● 日中食品汚染 Ⅷ 第1章 見えない食品の恐怖
日本のエキス消費量
では日本では、年間どのくらいのエキスが消費されているのだろうか?農水省はなぜか
最近のデータの公表をやめてしまった。最も近いもので2008年度のデータしか公表し
ていない。日本エキス調味料協会会員のうち51社のデータであるが、この協会自体がデ
ータの公表を止めた可能性もある。
エキスはまず大きく原体エキス、加エエキスに分かれ、さらにそれぞれが粉体、ペース
ト、液体の3つの形態に細分化される。これらを合計すると生産量の全体になり、消費量
とほぼ一致するようだ。2008年度のデータでは12万4853トンで、2004年度
より2700トン増加している,なおデータがないので確かなことはいえないが、最近も
おそらく増えているはずだ。
農水省の担当部署に輸入量を問い合わせたところ、「貿易統計」を見ればわかるという
ものだったが、現在の統計による限り、その数字にたどり着くことはほとんど不可能だ。
エキス調味料協会の資料から作ったのが表4である。これによると2008年度のエキス
総輸入量は1万6755トン、2004年度の3倍となった,エキスの輸入増加はこの食
品の利便性と価格面での有利さを証明している。
とくに輸入が増えているものはピーフエキス、チキンエキスと野菜類エキスだ。チキン
エキスの大きな増加は、中国から輸入する鶏肉調製品の増加と同じ性質のもので、チキン
肉そのものの輸入に代替する意味を持っていると考えられる。ただし、残念ながらこのデ
ータからは輸入先の分布を知ることはできない。
そこで再び「貿易統計一を当たってみると、次のことが分かった,
日本が中国から輸入しているエキスは肉エキスや野菜エキスなど多彩だが、2010年
1722トン(4億4000万円)、2011年1539トン(4億円)、2012年
1842トン(4億6000万円)である。驚くかもしれないが、カレールウも中国から
の輸入が2010年I12トン(2500万円)、2011年32トン(I200万円)
2012年26トン(500万円)となっている。
日本エキス調味料協会には、2014年1月時点で59杜が加盟している,主要なメー
カーは加盟しているはずだから、謎体的な企業名称を昆れば、この業界の大体の様子は見
当がつく。この団体は、農林水産省総合食料同食品産業振興課許可によることから、行政
側と業界との連携強化の要諮にもとづいて設政されたものらしい,日本でエキスの定義を
行っているのはこの団体しかない,「食品として用いられる農・水・畜産物を原材料とし
て、衛生的管理の下に抽出又は搾汁、自己消化、酵素処理、精製、濃縮等により製造し、
原材料由来の成分を含有するもの、またはこれに副原材料、呈味成分を加えたもので、食
品に風味を付与するものをいう」,呈味成分とは、叶‥味、塩味、酸味、苦味、うま味な
どのことで、これには良品添加物も含まれている。
ちなみにアメリカのエキスの定義は、「多くの場合、エタノールまたは水などの溶媒を
使用することにより、原材料の一部を抽出することによって作られる物質である。エキス
は濃縮エキスまたは粉末の形態で販売することができるというものだ。
アメリカの定義が実態に近いとは断言できないが、日本エキス調味料協会の定義にはエ
タノールという表現は見られず、「自己消化、酵素処理、精製、濃縮等により製造一とあ
るだけで、いかなる触媒や化合物も使っていないことになっている。
この団体の会員メーカー59社を見ると、どちらかというと食品メーカーの中では中堅
か ら中小規模の企業が目立つ。ここから、エキスは食品の中では比較的後発の商品だと
いうことがわかるが、かといってその役割はけっして軽擬すべきものではない。今後の花
形産業に躍り出る可能性を泌めている。
たとえばB社の例を見ると、営業や経営指針は、「顧客の要望に要望に合わせたエキス
調味料品の製造・販売。加圧抽出品や常圧抽出品、酵素分解などの製法によるエキス製品
ならびに加工エキス調味料の開発・製造。中国ISO9001取引企業との提携によるチ
キン原料の生産・管理及び解体・検査まで一括した生産体制を構築、また、トレーサピリ
ティの確保にもぷ点を置く,豚・牛等の原料に関しても、中田食肉協会を通じ、安全な品
質を確保できる企業より、鮮度の高い原料を購入する」ことで、「高品質な製品休訓を維
持一とある(同社ホームページ)。
エキスメーカーの多くが中国に製造拠点を構えるか、製品貿易を行っている,表4で見
たように、エキスの輸入量は増えているが、国別の正確な内訳が不明なので困る。しかし
これらエキスメーカーの公開情報から、中国という文字が大きく浮かび上がり、相当量を
占めているだろうことが推測される。すなわち、変装輸入あるいは百面相輸入の相手が浮
かび上がったのである。
、
中国最大のエキス製造会社
中国と日本で大きくなっているエキス市場の動きを示すのが、エキス製造技術に関連す
る特許だ。
中国の発明や実用新案権を管理している国家知識産権局の統計によると、エキス製造技
術を含む特許(特許分類A23L)申請件数(国内企業のみ)は、2012年だけで1万1
430件に上り日本をはるかにしのぐ多さである。ちなみに2011年は7524件だっ
たので急速な進歩だといえる。中国では、いかに食品加工関連の技術改良志向が強いかを
知る手がかりともなる。
広州のW研有限公司は、日本やカナダにも輸出している中国最大クラスの食品エキス製
造業者だ。特許や実用新案権など多数の知的財産権を持っており、年間8000トンを生
産している。設立は2008年だ。この企業は鶏肉エキス、牛肉エキス、豚肉エキス、ア
ワビエキス、ザリガニエキス、カニエキス、エピエキス、貝エキスなど幅広く製造してい
る。
中国科学技術部が認定する重点高技術企業H公司は武漢にある。1998年にできた企
業だが、健康食品のほかに、主力事業のひとつとして鶏肉エキスを作っている。従業員1
万8000人を擁する。鶏肉エキスは保健食品の原材料としても利用されている。この企
業の場合、鶏肉エキスを抽出する際、防腐剤を使っている点が問題だ。
また一般に、鶏肉エキスといっても、胸肉とか腿肉とかを扱う企業はない,エキスはど
の部位からも抽出可能なことがメリットでもあり、またそういう食品形態なので抗生物質
などの薬物汚染や、飼料から取り込まれた農薬汚染の危険因子が入り込む余地は、他の食
品に比べても格段に高い。この2社以外にも中国では多数の企業がエキス製造に参入し、
国内外の食品メーカーに供給している。
日本では、エキス製造特許件数は、細かすぎるためか公表されていない。公表されてい
る食品加工特許件数は2002年の938件から増え、最新データの2011年では16
18件と、約70%増加している。この中に、エキス製造法に関する特許も含まれている
と見られる。背景には、食品冷凍技術、濃縮技術、食品化学技術の進歩などがあり、公開
されている特許を見ると、たとえばN社は従来特許だった「カキ肉エキス製法特許」をさ
らに改善、カキの内臓部分に含まれる有害物質を混入させない方法を発明した,
またP物産は常温保存安定性のある還元性濃縮チキンエキスと天然エキスの呈味成分を
維持し、アレルギーを起こす物質を低減、除去したアレルゲン低減の天然チキンエキスの
製造方法の特許を取得した。エキスや粉末の製造に関する特許は今後さらに熱が増す可能
性がある。エキス製造特許競争は熾烈さを増しているが、それだけ企業経営者にとっては
有望な商品だということだ、
高橋五郎 箸 『日中食品汚染』
エキスである以上、汚染物質(危害物質)が濃縮してくるケースも大きくなるだろう?そこ
で、検査方法だが、(1)まず、添加剤や新規物質の事前審査評価の検査試験結果データ(
MSDSなども含め)はもちろんのこと、(2)加工食品の事前審査評価に加え(要法整備)
(3)それが不可能なケースの事後審査評価(要法整備)が必要だろうが、着実に検査試験
事例を積み上げ、国際的な知財・機構を構築するしかないが、『最新アレルギー制御工学』
(2015.04.09)のように、アレルギー疾患人口が急増するなか、また、複雑化した交易社会
に適合した予防・検査・是正が必要となる。また、根本治療法の確立も必要だ。例えば、無
農薬野菜なら植物工場で生産されたものとか――現在掲載中の『新弥生時代植物工場論』(
「日本周回新幹線構想Ⅱ」2015.04.08)――また、魚工場(これについては別途考察掲載す
る)や家畜生産の非抗生物質化(これに関しては残件扱い)など。
ここ数年新しい農業について考えてきたことを、独自に事業化の基本イメージを確定させてお
きたいという思いに駆られ、上記の本をそのたたき台として、時宜、読み進めたいと掲載を開
始した。独自の事業化イメージはできあがっている。この本にもすこし紹介されている。時々
の気付いた点を添え書きとしてここに記載していく。通読された方に理解できるだろう。それ
では読み進めることに。
「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を施設内で
人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所にとらわれず、安全
な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めています。その「植物工場」そ
のものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、
販売、経営などを豊富な写真や図解を用いて様々な角度からわかりやすく解説。また、ク
リアすべき課題や技術革新などによってもたらされるであろう将来像についても、アグリ
ビジネス的な視点や現状もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書と
なっています。
古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」より
【目次】
巻 頭 町にとけ込む植物工場
第1章 植物工場とはどういうものか
第2章 人工光型植物工場とは
第3章 太陽光型植物工場とは
第4章 植物生理の基本を知る
第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
第6章 CO2/空調管理
第7章 培養液の管理
第8章 植物工場の魅力と可能性
第9章 植物工場ビジネスの先進例
第10章 都市型農業への新展開
第11章 植物工場は定着するか
巻 頭 町にとけ込む植物工場
新素材で拓くドームハウスの植物工場
千葉大学構内にあり、2014年8月に稼働をはじめたジャパンドームハウス株式会社
が建てた植物工場は、幅7.7m、長さ26m。建物の外壁は独白の特殊発泡ポリスチレン
でできており、植物工場に適した環境をつくりだしている。運営は株式会社阿蘇ファーム
ランドが行っている。
ドームハウスの特徴のひとつは、ポリスチレンの壁の厚さが20mもあり、断熱性に非
常に優れていること。ドーム内の空調は家庭用のルームエアコン5台でまかなえるので、
経済性にも優れている。ふたつめに、その形状と材質から、自然災害にも強いこと。屋根
の半円の形状は風を受け流し、積雪にも耐える。
さまざまなタイプのドーム型植物工場建設のノウハウをもつジャパンドームハウス。短
期施工が可能なことがひとつの特徴である。植物工場への新規参入の貴重な後押しになる
だろう。
直売所を併設した植物工場
三協フロンテア株式会社は、専門であるユニットハウスやトランクルームの製造技術を
活かした小型の植物工場を製造・販売している。さまざまな形状のものがあるが、なかで
も「やさいばこ」という名の2坪に収まる植物工場が注目を集めている。
柏の葉近くの流山展示場では、植物工場での野菜栽培をみられるだけでなく、すぐそば
で直売も行っている。多いときには50組以上も、野菜目当ての来客があるという。グリー
ンリーフやロメイン、ルッコラ、バジルなど、一年を通して値段を変えずに販売できるの
は、植物工場ならでは。
やさいばこには1.2坪タイプと1.8坪タイプがあり、小型のほうは駐車場1台分のス
ペースに収まる。工場設備一式と苗のセットを月々5万円でレンタルすることが可能だ。
購入するにしても、工事費を合わせても200万円以内で設置できる。
植物工場のふたつのタイプ
植物工場は高度な植物生産システム
現在最も高度に生育環境を制御する植物生産システムが植物工場であろう。
植物工場は、環境制御法によりふたつのタイプに分類できる。ひとつは太陽光
型植物工場であり、もうひとつが人工光型植物工場である。人工光型植物工場
は閉鎖空間であり、太陽光型植物工場は外界気象に少なからず影響される半閉
鎖施設であるため、その性質は大きく異なる。
太陽光型植物工場
太陽光型植物工場は、園芸施設と同様に半閉鎖型のシステムで農業的側面が大きい。換
気を必要とし半透明の被覆材で囲むため、日射の影響を受ける。人工光型植物工場に比べ
ると自然に左右される部分が多いが、それでも、収穫量と品質におよぼす気象の影響は開
放型の田畑より軽減される。
半閉鎖型の太陽光型植物工場に適した植物は、高度な環境制御により、品質と収穫量を
大幅に向上できる植物である。
トマト、パプリカなどの果菜類、菜もの野菜やハーブ類、べリー類、コチョウランなど
の高紙花斉、コンテナ利用で小型に仕上げたビワ、マンゴーなどの果樹が挙げられる。
太陽光型植物工場は、植物生産システムのひとつとして有用で、今後も施設による植物
生産のほとんどは太陽光を利用して行われるだろう。しかし、生育環境を高度に制御する
と いう植物工場の目的からすると、自然環境からの影響は短所にもなる。
人工光型植物工場
人工光型植物工場は閉鎖型のシステムで、工業的側面が大きい。外界との境界は光を透
過しない断熱材で常に仕切られ密閉度が高い。品質・収穫量は、環境管理技術に依存する。
閉鎖型での生産に適する植物は、弱い光、15~30日程度の短い栽培期間、高栽植密度
で生産が可能で重量当たりの価値が高いものだ。具体的には、菜もの野菜、ハーブ、香草
類、小型根菜類(二十日ダイコン、コカブなど)である。
太陽光型植物工場に適したトマト、パプリカなどの果菜類は、人工光型の植物工場には
向かない。理由はいくつかある。
ひとつは、これらの栽培には強い光と数カ月以上の栽培期間が必要であること。ふたつ
めに、栽培密度が1平方メートル当たり3~10本なので、電気料金が過大となること。
さらに、草丈が高くなるので、多段栽培棚を前提とする人工光型植物工場には向かない。
逆に、経営収支を無視すれば、ほぼすべての植物は人工光栽培が可能であるが、現実的
ではない。
ここで、チャレンジキーワードの「栽培密度」という言葉がでてきた。それでは「栽培密度」を上げるには
どうすれば良いか?これが新しいテーマとして浮上する。
この項つづく