【日本の政治史論 40: 政体と中枢】
出典:「週刊東洋経済」2015年7月11日号
● 事例研究:「新国立」問題
2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場は、日本スポーツ振興セ
ンター(JSC)の有識者会議が計画を承認し、建設に向けて一気に動き出す。2520億円と
大幅に膨らんだ総工費について、事前に見通せなかった建設資材や人件費の高騰のほか、新国立
競技場ならではの「特殊性」があったと説明。ただ都の負担金を含め、膨大な総工費を賄えるか
どうかは不透明なままだと報じられている(読売新聞 2015.07.08)。
コンペが行われた際の建設予算は1300億円。ところが、長い導入路を持つ巨大なザハ氏のデザイ
ンの建設費を、日本スポーツ振興センター(JSC)が試算してみると、3000億円まで膨らんだ。
そこで、ザハ氏のコンセプトを残し規模を縮小。昨年5月には1,625億円という見積もりが出たも
のの、東日本大震災復興などで土建業界の価格の高騰(=業界インフレ)を背景にゼネコンから
「その金額では工事を請け負えない」との意見が出され、最終的に、前回のリオデジャネイロオ
リンピックの5倍の金額で建築契約が交わされる(上図参考)。リオの5百億円より2千億円高
い額は、年収350万円の所得として約5万7千人分の所得に匹敵する。50年の減価償却+保
全費として、約54億円/年、60年として約45億円/年(私算)となる。60年償却で、年
収換算すれば、1300人/年×6年の雇用に匹敵するが、年間45億円以上の事業収入があれ
ば問題ないが、見込めないなら、早々に売却あるいは解体してしまうのが得策である。逆に言え
ば、リオの規模にすれば9億円/年だから20億円/年程度の事業展開ができれば60年間利益
がでることになる(例:事業利益2億円/年×60年=120億円)。これは経済的側面での評
価だけである。それでは技術的な側面の問題はなにか?渋谷川の流れていた場所。「土壌が軟ら
かく、キールアーチの固定が困難」(建築コンサルタントの森山高至・談)で、アーチの地下部
分を長くすれば都営地下鉄大江戸線にぶつかり、地下に長さ約3百メートルの鉄骨を埋めて、ア
ーチの両端を結ぶ必要があり、このキールアーチを造るだけで、1千5百億円の費用がかかる。
ここで、わたし(たち)は建設費の高額を問題にしているのではない。スポーツ振興を満たすた
めの「効率」つまり、マクロ、ミクロとメゾの三重層を包括する費用効果を試算しておく必要が
あったと考え――政商(フィクサー・顔役)や利権者などの構造をできるだけ排除した上で――
それらを踏まえ建設すべきだと考えているわけで、合目的性にかなうなら3千億円でもかまわな
いとまで思っている。とはいえ、2千5百億円が動くとなれば、事業目的にそぐわない、30~
80億円のカネが関係者の懐に転がり込む。との邪推は否定できないよなぁ~と思う(蛇足)。
地方創生に関する重要法案が、解散によって閉会した先の臨時国会で可決成立し、法律が施行さ
れたことによって、安倍政権が掲げる地方創生策が具体的に動き出すが、この関連法の特徴をこ
こで考えてみよう。
地方創生に関する法律は2つあり。(1)ひとつは「まち・ひと・しごと創生法」、(2)もう
ひとつは「地域再生法の一部を改正する法律」。前者は、地方創生の理念や全体的な戦略策定の
方法などについて定めたもので、後者は、地域の活性化に取り組む地方自治体を支援するための
ものとなる。
これに対し、むしろ、東京一極集中を促進せよとの反対(大前研一)がある一方で、それを捕捉
補完するように高齢者の介護施設を地方に移す提言が、政府の諮問機関からなされている。また、
ふるさと納税制度は税制をゆがめる(越大津市市長 2015.07.08 京都新聞)との指摘もなされて
いるが、前出の大前氏は、「国家が主導して再生した田舎はない」とした上で、「補助をするべ
きは、第2次産業。雇用創出しなければ意味がない」と主張している(「ニュースの視点」 KO
N534「地方創生・安倍首相~人口減少の過程で何があったのか?」2014.09.12)。わたし(たち
)は、またぞろ破綻した欧米流金融資本主義や縁故資本主義的政策に辟易したはずの、またも失
敗するであろう「国家特区構想」がここでも提案されることを知る。
わたし(たち)の地方創生案はシンプルであることはこのブログでも掲載したように、(1)応
益税の消費税を地方自治体に大幅(上限百パーセント)移譲――中央政府は応能税の所得税、法
人税のみに縮小、(2)法人税を逆格差税率に改正することを提案している。(1)は、例えば
全国知事会の下に地方交付税にかわる「事業支援基金制度」を設立、国(財務省)・民間を含め
た第三者機関で申請審査し運営し、(2)の逆累進率は政府と地方とで原案作成し国会承認を経
て決定する――このようなものを構想している。
いずれにしても、「財源移譲が第一」が大前提である。
【デジタルアース工学立国論 14: 地震・噴火予知】
『デジタルアース工学立国』(2015.06.15)で、「いまこそ地震予知工学の確立予知」で「いま
の解析データは2次元(平面)解析データでこれに鉛直軸の3次元(立体)データで、さらに、
リアルタイムに3次元解析データで日本列島周辺を網羅できれば高確度の解析が可能だ。そのた
めにはスーパーコンピュータシステムが不可欠だ。また、これらの新規考案には海底の変動解析
が出来ていないが、海底電子基準点にアンカーを打ち込み何らかの形で、観測衛星に位置変動デ
ータを送る事が出来れば飛躍的に予知能力は高まる。(1)その上で、防災情報を編集し利用で
きる。(2)さらに、予知能力が高まれば、予備災害処置システムの開発段階に入ることができ、
映画『ザ・コア』のようなことに成功するかもしれない。そうすれば、米国でのイエローストー
ンでの隆起メカニズムとその将来予測とその予備災害処置が実現し、世界的激震火山災害を回避
できるかもしれない。そのように考えれば、年間数十億円程度の空間情報地震予知工学への投資
は微々たるものであろう。頑張ろう、ニッポン!と掲載した。そこで、村井俊治著『地震は必ず
予測できる』(電子ブック版)を手にする余裕ができたので、読み進めることでその可能性を探
る。
目 次
序 章 なぜあのと序き「予測」を公表できなかったのか―3・11への悔恨
第 1 章 3・11前から観測されていた前兆現象
第 2 章 日本列島はどこもかしこもゆがんでいる
第 3 章 「予知」は無理でも「予測」はできる
おわりに
第3章 「予知」は無理でも「予測」はできる
地球はグローバルに勣いている
・「隆起・沈降図」………1年または.2年前の高さからどの程度、隆起・沈降しているか
を 分析.地城ごとに注意を促す,たとえばこんな具合だ(2014年10月号)。
今回は北海道、東北を除き、全国的に沈降傾向です。
淡路島周辺は要警戒
兵庫県の淡路島にある西淡および淡路一宮は7月に急激な隆起をしていたのが今は急激な
沈降を沈降しております。その差は西淡で5・7センチ。淡路一宮で4・5センチです。
一方、沈降をしていた神戸北は沈降のピークから3・5センチも隆起しました.と要警戒
レベルです。
南西諸島は要警戒
沖繩の公点は7月5目の週に一斉沈降を示してから全体的に沈降傾向です。引き続き要警
戒です。
東北・関東の太平洋岸は引き続き要注意
太平洋岸は東日本大震災以来隆起傾向が続いていましたが、最近横ばい状態です。しかし、
まだ相当のエネルギーが貯まっていますので要注意です。
四国、九州東岸および薦戸内は要注意
全体的に沈降です。徳島県の木屋平は際立って沈降しており今回で-2・4センチになり
ました。四国の高知県の伊野はこの1か月で1・5センチ沈降しました。愛媛県の大洲も
1・3センチ沈降しました。広島県の御調(みつぎ)が際立って沈降を示しており、2年
8か月前と比較して、‐3・2センチになりました。要注意です。
長崎県は要注意
長崎2の電子社命点は2012年1月から-4・2センチと異常な沈降です。1点のみで
すが、念のため要注意です。
石川県、福井県などの日本海側は要注視
大きく沈降しています。念のため要注視です。
・「日本列島累積変位マップ」……2014年3月から、新たに日本列島累偵変位マップを
3ヵ月に一度紹介し、長い期間にどのくらい異常や歪みがたまっているかを、マップのゾー
ンでそれぞれに解説(以下は2014年9月24日号より。マップは図13)。
根室地方ゾーン
まとまって沈降を示しております。この地域は小地震が起きています。
道南および青森県ゾーン
まとまって隆起しています。すでに今年石狩南部を震源とする震度5弱の地震が発生して
おります。
東北・関東太平洋岸ゾーン
この地域の太平洋岸は東日本大震災で大きく沈下した地盤が急激に隆起しています。震災
以来地震常襲地帯になっております。震度5弱の地震も発生しております。
奥羽山脈・日本海側ゾーン
太平洋岸とは対照的に沈降しております。地震発生の可能性はあると解釈しております。
首都圏ゾーン
3月の累積変位図では首都圏は赤い点(「変位レベル最大」の印)が多数付き、5月5日
に東京都千代田区で震度5弱の地震がありました。今回赤は付いていませんが今後の動き
を注視します。
甲信越ゾーン
新潟県、長野県、山梨県などを含むこの地域は隆起しております。
小中の地震が多発しております。
東海・伊豆半島・伊豆諸島ゾーy
太平洋岸に沿って隆起と沈降が混在しています。御前崎周辺とハ丈島以南の伊豆諸島は沈
降しております。
北陸日本海側ゾーン
富山県、石川県、福井県、京都府、滋賀県、岐阜県などは主として沈降傾向にあります。
琵琶湖の東側が隆起しているのが気がかりです。
四国・紀伊半島・九州太平洋岸ゾーン
隆起と沈降が混在しています。四国と紀伊半島の岬部は沈降しております。宮崎県の日向
灘沿岸も沈降しております。
中国地方ゾーン
日本海淵も瀬戸内も沈降傾向にあります。四国の動きと連動している可能性もあります。
九州ゾーン
九州全城が沈降傾向です。今後の監視を強化します。
南西諸島ゾーン
沖縄周辺は沈降傾向です。最近異常変動が繰り返されています。
このほか、とくに要警戒の地域には、地震予測の具体的な情報をトップで扱い、注意を促
すようにしている。データ的な情報だけでなく、皆さんに少しでも地震予測の測量技術や、
地震の起こる複雑なシステムを理解してもらえるよう、さまざまな特集や地震に関するコラ
ムを組んでいる。見やすさ、情報のボリュームに関しては、これからもさらに改良を進めて
いこうと思う。
これほどの地震大国に住む皆さんに、少しでも地震に対する知識を蓄えてほしいからだ。
やる気を支える読者の声
こうした地震予測の情報を発信していて、一番気になるのは読者の反応である。ときにご
注意やご批判をいただくこともあるが、JESEAに届く会員読者の声のほとんどが、私の日
々の活力になっている。東日本大震災以来、大きな地震が怖い、自分だけでなく家族や大切
な大の命に関わる災害だと強く認識する人々が増えたのか、非常に熱心に誌面を読んでくだ
さっていると思う。
利用者の声で一番多いのが、「毎週地震情報が届くので、心の準備ができる」「科学的な
データ、グラフなどの説明で、理由なき恐怖がなくなって、かえって安心感が増したI「自
分の住んでいる場所、働いている場所の賢常変動を常に意識できて、役に立つ」というもの。
こうした声がすでに千通近く届いている。
印象的なものをいくつか紹介させていただこう。
「私の両親、親戚のほとんどは宮城県に住んでおり、石巻市で被災した親戚家族も複数おり
ます。毎週メルマガを見ることで、地震への恐れと備えを忘れないようにしたいと思いつつ、
半分は恐る恐るメールを開いています,私は千葉に住んでいますが、大学で勉強した地学が、
ここにきてこんなに役立つとは思っていませんでした。日本の国土はこれほどまでに変動し
ているのですね」
「私は、神奈川県の西湘地区に住み、東京に通勤しています。湘南地方はまっ平らで、津波
が押し寄せたときの被害は甚大です。迫りくる『その瞬間』に備えることで、何とか生き延
び、また地域の被害を最小限にしたいと切に願っています」
「毎週の地表変動を見ていると、地球が生きてます」いることを実感させられます。
「福岡の警固断層地震(2005五年3月20日、玄界灘から博多湾まで分布する警固断層
の横ずれにより発生したマグニチュード7・0の福岡県西方沖地震)を経験しました,今春
娘が警固断層直上の中学校に通うことになり、地震の情報がとても欲しいと思っていた矢先
に、メルマガると知らないとでは大違いです」
「地震がないことを望むよりヽ地震があることを奮影に受け止め行動できるようになりたい
と思うようになりました」
「社内での防災意識向上と危険予測に使用する目的で登録しました,購読後のデータとして
注意喚起された地域の地震発生の予測の精度に驚いております。」
「私は静岡県沼津市に生まれ育ち、小学校のころから東海地震、津波を意識しています。東
日本大震災の後、警戒警報を出すことによる社会的影響のリスクの大きさを考えれば、地震
予知は不可能だという報道も、納得せざるを得ないと思っていました。しかし、もし予兆が
観測されているなら、後出しではなく、先に観測情報が欲しいと思います。今回の村井教授
の勇気ある行動に感謝します。子供たちには、『いつ地震や津波に遭遇するか分からない。
緊急時には、いかに自分の命を守るか、常に頭において。絶対津波で命を落とさないでね』
と話しています」
「3月14日の豊後水道あたりが震源地だった地震(伊予灘地震)では、事前に地震予測の
レポートを読んでいたおかげで、落ち着いて対処できました。中国地方は安全だと周囲の人
たちは思っているようですが、レポートで変動幅が大きいことを知りました。」
地震がよくある地域、そうでない地域に住んでいる方からも、全国津々浦々から参考にな
る意見、励まされる声がたくさん集まっている。「知ることは大きな安心」と聞くと、ここ
まで、手弁当で頑張ってきた苦労が一瞬で報われる気がする。測量工学を長年研究してきた
ことから、「分かりやすく説明する」ことより、つい専門的なレクチャーになってしまうこ
とも多々あるのだが、皆さんの勉強意欲に、いつも驚かされている。
JESEAでのメルマガ配信を始めてから、地震大国に住む日本人の意識が少しずつ変わ
ってきているのを、日々実感している。いたずらに災害を恐れるのではなく前向きに情報や
知識を得て、自分も周りの人々の命も守るのだという心意気を感じ、胸が熱くなる思いであ
る。
この項つづく
子どもの頃、木に登って遊んでいたという記憶がよみがえる。しかし大人になった今、子どもの
ように身軽さがない分、木に登るというのは至難の業。これは、木に登るためのステップが設置
できる。