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スマートシティー工学のススメ

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   創造力は、脳が悦んでいる状態で発揮されるものです。/ 飯島 澄男 


 


Is Google taking over the world? A look at Sidewalk Labs

● サイバーフィジカルシステムの時代

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やビッグデータ分析技術が発展してきたことにより、現実
空間(フィジカル)で発生する事象をそのまま仮想空間(サイバー)に取り込み、コンピュータの力で分
析し、最適な結果を現実世界にフィードバックする「サイバーフィジカルシステム」の実現が現実のもの
となりつつある。ところが、従来、といっても最近までのことではあるが、これまでの電力網(スマート
グリッド)や、工場(スマートファクトリ)など一部の領域に、徐々に活用が振興しているものは、いず
れも、殆どが閉鎖空間で行うケース。これを「街全体で行う」という取り組みが進行しているという。そ
の1つに、街を丸ごと仮想化仮想化してしまおうという「スマートシティ」構想。

今月10日に、米グーグル(Google)はスマートシティに関連する新子会社を設立することを発表。新子会
社の名前は「Sidewalk Labs」で、元ブルームバーグ社長で米国ニューヨーク市の経済発展と再開発担当の
副市長のダン・ドクトルフ(Dan Doctoroff)代表が勤める。グーグルのCEO(最高経営責任者)のラリー・
ペイジ(Larry Page)は「Sidewalk Labs は、生活費、効率的な輸送やエネルギー使用量などの都市の問題
に対処するため、都市技術を開発し、インキュベートすることによって都会生活の向上に取り組む」と述
べ、「世界中の多くの都市では既にトラフィックパターンを測定し、これらを可視化するダッシュボード
を活用するなど部分的にはさまざまな進歩がある。しかし、都市部の課題の多くはさまざまな要素が複雑
に関連し相互に影響し合うので、都市生活に影響を与える多くの要因の全体像を把握することが重要だ」
と語っている(Google+)。


Google's Sidewalk Labs Could Ease Cities' Growing Pains

また、今月16日に3D設計ソフトウェアなどのフランスのダッソー・システムズは、シンガポール国立研
究財団(National Research Foundation:NRF)と「バーチャル・シンガポール」を共同開発すると発表。
「バーチャル・シンガポール」は、3Dモデリングの形状データと、付随する静的データや動的データ、
各種情報などを表示でき、この豊富なデータ環境と各種ビジュアライゼーション技術を組み合わせた、コ
ラボレーションのプラットフォーム活用に供し、このプラットフォーム上で、シンガポールの国民、企業、
政府、研究コミュニティーが、シンガポールが直面しつつある複雑な課題に対処するために、ツールやサ
ービスを開発できる。既に昨年12月から開発を開始、18年に完成予定。


Virtual Singapore video

尚、同プラットフォームはダッソー・システムズの「3DEXPERIENCity」を活用し構築し、プラットフォ
ームを構成する画像やデータはさまざまな公的機関から集められており、そこには地理空間、地形(トポ
ロジ)、人口動態、移動、気候に関する過去および現在のデータも含まれる。これらの街そのものをバー
チャル化する取り組みは、まだ検証段階にあるものが多く、全ての都市ですぐに進むわけではない。しか
し、既にIoT によるセンシング技術と通信技術、データの蓄積技術や分析技術、制御技術など、要素技術
は出そろっており、現実世界で発生したことを、リアルタイムに近い形で仮想空間上で再現し、分析を加
えることは可能になりつつある。これらの産業はやがて4次産業(図画像処理産業)に収斂され発展して
いくこは、すでに『ハイいイメージ論』などの『吉本隆明の経済学』で予測されていたことを書き加え、
サイバーフィジカルシステムの時代の幕開けを確認しておこう。

 

● 史上最薄の「電球」、厚みは原子1個分

今月15日、韓国の研究者と米コロンビア大学のチームにより学術誌『Nature Nanotechnology』で――ト
ーマス・エジソンが百年以上前に発明した白熱電球は近年、人々の生活から姿を消しつつあり、市場の需
要は、エネルギー効率がはるかにすぐれた電球形蛍光灯や LED  (ダイオード)に移ってきている。企業も新
製品を続々と投入している。米ファイナリー・ライト・バルブ社は、電磁誘導の技術を応用して、エネル
ギー効率が高く暖かみのある光を放つ「アカンデセント」という電球を開発。また、米アルキル社は、バ
ックライトが不要なポータブル有機 EL 照明を販売している。さらに今年後半には、従来の LED  よりも
寿命が長くエネルギー消費の少ない、グラフェンでコーティングされた LED  が発売なか――厚みが炭素
原子1個分で、最高レベルの強度を持グラフェン」を使った光源が誕生させたことを公表。 

 
Nature Nanotechnology(2015)DOI:doi:10.1038/nnano.2015.118

 
Figure 3: Simulated spectra of radiation from electrically biased suspended graphene.

Bright visible light emission in graphene ↑

 

今回の研究のリーダーのキム・ヤンダック・コロンビア大学の博士研究員が、グラフェンが発光すること
にキム氏が気づいたのは4年前のこと。非常に軽量かつ鋼よりも固いグラフェンという物質は2004年に発
見されたばかりだったグラフェンの小片を含むフィラメントに電流を流すと、可視光を生み出すのに十分
な2500℃以上の高温になることを発見する。しかも、フィラメントに接続された金属の電極は高温になっ
ても溶けなかった。グラフェンは高温になると熱をほとんど伝えないため、中央のごく狭い範囲の外に高
熱が伝わらない。そんな、グラフェンではなるが、エジソンは最初、電球のフィラメントに日本の竹炭を
用いている。同じ炭素という素材に戻ったというわけで、電極などのて開発研究が近年盛んになされてき
たから、グラフェン・フィラメントの発明は早晩実現してもおかしくなかった(コロンブス卵?)。すで
に、インテルとIBMはコンピューターのチップに光を組み込む難題に取り組んでいる。さて、21世紀の
物理学はバイオミミクリ(生物模倣)でもある。中国の南開大学の研究グループは、グラフェンに光を当
てるだけで移動することを発見し、非燃料系宇宙船などに応用できることを公表している。



● トップダウンとボトムアッププロセス融合で世界最薄のグラフェンナノリボン形成


前述の報告前の今年3月24日、シリコンに代わる半導体素材として注目されているグラフェンの利用可能
性を大きく高めると期待される、無機ナノマテリアルがグラフェン上に自発的に規則正しく整列する(自
己組織化する)現象を応用し、単層グラフェンの帯状構造(グラフェンナノリボン)を独自手法で形成に
成功したと、竹内治東大教授らのグループが公表。竹内教授らは、まず、常温の水溶液中でシアン化金が
グラフェン上にナノサイズの繊維状構造(ナノワイヤ)を自己組織化することを発見。次に、このナノワ
イヤをもとにしてグラフェンをエッチング処理し、幅約110 ナノメートル、厚さ炭素原子1個分の極め
て薄い帯状の構造体であるグラフェンナノリボンを作製することに成功。ナノワイヤとグラフェンナノリ
ボンは、共にジグザグエッジ方向に形成されており、これまで実現していなかったグラフェンナノリボン
の形成方向の制御に成功している可能性がある。
 


● カーボンナノチューブでエネルギー変換効率6%

こちらはカーボンナノチューブの話。今月19日、松尾豊東大教授らの研究グループが、将来的に太陽電池
の低コスト化や太陽エネルギーの利用拡大に役立つことが期待される、カーボンナノチューブを有機薄膜
太陽電池の透明電極として用いるための方法論を確立。レアメタルである「インジウム」を用いない有機
薄膜太陽電池のエネルギー変換効率(6%)を向上させた他、カーボンナノチューブ薄膜の柔軟性を生か
したフレキシブルな太陽電池の開発に成功したと公表。


有機薄膜太陽電池の透明電極には酸化インジウムスズが用いられるケースが多い。しかし、将来的に有機
系太陽電池を大量生産する場合、レアメタルであるインジウムは需要に対して供給量が逼迫するリスクが
ある。一方、カーボンナノチューブは元素としては供給の制約を受けない炭素で作られ、優れた電荷輸送
特性、化学的安定性、機械的安定性および柔軟性を併せ持つことから太陽電池の電極材料として用いられ
ることが期待される。ただ、カーボンナノチューブを用いた有機系太陽電池の研究開発はこれまでも行わ
れてきたものの、カーボンナノチューブ薄膜を透明電極として用いた有機薄膜太陽電池の変換効率は2%
にとどまっていた。

今回の成果は、高純度で透明性の高いカーボンナノチューブ薄膜のエネルギー準位を変え、有機発電層か
らプラスの電荷(ホール)のみを選択的に捕集して輸送するカーボンナノチューブ透明電極を開発したこ
とで、インジウムを用いない有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を6%以上と大幅に向上させた。ま
た、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムの上にカーボンナノチューブ薄膜を転写して用いるこ
とでフレキシブルなカーボンナノチューブ有機薄膜太陽電池を作製することにも成功している。

以上、ナノカーボングラフェン・ナノチューブ技術工学の技術報告3部を掲載。今後も目を離すことがで
きない!

 

   

【デジタルアース工学立国論 Ⅰ: 地震・噴火予知】


デジタルアース工学立国』(2015.06.15)で、「いまこそ地震予知工学の確立予知」で「いまの解析デ
ータは2次元(平面)解析データでこれに鉛直軸の3次元(立体)データで、さらに、リアルタイムに3
次元解析データで日本列島周辺を網羅できれば高確度の解析が可能だ。そのためにはスーパーコンピュー
タシステムが不可欠だ。また、これらの新規考案には海底の変動解析が出来ていないが、海底電子基準点
にアンカーを打ち込み何らかの形で、観測衛星に位置変動データを送る事が出来れば飛躍的に予知能力は
高まる。(1)その上で、防災情報を編集し利用できる。(2)さらに、予知能力が高まれば、予備災害
処置システムの開発段階に入ることができ、映画『ザ・コア』のようなことに成功するかもしれない。そ
うすれば、米国でのイエローストーンでの隆起メカニズムとその将来予測とその予備災害処置が実現し、
世界的激震火山災害を回避できるかもしれない。そのように考えれば、年間数十億円程度の空間情報地震
予知工学への投資は微々たるものであろう。頑張ろう、ニッポン!と掲載した。そこで、村井俊治著『地
震は必ず予測できる』(電子ブック版)を手にする余裕ができたので、読み進めることでその可能性を探
る。


 序章 なぜあのとき「予測」を公表できなかったのか―3・11への悔恨

                                                                     不吉な予測が現実に

  2011(平成23)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、マグニ
 チュード9・0という日本周辺の観測史上最大の地震であり、それに伴って発生した巨大な津波によ
 って、死者・行方不明者合わせて2万人以上の方が犠牲になった。そして原発事故も重なって、いま
 も数十万人もの人々が故郷を追われ避難生活を余儀なくされている。
  この東日本大震災のあまりに大きな犠牲を思うたびに、私はどうしようもない悔恨の気持ちでいっ
 ぱいになる。時を巻き戻せるものなら地震の起きる前に戻って、巨大地震が起こる可能性を私たちが
 予測していたことを、どんな手段を使っても発信したい。発信するべきであった、と後悔の念に駆ら
 れるのである。

  じつは、大地震のひと月ほど前から、東北地方の地表が異様な変動を見せていることに私は気づい
 ていた。とくに五週間前には、牡鹿半島付近で通常から乖離した前兆現象が観測されていたのである。
 それだけではない。3月11日の半年も前から太平洋側の地盤が次々と隆起・沈降するという前兆現
 象が出ており、数カ月以内に大きな地震が発生するのではないかという予測はできたのだ。 
  しかし、それは公表されなかった。いや、できなかった。
 私がアドバイザーをしていた会社の親会社の意向もあった。特定のある地域で近々に巨大な地震が発
 生するなどと公表しようものなら、大変なパニックが起きてしまう。また、そんなことを公表して、
 その予測が外れたら、会社の信用が失墜するばかりでなく、とんだ恥さらしになる。下手に公表すれ
 ば責任を間われて裁判沙汰にもなりかねないと、固く公表を禁じられたのだ。

  それに加えて当時、お役所からも、国家的な権威のないもの、つまりは我々のような民間人や一学
 者が、軽々に社会を混乱させるような地震の予知や予測に関する情報を流してはいけないという注意
 も受けていた。事なかれ主義のきわめてお役所的な判断だと思いつつ、私も公表した場合のリスクの
 大きさに得し、予測を公表しないことに同意したのだっだ。
  だが、その私の選択は大きな間違いであった。あの巨大地震の起きた直後、私はそれを痛感させら
 れたのだ。
  パニックが起きようと、人々に地震予測の情報が伝わっていれば、あれほどの犠牲を出さずに済ん
 だのではないか。保身のために公表しなかったことこそ、学者としての恥であろう。自分は何のため
 にいままで地震予測の研究を続けてきたのかと、私は悩み、自問自答を重ねた。
  そして、こんなことは二度とあってはならないと思った。名誉を失っても、恥をかいても、やはり
 異常は異常だと公表すべきだったのだ。たとえ予測が外れて、私が恥をかいたとしても、それで人が
 死ぬことはない。己の研究の未熟さを反省すればいいだけのことだ。そんなリスクは取るに足らぬこ
 となのだ。

                                       この項つづく



 

 


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