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南シナ海波高し。

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  私自身は『チャレンジ』という言葉は使っていない。
        報告書の中では『必達目標値』という言葉を使っていた。
               
                           田中久雄 東芝前社長



 
【南シナ海波高し】

防衛省が海上自衛隊とフィリピン海軍の共同訓練を半年ごとに定例化することが25日、分かった。
アフリカ・ソマリア沖の海賊対処活動に派遣された海自護衛艦が帰国する際、比沖で共同訓練を実
施。米海軍を加えた3カ国の訓練への拡大も検討する。南シナ海での岩礁埋め立てや東シナ海での
ガス田開発など高圧的な海洋進出を活発化させる中国を牽制(けんせい)する狙いがある。海賊対
処を終えて帰国途中の護衛艦「はるさめ」「あまぎり」は5月12日、マニラ西方海域で比海軍の
フリゲート艦1隻と共同訓練を行った。日比共同訓練は初で、昨年4月に日米中や東南アジア各国
などで合意した海上衝突回避規範(CUES)に沿った通信・戦術訓練が目的だった。この形式を
定例化し、ソマリア沖から帰任する護衛艦を訓練に参加させるという(産経新聞 2015.07.26)。

なし崩しに武力衝突していくリスクが高まる懸念にたいして政府は、どう国民に説明し「合意形成
」を図っていくのだか? フィリピンとの交渉経緯を明確にする必要がある。

  南シナ海問題

 

 

【超高齢社会論 Ⅴ: 下流老人とはなにか】

 秋葉原通り魔事件が、"ワーキングプアー" に 象徴される、過剰競争と自己責任の原理がもたら
す格差拡大社会の歪みとして発生したように、まもなく、日本の高齢者の9割が下流化する。本
書でいう下流老人とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」で
ある。そして今、日本に「下流老人」が大量に生まれている。この存在が、日本に与えるインパ
クトは計り知れないと指摘したように、神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線で焼身自殺し
た事件――71歳の林崎春生容疑者による「下流老人の反デフレテロ」ではないかとブログ掲載
(極東極楽 2015.07.02 )。『下流老人』の著者である藤田孝典は、「東京都杉並区の生活保護
基準は、144,430円(生活扶助費74,630円+住宅扶助費69,800円 【特別基準に
おける家賃上限】)である。資産の状況やその他の要素も検討しなければならないが、報道が事
実だとすれば、年金支給額だけでは暮らしが成り立たないことが明白だといえる。要するに、生
活保護を福祉課で申請すれば、支給決定がされて、足りない生活保護費と各種減免が受けられた
可能性がある。月額2万円程度、生活費が足りない(家賃や医療費などの支出の内訳にもよる)。
生活に不安を抱えどうしたらいいか途方に暮れる男性の姿が思い浮かぶ」と語っている(YAHOO
!ニュース「新幹線火災事件と高齢者の貧困問題ー再発防止策は 「貧困対策」ではないか!?」
2015.07.02)を受け、『下流老人』の感想を掲載していく。   

  目 次   

  はじめに
  第1章 下流老人とは何か
  第2章 下流老人の現実
  第3章 誰もがなり得る下流老人―「普通」から「下流」への典型パターン
  第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
  第5章  制度疲労と無策が生む下流老人―個人に依存する政府
  第6章 自分でできる自己防衛策―どうすれば安らかな老後を迎えられるのか
  第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
  おわりに


  第3章 誰もがなり得る下流老人―「普通」から「下流」への典型パターン 

  弟2章では下流に陥った高齢者の現状を、具体的に紹介した。しかしなお、「老後の計画を
 していない一部の人が下流老人になるのでしょう]
 「やっぱりどこかお金にだらしないんじやないのI
 「わたしは貯金しているから大丈夫だろう」といった声が聞こえてきそうである。
  たしかに、実際に危機に直面しないと、想像は難しいかもしれない。
  しかし、下流老人はまぎれもなく”わたしたち”の問題である。
  わたしたちのもとに相談に来る人々は、特別変わっている人ではない,多くは元サラリーマ
 ンなど一般的な労働者だ。なかには会社の役員や公務員もいる。職業に関係なく下流化してい
 るところに問題の深刻さがあると言ってもいいだろう。無計画で放蕩な暮らしをしていた人々
 ばかりが下流老人になっているわけでは、決してない。

                「普通」から「下流」へ陥るいくつものパターン

  これまで見てきた下流老人の事例を振り返ると、それぞれのレベルで可能な限りの自助努力
 をしてきていることに気づく。その生活は慎ましくさえある。それにもかかわらず、下流化は
 止められないのだ。
  そこでここからは、下流老人に陥る代表的なパターンを実例とともに紹介したい。
  まず前半の【現状編】では、わたしたちが年間約300人のさまざまな生活困窮者を見てき
 たなかで、下流老人に転落する流れとその構造を類型化したものを示す。端的に言えば、下流
 老人に至るにはいくつかのパターンがあるのだ。 

  そして、後半の【近い未来編】では、近年増加している若者の貧困などにも絡めて問題を見
 ていく。すでにある下流化パターンではなく、むしろこれから増えるであろう”予想されうる
 パターン”だ。その意味で、現在、働く世代の方には、こちらのほうが「自分事」になりうる
 だろう。
  これらを見れば「普通の人」が、いかにたやすく「下流」に陥ってしまうか、理解していた
 だけると思う。



 【現状編】

 《バターン1 病気や事故による高額な医療費の支払い》

  一つ目は、病気や介護、あるいは交通事故などで、高額な医療費や介護費、療養費が必要に
 なるパターンだ,これは、第2章のケースでも多かったので想像しやすいかと思う。
 「平成26年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の高齢者の健康状態について見ると、平成22
 (2010)年における有訴者率(1000人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状
 のある者《入院者を除く》」の数)は471・1と、半数近くの人が何らかの自覚症状を訴え
 ているとされる。

  当たり前だが、高齢期は想像以上に病気に冒されやすい。定年後に、いきなりがんなどの予
 期せぬ病気が見つかることも多々ある。計算外の高額な入院費用や医療費介護費の負担がのし
 かかれば、生活はあっという問に破綻してしまう。
  たとえば退職金が800万~1000万円ある人が、数回にわたるがんの手術で、老後の資
 金をすべて失ったケースもある。高額療養費助成制度もあるが、入院中の差額ベッド代や保険
 外の治療などもあり、医療費負担が重くなるのだ。また、がんの治療で長期間の療養生活を必
 要とするケースも多い。

  パターンは、とくに65~75歳までの前期高齢者に多く当てはまる,昔に比べ、今の高齢者は
 非常に精力的な人が多い。年金の受給年齢の引き上げなどもあり、本人も「老後もバリバリ働
 こう」と思っている。下流老人になった人の多くも同じように考えていた。「年金+就労収入」
  で暮らしていけるという生活設計があったのだ。
  しかし、それは「健康であること」を前提にして成り立つものである。自分が生涯を通じて
 健康でいられるかどうかは、誰にもわからない。それがただの願望であることをわたしたちは
 自覚しなければならない,



                         人生における「高齢期」の長期化

  生活設計をきちんと組み立てていても、病気になったときにはもう遅い。
 1年、2年と療養生活が続けば、それだけ生活費以外のさまざまな出費が増えるし、時間も制
 約され、負担が大きくなってくる,若いときより回復も遅く、思うように状況が改善しないこ
 とは一般的にあることだ。
  また事故の場合は、自分が被害者になる以外に、加害者になってしまうケースも存在する。
 とくに高齢者のドライバーで多いのが、自動車のアクセルとプレーキを踏み間違えて、大きな
 事故を起こすケースだ。自動車や建物の破損だけならまだしも、人身事故を起こし、多額の損
 害賠償を請求されるケースも珍しくない。

  このように予期せぬ病気や介護、事故によって、高額な医療・介護費が突如として発生して
 下流化するケースは、かなり多い。
  ただ、突発的な病気や事故は、今に限らず昔からあったことでもある,それでも「昔は大丈
 夫」だったのは、家族や地域社会など、さまざまなセーフティネットが機能し高齢者を捕捉し
 ていたからだ。
 
  現代は核家族化が進行し、経済的困窮によって子どもを頼れないケースが増えている。物理
 面、精神面、経済面と、さまざまな側面から「孤立化]しているのが、現在の高齢者の実態な
 のである。
  またこの問題は、いまだかつてない「長寿化社会]に突入したことも無関係ではない。長寿
 化社会とは、言い方をかえれば「人生における高齢期の割合がものすごく長くなった」という
 ことだ。
  今は90歳まで生きることも珍しくなくなった。100歳を超える人だっている。25年、35年
 と高齢期を過ごしていれば、生活設計をきっちり立てていてもどこかで病気になるし、事故に
 も遭うし、認知症になってそもそもプラン自体を忘れてしまう人もいるだろう,
  高齢期の割合が増えたということは、それだけリスクにさらされる危険度が高くなったとも
 言えるし、また、健康を維持するために莫大なコストが必要になったとも言えるのだ。

 〈パターン2 高齢者介護施政に入居できない〉

  2つ目は、高齢者介護施設に入りたくても入れないという問題だ。
  家族や親族を頼れない高齢者にとって介護施設、いわゆる「老人ホーム」は、最後の拠り所
 になるべき場所と言える。ところが制度的、経済的な理由から、要介護度高く、明らかに自立
 生活が困難と思える高齢者であっても、入居できないケースが増えつつある。
  そもそも、一口に老人ホームといっても、いくつかの種類に分けられる。
  最も一般的なものが「特別養護老人ホーム」だ。社会福祉法人などが運営している施設で、
 要介護高齢者が入所し、日常生活を介護職員のケアを受けながら暮らすことができる場所であ
 る。基本的に60歳以上で介護が必要な高齢者なら、誰でも利用可能だ。40歳以上になれば、原
 則、すべての人々が介護保険料を支払うため、介護保険制度で利用できる施設でもある。

  ただし、入所までに3~5年侍ちということはザラで、施設によっては10~15年待ちという
 ケースも珍しくない,2015年3月に発表された厚生労働省の資料では、特別養護老人ホー
 ムヘ入所中し込みしている人々は全国で約54万人おり、そのうち在宅で暮らしている要介護高
 齢者は約26万人もいる。家族の介護に頼らなければ生活ができない高齢者の姿が浮かび上が
 るとともに、施設の数が圧倒的に不足している状況が見てとれる。

  また、低所得であったり、身寄りがなくて保護が必要な高齢者が入所できる「養護老人ホー
 ム」もある。養護老人ホームは、原則として、介護を必要とせず、身の回りのことが自分自身
 でできる高齢者を対象としている。この施設は他の施設と違い、介護保険制度で利用できるも
 のではない,「措置制度」といい、保護が必要な高齢者がいた場合、福祉事務所の判断で利用
 させることができる。そのため、施設利用の際には養護老人ホームではなく、役所の高齢介護
 を担当する福祉事務所に問い合わせる必要がある。

  問題は入所希望者に対して、こちらも床数が圧倒的に不足しているということだ。
  貧困に苦しむ高齢者は増え続けているが、養護老人ホームもその受け皿としては十分に整備
 されていない。



                               すさまじい老後格差

  そのため自立生活が困難になってから入ろうと思っても、受け入れてくれる施設がないとい
 う状況も十分にあり得る。またこれらの施設は、2人部屋、3人部屋などの相部屋が基本で、
 食事や就寝時間なども一律に決まっているため、自宅と同じように自由気ままな生活というわ
 けにもいかない。
  そこで普通の暮らし、自宅に近いかたちで支援を受けながら老後を過ごしたいのであれば、
 民間の会社が運営する「有料老人ホーム」を検討する必要がある。しかし、十分に設備の整っ
 た有料老人ホームは、利用料が非常に高額な場合が多く、入居金だけで500万~1000万
 円を預ける必要がある。そのほか、入居金とは別に1か月あたり20万~30万円の「利用料」が
 かかる施設もある。

  このパターン2で最も深刻になるのが、「意識ははっきりしているものの、身体的あるいは
 経済的な問題により自立生活が困難な高齢者」である。
  養護老人ホームは、空きがなくて入れない。一方で、ホテル並みに施設が充実した有料老人
 ホームは、高額でとても手が出ない。しかし障害や持病などで、一人で暮らしていけない。そ
 んな高齢者が最終的に流れ着くのが、無届けの有料老人ホームなど、グレーゾーンで利益をむ
 さぼる介護施設だ。

  そのような施設では、ブロの介護福祉士によるサービスが受けられなかったり、必要なのに
 病院を受診させてもらえなかったりするばかりか、そもそも介護を行ううえで最低限必要な設
 備や人員が整っていなかったりする。そのため「寝かせきりアパートーや「寝かせきりホーム」
 と呼ばれることもある。
  このような施設が横行する背景には、「老後格差の拡大」が影響している。
  終身雇用、年功序列が崩壊しつつある今、この格差は今後ますます開いていくだろ。

                金がなければまともな介護も受けられない

   さらに深刻なのは、現役時代の収入によって格差が否応なく"固定"されてしまうことだ。高
 齢明に収入が増えることはほぼあり得ないし、そもそも、そんなに十分なお金がある人たちば
 かりではない。にもかかわらず、有料老人ホームが明らかに「富裕層向けの施設」に偏ってい
 る現状は、極めて問題である。
  会社員時代の年収が1000万円以上ある人など、数%しかいない。そんな人しか入れない、
 普通の年金水準では手も足も出ない施設が増えているのは、社会福祉の理念に照らしてみれば、
 明らかに異常事態と言える,

  一方で、これらの有料老人ホームが批判されるどころか、年々需要が高まりつつあるのはな
 ぜか。
  それは、介護保険制度の機能不全の問題が極めて大きい。現在の状況は、公と民が複雑に絡
 み合うことで、資本主義の原理が歪んだ形で発露した結果とも言える。
  本来は、生存に最低限必要な介護は、公的機関が責任を持って提供してきた分野だった。そ
 れが2000年以降、介護保険制度が導入され、措置から契約へ変わり、自由に介護事業者を
 高齢者が選べるメリットばかりが強調されたことで、民同企業や営利業者も介護事業を行うよ
 うになった。「介護の社会化」という掛け声とともに、多くの事業者が介護を収益の対象とし
 て見るようになったとも言える。

  民間企業も社会福祉法人も、同じ敷地があるとしたら、明らかに儲かる有料老人ホームを運
 営したがるのは当然だろう,有料老人ホームは、一部屋あたりの単価が養護老人ホームや他の
 介護施設に比べて、べらぼうに高い。同じ敷地(床数)でも、片方が年間1000万円、もう
 片方が年間1億円の収益になるのであれば、より多く稼げる施設を選ぶのは巾場原理だ。
  一方で、特別養護老人ホームや養護老人ホームなどは、公的な性質が強く、施設に入る報酬
 が厳密に決められており、大きな利益は見込めない。そもそも介護保険の財源不足で、運営費
 や職員の給与基準が低いという問題もある。だから公的な養護老人ホームは誰も運営したがら
 ないし、そのせいで床数が足りず、需要に応えられない事態が発生している,有料老人ホーム
 の高額化と特別養護老人ホーム、養護老人ホームの不足などの問題は、別々ではなく、同じ高
 齢者の貧困や不平等の問題として、リンクして考えなければならない。

  要するに「老後は介護が必要になったら老人ホームに入居して余生を過ごす」という考えが、
 もはや楽観的に思えてしまうほど状況は深刻化している。安全とはいえない.人暮らしの自宅
 で、十分ではない介護を受けながら、余生を過ごさざるを得ない高齢者が今でも大勢いること
 が、それを証明しているだろう。

                                    この項つづく

  ● 今夜の一冊 『昭和を語る』

鶴見俊輔氏が他界した、享年93。べ平錬運動ではじめて知り、熱心な読者ではなかったが『思想
の科学』を随時読んでいた。直接会ったのは、大阪城公園の「反万博集会」で、その時の模様を写
真に収めて残っている(はず)。わたしの青春時代を育んだ懐かしいひとこまだ。

1922年東京生まれ。哲学者。祖父に後藤新平、父は鶴見祐輔というリベラル派政治家の家庭に
育つ。十五歳で渡米、ハーヴァード大学でプラグマティズムを学ぶ。アナキスト容疑で逮捕された
が、留置場で論文を書きあげ卒業。交換船で帰国、海軍バタビア在勤武官府に軍属として勤務。戦
後、渡辺慧、都留重人、丸山眞男、武谷三男、武田清子、鶴見和子と『思想の科学』を創刊。アメ
リカ哲学の紹介や大衆文化研究などのサークル活動を行う。京都大学、東京工業大学、同志社大学
で教鞭をとる。60年安保改定に反対、市民グループ「声なき声の会」をつくる。65年、ベ平連
に参加。アメリカの脱走兵を支援する運動に加わる。70年、警官隊導入に反対して同志社大学教
授を辞任。

                                         合掌 

 

 

 


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