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デクサマニー降臨 Ⅳ

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● デクサマニー降臨 Ⅳ 最新ナトリウムイオン二次電池技術

 ノートパソコンやスマートホンなどの小型携帯機器に使用されているリチウムイオン電池は、近年の
 脱原発や省エネルギー化への社会背景から、低コスト化が、電気自動車や住宅用充電器などの普及の
 条件となるが、リチウムイオン電池は希少元素であるリチウムやコバルトを使用しており、大幅なコ
 スト――昨年の水酸化リチウムの輸入価格は840円/キログラム、これに対し、重炭酸ナトリウム
 は44円/キログラムで精錬後は価格はさらに10倍乖離、海水からリチウム精製も開発研究が進ん
 でいるものの――削減が難しい。また、特定の希少元素産出国に依存しカントリーリスクが大きいた
 め、希少なリチウムを使用しないナトリウムイオン電池の開発が活発に行われている。ナトリウムイ
 オン電池の実現には、(1)電流を流すために化合物の対(プラス極とマイナス極)が必要となり、
 それぞれ共にナトリウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する特性改善が求められ(2)プラス極につい
 て、これまでの研究からナトリウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる化合物が多数報告されている
 が、(3)マイナス極については、急速充電、長時間の電流供給、充放電の繰り返しに対する安定性
 などの条件を満たす化合物が見つかっていなかった。

 尚、「特開2014-107142 ナトリウムイオン電池用負極およびその製造方法ならびにナトリウムイオン
 電池」(住友電気工業株式会社)では、
ナトリウムとチタンとを含む複合酸化物と、複合酸化物の表
 面の少なくとも一部を被覆する導電性炭素材料と、の複合物を含み、導電性炭素材料が、有機高分子、
 樹脂およびタールよりなる群から選択される少なくとも1種の炭化物であり、導電性炭素材料の量が、
 複合酸化物100質量部に対して、3.5質量%以上である、ナトリウムイオン電池用負極を用いる
 ことで、ナトリウムとチタンとを含む複合酸化物を負極活物質として用いる場合に、ナトリウムイオ
 ン電池のIRドロップを抑制し放電容量を向上させる技術が提案されている(下図)。  



また、電圧は同程度でも高容量密度の亜鉛-空気電池などの開発研究が進行している。さて、東京大学
の山田淳夫教授、大久保詩史准教授、長崎大学の森口勇教授らのグループは、ナトリウムイオン電池をシ
ステムとして完成させるための鍵となるマイナス極を開発ことを公表(上図クリック参照)。具体的に
は、チタンと炭素から構成されるシート状の化合物を、ナトリウムイオン電池のマイナス極として応用。
このシート状の化合物は多量のナトリウムイオンを吸蔵・放出する特性を示し(図1)、ナトリウムイ
オン電池の長時間の電流供給を日f詣とするマイナス極であることが分かった。また、シート構造を反
映して高速でのナトリウムイオン吸蔵・放出も可能であり、急速充電にも対応可能であり、さらに、ナ
トリウムイオン吸蔵・放出を繰り返しても特性が劣化することはなく、長期間安定に作動することも分
かったという。



図1 ナトリウムイオン電池の負極イメージチタン (赤)と炭素  (灰色) から成るシート
   状物質がナリウムイオン (黄色)を吸収・放出する。正極(水色)と負極(赤色)

今回発見したマイナス極を、このグループが発見した安価な鉄と硫黄で構成されるプラス極と組み合わ
せることで、ナトリウムイオン電池のプロトタイプが完成した。作製したプロトタイプは、長時間の電
流供給が可能であり、充電・放電を繰り返すことによる劣化もなく、急速な充電や放電にも対応可能。
今後は、ナトリウムイオン電池を実現のボトルネックとなっていた負極の課題が解決され、ナトリウム
イオン電池のプロトタイプを完成したことで、この試作装置はナトリウム、鉄、硫黄、酸素、チタン、
炭素などの汎用元素のみで構成され、低コストな電池の実用化が加速し、小型の携帯機器から大型の電
気自動車まで幅広い用途展開が考えられる。

 

 

この研究成果は、昨年年7月18日、東大の山田淳夫教授らのグループが、リチウムイオン電池と同等以
上の性能を実現する新物質を発見したとことにはじまる。この物質を正極に使用した新型電池は 3.8
V(リチウム換算で4.1V)の高い電圧を出すことができる。新物質の組成はNa2Fe2(SO4)3で。山
田教授は、結晶構造が鉱石のアルオード石に似ていることから、新物質を「アルオード石型」と名づけ
る。アルオード石型化合物は、鉄を用いたナトリウム電池として3.8Vの世界最高電圧を達成した。
最初、間違いではないかと思っという山田教授が、何度も追試を実施。結局、何度やっても同じ値が出
た。それで、間違いではないと確信したという。

つまり、錬金術によるまったくの新規物質だということに気づく。山田教授が「間違いではないか」と
疑ったのには理由がある。電池の電圧は、正極材と負極材の組み合わせで決まる。特に、正極材の酸化
力が、電極電位(酸化還元電位)、ひいては、電圧に反映される。金属が電解質溶液中で発生すること
のできる電圧は、高い順からリチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウムなどと続く。ナトリウムは
リチウムより0.3Vほど劣り、リチウム電池と同等あるいはそれ以上の電圧を出すのは不可能と考え
られるため。電池が放電する時は、正極が電子を引き付ける。この引き付ける強さがポイントになるが
新物質の正極に含まれる鉄イオンは、よりエネルギーの低い電子軌道に強力に電子を引き込む。これが
強い酸化力を生み、高い起電力となる。

 

つまり、軌道としては、周期律表の右側の元素の方が原子核に引き付けられて安定化するので、鉄イオ
ンは、電子を引き取る力がもともと比較的強いのです。さらに、硫酸イオン(SO4)2-によりその傾向
を強め、ナトリウムと組み合わせる物質にしたことがポイント。さらにアルオード石型の結晶構造をよ
くよく見てみると、鉄イオン間の距離が非常に近く、電圧が上がりやすい状況にある。合わせてアルオ
ード石型は、ナトリウムイオンが素早く移動できるが移動するには、ある種の山を越えていく必要があ
るが、その山越えエネルギー(Ea)――非常に優れたイオン伝導体の典型的な値(Ea)は、0.2eV程
度だが、アルオード石型の場合、一番低いところで0.14eV程度と見積もられ――が、この新物質の
場合極めて低いため、充放電を数分で行うことができる。 

一方、山田教授はアルオード石型化合物をつくることに、350℃程度と比較的低い温度で成功。通常無
機の電極材料を合成するには700~800℃前後の高温環境が必要で、温度の点でも今までの方法論が通じ
ない世界だったが、常識的な700℃前後の温度設定ではうまくいっていなかった。このように、新規物質
簡単にできるようになれば、予想以上に「スマートグリッド時代」を加速進化させる可能性がある。

山田教授は、もともとソニーの中央研究所を経てソニーフロンティアサイエンス研究所の研究室長を務
めた。これまでのリチウム電池開発でも未来を切り開いてきた自負と実績がある。例えば、広く普及し
ているリチウムイオン電池の正極材料には、レアメタルであるコバルトが大量に含まれ、早い段階から
コバルトの代わりに鉄を使い、当初は実用性に関して全く未知数であったオリビン型リン酸鉄リチウム
の研究を行う。その反応機構の解明から最適化、さらには新規材料開発に至るまで、世界屈指の体系的
な研究実績を蓄積している。そう簡単に実用化が達成されるかというとそうもいかないとも話す反面、
組成の海図を描いてみると、まだまだ未知の領域があると意欲をみせる。

 

 ● 今夜の一品

親子の絆も深まるかも。 

 


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