● 2つの世界の医療トップランナーの記録
エボラ出血熱に有効な新たなワクチンの開発に、東京大医科学研究所や米ウィスコンシン大などの
研究チームが成功した。米国内で実施したサルを使った実験で有効性が確認され、現在臨床試験が
進められているワクチンよりも安全性が高いという。論文は26日、米科学誌サイエンス電子版に掲
載された。東大医科研の河岡義裕教授らの研究チームは、エボラウイルスが増殖するのに必要なた
んぱく質を欠損させた変異ウイルスを作成。このウイルスはエボラウイルスが持つほぼ全てのたん
ぱく質を含むため、従来のワクチンより高い効果が期待できる一方、特殊な人工細胞を使わないと
増殖できないため、安全性も高いという。
この研究チームは、人への接種を想定し、ワクチンから毒性を取り除く「不活化」※の手法を検
討。過酸化水素水で不活化したワクチンをサルに接種後にエボラウイルスに感染させる実験を行っ
たところ、すべてのサルが生き残り、エボラ出血熱の症状も示さなかったという。
※エボラウイルスの遺伝子の一部を欠損した変異エボラウイルスを作製しました。この変異ウイル
スは、特定の細胞においては増殖できるが、普通の細胞では増えることはできない。開発したエボ
ラウイルスワクチンの安全性をさらに高めるため、この変異エボラウイルスを過酸化水素水で不活
化しワクチンをサルに接種してその効果を評価しました。その結果、このエボラウイルスワクチン
を接種したサルは、その後、致死量のエボラウイルスを接種されても、エボラウイルスに感染しな
いことが明らかとなりました(詳細は上写真上をクリック)。
東京大学医科学研究所らのグループが、4種類の蛍光たんぱく質を発現するインフルエンザウイル
ス「Color-flu(カラフル)」の作製に成功。Color-fluは、蛍光たんぱく質を
利用して感染細胞を光らせるので、インフルエンザウイルスの感染によって起こる炎症など、生
体内でウイルス感染が広がる様子をさまざまな手法で画像分析することが可能になる。この研究で
は、ウイルス本来の病原性を保ち、挿入した蛍光たんぱく質の発現をほぼ完全に維持できるウイル
ス株を樹立することに成功し、「Color-flu」と名付る。インフルエンザウイルスの存在
を示すレポーターとして、蛍光波長の異なる4種類の蛍光たんぱく質eCFP(青緑)、eGFP
(緑)、Venus(黄)、mCherry(深赤)注1)を用いていた。Color-fluが
さまざまな画像解析手法に応用できることを実証。深部の組織が観察できる2光子レーザー顕微鏡
を用いて、マウスの肺組織のウイルス感染細胞とマクロファージのタイムラプス撮影に初めて成功、
インフルエンザウイルスの感染により炎症が生じる様子を詳細に確認できたという。さらに、Ve
nusを発現する高病原性鳥インフルエンザウイルスを作製し、肺での感染の広がり方を高病原性
ウイルスとインフルエンザウイルス(PR8株とで比較できた。作製した病原性を維持したまま蛍
光たんぱく質を発現するインフルエンザウイルスは、ウイルスに対する生体防御や気道炎症のメカ
ニズム解明ができ、新薬開発に役立つ。なお、この研究は、東京大学、米国ウィスコンシン大学、
鹿児島大学との共同研究による。
● iPS細胞などを用いた臓器再生に関する基本特許が日本で成立
ドイツのジャーマンウイングス機が24日墜落し乗客と乗員合わせて150人が犠牲となった事故では、
副操縦士が機長を操縦室から締め出し、同機を意図的に山中に墜落させたとの見方が強まっている。
航空史ではこれまでにも、パイロットが航空機の急降下や目的地以外への運航を選択したとみられ
る事例がまれながらある(Bloomberg 2015.03.27)。同社の報道によると、過去記事と航空事故に関
する情報を集めたウェブサイト「航空安全ネットワーク」のデータに基づいて集計した、パイロッ
トの自殺または不正行為との関連が指摘される事故のリストをまとめている。
◎マレーシア航空370便、2014年3月:370便は予定されていた航路を外れてレーダーから消
え、消息を絶った。乗客・乗員239人が死亡したとされる。捜索活動が続けられたが、残骸は見つか
っていない。パイロットの意図的な行動が一つの仮説として挙がっているものの、原因究明には至
っていない。
◎LAMモザンビーク航空、2013年:AFP通信がフライトレコーダーのデータに基づく予備調査
の結果として報じたところによれば、パイロットが旅客機エンブラエル190を「意図的に墜落さ
せ乗客27人、乗員6人が死亡した。
◎エジプト航空990便、1999年:副操縦士が、同機を米ニューイングランド沖に墜落させ217人が
死亡した。事故調査で関係者の証言から副操縦士が以前に性的不品行を非難されていたことが判明。
それに対する「腹いせ」が動機とされている。
◎ボツワナ航空、1999年:健康上の理由でフライトを禁止されていたパイロットが旅客機ATR4
2を離陸させ無線でさまざまな要求をした後、別の2機に衝突し、1人が死亡した。
◎シルクエアー185便、1997年:パイロットが、ジャカルタからシンガポールに向かっていた同
便を意図的に墜落させたとみられている。104人が死亡。事故原因は公式には確認されていない。
◎日本航空350便墜落事故 1982年:日本航空、福岡発東京行350便、DC-8-61型機(機体番号JA8061)
が羽田空港沖に墜落した事故羽田沖事故、日航逆噴射事故と呼ばれる。機長は業務上過失致死罪に
より逮捕となったが、精神鑑定により妄想性精神分裂病と診断され、心神喪失の状態にあったとし
て検察により不起訴処分(「キャプテン、何をするのですか!」は当時の流行語となっている)。
副操縦士は鬱病だった?!
情報は、ドイツの調査報告を待つばかり恰好になっているが、毎日新聞(2015.03.27)は、150人
の犠牲者を出した独ジャーマンウイングス機の墜落は、副操縦士が意図的に行った可能性が高いこ
とが捜査当局の調べで明らかになった。仏独当局はテロの可能性を否定。焦点は副操縦士の動機に
絞られた。副操縦士は27歳の若者。長年夢見たパイロットになり、2年前から操縦かんを握り始
めたばかり。控えめな性格で、周囲は衝撃を受けている。一方、副操縦士が独りで閉じこもった操
縦室の扉は、外から開けることができなかった。2001年の米同時多発テロを教訓に導入された
安全対策が裏目に出たと報じている。AFP(同上)は、ドイツ格安航空会社ジャーマンウイング
ス(Germanwings)4U9525便は機長を操縦室から閉め出した副操縦士によって「意図的に」墜落さ
せられた疑いがあるとした仏当局の発表は、世界を震撼させ、航空各社は相次いで操縦室規則の見
直しを表明したと報じている。また、産経新聞(同上)は、ドイツ格安航空会社「ジャーマンウイ
ングス」のエアバスA320機墜落を受け、欧米の航空業界が26日、安全性向上に向けた対応に
動き始めた。墜落は操縦室内に1人残った副操縦士が故意に引き起こした可能性が強まっているこ
とから、同様の事態を防ぐため、操縦室内に常に2人の人員がいる体制を義務づける方向に是正さ
れると報じている、因みに日本では「操縦室2名常駐ルール」なし。朝日新聞デジタル(同上)は、
見出しで"コックピットで何があった 操縦士が閉め出し「想定外」"と伝え、図解絵を掲載してい
る。
こんかいの事故で、操縦士の健康管理など就労ルールが是正されそうだ。格安航空社の登場でコス
ト・カット競争に晒され安全が疎かにされないようにとの警鐘かもしれない。日本では、福知山線
脱線事故(自動列車停止装置)、福島第一原発事故(非常用電源)はその事例である。
有田といえば、ネットコンベヤー搬送式超音波洗浄装置の開発でお世話になった経験があるが、その佐賀
の有田焼きをスリーディープリンタで陶磁器を造ることに成功したという。これは同じ滋賀は信楽
焼きも負けていられないぞ!というわけで掲載。陶磁器業界は、従来、職人の持つ伝統的な技術や
経験に依るところが大きい産業。今日、コンピュータや3DプリンタといったICT(情報通信技術→
「デジタル革命渦論」と呼んで欲しいところだが)による生産方式の導入が急ピッチで進んでおり、
「型を用いない製造」で直接造形を可能にする「C3DPO技術」は、これからの陶磁器の製造と流通に
変革を及ぼす可能性を秘めていると開発者の佐賀県窯業技術センタと報じている。その製法は、粉
末状の陶磁器原料と有機系バインダーを交互に塗布、3Dデータを基に3Dプリンタで、細かい等高線
状に固めて造形したものを焼成することで陶磁器にする。
C3DPO(Ceramic 3D-Direct Print-Out)
ただ今回の「C3DPO技術」を使った直接造形生地は、完全に磁器化しておらず、強度不足で、技術開
発には実用段階でなく、寸法精度や密度・強度の向上、造形の自由度を高めるため周辺技術等の残
件をクリアする必要があるという。出来てしまえば「コロンブス卵」。挑戦と細心をもって砕身と
いうことになる。頑張ろう!佐賀。