何でこんなに増えてるのか、分からへんねん。/ 安藤 忠雄
● 日中食品汚染 12 中国の食品汚染地図
【目次】
第1章 見えない食品の恐怖
第2章 中国の食品汚染地図
第3章 食品汚染のヒトへの影響
第4章 なぜ汚染連鎖が絶ちきれないのか
第5章 重金属汚染という新たな難題
第6章 日本の食品は安全といえるか
古在豊樹 監修「図解でよくわかる「植物工場のきほん」 から汲み上げた新しい農法の骨格を素
描し終えたので、そのことを踏まえ、今夜からはこの著書から食の汚染の実態を学び、そこから
課題を掬い取り「食の安全」を担保する方法を考察していく。
第2章 中国の食品汚染地図
病気に弱いウナギ
日中ともっとも縁の深い中国の魚介類はウナギだ。中国産は2012年の国内供給量3万
7200トンの50%弱を占める。現在、国産ウナギの供給量は10年前から20%減って1万
7500トン,それを補うはずの輸入量も毎年減る。一方、10年前の20%に落ち、1万
9700トンとなった。
中国からのウナギの輸入は、輸入量全体の90%、1万8000トンを数える。中国側から
見ても、日本は世界最大のウナギの輸出先だ,中国のウナギの輸出量も、じつは毎年減る傾
向にある。中国の2012年のウナギ輸出量は約3万トンだが、そのうち、日本向けが半分
以上を占めている。ちなみに中国のウナギ輸出先の第2位ロシアヘの量は、日本向けの4分
の1程度にすぎない。
最近は中国でも盛んに調理されるようになり、トグロを巻いたヘビのようにして盛り付け
される。しかしウナギ養殖のそもそもの目的は、日本に輸出することにあった。主な産地は
南方で、江西、浙江、江蘇、広東、福建、安徽、湖北などに分布している。
数あるウナギの種類の中で、通常日本人が食べる純国産ウナギはニホンウナギ。中国から
輸入されるウナギの主な鮪類はアンギラ・アンギラ種といって、これを中国では欧鰻という
ように、原腫はヨーロッパ産のウナギだ。ニホンウナギに比べると、やや幅が広くずんぐり
している。気性は荒く、ときに共食いまですることがある。ウナギ専門家によると、最近は
フィリピンなどの東南アジア産系の原種が増えつつあるという。ウナギの種類は多いので、
今後さらに多品種化か進む可能性もある。
さてその中国産ウナギだが、大きく3つの理由から汚染されやすい性質を持っている。
第一は、ウナギは病気に弱いことから、薬剤を投与しないと首尾よく成長できない。中国
で養殖するウナギには白点病、ウーディニウム病、カラムナリス病、白雲病、水カビ病、開
口病、線虫病、細菌性ホホ病、エドワードシエラ病などさまざまな病気がある,これらの病
気のうち、文字通りいつも目を開き、目元を赤くしている開ロ病には対策がなく、中国の養
鯉家がもっとも恐れる病気のひとつだ。
そこでさまざまな治療薬や予防薬の出番となるが、これが逆にウナギの養殖池あるいはハ
ウス養殖池を汚し、別の病気を発生させる悪循環を生んでいる。池やハウス養殖池をある程
度は浄化させようと浄化剤を役人するので、池の水は深い緑色に淀む第二次汚染が生じやす
い。これは日本と違い、水資源の乏しい中国ならではの問題でもある。
その結緊、こんどはウナギ自身も汚染されるという結末を迎える,ウナギという動物は、
いつも透明な水を求めるわけではないが、池の水がある程度きれいでないと病気になり、細
菌を繁殖させる温床ともなる。ウナギの糞は毎日たまるので、これを処理することが、ウナ
ギの衛生にとっても欠かせないことだ。
第二はウナギの飼料によるものだ,飼料の種類や銘柄も非常に多く、全体を掌握している
者はいないくらいだ。ウナギの飼料の場合も中国では規制があり、認可した原料以外で作る
ことも使うこともできない仕組みになっている。
しかしその原料の中に、汚染物質が含まれていることが大きな問題なのだ。
ウナギはこうして汚染される
ではどんなものが入っているのだろうか? これがおよそ問題だと指摘されるほとんどの
危険因子が入っている。
具体的には、カビ菌毒素、酸化酸敗物、残留農薬、石油炭化水素、重金属の水銀、ヒ素、
ナマリ、亜ナマリ、カドミウムなどだ。しかも人体への被害は重大だという。これに似たニ
ュースは、中国の養殖業団体が作る業界紙自身が眼じたこともある。ウナギに蓄積されやす
い重金属を調べた中国の資料によれば、順に水銀、銅、カドミウムで、蓄積しやすい部位は
血よりも魚肉部分、魚肉部分よりも頭のホホの部分、そしてもっとも蓄積しやすい部位が肝
だという。日本人の好きなウナギの肝は、本当は危ない部位なのである。これは食べないに
越したことはなさそうだ。
第三は養鯉池の土壌と水の問題だ。中国の養鯉池は、それまで畑や水田であった場所に穴
を掘って作ったりすることが一般的だ。最近は、日本の方式と似たハウス養殖施設で政殖す
る者も増えた。
前者の露天池の場合、畑や水田の土壌深くに浸み込み、長年かけて堆積した農薬や化学肥
料の直撃を受けやすい。
昔の農薬はDDTやBHCなど有機塩素系農薬が多数を占めていたが、農薬の危険性につ
いて今ほど意識が高くなかったので、大吸にまいていた。今でも残留農薬にはこれらの有機
塩素系が検出される。化合物なので溶解消滅しないのだ。
水そのものにも問題がある。養鯉のために使う水は地下水あるいは河川からの引き水だが、
いずれの場合も一般の農産物を作る際に起こる問題と同じだ。地下水の汚染は深刻だが、合
わせて地下水位の低下による塩害問題も起きている。河川水であっても季節によっては流量
が減り、汚染が濃縮されることもある。そのため、田畑から河川へ流れ出した農薬や化学肥
料、そして重金属などによる養殖池汚染が深刻な被害をもたらしているのだ。
ある程度の塩分は養殖池の浄化や殺菌に効果的な面もあるが、常水に塩分があると、ウナ
ギの生育に害を与える。
淡水魚であるウナギには、海水魚と追って、そもそも塩分の排出機能がないからだ。
日本に輸出されるウナギは、一般に厳重な管理のもとで養殖され、安全検査が行われてい
るが、かといって安心はできない。週刊誌「AERA」(2013年9月9日号)が行った
日本の外食害におけるウナギ重金属汚染調査の結緊をみると、カドミウム、水銀などがほと
んどの検査個体から検出され、とくに肝汁からは高度の重金属が検出された。全体的に基準
値を超えるものは少なかったが、サンプル数が少なく、調査地も東京地区だけだったなど、
制約があったことは考慮した方がよいと思う。またサンプルには、国産ウナギがかなりの程
度混ざっていた可能性もある。
この項つづく
秋葉原通り魔事件が、"ワーキングプアー" に象徴される、過剰競争と自己責任の原理がもたら
す格差拡大社会の歪みとして発生したように、まもなく、日本の高齢者の9割が下流化する。本
書でいう下流老人とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」で
ある。そして今、日本に「下流老人」が大量に生まれている。この存在が、日本に与えるインパ
クトは計り知れないと指摘したように、神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線で焼身自殺し
た事件――71歳の林崎春生容疑者による「下流老人の反デフレテロ」ではないかとブログ掲載
(極東極楽 2015.07.02)。『下流老人』の著者である藤田孝典は、「東京都杉並区の生活保護
基準は、144,430円(生活扶助費74,630円+住宅扶助費69,800円【特別基準に
おける家賃上限】)である。資産の状況やその他の要素も検討しなければならないが、報道が事
実だとすれば、年金支給額だけでは暮らしが成り立たないことが明白だといえる。要するに、生
活保護を福祉課で申請すれば、支給決定がされて、足りない生活保護費と各種減免が受けられた
可能性がある。月額2万円程度、生活費が足りない(家賃や医療費などの支出の内訳にもよる)。
生活に不安を抱えどうしたらいいか途方に暮れる男性の姿が思い浮かぶ」と語っている(YAHOO
!ニュース「新幹線火災事件と高齢者の貧困問題ー再発防止策は「貧困対策」ではないか!?」
2015.07.02)を受け、近々、『下流老人』を読み、その感想を掲載する。
目 次
はじめに
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人―「普通」から「下流」への典型パターン
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人―個人に依存する政府
第6章 自分でできる自己防衛策―どうすれば安らかな老後を迎えられるのか
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
おわりに
第1章 下流老人とは何か
下流老人の具体的な指標 3つの「ない」
②充分な貯蓄が「ない」
一方、厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば、高齢者世帯の平均 貯
蓄額は1268万1000円となっている。一見多くの高齢者匪帯が十分な貯蓄を用意して
いるように見えるが、実際には「貯蓄なし」の世帯が16・8%もいる。さらに言えば、4
割以上の世帯が、貯蓄額500万円に満たない。また、平均といっても、ごく一部の富裕層
が平均値を高めているため、多くの人の実際の貯蓄額はもっと低くなる(統計のなかで「平
均」という言葉が出てきたら要注意だ。平均はあくまで合計を構成数で割った数字であり、
仮に99人の貯蓄額の平均が1000万円のところに、10原円持ったお金持ちが1人現れれば、
平均は約2000万円となるからだ。なお同調査では3000万円以上の貯蓄がある高齢者
世帯が11・6%いる)。
さらに現役世代について見てみても、内閣府「平成26年版高齢社会白書」によれば、世帯
の高齢期への経済的な備えがあると感じている者は、約2割しかいない。その内訳を見ると
「十分だと思う」(1・6%)と「最低限はあると思う」(21・7%)を合わせた「備え
はある」とする人の割合は29・3%で、「少し足りないと思う」(16・5%)と「かな
り足りないと思う」(50・4%)を合わせた「足りない」とする人の割合は66・9%に
のぼる。また、若年層ほど「足りない」と答える人の割合が高くなっている。 貯蓄がない
と老後をまともに暮らせない社会において、このデータは、恐ろしい事実ではないだろうか。
まだ労働期間が短い若者に貯蓄がないことは理解できるが、ここには40代や50代の回答
も含まれている。間もなく高齢期を迎える人々においても、十分な貯蓄が形成されていない
のが現状なのだ。
③頷れる人間がい「ない」(社会的孤立)
下流老人の特徴の三つ目は、困ったときに頼れる人問がいないことだ。
理想の高齢者の暮らしというものを考えてみてほしい。家族に囲まれて、息子や孫たちと
同居し、日常的にコミュニケーションをとりながら、支えあって暮らしているかもしれない。
息子や娘と同居していなくても、年に何度も交流があり、お互いの近況を伝えあい、支えあ
うこともあるだろう,仮にそのような家族がいなかったとしても、近隣住民やお茶飲み仲間、
友人などと会話をしたり、交流するなど、楽しく潤いのある時間を過ごしているかもしれな
い。
じつはこのような気軽に会話ができたり、相談ができるような豊かな人間関係を築いてい
る高齢者が、下流老人には少ない。いわゆる「関係性の貧困」という状態にあり、社会的に
孤立している姿が見えてくる。
前述したように、一人で何もすることがなく、部屋でずっとテレビを見ていたり、一日中
誰とも会話がないことは、下流老人にはよくあることだ。コンビニの店員と交わす「お弁当
温めますか?」というやりとり以外、誰とも話す機会がないという方も相談者のなかには多
い。
このような社会的孤立の状態は、多くのリスクを生じさせる。
たとえば、相談する相手がいないために、生活に困窮しても助けを求められず、問題が重
篤化してから発見されるケースが多い。
先日も、ゴミ屋敷で認知症になっていた高齢女性を発見し、役所の担当者と保護したこと
があった,周囲の人々は認知症があることすら知らず、女性が助けを必要としているとは思
っていなかった。
助けてくれる家族がいなければ、身体が弱ったときでも、自炊や日常生活全般を自分自身
で行わなければならない。相談できる人がいなければ、振り込め詐欺などの犯罪被害にも遭
いやすいだろう。
また、持病のある高齢者の場合、倒れてそのまま発見されず、手遅れとなることがある。
室内で転倒して動けなくなり、誰にも気づいてもらえず、後日遺体となって発見されるこ
ともある。夏場だと、体が腐敗して良っ黒になり、人間としての原形をとどめていないこと
だってある。
遺体からは、腐敗した血液などの体液が流れだし、うじ虫やハエが室内を占拠するため、
異様な腐敗臭が充満する。そのようななかで、遠い親戚や不動産業者と片づけを行うのだ,
「最近お隣のおじいさんの姿を見かけないな」と思っていたら、じつは部屋でミイラ化して
いたという事例も珍しいことではない,遺品整理や室内の片づけビジネスが流行るわけであ
る。
このように、わたしたちが出会ってきた高齢者の多くは、人間らしい余生や最期を送るこ
とができない状態にまで陥ってしまっている。「たとえお金がなくても、楽しく豊かな老後
を送りたい]という希望すらかなわないのだ。
このような社会的孤立によって生じる問題は、近年ますます顕著であ今昔であれば世帯住
宅で、子ども夫婦に扶助してもらうことが当たり前だった。しかし、現在は核家族化により
一人暮らしの高齢者が増えている.
内閣府「平成26年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の一人暮らしの高齢者数の仲びは
男女ともに顕著で、昭和55(1980)年に男性約19万人、女性約69万人であったのが、
平成22(2010)年には、男性約139万人、女性約341万人にまで増えた。高齢者
人口に占める割合も、男性4・3%から11・1%、女11・2%から20・3%まで膨ら
んだ計算となり、今後も急激に増加すると予測されている。
その、一方で、65歳以Lの高齢者における予どもとの同居率は、昭和55(1980)年
にほぼ7割であったものが、平成11(1999)年に50%を割り、平成24(2012)
年には42・3%と、大幅に減少している。
これからも高齢化が進むのは間違いないが、とくに一人暮らしあるいは夫婦のみの高齢者
附帯は際なって増加していくことだろう。生活に困ったときや助けてほしいときに、家族が
周囲にいない状況が当たり前の社会になりつつあるのだ。
この項つづく
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