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エネルギ-と環境 ㊲

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彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:10月18日】

     十三夜 平穏無事を 祈りみる 
                  高山 宇 (赤鬼)

【今日の短歌研究】
                 ルームツアー 本条 恵

 メジロ、蜘蛛、 蜂にカナヘビ ここに巣を欲しているのは我だけでなく

       千の扉の寺に今だけ繋がっているかもしれぬ納戸を開ける

  「ここは使ってない部屋」いいえ、夜遅く何度か我が泣きに来た部屋

         子の友の忘れていった折り紙の猫が見守る足あげ腹筋

※ほんじようめぐみー1979年生まれ。「未来短歌会」笹公人選歌欄、「た
らちねmamこメン・ハー第回「全国短歌大会」大会賞、第9回「中城ふみ
子賞」次席。

 ⬛ 最新ペロブスカイトペロブスカイト太陽電池製造方法

1. 特開2024-11974ペロブスカイト太陽電池およびその製造方法 国立
 研究開発法人物質・材料研究機構 ⓷
【詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
(実施の形態1)
 表面補償帯14により、第1のホール輸送層13との界面、特に第1のホ
ール輸送層13として用いられたNiOx膜との界面、および第1のペロ
ブスカイト層15の空乏(Vacancy)が抑えられて、ペロブスカイ
ト太陽電池101の光電変換効率が向上する。ここで、Vacancyは
、沃素(I)、塩素(Cl)または臭素(Br)などのハロゲン化物イオ
ンの空乏を指す。
この表面補償帯14の効果は、単体のペロブスカイト太陽電池でも高い効
果を発揮するが、トップ側ファースト(太陽光入射側の太陽電池セルを最
初に作る方法)で作製されるタンデム型のペロブスカイト太陽電池の場合、
特に大きな効果を発揮する。この表面補償帯14は、タンデム型のペロブ
スカイト太陽電池作製の熱処理による悪影響抑制から、PVD法形成のN
iOxによる第1のホール輸送層13とともに、第1のペロブスカイト太
陽電池セル32を作製する際に形成しておくのが好ましい。
               (中略)

【実施例】【0064】
(実施例1)
  以下、本発明を断面構造図2、工程図3から7、フローチャート図9およ
びプロセスの詳細も示した工程図10を参照しながら実施例により説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

【0065】
1.太陽電池の作製
  1-1.透明電極層を備えた透明基板の準備
  太陽光を十分に透過する白板ガラスからなる透明基体11の第1主表面に
ITO膜12a、第2主表面にもITO膜12bが形成された透明基板31
を準備した(図3(a)、工程S11a)。
  ここで、透明基体11の大きさは、縦37mm、横35mmそして厚さ0.7
mmであり、ITO膜12a、12bは透明電極状にパターン化されたも
のとした。ITO膜12a、12bの膜厚は150nmであり、その膜抵
抗は約15Ω/sqである。
  なお、透明基板31の第2主表面に低粘着耐熱性カプトンテープ20を貼
り付けてその表面を保護した(図3(b)、図10(a)、工程S11b)。

工程図3 本発明の4端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池の製造工程を
断面図を用いて示した工程図である。

【図3】.本発明の4端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池の製造工程を、
断面図を用いて示した工程図


  1-2.第1のホール輸送層の形成
 ITO膜12aの上に第1のホール輸送層13としてNiOx膜をスパッ
タリング法により20nmの膜厚で成膜した(工程S12a)。この成膜
にはRFマグネトロンスパッタリング装置(SVC-700  RFINA、
サンユー電子(株)製)を用いた。ターゲットは99.9%純度のNiO
((株)高純度化学研究所製)である。スパッタリングガスをアルゴン(
Ar)ガスとし、スパッタリングチャンバーの真空度を<2×10-3Pa
にした後、アルゴンガスを20sccmの流量でチャンバー内に導入し、
室温下50Wのパワーでスパッタリングを行った。このときのアルゴンの
ガス圧は3.5Paである。

  1-3.表面補償帯の形成
  窒素で満たされたグローブボックス内で6mgのMeO-2PACz(
[2-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]
ホスホン酸)を18mLのエタノールに溶解させ、0.22μmシリンジ
フィルターでろ過してMeO-2PACz溶液を得た。この溶液を第1の
ホール輸送層13(NiOx膜)上に滴下して300rpm30秒のスピ
ンコーティングを行い、ホットプレート上で100℃10分の熱処理を行
って、MeO-2PACzからなる表面補償帯(SCL:Surface 
 Compensation  Layer)14を第1のホール輸送層13
上に形成した(図10(b)、工程S13a)。


図10. 実施例1における4端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池
                                 101の製造工程を断面構造図を用いて示した工程図
  1-3.表面補償帯の形成
  窒素で満たされたグローブボックス内で6mgのMeO-2PACz(
[2-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]
ホスホン酸)を18mLのエタノールに溶解させ、0.22μmシリンジ
フィルターでろ過してMeO-2PACz溶液を得た。この溶液を第1の
ホール輸送層13(NiOx膜)上に滴下して300rpm30秒のスピ
ンコーティングを行い、ホットプレート上で100℃10分の熱処理を行
って、MeO-2PACzからなる表面補償帯(SCL:Surface
  Compensation  Layer)14を第1のホール輸送層13
上に形成した(図10(b)、工程S13a)。 

 1-4.第1のペロブスカイト層(広バンドギャップペロブスカイト層)
                                                                                                              の形成
 次に、MeO-2PACzにより表面処理された第1のホール輸送層13
の上、すなわち表面補償帯14の上にハロゲン化鉛ペロブスカイト(FA0.
84Cs0.12Rb0.04PbI2.32Br0.68)からなる広バンド
ギャップペロブスカイト層15を第1のペロブスカイト層として約300
nmの膜厚で塗布法により形成した(図3(c)、図10(c)、工程S
14a)。 具体的には、1.95mLのDMFと0.65mLのDMSO
からなるDMF-DMDO中の6mgの5-AVAl、0.2gのPbI2
(関東化学、純度98%)、0.636gのPbBr2(TCI、純度98
%)、312.うmgのホルムアミジニウム(FA+)ヨウ化物塩(FA
I)、67.4mgのCsI、および18.4mgのRbIを調製し、そ
れを表面補償帯が形成された第1のホール輸送層であるNiOx膜13の
上にスピンコートした。スピンコート開始から34秒後に、クロロベンゼ
ン(CB)溶媒をスピンコート中の基板の中心付近に滴下し、ペロブスカ
イトトップ層を結晶化させた。上記工程を経て広バンドギャップペロブス
カイト層15を形成した。なお、外部量子効率の長波長側立ち上がり特性
から広バンドギャップペロブスカイト層15のバンドギャップを推定した
ところ、その値は約1.68eVであった。

  1-5.添加剤のペロブスカイト表面処理
 ピペラジン二ヨウ化水素酸塩(Piperazine  Dihydrio
dide,PZDI)を(PZDIで12mg、0.2重量%相当)6m
LのIPA溶媒に溶かした溶液を第1のペロブスカイト層15の上に滴下
し、5000rpmで50秒スピンコートし、最後に100℃で5分アニ
ールを行った(工程S15a)。

  1-6.第1の電子輸送層の形成
  以下の手順で、PCBM([6,6]-Phenyl-C61-Buty
ric  Acid  Methyl  Ester)からなる第1の電子輸送層
16を作製した(工程S16a)。電子輸送材料を99%純度のPCBM
(SIGMA-ALDRICH社)で2重量%相当)1mLの無水クロル
ベンゼンに溶かした溶液を第1のペロブスカイト層15上に滴下後、先ず
1000rpm7秒、引き続いて4000rpm30秒の条件でスピンコ
ートし、100℃10分の熱処理を加え、膜厚50nmの第1の電子輸送
層16を形成した。

  1-7.第1のホールブロッキング層の形成
  AvantamaAGを含む(アルミニウムがドープされた)酸化亜鉛
ナノ粒子(AZOナノ粒子)が懸濁されたインキであるNanograde
  N-21X(ナノグレード社)を滴下後、先ず1500rpm5.5秒、
引き続いて4000rpm20秒の条件でスピンコートしてPCBMから
なる第1の電子輸送層16の上に厚100nmのAZO膜からなるホール
ブロッキング層17を100℃10分の熱処理により作製した(図10(
d)、工程S17a)。

  1-8.導電性酸化膜(ITO)の形成
 以下の手順で、約100nmの膜厚のITOからなる透明電極18を作製
した(工程S18a)。このITO膜の成膜にはDCスパッタリング装置
SH-250、ULVAC製)を用いた。ターゲットは99.9%純度の
ITO(高純度化学製)である。スパッタリングガスをアルゴンガスとし、
スパッタリングチャンバーの真空度を<2.0×10-3Paにした後、ア
ルゴンガスを11~12sccmの流量でチャンバー内に導入し、室温下
50Wのパワーでスパッタリングを行った。このときのアルゴンのガス圧
は約0.15Paである。

  1-9.グリッド電極の形成
  熱蒸着法により厚さ約3000~5000nmの銀(Ag)を堆積させ
てグリッド電極19を形成し、透明基板31の第1主表面上に第1のペロブ
スカイト太陽電池セル32を作製した(図4、10(e)、工程S19a)。

  1-10.封止
  得られたセルにカバーガラスを設置して紫外線硬化性のレジンであるUV
RESIN  XNR5516Z(NagaseChemteX製)を用いて
封止し(図示なし)、カプセル化して第1のペロブスカイト太陽電池セル
32の電気特性の評価を行った。

  1-11.第2のペロブスカイト太陽電池セル作製の準備
 封止後、透明基板31の第2の主表面を保護していたカプトンテープを
剥離し、さらに酸素プラズマにより剥離後のITO面12bを清掃した(
図5、10(f)、工程S19b)。

1-12.第2のホール輸送層の形成
ITO膜12bの上に第2のホール輸送層21としてPEDOT:PSS
(Clevios  P  VP  AI4083)膜をスピンコート法により約
20nmの膜厚で成膜した(図10(g)、工程S20a)。3000r
pmで30秒にてスピンコートし、100℃で5分アニールをした。

  1-13.第2のペロブスカイト層(狭バンドギャップ
                                                                             ペロブスカイト層)の形成
 次に、PEDOT:PSS上に第2のペロブスカイト層として、ハロゲン
化鉛ペロブスカイト(FA0.6MA0.26Cs0.1Pb0.5Sn0.
5I3)からなる狭バンドギャップペロブスカイト層22を約600nm
の膜厚で塗布法により形成した(図6、10(h)、工程S21a)。具
体的には、1.372mLのDMFと0.344mLのDMSOからなる
DMF-DMDO中の553.3mgのPbI2(関東化学、純度98%)、
446.5mgのSnI2、18.8mgのSnF2、350.9mgのホ
ルムアミジニウム(FA+)ヨウ化物塩(FAI)、31.2mgのCsI、
38.2mgのメチルアンモニウム(MA+)ヨウ化物塩(MAI)および
10.8mgのMAのSCN塩(MASCN)を調製し、それを第2のホ
ール輸送層であるPEDOT:PSS膜21の上にスピンコートした。ス
ピンコート開始から40秒後に、クロロベンゼン(CB)溶媒をスピンコ
ート中の基板の中心付近に滴下し、ペロブスカイト層を結晶化させた。上
記工程を経て狭バンドギャップペロブスカイト層22を形成した。なお、
外部量子効率の長波長側立ち上がり特性から狭バンドギャップペロブスカ
イト層22のバンドギャップを推定したところ、その値は約1.24eV
であった。

  1-14.添加剤によるペロブスカイト表面処理
  エチレンジアミン(Ethylene  Diamine,EDAI2)を
(EDAI2で12mg、0.2重量%相当)6mLのIPA溶媒に溶か
した溶液を狭バンドギャップペロブスカイト層22の上に滴下し、5000
rpmで50秒のスピンコートし、100℃で5分アニールをした(工程S
22a)。

  1-15.第2の電子輸送層の形成
C60を真空蒸着装置で狭バンドギャップペロブスカイト層22上に約30
nm蒸着し、第2の電子輸送層23を形成した(工程S23a)。

 1-16.第2のホールブロッキング層の形成
BCP(Bathocuproine)を真空蒸着装置によりC60から
なる第2の電子輸送層23の上に約6nm、第2のホールブロッキング層
24として積層した(工程S24a)。

 1-17.裏面電極の形成
 熱蒸着法により厚さ150nmの銀(Ag)を堆積させて裏面電極25を
形成した(図7、10(i)、工程S25a)。
  以上の工程により、狭バンドギャップペロブスカイト層22を有する第2
のペロブスカイト太陽電池セル33を、広バンドギャップペロブスカイト
層15を有する第1のペロブスカイト太陽電池セル32が形成されている
面とは反対面の透明基板31上に形成した。

  1-18.封止
  得られたセルにカバーガラスを設置して紫外線硬化性のレジンであるUV
RESIN  XNR5516Z(NagaseChemteX製)を用いて
封止し(図示なし)、カプセル化して電気特性の評価を行った(図7)。
                           この項つづく

13th October 202
4SpaceX achieves major milestone in spaceflight

  Only Yesterday 『君の瞳は1万ボルト』
      



昨年は猛暑と剪定の失敗もあり未然におわり、この異常気象で開花を危ぶ
まれたものの開花!資生堂の創立百五十年祝い、アリス・山口百恵をも参
加した、谷村新司の、中国プラント建設プロジェクトのメンバーの追悼し
て、これを選曲(1978年)。





● 今夜の寸評:憲法九条と民主主義 ②
衆議院選挙がスタ-トした。今回は早い時期から現政権を見放し、政権交
代を望んでいた(少ないながらも「多面的な政策対応の悪さ」をコミット
しこのブログに折々掲載)。

■ 日本の民主主義
日本は1990年代のバブル崩壊以後、長期停滞に入ったままと言われます。
国家は、少子高齢化による人口減・経済格差など多くの社会問題を解決で
きないにもかかわらず、政権転覆につながるような激しいデモや社会変動
は起きていません。つまり、国家を監視し、国家の「専横」を防ぐほどに
は社会は強くない。この日本の状況はとても興味深いと思います。私は日
本の専門家ではありませんが、なぜ日本の労働者が賃上げをもっと激しく
要求しないのかわかりません。日本は最近の例で、高齢化が最も早く進ん
でいる社会ですが、ロボットを多く使ったり、経済活動を立て直したり、
いくつかの点で日本はその傾向にうまく適応したと思います。 少子化対策
というのは非常に難しいチャレンジです。もっと子どもを作るように人に
命令することはできません。中国では人口減が問題視されているようです
が、他のヨーロッパなどの多くの国は日本と同じような人口統計学上の問
題に直面していません。なぜなら移民の受け入れに積極的だからです。  
日本はそうした選択をしませんでした。難民認定がとても厳しいからだと
も言われますが、その理由はわかりません。とはいえ、いろいろ考慮して
みると、日本の民主主義は総合的にうまく機能しています。もちろん贈収
賄や談合も起こっていますが、それは民主主義のプロセスがそうした問題
を認識して立ち向かわなければなりません。私の祖国トルコにおける民主
主義はまったく異なります。トルコの民主主義はほとんど死んだも同然で
す。他方、経済は違います。地方から都会に移っています。一時、大規模
な建設ブームがありましたが、労働組合はトルコでは非常に弱く、大きな
ストライキは起こっていません。トルコの労働市場は規制されており、そ
れが多大な非効率性を生み出しています。トルコでは民主主義が〝逆戻り〞
したので、報道の自由はまったく残っていません。国に対して反体制的な
ものの見方を公表したことで刑務所に入れられている人がたくさんいます。
司法は完全に大統領のコントロール下にあります。

 

 
自由の命運  国家、社会、そして狭い回廊
著者名:ダロンアセモグル ジェイムズ・A・ロビンソン

ポピュリズムの伸張や専制国家の台頭により、世界各地で脅かされている
「自由」。この権利を勝ち取り、経済的な繁栄を成し遂げた国々が、人類
史上まれなのはなぜか? 繁栄の前提条件となる個人の自由と安全は、強
力な国家=「リヴァイアサン」なしにはあり得ない。しかし国家が強くな
りすぎれば「専横のリヴァイアサン」(独裁国家)が生まれ、逆に弱すぎれば
「不在のリヴァイアサン」(無政府状態)に堕してしまう。専横と不在のふた
つのリヴァイアサンに挟まれた「狭い回廊」に入り、国家と社会のせめぎ
合いをへて「足枷のリヴァイアサン」を生み出した国だけが、自由と繁栄
を維持できるのだ。では、その道筋とは? 内戦下のシリアから、古代ギ
リシア、建国期のアメリカ合衆国、現代中国まで、古今東西の豊富な歴史
研究をもとに、ますます貴重になりつつある自由を保ち、「狭い回廊」内
に留まる方策を論じる。世界的ベストセラーとなった前著『国家はなぜ衰
退するのか』をしのぐ傑作
----------------------------------------------------------------------------------
■ 中国の新しいナショナリズム  
中国は日本を抜き世界2位の経済大国となり、アフリカや中東への関与を
拡大させています。とはいえ、中国においても景気後退と人口減というリ
スクは指摘され、かつ、リーダー自ら憲法改正して任期制度を撤廃し、初
の3期目を務めるなど民主国家・自由主義とは異なる「専横」の道を突き進
んでいます。 習近平・国家主席がますます専横的になってきたことは間違
いありませんが、私は中国に対して、以前とはいささか異なる解釈をして
います。以前は、elite circulation(エリートの循環)という鄧小平のモデル
下で、エリート・コントロールをしていたから、中国はうまくやっていた
と考える人がいました。つまり一人のエリートが入ってきて、さらにもう
一人のエリートが入ってくると、彼らがお互いを抑制し合い、それでうま
くいっていたのです。けれども、そのモデルが安定したことは一度もない
と思います。これは私の著書『自由の命運』の主要テーマの一つです。ト
ップに君臨するエリートによって計画された経済的ダイナミズムと、自由
は両立しません。そこには社会の参画が必要です。中国がますます裕福に
なったことで中間層が出現してくると、自由に対する要求がより多く出さ
れるようになりました。ある意味、習近平自身が過去の均衡を維持して、
中間層を抑圧してきた共産党システムの結果です。それにはある程度経済
改革を必要としますが、政治的抑圧と情報コントロールが著しく引き締め
られます。 中国共産党にとって、それを実行する一つの方法は、ナショナ
リズムをあおることです。実際のところ、中国の新しいナショナリズムは
共産党のコントロール下にありません。それは自律した力になりました。
もちろん、より習近平らしい方法もあります。例えばゼロ・コロナ対策で
す。これはより特異な対策でしたが、私は習近平を中国の政治システムか
らの逸脱とは見ません。単に、以前からの継続であると見ます。

中国と政治的・経済的・軍事的に覇権を争うアメリカは、トランプ以後、
国内の分断と格差問題を抱えています。2023年3月に起きたシリコンバレー
バンク破綻をきっかけとした銀行不安に証券市場の動揺が重なれば、新た
な信用不安となりグローバルに波及していく可能性も指摘されています。
しかし、実際それがグローバルに広がるとは思いません。むしろ、アメリ
カが抱えている主要な問題はバンキング・セクターにあるのではなく、テ
クノロジー・セクターにあり、格差を生み、他のすべての会社を食い物に
する少数の企業が幅を利かせていることにあります。

国家の能力、経済発展、経済成長とは何か。それを一般の人に対してどの
ように説明したらよいか。そもそも「豊かさ」や「繁栄」の本質はどこに
あると考えたらよいのでしょうか。経済成長というのは、それをどう測定
するかで変わってきます。それについては新著“Power and Progress : Our 
Thousand-Year Struggle Over Technology andProsperity”(サイモン・ジョ
ンソンとの共著『技術革新と不平等の1000年史』)で強調した、もう一つ
のテーマです。
GDPだけで経済成長を測定することはできません。意義ある人生、良い仕
事、平等が必要です。これらはAI革命がさらに脅威にさらす問題です。恐
らくAIはデータや新しいプログラムなどの面で生産性を増すでしょう。でも、
もしそこから得られた利益を平等に分配することができなければ、より良
き市民、労働者になる気持ちをわかせることは難しいでしょう。そうなる
とそれは進歩とは言えません。新たな産業革命が起きたり、AI革命が起き
るとパワーバランスが変わったり、まったく異なる局面に入ることになり
ます。だから妄信的に楽観主義になるのは危険であると私は言いたいので
す。テクノロジーをコントロールする人が勝者になり、他の人は取り残さ
れます。AIについて最近よく考えます。  AIには確かに明るい将来がある
でしょうけれども、私が今まで抱いていた懸念も象徴しています。テクノ
ロジーの変化の歴史について振り返れば、AIなどテクノロジーが発達する
と経営者や企業はますますパワフルになりますが、それは労働者や一般市
民を犠牲にしたうえでのことです。 「自由への回廊」はAIのせいでますま
す狭くなっている 。と思います。さきほど言ったように、AIは一般市民や
労働者を食い物にして、最大規模の企業と政府だけをますますパワフルに
させているだけです。(聞き手・ジャーナリスト 大野和基)
-----------------------------------------------------------------------------------
※わたし(たち)は、1980年に世界的な政治経済の幻想基軸が「地下化石
燃料本位制」から「先端技術本位制」を経て「環境リスク本位制」に移行
すると考え、「日本的な土地本位制バブル」を批判しており、「デジタル
革命論」を引っ提げて近未来を見通し行動し、正鵠を射て(気候変動、天
安門事変、原発災害、バブル崩壊、デジタル革命など)今日まできたが、
「自由」「平等」「博愛」「非戦」「環境」「国連主義」を掲げ「ラスト
・ディケイド」を懸け抜けたい。
                           この項つづく



 

 

 


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