゆく。これを贈与の問題に対応させれば父(夫)と母(妻)とがべつの氏族に属
す母系社会の宿命に起因する贈与の矛盾が生じることになる。父(夫)は、実の子どもにた
いしては親和や好意から無償で財産や所有物の一部を与えることにたいし、甥にたいしては
贈与として、与える者と受ける者の返礼のかたちをとらざるをえないからだ。
もうひとつある。こういった母系制度と家族としての父(夫)が実の子どもにたいしても
つ親和力のあいだの矛盾を解決する方法として、父(夫)の子ども(男)と父(夫)の姉妹
の娘とを幼児のうちに婚約させる交叉いとこ婚がかんがえられ、行なわれる。俗にいえば親
同士がきめた子どものときからの許嫁のいとこ同士ということになる。父(夫)はこれによ
って実の子どもにたいしてじぶんの所有物を与え、家族的な親和力も充たし、また同時にじ
ぶんの氏族の相続者にたいする譲渡とを矛盾や敵対なく両立させることができることになる。
これが初期社会で交叉いとこ婚がさかんに行なわれる理由になった。
マリノウスキーが観察し、調査したところでは、贈与のうち最大であり、この制度の根幹
ロブリアンド原始社会の根底に触れるほどの意味があるのは、婚姻の成立にともなう贈与と、
そのあと母(妻)の側の氏族から父(夫)の側に永続的に行なわれる贈与であった。
まずマリノウスキーは、この婚姻当初の贈与と返礼のかたちを述べている。贈与されるも
のは主食であるヤム芋、野菜、魚などになり、ヤム芋は料理されたもの、あるいは生のまま
のものである。また魚は父(夫)からの返礼にあてられる。贈与は何を与えたかより、どん
な形になるかが重要だとおもえる。
〔母(妻)の側からの贈与〕
1.母(妻)の両親から父(夫)の家族
2.母(妻)の一人ひとりの親族から父(夫)の両親へ
3.母(妻)の家族のメンバーが父実)の家族へ
〔父(夫)の側からの返礼〕
1.父(吉の親族から母(考の家族へ
2.父(夫)の父親から母(妻)の父親へ
〔母(妻)の側からの贈与〕
1.母(妻)の家族から父(夫)へ
〔父(夫)の側からの返礼〕
1.父(夫)から母(考の父に贈る魚
2.父(夫)の父親から母(妻)の父親へ
これをみると母(妻)の側は、両親、親族、家族の個々のメンバーすべてから、父(夫)
の家両親、本人への贈与が行なわれることがわかる。父(夫)の側からの返礼は、父(夫)
の親族父(夫)の父から、母(妻)の家、母(妻)の父にたいして行なわれる。そしてその
あと婚姻関係がつづくかぎり母(妻)方の家族から父(夫)の世帯にたいする永続的な贈与
がつづく。
父(夫)を中心にかんがえれば、かれは母(妻)の家族から永続的な贈与をうけることで
そのあとの生活経済を営み、同時にじぶんの姉妹その他の女性親族にたいして贈与を貢ぐた
めヤム芋の栽培など、生産活動を行なうことになる。つまり父(夫)を中心にかんがえれば、
かれはじぶん自身の働きと能力のほかには母(妻)の側からの贈与が経済生活のすべてを支
える重要な意味をもつことになる。根幹になる贈与と返礼をみると、父(夫)にたいする母
(妻)の側からの贈与だけが、対応する部分を消去したあともなおのこることがわかる。ま
た父(夫)から母(妻)の父親への魚の返礼がのこる。まったくおなじように母(妻)は個
人として、この贈与と返礼に登場しないことが知られる。
ただ父(夫)が登場するのは、母(妻)の家族から父(夫)への婚姻後最初の収穫の贈与
と、それにたいする父(夫)から母(妻)の父親への魚の返礼にかぎられる。すると結局の
ところ婚姻を契機にする贈与は、母(妻)の氏族から父(夫)の氏族への贈与とそれにたい
する返礼とに集約される。べつのいい方をすれば母(妻)の家族と親族から別の氏族に属す
る父(夫)の家族、親族への贈与とその返礼とに還元されるといえよう。ではこの贈与の動
機は何かといえば、母(妻)の側からすればじぶんの氏族に属する子どもを産んだことに父
(夫)が不可矢だったからではない(マリノウスキーの調査を信ずれば、子どもの生まれる
のに寄与するのは氏族の故人の誰かの霊であって、父〔夫〕ではない)。それでは将来寄与
してくれるはずの労働力や子育ての 協力にたいする前払いの意味をもつのだろうか。
そんなことは信じられそうもない。
この種の理由をさまざまに見つけだして数えあげるくらいなら、母(妻)の側の氏族にと
って父(夫)の側の氏族との関係を生ずることが正体のわからぬ〈霊威〉をもたらすからだ
と想定した方がまだましなような気がする。この得体の知れぬ〈霊威〉はどこから発生する
のか。べつの氏族からきた父(夫)がじぶんの母(妻)系の氏族の子どもを妊娠し、出産さ
せてくれたじぶんの氏族の親しい〈霊〉と交換できる無意識の存在、これが正体のわからぬ
父(夫)の〈霊威〉という概念を発生させた原因ではないのだろうか。マリノウスキーの調
査や観察を信ずれば、トロブリアンドのポリネシアン種族は、母(妻)と他氏族に属する父
(夫)との性(交)行為で子どもができるとはゆめにもおもっていない。おなじ氏族の親し
い者の死んだあとの霊がもどってきて母(妻)に宿るとき妊娠するのだとおもい入れている。
この盲点を保存する社会システムが、母系優位の氏族制をつくりあげたのだ。そしてこの
盲点を保存することが母系優位の氏族制をつくりあげたのである。この盲点を保存すること
は、母系優位の初期社会では無意識の至上命令だった。いいかえれば意識される条件が揃っ
ていても、あえて無意識によって拒絶されるべき盲点だったとおもえる。この制度では父(
夫)はおなじ家に住みながら、どうしても母(妻)や産まれた子どもとは別の氏族に属する
他所者であるほかはない。母(妻)に子どもを産ませるおなじ氏族の霊は、現実化したとき
は他所者の別氏族の父(夫)として表出される。この機構は母(妻)の無意識の奥に気づか
れずに潜在しているのではない。氏族の死者の霊が畏怖すべき祖霊の系譜とおなじように、
この他所者の父(夫)には正体のはっきりしない〈霊威〉が付着しているのではないか。
母系的な初期社会で、いま仮りにこの父(夫)が多少ともほかの父(夫)より社会的に優
位な地位をもちたいとかんがえたとする。それを実現化するには父(夫)と母(妻)のあい
だに贈与が反復されることで生じたに相違ない正体のわからぬ〈霊威〉をたくさん重畳する
よりほかに方法はないはずだ。いいかえれば父(夫)がじぶんの母(妻)をたくさんもつこ
とで、母(妻)(一)の氏族(一)や母(妻)(二)の氏族(二)、母(妻)(三)の氏族…
などからそれぞれ婚姻の贈与をうけとることによって財産を築きあげることよりほかない。
それは同時に一対一では正体のわからぬ〈霊威〉にすぎないような関係を、母(妻)の氏
族(一)、氏族(二)、氏族(三)……からも同時に獲得しその複数の〈霊威〉を蓄積、重
畳することを意味しているとおもえる。この父(夫)は、複数の母(妻)の出自である氏族
のそれぞれから贈与をうけとるとともに複数の母(妻)の出自の氏族のそれぞれにたいして
〈権力〉らしきものを獲得することになる。つまり重畳された〈霊威〉=〈権力〉という等
式が成り立つようにおもえてくる。これが母系的な初期社会で多少とも社会的に優位な父(
夫)が一夫多妻をとることの根拠になる。もちろんこのいい方は因果が逆さまかもしれない。
マルクスは最初の富の蓄積はどんないい廻しをとっても原始的な収奪によるとかんがえた。
マリノウスキーのいい方では、初期の母系的な氏族社会では富の蓄積は婚姻関係による母
(妻)の氏族からの贈与で父(夫)が得た蓄積、ということになる。贈与は和解であり、同
時に収奪であり、また〈霊威〉の返礼なのだ。
マリノウスキーは、トロブリアンドにおける母(妻)の側からもたらされる贈与のヤム芋
もじぶんが栽園から収穫し、女性親族(姉妹)に贈与する収獲物も、貯蔵小屋のなかに規則
正しく積みあげられ、しばらくは誇示される(見せびらかされる)と述べている。これはじ
ぶんの村や隣村の人々にその富を賞讃してもらうためで、虚栄と野心が愛情や義務感に混り
こんだものと理解されている。人間の内部には矛盾をつくり出さずにはおかない貯水池があ
り、そこに奔騰するものが関与しているとしておくのが、さしあたりの解答のようにおもえ
る。
第一部 吉本隆明の経済学
(この項続く)
She comes in colors ev'rywhere;
She combs her hair
She's like a rainbow
Coming, colors in the air
everywhere
She comes in colors
She comes in colors ev'rywhere;
She combs her hair
She's like a rainbow
Coming, colors in the air
Oh, everywhere
She comes in colors
Have you seen her dressed in blue?
See the sky in front of you
And her face is like a sail
Speck of white so fair and pale
Have you seen a lady fairer?
ローリング・ストーンズの11枚目のアルバムの『サタニック・マジェスティーズ』(Their Satanic
Majesties Request)は、1967年にリリースされたローリング・ストーンズのアルバム。あまりにも
ビートルズの 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』 を意識し、コ
アなストーンズ・ファンから賛否両論のアルバム。実はストーンズ内部でも、このアルバムを出
すか出さないかで揉めたという。このアルバムが世に出なかったら、"She's Like A Rainbow"の名
曲も埋もれてしまっていたかもしれない。レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ
がアレンジを担当し、繊細でありかつビートの心地良さが心に響くピアノのメロディはクラシッ
クに匹敵する。このアルバムに拒否的なファンでさえ、この曲の素晴らしさにだけは文句のつけ
ようがない。また、ストーンズの音楽に馴染みのない人にも、この曲には親和性をもつだろう。