彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。
【季語と短歌:10月日】
身にしみて体温異常低血圧
高山 宇 (赤鬼)
【今日の短歌研究】
⬛ リサイクル可能で強靭な高分子材料の構造を放射光により解明
~微粒子接触面で絡み合うナノレベルの構造に着目~
図1 研究概要:強靭な微粒子フィルムのナノ構造を解明
10月18日、弘前大学らの研究グループは強靭でありながらリサイクル可能
な高分子微粒子材料の構造を評価し、強靭化メカニズムを解明した。この
強靭な微粒子材料は機能性材料として何度も再利用できるため、幅広い用
途で使用されている高分子材料への適用が期待される一方、どのように強
靭性が形成されるのかはわかっていなかった。本研究では、放射光X線を
微粒子フィルムに照射し、散乱したX線を読み取ることで、微粒子接触面
が厚さ数ナノメートル(100万分の1ミリ)単位で絡まり合い、強くて壊れ
にくいフィルムのナノ構造に重要な役割を果たしていることを解明した
(図1)。
【成果】微粒子フィルム内に存在する微粒子同士の界面(微粒子間の接着
面)が強靭性を解明するうえで重要な要素ではないかと考え、非常に明る
い光を物質に照射し、散乱してくる光から物質の構造を解析できる放射光
X線散乱法を微粒子フィルムに適用した(注3)。測定対象は、メチルアクリ
レートから成る高分子微粒子フィルムで、粒子内部の高分子鎖を橋かけ(
架橋)し、架橋の度合を段階的に変えることで高分子鎖の動きを制御した。
架橋が多く施された微粒子フィルムは、微粒子同士の接触面で高分子の鎖
が絡まり合いにくいため、すぐに破断し、脆くなります。一方で、架橋度
合いが少ない微粒子フィルムは、高強度かつ壊れにくいことがわかった。
放射光散乱による解析により、この強靭な微粒子フィルムは水溶媒乾燥時
に微粒子同士が強く融着し、数ナノメートルの深さで高分子の鎖が絡まり
合っていることがわかった。さらに、高速原子間力顕微鏡法(注4)や分子
動力学シミュレーション(注5)などの最新の評価技術を駆使し、フィルム
内の微粒子の変形性や運動のしやすさが架橋度で変化していることがわか
つた。また、微粒子フィルムを伸ばした状態で、放射光を照射するその場
測定も行い、微粒子が変形する様子を観測することで材料が破断するまで
のナノ構造を解析することにも成功した(図2)。微粒子接触面で高分子鎖
が深く絡まり合っていることで材料がよく伸び、高い強度を示すことがわ
かり、数ナノメートルレベルの構造の重要性を明らかにした。
図2. 放射光施設にて伸ばした微粒子フィルムの構造評価の様子(左)。フ
ィルムから散乱した放射光X線強度のパターンが伸長前は等方的な円状で
あるが(右上)、伸長後に異方的に変形し、微粒子の構造変化を観測(右
下)。
【論文情報】
雑誌名:Langmuir
題名:Nanoscale Structures of Tough Microparticle-based Films investigated
by Synchrotron X-ray Scattering and All Atom Molecular Dynamics Simulation
DOI:10.1021/acs.langmuir.4c02361
◾この技術が実用化されれば「新錬金術時代」の幕開けに繋がる。「鋼の
プラスチック」も夢でないだろう。
⬛ 最新ペロブスカイトペロブスカイト太陽電池製造方法
1. 特開2024-11974 】ペロブスカイト太陽電池およびその製造方法 国立
研究開発法人物質・材料研究機構 ④
【詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
(実施の形態1)
2.光電変換特性評価
上記作製方法によって作製したペロブスカイト太陽電池101のJ-V特
性を、AM1.5Gスペクトルフィルターを使用して1-SUN規格の条
件で測定した。ここで、光は広バンドギャップペロブスカイト層15が配
置されている第1のペロブスカイト太陽電池セル32側からペロブスカイ
ト太陽電池101に照射した。したがって、第2のペロブスカイト太陽電
池セル33は、実使用時と同じように、第1のペロブスカイト太陽電池セ
ル32および透明基板31を通ってきた光での光電変換評価である。その
結果を表1に示す。表1および表2には、第1のペロブスカイト太陽電池
セル32と第2のペロブスカイト太陽電池セル33の各々に対して下記項
目の評価結果、および第1と第2のペロブスカイト太陽電池セルが4端子
タンデム配置されているペロブスカイト太陽電池101としての変換効率
(Total η)の評価結果が示されている。その項目は、短絡電流(Jsc)
開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、直列抵抗(Rs)、並列抵抗(
Rsh)および変換効率(η)である。なお、表1と表2の差は、試料の作
製時期であり、表2の方が作製時期が遅い。作製プロセス自体は変えてい
ないが、表2の時期の方がプロセス安定性が増し、作製途中の放置時間も
少なくなっている。
なお、製造ばらつきを評価するために、表1では、#1から#3の同一仕
様の3枚の基板を用い、同一プロセス条件で試料を作製した。各基板には
4つのチップが搭載されているので、計12チップを評価した。表2では、
#4から#6の同一仕様の3枚の基板を用い、同一プロセス条件で試料を
作製した。各基板には4つのチップが搭載されているので、計12チップ
を評価した。 また、参考までに、#2基板を用いた第1チップにおける
J-V特性曲線と光電変換効率ηの時間変化について測定した結果を、入射
光側(Top側)の第1ペロブスカイト太陽電池セル32の場合図11、
奥側(Bottom側)の第2ペロブスカイト太陽電池セル33の場合図
12に示す。
ここで、両図の(a)はJ-V特性曲線、(b)は光電変換効率ηの時間
変化を示している。図(a)中のCyc1は1回目(0秒経過)、Cyc5
は5回目(80秒経過)のI-Vカーブ測定結果を表す。図(b)中のGo
は印加電圧増加方向へのI-Vスキャン、Retは印加電圧減少方向への
I-Vスキャン、そしてAveはGoとRetの平均値を示している。
その結果、ペロブスカイト太陽電池101として、15.2~18.4%、
平均17.1%という高い変換効率ηが得られた。このような高い光電変換
効率ηが得られたのは、光が広バンドギャップペロブスカイト層15側から
狭バンドギャップペロブスカイト層22側へと入り、その光吸収の関係か
らフォトンの収率が高いことと、広バンドギャップペロブスカイト層15
側を最初に作り、その後、耐熱的な安定性が広バンドギャップペロブスカ
イト層15より劣る狭バンドギャップペロブスカイト層22を作製したこ
とによる。なお、参考までに、実施例1の熱処理条件一覧を表3に示す。
表1
表2
表3
.
【0088】
(実施例2)
実施例2では、実施例1に準拠させた構造の4端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池101に対して、そのプロセス温度依存性を調べた。具体
的には、第2のホール輸送層21であるPEDOT:PSS(工程S20
、S20a)の熱処理条件を120℃10分として、その他は実施例1と
同様にして評価した。そのJ-V特性曲線と光電変換効率ηの時間変化につ
いて測定した結果を、実施例1と同様に、入射光側(Top側)の第1ペ
ロブスカイト太陽電池セル32の場合図13、奥側(Bottom側)の
第2ペロブスカイト太陽電池セル33の場合図14に示す。ここで、両図
の(a)はJ-V特性曲線、(b)は光電変換効率ηの時間変化を示している。
その結果、第2のペロブスカイト太陽電池セル33の熱処理の影響も受け
る第1ペロブスカイト太陽電池セル32のJ-V特性曲線は、サイクル1
と5で有意な差が見られ、また、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の
光電変換効率ηは100℃5分の熱処理のときの12.4%より大幅に低い
8.5%に留まった。この結果、第1ペロブスカイト太陽電池セル32と
第2ペロブスカイト太陽電池セル33の各部を合わせた4端子タンデム型
ペロブスカイト太陽電池101の変換効率は、120℃10分熱処理によ
り100℃5分の熱処理のときの18.2%より低い14.0%であった。
なお、第2ペロブスカイト太陽電池セル33のJ-V特性曲線は、サイク
ル1と5で大きな差は認められず、第2ペロブスカイト太陽電池セル33
の光電変換効率ηは100℃5分の熱処理のときの5.8%に近い5.5%
であった。
次に、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度を100
℃から85℃に変えたときの第1のペロブスカイト太陽電池セル32の光
電変換特性に与える影響を第1のペロブスカイト太陽電池セル32作製段
階で評価した。評価方法と評価項目は実施例1と同様である。その結果を
表4に示す。表4から明らかなように、85℃の熱処理では十分なアニー
ル効果が得られず、基板毎に特性が大きく変化する不安定な結果となった。
したがって、熱処理温度としては、85℃を超える熱処理が好ましいこと
が確認された。
表4
次に、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度を100℃
に固定して、その処理時間を3分、5分および10分の3水準に変えたと
きの第1のペロブスカイト太陽電池セル32の光電変換特性に与える影響
を第1のペロブスカイト太陽電池32作製段階で評価した。評価方法と評
価項目は実施例1と同様である。その結果を表5に示す。その結果、最初
に作製する第1のペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度は
100℃とすることにより、安定して高い光電変換効率ηが得られることが
わかった。
表5
【0094】
(実施例3)
実施例3では、最初に、狭バンドギャップペロブスカイト層22を有する
第2のペロブスカイト太陽電池セル33を透明基板31上に作製し、その
後、広バンドギャップペロブスカイト層15を有する第1のペロブスカイ
ト太陽電池セル32を作製したペロブスカイト太陽電池102について、
その光電変換特性を実施例1と同様にして調べた。その作製プロセスの詳
細を図15に示す。
図15 実施例3における4端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池102
の製造工程を断面構造図を用いて示した工程図
その結果、後で作製した第1のペロブスカイト太陽電池セル32側の光電
変換効率ηは14%と実施例1の場合と大差はなかったが、後続の熱処理の
影響を受ける第2のペロブスカイト太陽電池セル33側の光電変換効率ηは
1%と低いものとなり、第1ペロブスカイト太陽電池セル32と第2ペロ
ブスカイト太陽電池セル33の各部を合わせた4端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池101の変換効率は15%であった。
15%という光電変換効率も高い値であるが、実施例3の構造より実施例
1、すなわち、広バンドギャップペロブスカイト層15を有する第1のペ
ロブスカイト太陽電池セル32から作製する作製方法は、高い光電変換効
率ηを得る観点から、特に好ましいことが示された。
(比較例)
比較例では、2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103を試作して
その光電変換特性を調べた。比較例で試作した2端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池103は、図16に示すように、1枚のガラス基板51上
に広バンドギャップペロブスカイト層55を有する第3のペロブスカイト
太陽電池セル42が形成され、さらにITO膜58を挟んで狭バンドギャ
ップペロブスカイト層60を有する第4のペロブスカイト太陽電池セル4
3が積層された太陽電池である。
図16. 比較例における2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103
の構造を示す構造図
2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103は下記の工程により作製
した。最初に、第1の主表面上に第3のITO膜52が形成されたガラス
基板51を準備し、ITO膜52上に第3のホール輸送層53として、実
施例1と同様に、スパッタリング法によって堆積されたNiOx膜を形成
し、さらにそのNiOx膜上にMeO-2PACsによる表面補償帯54
を形成した。
その後、第3の広バンドギャップペロブスカイト層55を塗布法により形
成した。ここで、広バンドギャップペロブスカイト層55の組成は
FA0.84Cs0.12Rb0.04PbI0.77Br0.23とした。
しかる後、広バンドギャップペロブスカイト層55の表面を実施例1と同
様にPZDIで表面処理した。その後、第3の電子輸送層56としてC60
MC12、第3のホールブロッキング層58としてAZO、そして第4の
ITO膜58を順次積層して第3のペロブスカイト太陽電池セル42を形
成した。
次に、第4のITO膜58上に第4のホール輸送層59として実施例1と
同様にしてPEDOT:PSSをスピンコートした。その後、第4のペロ
ブスカイト層60として、組成がFA0.8MA0.1Cs0.05Pb0.
5Sn0.5Iからなる狭バンドギャップペロブスカイト層を塗布法により
形成した。しかる後、実施例1と同様にして、エチレンジアミンで第4の
ペロブスカイト層60の表面を表面処理し、第4の電子輸送層61として
C60を蒸着した。さらに、実施例1と同様にして、第4のホールブロッ
キング層62としてBCPを蒸着し、熱蒸着法により銀からなる裏面電極
63を形成した。以上の工程により、第4のITO膜58上に第4のペロ
ブスカイト太陽電池セル43を積層して、2端子タンデム型ペロブスカイ
ト太陽電池103を作製した。作製した2端子タンデム型ペロブスカイト
太陽電池103の特性を実施例1と同様にして評価した結果を表6に示す。
光電変換効率ηは3.07~5.26%であり、実施例1の1/3以下
に留まった。
表6
【産業上の利用可能性】
本発明により、低コストで変換効率および出力が高くかつコンパクトな
ペロブスカイト太陽電池およびそのペロブスカイト太陽電池の製造方法
が提供されるので、産業の発展に大いに寄与することが期待される。
この項了
◾コンパクトでフレキシブル、高変化率で軽量、透明で意匠性も高く、計
測デバイスなどの電源とし導入すれば、情報法通信機器に使用すれば、ワ
イヤレスで分散電源となる。深水の限界はあるが、海水中で使用しても発
電でき、保安ブイの電源などに使用できる。原発のような放射能汚染の
心配はなくなる。ポスト・シャドウマスク事業の事業開発がここに実現す
る。関係者の努力に感謝・深謝したい。
Only Yesterday 『昴』
『昴 -すばる-』は、1980年4月1日発売された谷村新司のシングル。「昴」
というのは「プレアデス星団」の和名。ソロ歌手としては自身最高となる
60万枚の大ヒット曲となった。自著『谷村新司の不思議すぎる話』による
と、この歌詞は引っ越しのため、引っ越し会社の社員と一緒に荷作りをし
ていた谷村が床に寝そべりながらダンボール箱に思い付いたことを書いて
出来たもの(2014年1月30日刊、マガジンハウス)。歌詞は谷村自身の手
によるものであり、最初にできたのは、結びの「さらば昴よ」というフレ
ーズであった。via Wikipadia
● 今夜の寸評:憲法九条と民主主義 ④
10月19日、小幡 績 :慶応義塾大学大学院教授が『国家はなぜ衰退するのか』
を批判し、「ノーベル経済学賞」のアセモグル教授らに反論、「国の経済
発展をもたらすのは『政治制度』はない」(東洋経済オンライン)の記事
に目に留る。著者はまず、政治制度は表面的なもので、手段であり結果で
もあり、その奥に真の理由がある。よい社会は手段として良い民主主義を
確立し、機能させることができる。そして、その真の理由こそが「社会資
本」だ(これは1990年代のSocial Capitalの議論と同じだ)。よい政治を機
能させ、経済をよい形で発展させる基盤は社会、社会資本であり、もし国
家が社会を導くのであれば、国家の政策として重要なのは、社会資本を蓄
積することである。これは前回も主張したところだ。」切り込み、「社会
資本」を、具体的な一例を挙げて説明。
先日、いつものように地下鉄に乗った。そして、よく見かける光景だ
が、車いすの高齢者が介助者と一緒に乗っていて、駅に着くと、駅員
が車いす乗降用の板を持ってきて、降車を補助した。周りの人はこれ
に手を貸すか、スペースを空けて協力した。このようなことがあって
も、地下鉄は20秒と遅れず発車し、順調に運行が続き、私は目的地に
スマホサイトの示す時間どおりに着き、約束の場所に向かった。
■「社会資本がきちんと存在している状態」とは?
続けて、社会資本がきちんと存在している社会であれば、まず、①車いす
が入手可能である。②介助する人がいる。次に、③車いすの人を見かけた
ら、知り合いでなくとも、その場にいる周りの人々が助けてくれる。④そ
のニーズに気づいて、これをシステマチックに解決しようとする。⑤地下
鉄の運営組織がこれに対応して、あらかじめ板などを用意する。⑥どこの
車両に助けを必要とする人がいるか、その人がどこで乗降車するか、これ
らを認知する仕組みを作る。次に、⑦これを実施する担当者(ここでは地
下鉄駅員)が、自分の活動をいったん脇に置いて、これを実施する。⑧こ
の補助が、全体の地下鉄運営に悪影響を与えないようにする。あるいはあ
る程度のロスがあっても、カバーして、持続可能なものとする。 ①から
⑧までを1つひとつみていく。
①が成り立なりたつには、車いすという発明、生産する技術が必要 ➡社
会資本の成立には、一定水準の経済発展が必要。1人当たり国民所得の相
関で示めす。②は、雇える経済力でもいいし、家族というものでもいいし
ボランティアというものもある。徴兵制のように、ボランティアの強制も
ありうるが、それは社会主義的だ。共産主義なら担当の公務員を作る。
これは社会のスタイルによるが、✨持論だが、「傭兵制」で、国民動員時
は「公務員制」「義勇兵制」というのもありうるだろう。
③は、その社会の優しさであり、同時に平和で、他人を不必要に警戒しな
くて済む社会である。いつひったくりや暴行にあうかわからないような社
会では、周りを見渡す余裕はないし、隙を見せたら、別の人にやられてし
まうかもしれない。
ここで、そもそも車いすで外出しようとすること自体が本人にとって危険
かもしれない。一方、乗客全員がスマホだけを見ていれば、車いすの人が
降りようとしていることに気づかない、いや乗っていたことすら認識して
いないだろう。これは別の意味で、社会資本が失われている社会。他人に
対する完全な無関心であると例示する。また、重要なのは④の「ニーズに
気づいて、これをシステマチックに解決しようとする」だ。これを実現で
きる社会はそんなにない。日本の場合は、欧州ではこういうのがある、と
誰かがプレッシャーをかけたか、駅員がそう思って、社内で上に提案した
か、どういうきっかけかわからないが、いずれにせよ、そういう発議が起
こる社会はよい社会。さらに、⑤のように、これに対応できる余裕が、こ
の組織(企業にせよ政府系にせよ)にあることが重要である。それは、ボス
の度量かもしれないし、その組織の文化かもしれないし、その組織の仕組
みによるかもしれない。また、⑥はアメイジングだ。全社で対応しなけれ
ばいけないし、駅間のチームワークも重要だ。DX(デジタルトランスフォ
ーメーション)で、情報だけは飛ばせるかもしれないが、その見込み時間ど
おりに地下鉄が着かないと、駅員は待ちぼうけを食うことになるし、電車
がついてから対応を始めれば、この地下鉄は発車が遅れる。
⑦は個人の性質にもよるが、社会、コミュニティの雰囲気による。ラッシ
ュが続く新宿区では難しいかもしれないが、それほど混んでない郊外の地
下鉄なら簡単かもしれない。さらに、その組織がどこまで時間の余裕を駅
員に持たせているかも重要だ。東京メトロが10月23日に上場したら、株主
が「1分でも金にならない時間は使うな!」と株主総会では表立って言え
ないが、内内に訪問して圧力をかけるかもしれない。⑧は、まさにチーム
ワーク、組織文化、そして社会の総力戦である。
⬛ 「今ある社会資本」を守り、育てていくことが重要
これでわかるのは以下の4つである。第1に、社会資本にはいろいろな種類
がある。第2に、それは意図的に作り出すのは難しそうで、市場メカニズ
ムからは生まれにくいと見込まれる。第3に、それは社会毎に異なる、さ
らに同じ国でも部分により異なり、階級ごとあるいは所得階層ごとに異な
るコミュニティが成立していれば、そのコミュニティごとに異なり、また
同じ国でも時代により異なり、数十年いや10年でも、急速に失われる場合
がある。そして第4に、その一方で、ゼロから作るのは難しく、また失わ
れたものを取り戻すのも難しく、今あるものを大事に守っていく、育てて
いくしかない、ということだ。
この項つづく