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新再エネ立国九州論 Ⅱ

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● 『吉本隆明の経済学』論 13 

  吉本思想に存在する、独自の「経済学」とは何か。
 資本主義の先を透視する!   

 吉本隆明の思考には、独自の「経済学」の体系が存在する。それはマルクスともケインズとも
 異なる、類例のない経済学である。本書は、これまでまとったかたちで取り出されなかったそ
 の思考の宇宙を、ひとつの「絵」として完成させる試みである。経済における詩的構造とは何
 か。資本主義の現在と未来をどう見通すか。吉本隆明の残していった、豊饒な思想の核心に迫
 る。 

 はじめに
 第1部 吉本隆明の経済学
 第1章 言語論と経済学
 第2章 原生的疎外と経済
 第3章 近代経済学の「うた・ものがたり・ドラマ」
 第4章 労働価値論から贈与価値論へ
 第5章 生産と消費
 第6章 都市経済論
 第7章 贈与価値論
 第8章 超資本主義 
 第2部 経済の詩的構造
 あとがき 

 

 第2部 経済の詩的構造 

  3 詩的構造を持った経済学
             
  しかしそれ以上に興味深いのは、吉本隆明が都市の第三の未来像として描いている、つぎの
 ような光景である。  


   それから、もうひとつつくれるところがあるんです。それは、ぼくがよくいっているアフ
  リカ的段階です。つまり草原・森林というのが依然として健在で、田畑、つまり開墾したり
  してないところがあるんです。開墾したらそれはアジア型の社会になってしまうんですが、 
  開墾されてない多くの森林や草原があるということは、自然と産業と理想の割り振りで人工
  都市をつくれる可能性があるということです。じっさいにその実力や権力がある人たちがつ
  くるかどうかはまったく別の問題です。たぶんつくらないとおもいます、放っておけばアジ
  ア的な社会になっていくとおもいます。だけど、やる気と見識があればほんとうはつくれる
  んです。
   つくれるところはふたつです。アフリカ的段階と、それからとても高度になった資本主義
  社会の段階とです。それがぼくの基本的な考え方です。(本書第一部第八章「超資本主義論」)


 ここで「アフリカ的段階」と言われているのは、「アジア的段階」の前の段階に属する人間社
 会のあり方をさすヘーゲルの歴史概念のことが前提になっている。新石器時代の後期になって
 アジアではいくつもの大きな国家が生まれている。そのほとんどの国家が大河川の流域の平地
 につくられている,平地に直流施設を設けて、そこで小麦や水稲のような穀物の単一栽培(モ
 ノカルチヤー)をおこなう農民たちを「納税者」として確保する。穀物は莫大な余剰生産物を
 産む。それを農民たちに強制的にあるいは自発的に貢納させることによって、アジアの各地で
 専制的な大することなく続行されたものである。


  5 「詩人性」の経済学

  ここまでくればもうご理解いただけたであろう、吉本隆明にあっては自分の中の「詩人性」
 と自分で納得のできる経済学をつくりだそうとする欲求とは、同じ一つの源泉から湧き出てい
 るのである。言語も経済も、マルクスの言う意昧での「交通(コミュニケーション)」であり、
 少なく見積もっても数万年の間、同じつくりをして同じ能力を持ってきた人間の脳=心が生み
 出したのである。その脳=心は初め詩的構造として生まれ、そののちもこの構造を深層に保ち
 続けてきた。

 吉本隆明はその根源的な詩的構造の場所に立ち続けることによって、希有な思想家となったの
 である。「詩人性」は彼の思想の揺るぎない土台であった。
 詩という文芸はその詩的構造が直接的に産出する文芸形態として、発生のときから現代にいた
 るまで、その本質を変えていない。おそらく将来においても変わらないだろう。ところが経済
 の領域では近代資本主義の形成とともに激変が生じることになった。詩的構造を経済的領域に
 写し取ってつくられた古い社会システムでは、交換価値と贈与価値の共生かいたるところで見
 出された。資本主義はその共生を壊して、ただ交換価値だけによる経済システムをつくり、こ
 れを伝染病のように世界中に広めていったのである。
  詩と経済を並べて、そのとき起こった変化の本質を示してみよう(図6)。             

 

   詩的言語は喩のメカニズムなしには発生しえないものであるから、詩という文芸形態が続い
 ているかぎりは、喩の働きは衰えない(+)。ところが物と物の交換を貨幣が仲立ちするよう
 になると、それまでの贈与の場を贈与物といっしょに動いていた「無形の何か」は消え去って、
 価値を表示するものとしての「数」が残る。このとき喩の構造の背後にあった潜在空間が消失
 する(-)。しかし数の体系そのものと計算技術は、脳内での喩の働きなしには作勤しえない
 (レイコフ+ヌーニュス『数学の認知科学』植野善明・重光由加訳、丸善、2012年)。そ
 こで数を用いた計算では喩のメカニズムの骨組みだけは働きつづけているとも言える(+)。


■目次

第 Ⅰ 部  基本的な計算能力の身体化
第 Ⅱ 部  代数、論理、集
第 Ⅲ 部  無限の身体化
第 Ⅳ 部  禁じられた空間と運動
第 Ⅴ 部  数理哲学への影響
第 Ⅵ 部  古典数学の認知構造の事例研究
古典数学の認知構造の事例研究
参考文献
索 引


   それに運動して、生起のメカニズムも消失する。詩的言語や贈与交換の場面では、潜在空間から現
 実世界へ向かっての力の生起が、さまざまな形で人々に感知されていた(+)。そのせいで、
 詩の発生や贈与交換をつうじて自然に、意味増殖や価値増殖が起こっているのを人間の心は知
 るのである。その生起のメカニズムが交換価値には組み込まれていない(こ。そのためにマル
 クスが明らかにしたように、資本主義では労働者の労働時間の延長や製造機織の技術革新によ
 ってしか 価値増殖をもたらすことはできなかった。

  こうして詩と経済それぞれのうちにセットしてある詩的構造の変化をつうじて、資本主義が
 開いた近代の本質が示されることになる。文芸としての詩は、いわゆる未開・古代から現代に
 いたるまで、深層の同一性を保ち続けている。そのため詩的言語にたいする吉本隆明の探求は
 万葉集から中島みゆきまでを同じ批評の俎の上で、詩性としての同一性を保っている表現とし
 て比較することができるのである。

  ところが経済的交換を生み出した詩的構造は、資本主義によって本質的な変化を披ることに
 なった。モースの「ハウ(霊)」がマルクスの「社会的必要労働時間」に変化するとき、価値
 形成をおこなう詩的構造の内部では、贈与価値を交換価値につくりかえ多様体を均質平面につ
 くりかえてしまう、本質的な変化が進行していたのである。脳内のニユーロン・ネットワーク
 の生物学的な基本組成には変化は起こっていない。つまり詩的構造そのものには変化は起きて
 いないが、そこから出てくる情報を再コード化するプログラムに根本的な変化が生じている。
 その結果、脳 =心の本質をなす詩的構造そのものは抑圧され、表立っての活動ができなくな
 る。

  こういういきさつによって、ハイデッガーや吉本隆明の言う「詩人性」は、脳=心の本質を
 なす詩的構造という不動の「鏡」となって、資本主義が歪めて映し出す世界の像を、もとの姿
 に戻して映し出す力を与えられるのである。それは過去と現在の資本主義の運動を正しく映し
 出す鏡であるばかりでなく、資本主義の先にあるものを見据え予見する力も持つ。
  あらゆる芸術作品は特定の社会の発展形態の中で生まれるが、それは時代を超え社会形態を
 超えた魅力を発揮することができる。このことの秘密は人間の心の本質をなす詩的構造のうち
 に隠されている。このことについてマルクスはつぎのように考えた。


   けれども困難は、ギリシャの芸術や叙事詩がある社会的な発展形態とむすびついているこ
  とを理解する点にあるのではない。困難は、それらのものがわれわれにたいしてなお芸術的
  なたのしみをあたえ、しかもある点では規範として、到達できない模範としての意義をもっ
  ているということを理解する点にある。
   おとなはふたたび子供になることはできず、もしできるとすれば子供じみるくらいがおち
  である。しかし子供の無邪気さはかれを喜ばせないであろうか、そして自分の真実をもう一
  度つくっていくために、もっと高い段階でみずからもう一度努力してはならないであろうか。
  子供のような性質のひとにはどんな年代においても、かれの本来の性格がその自然のままの
  真実さでよみがえらないだろうか?

  
           (マルクス「経済学批判 序説」『経済学批判』岩波文庫、1956年)


   芸術を生む詩的構造と社会的発展形態はこのような意味において、けして線形的ではないね
 じれた弁証法的関係で結ばれたものとして、じつに本質的なつながりをもつものである。その
 ことがはらむ問題をマルクスの後さらに深めることができたのは、ひとり吉本隆明という詩人
 =思想家のみであった。それゆえ、吉本隆明の経済学」は詩人性によって基礎づけられた経済
 学として、人間の学にとってユニークな意義をもつことになる。詩的構造は人間の学にとって、
 不動の鏡であり、不動の礎石である。詩的構造の場に立ち続けようとするものは、ときおり「
 世界を凍りつかせる」おそろしいことばを発しながら、孤独に耐えて思考し続けるのである。

                             第二部 経済の詩的構造 中沢新一


これで、第一部の「吉本隆明の経済学」の第7、8章と第二部の「経済の詩的構造」を読み進めて
まずは、思想のコアを押さえてきたが、次回からは、最初に戻りイントロ部の構成思想の詳細考察
に移ろう。

                                        (この項続く) 

 

● 新再エネ立国九州論 Ⅱ

                                               マグマだまり利用技術 地熱発電王国九州

先月20日に、九州最南端の温泉地として有名な指宿温泉に新しい地熱発電所が誕生(上図)。温泉
と医療の複合施設である「メディポリス指宿」の340万平方メートルに及ぶ敷地の中に、米国製の
地熱発電設備を導入して2月18日から運転を開始している。発電能力は1.5MW(メガワット)に達す
る。2012年7月に固定価格買取制度が始まって以来、1メガワットを超える地熱発電設備が運転は
初めて。年間の発電量は900万キロワットアワを見込み、これは一般家庭で2500世帯分の使用量に
相当。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は68%になり、地熱発電の標準値70%と同等
の水準である(「買取制度で初めて1MW超の地熱発電、鹿児島の指宿温泉で運転開始」スマートジャ
パン、2012.05.20)。

地熱発電は天候の影響を受けずに安定した電力を供給できるため、再生可能エネルギーの中でも優先的
に電力会社の送配電ネットワークに接続することができる。特にバイナリー方式の発電設備は工事
が1年程度で完了する利点があり全国の温泉地域で導入計画が進んでいる。

 
ここで、地熱発電方式には(1)天然蒸気背圧タービン方式(2)天然蒸気復水タービン方式(3)
熱水分離復水タービン方式(4)2段フラッシュ蒸気タービン方式(5)バイナリーサイクル方式
があるか、(5)の、加熱源により沸点の低い媒体を加熱・蒸発させてその蒸気でタービン方式で、
加熱源系統と媒体系統の二つの熱サイクルを利用して発電することから、バイナリーサイクル(Bi-
nary -Cycle)発電と呼ばれ、地熱発電などで利用――低沸点媒体を利用することにより、媒体の加
熱源に従来方式では利用できない低温の蒸気・熱水を利用でき、同発電システムの加熱源には(1)
蒸気・熱水サイクルと(2)代替フロンを用いた媒体サイクルで構成、これに対して、従来方式は
蒸気・熱水サイクルのみで構成されている(下図参照)。


尚、2011年、火山など地熱資源のとぼしいドイツで、バイナリー発電がすでに実用化されている。
地下1キロでは30℃温度が上がり、深さ4キロの井戸を掘れば百℃の地熱エネルギーが得られる。
ドイツでは3ヶ所の地熱発電所が稼動している(List of geothermal power stations, Wikipedia)


                                日本列島には3千万キロワットの地熱資源

日本は「火山列島」とも「地震列島」とも呼ばれているが、脆弱な基盤に立地する日本だが、地熱
開発の視点で眺めると、これほど恵まれた国はなく、地熱は純国産の再生可能なエネルギー資源国。
日本列島の地下には、そこに取り残された800~1200℃のマグマだまりが、地下数キロメートルから
10数キロメートル程度の浅い所に横たわり、地震や噴火という自然災害の危険を抱える反面、地熱
資源に恵まれ、現在、国内に3千万キロワット前後の地熱資源があると推定されており、政府は「
斜め掘り」という方法に限って国立公園などの開発を認めていており、18カ所約54万キロワットの発電所
が稼働しているが、推定利用可能量の2%弱に相当するという。潜在力は2千万キロワット(原発20基
分に相当)と推定されている。

尚、掘削する井戸の直線距離で1~2キロメートルがコスト限界距離とされているが、『石油価格
下落の行方
』(2015.02.25)でも紹介したようにシェールガス生産コストも科学技術進歩によるそ
の限界コストが年々逓減しているように逓減可能だと考えられる。

 

                                                   最新の地熱発電技術

1.地熱発電用の蒸気発生装置

地熱発電システムは、地上から地熱帯まで延びる二重管構造の地熱吸収装置を備えることで、(1)高圧ポ
ンプにより加圧された水が、地熱吸収装置の内管を通して地熱帯に供給し熱水とし、地熱吸収器の内管と
外管との間を通して地上に取り出され蒸気に変換し蒸気タービンに供給されるものや(2)水が、地熱吸収
装置の内管を通し地熱帯に供給され熱水と蒸気との混合体になり、この混合体が、地熱吸収器の内管と外
管との間を通して地上に取り出され、気液分離装置で蒸気と熱水とに分離し、蒸気が蒸気タービンに供給
されるものがあるが、これらは(1)地熱帯から熱を吸収するのみで熱水を汲み上げないため、システム内で
流れる熱水や蒸気に地下のミネラル等が含まれず、蒸気タービンや配管等にミネラル等の不純物が付着せ
ず、(2)地熱帯の地下水系に影響を与えず温泉水を枯渇させる心配もないが、高圧ポンプが必要となる生
産コストが嵩む。

下図の新規考案では、蒸気タービンを回転させる蒸気を発生する地熱発電用の蒸気発生装置、水が地上か
ら地熱帯まで下降して地熱帯で熱を吸収する下降流路と、下降流路と下端で連通され熱水が下端から上昇
する上昇流路と、上昇流路の熱水の圧力を飽和蒸気圧以下に減圧する減圧部とを備えた構成で、熱水を汲
み上げず、蒸気発生させ、エネルギー効率を高め、ポンプ等のコスト増を抑制し、発電単価を低減する。

2.超臨界流体を用いた地熱発電装置

貯留された熱水利用方法は熱水の一部が蒸発で損失し、周辺の温泉等の地熱資源の熱水量や温度に影
響を与える可能性があるが、下図の新規考案では、高温岩体の貯留層に単一の井戸を通じて熱媒体を
圧入回収し発電する――貯留層に井戸を通じて、超臨界流体の熱媒体を圧入段階と、井戸内部を遮
断し、地熱により貯留層内で熱媒体を加熱する段階と、井戸の内部を開放し、貯留層内から熱媒体
を回収する段階と、熱媒体によりタービンを駆動発電する段階と、を備えている超臨界流体の熱
媒体を用いることで確実回収し発電効率を高められ構成である。


3.ロボットボーリングマシン

下図は、地熱発電井戸の掘削設備を自動制御で運転することにより、工期の短縮と省人と省エネ化
を図る新規考案である。回転ビットの駆動及び掘削管の昇降動力を回転駆動と昇降できるレール上
に一体構造にして、管の最上部に固定、管内部に掘削に必要な高圧水を接続、地上には管のねじ接
続時に回転固定クランプを設け、ビットの回転制御及び昇降運転に必要な運転情報と必要な運転出力
制御を同時に行い、少なくとも昇降動力にスピンドルモータ、またはサーボモータを使用、さらに
管との接続を地上で行うことを可能とするための水平方向への傾斜ができる蝶番機能を持たせた構
成のロボット掘削装置の新規考案である。



ここに記載した新規考案はほんの一部であるが、火の国九州にあるマグマだまりエネルギーを利用
して発電することで資源立国であることを宣言でき、万一、大噴火しても、原子力発電システムよ
り安全なシステムであることを世界に向けて発信できる。また、掘削距離を4キロメートル超に伸
ばす技術システムを速やかに確立することが重大開発目標であることをここで確認した。日照条件
が国内一で、森林が豊かな九州はいずれにしても魅力てきな「再エネ王国」であることも確認でき
た。これは面白い。

 

 

 


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