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進撃のヘーリオス Ⅴ

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● 進撃のヘーリオスⅤ 最新水電解技術

はやいもので、「オールソーラーシステム」を提案掲載して、3年と4ヵ月経つ。ここにき
て「再エネ」から水素を製造するプロジェクトが加速するニュースが相次いで届いている。
その1つが、五島市椛島(かばしま)沖で進む環境省の浮体式洋上風力発電実証事業で、余っ
た電力から水素をつくる取り組みがはじまっている。島外に運ぶほか、水素を燃料とした車
や船に活用する。実現すれば、送電設備が整っていない離島の再生可能エネルギー事業に可
能性が高まっている。市再生可能エネルギー推進室によると、海上に設置した風車は最大出
力2メガワット。しかし椛島(人口 約150人)の送電線に流せる電力は最大600キロワットしか
なく、それ以上発電しても島内では使用できない。計画は2014年度と15年度の2カ年。生み
出した電気を使って水を水素と酸素に分ける「電気分解」の要領で水素を取り出す。その後
トルエン(メチルシクロヘキサン)と反応させ、液体の状態でドラム缶に保管。こうすれば
余剰電力の エネルギーを備蓄でき、送電網を介さず輸送できる。このほか、水素を燃料にし
た車や小型船を導入することも計画。小型船は、風車の点検などに活用できないか検討して
いる。新しいエネルギーとして水素の注目が集まる中、市は化石燃料を使用しない再生エネ
由来の「プレミアム水素」として発信したい考え。野口太郎市長は「水素をエネルギーとし
て活用できれば新たた道筋を見いだせる。環境に優しい『五島産の水素』となれば、地域振
興の鍵にもなるはずだ」と期待を込めている。浮体式洋上風力発電実証事業は11年度から取
り組んでいる。最大出力100キロワットの小規模試験機や同じく2メガワットの実証機を設
置。実用化に向けたデータ収集などをしてきている。

 

尚、水素貯蔵法として、有機ケミカルハイドライド法水素貯蔵輸送システムでは、水素を大
量に長期間、常温・常圧の条件の下でロス無く貯蔵可能であり、水素エネルギーの国家備蓄
にも対応できる技術として注目されているので記載しておこう(上図)。

2つめは、東芝が「水素」関連事業の強化に乗り出し、製造から貯蔵、発電・利用まで一貫
したソリューションを提供。「地産地消」型ビジネスと「サプライチェーン」型ビジネスに
新たに取り組み、2020年度に水素関連事業で売上高1千億円を目指すという。東芝グループ
では、太陽光・風力・水力発電など再生可能エネルギーを利用した発電システム、水電解装
置、燃料電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)など、多くの水素関連技術を保有し
ている。これらの総合力を生かして、グループ内の技術を融合し、水素の製造から利活用ま
でを実現する水素ソリューションを展開するというニュース。 

それによると、東芝では2014年4月から「次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム」
を設立し、「水素」を基軸にした新たな事業モデルの創出に取り組んできた。これらに加え
2015年4月6日に、東芝 府中事業所内に水素エネルギー研究開発センターを開設。次世代
エネルギーとして水素を基軸とした各種技術の実用化に向けて取り組みを強化する。同セン
ターの建築面積は900平方メートルで太陽光発電システムや水電解装置、水素タンク、エネル
ギー制御システム、燃料電池水素機などを設置。高効率に水と電気から水素を生成する新開
発の固体酸化物形電解装置なども用意しているという。水素に関連するさまざまなソリュー
ション実用化に向けた実証実験を行うとともに、水素関連技術の展示スペースとして活用す
る。

 

水素「地産地消」事業とは、水素の外部調達不要なエネルギーシステムを展開する事業を指
す。再生可能エネルギーと水素電力貯蔵システムなどを用意し、これらを生かして水素を生
成し、再び電力として利用するというエネルギー供給モデルを実現する。用途としては、離
島や遠隔地など発電コストが高い地域向けや、災害対策などで活用するモデルを想定。既に
BCP(Business continuity planning:事業継続計画)対策としては、川崎市で実証実験を開始し
ているという。

 

ところで、水電解による水素製造方式は、(1)アルカリ水電解:電解槽は、アノード、カ
ソードの電極、アルカリ電解液及びアノードとカソードの間に隔壁(セパレータ)があり、
水素を酸素の混合を防止する構造となっている。電極はアノード、カソードともニッケルメ
ッキした鉄電極あるいはニッケル系金属電極のようなニッケル系材料が使用されている。隔
壁には従来アスベストが使用されていたが、ポリエステル系材料などを用いた多孔質膜が使
用されるようになっている。電解液には25~30%の水酸化カリウム水溶液が使用される。常
圧で動作する電解槽の場合は、80℃程度で運転され、電解電圧は1.8~2.1V、電解電流密度
0.2A/cm2程度で、電解効率は70~80%程度の性能になる。(2)固体高分子型水電解:
固体高分子型水電解は電解効率の向上、電解電流密度の向上を目指して1970 年代にゼネラル・
エレクトリックにより開発が開始された。日本では、1990 年台にWE-NET プロジェクトで
開発が行われた。電解質は、プロトン導電性のフッ素樹脂系イオン交換膜が用いられる。こ
れが固体高分子型の名前の由来であり、隔壁の役割も兼ねている。電極はアノード、カソー
ドとも白金、白金系合金あるいは白金担持カーボン等白金系の材料が使用される。電解電圧
は1.6V 程度、電解電流密度1.0A/cm2 程度で、電解効率は90~91%程度の性能になる。
(3)水蒸気電解:水蒸気電解は700~800℃程度の水蒸気を電気分解して水素を製造する技
術で、電解質としてイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミックならなる固体酸
化物が使用される。高温であるため、低温動作の他の水電解システムに比べ高効率が期待で
き、電解電圧1.29~1.32V、電解電流密度0.6 A/cm2 程度が試験データとして得られている。
 高温ガス化炉などの外部から高温熱を利用する場合には、エネルギー効率は95.7%、
内部の熱で自立運転する場合には93.2%が期待できる、の3つある。 

 

ところで、前述した東芝は、原子力発電でのシステムメーカであり、(3)の水蒸気電解技
術の知財を保有しているが、(2)の個体高分子型水電解の開発をおしすすめている(上図)。 
水素電力貯蔵システム構成を上図に示す。SOEC、固体酸化物型燃料電池(SOFC)から成るセ
ルスタック部は.電解槽の性能を上げるため.約800℃の高温としている。また、高い充放
電効率を得るために発電反応で生じた熱を高温蓄熱装置で貯留し、電解反応時に再利用する。
一方、燃料(電解時の水など、発電時の水素など)を室温から約800℃に昇温するために、
再生熱交換器と低温蓄熱装置を設けている。低温蓄熱装置は、高温蓄熱装置と同様に、発電
反応時に蓄熱し、電解反応時に放熱して水を蒸発させる。

 

勿論、(1)の方式を使用するケースもあるが、東芝の水素エネルギー研究開発センタの開
所式のビデオを見る限り、電極を金属からセラミックにかえることで水素発生効率が30%
向上したと説明しているので(1)の方式のものと判断したが、これの確認については残件
扱いとする。

さて、35年後160兆円市場とは、いささか眉唾もののような気がするが、そこはそれ、
それほど大きな期待がかかる仕事であることだけは確かである。今夜はどでかい話題を取り
上げたが、長生きすればそれを見届けることができるかもしれないね ^^;。


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