【今夜の二つの疑問】
● スリープ野菜
テレビ広告で”スリープ野菜”なる言葉が気になった。額面通りに受け取れば”眠れる冷蔵庫の野菜達”
とでもなるような童話、お伽噺の世界となるが、メーカーのホームページを広げると一目で納得する。
そこで、野菜を眠らせる目的原理とメカニズムに納得してみたが、発光ダイオードと光触媒(酸化チタ
ン)で保管空間で、エチレンガス――野菜や果物は、エチレンという植物ホルモンの作用で生長し、熟
成し、収穫した後も呼吸をしてエチレンガスを放出、老化し腐るが、植物の生長には必要不可欠なもの。
収穫後は自らや周辺の野菜や果物までも傷めることになる。バナナの熟成促進の場合はこのエチレンを
利用するが――を二酸化炭素と水蒸気に分解し、二酸化炭素が発光ダイオードの光を利用し呼吸代謝を
維持するというもの。このエチレン除去には、このような光分解以外に、ゼオライト(多孔質の鉱石)
と過マンガン酸カリウム混合物でゼオライトでガスを吸収し、過マンガン酸カリウムで分解し二酸化炭
素と水蒸気に変える方法がある。ただし、この種の商品例では、寿命が百リットル前後の大型冷蔵庫の
野菜室で約4ヶ月で定期的に交換する必要があり面倒なことと、購入廃棄過程のモルダールシフトの環
境的側面からマイナスイメージがぬぐえない。とはいえ、局部照射で保管空間全体の喚気効率の是非が
わからず疑問符がつくが、メーカ試験結果のデータ(ネット上での)からでは問題なさそうに思える。
とはいえ、このメーカ技術の独自性(新規性)側面からの評価はどうなんだろうとネット検索してみた。
そうすると、「特開2003-169542 切り花の強制開花処理方法及び強制開花処理装置」の先行しているこ
とに気づく。その概要は、切り花の強制開花処理方法で、蕾状態の切り花の茎切り口を水中に浸漬した
状態で、波長が400nm〜700nmの光量子束密度である光合成有効光量子束密度(PPFD)が50μmol−2{
s−1 以上の高強度光の照射を切り花に対して行い、切り花の光合成作用を利用して開花エネルギーを
供給し開花の促進を行うもので、PPFDとしては100μmolm−2s−1以上が好ましい――というものだが、
ここでは、エチレン対策は収穫時期を限定すること以外の記述はない。
● ハイレゾ音源
株式会社電通サイエンスジャムは、鼓膜では聞き取れないとされる高周波を含む“ハイレゾ音源”をヘ
ッドホンで聴いた場合「脳が快感を感じる」ということを公表。これは長岡技術科学大学との共同研究
でまとめたもの。それによると“ハイレゾ音源”――これはCDスペック(44.1kHz/16bit)を上回る高音質オ
ーディオを指す。その臨場感あふれる音がマニアの間で広がり、この半年でハイレゾ音源対応の楽曲数が前
年の2倍に、また昨年ソニーから発売されたハイレゾ音源に対応ウォークマン「ZX1」が7万円を超え
る価格にも関わらず品切れになっているという。
ところが、このハイレゾ音源は、実は人間の耳の可聴帯域を越える周波数も含む音源で、「人はハイレ
ゾ音源と従来の音源を聴き比べても、その良さや違いを明確に認識できない」という疑問があり論争と
なっていたが――ハイレゾ音源は耳だけでなく、脳でしっかりと感じ取り、心に届いていることが判明したという
のだが、これにより人の抗えない本能を刺激するため――音楽の新たな豊かさ、その価値を提供する可能
性を秘めていると期待されている。また、研究メンバーの長岡技術科学大学中川匡弘教授は、「“耳で
は聞こえていないはず”のハイレゾ音源を耳だけで聴取しても、脳はポジティブな反応を示す」という
従来の定説を覆すほどの結論であり、脳機能・感性の研究者として、久々に身震いするほどの驚きの研
究結果となりました」と話したという。
● 高次脳情報処理工学
前述したように、ヒトの感性は脳の活動によって特徴付けられていると考えられ、脳の活動状態は脳波
などにより観測可能であり、現在さまざまな研究が行われている。脳波信号は、筋運動――このことが
半導体のスイッチング機能例えられるように――必要とせず、MEGやfMRIなどに比べ、比較的容
易に測定でき、脳の活動状態を反映しているという長所を持っているため、様々な分野への応用が注目
されている。また、脳波がフラクタル性を持つ事が示され、脳波信号にフラクタル解析を施すことによ
り脳の活動状態を解明しようとする研究が行われてきている。また被験者が測定した帯域制限された複
数の脳波信号から選択した2つの脳波信号の差や積から、それらの信号をフラクタル次元解析し、フラ
クタル次元を特徴的に用いて、感性(「怒り」「悲しみ」「喜び」「リラックス」)を定量的に評価す
る手法として、感性フラクタル次元解析手法が提案されている。
近年、教育工学の分野でメタ認知活用の有効性が注目されているが、「メタ認知」は下図1に示すよう
に分類され、「メタ認知的モニタリング」活動は学習効果に大きな影響を与えるとされている。ここで、
自己の思考・感情そのものを対象としてモニタリングすることが「メタ認知的モニタリング」で、メタ
認知をしている自分とそれを取り巻く世界を対象としてモニタリングすることが「メタメタ認知的モニ
タリング」と呼ばれる。「メタ認知的モニタリング」は、自己の思考の誤りに気付き修正を行う上で不
可欠であり、自己学習能力に影響を与えると考えられている。しかしながら従来は、被験者がメタ認知
状態またはメタメタ認知状態にあるか否かを客観的に判定する技術がなかった。
このため、脳波差信号演算手段2は、被験者の脳の複数の領域のうち側頭葉を含む複数の領域から測定
した複数の脳波信号から、選択した複数組の2つの異なる脳波信号についてそれぞれ脳波差信号を求め
自己アフィンフラクタル次元演算手段3は、複数の脳波差信号のそれぞれから、自己アフィンフラクタル次元
を求め、認知状態判定手段4が、安静状態、メタ認知状態またはメタメタ認知状態に意図的になること
ができる基準者から得た脳波信号をリファレンスデータとして用いて、予め定めた判定基準に基づいて、
自己アフィンフラクタル次元のデータを入力として、被験者が安静状態、メタ認知状態またはメタメタ
認知状態のいずれにあるのかを判定し、被験者がメタ認知状態またはメタメタ認知状態にあるか否かを
客観的に判定できる認知状態判定装置を提案されている(上図、新規考案)。
また上図は、脳波処理装置の音発生手段で音を発生し、脳波計測手段は、この音発生手段からの音を聞
いている利用者の脳波を計測し、計測された脳波を対象として統計的分析を行い判別分析し、そのる分
析結果に基づき判別分析を行い、音質に対する利用者の客観的な評価として判別結果を出力する脳波処
理装置の提案である。
このようにヒトの自己環境を脳科学領域から電算機を駆使委し、高次な脳情報を処理し解析する試みが
進化してきている。これを高次脳処理あるいは高度脳情報処工学と呼称するとして、さらには感性工学
と呼称し、「ヒトの自己環境」と「ヒトのこころ」と「ヒトの精神」とを紐つけする試みが加速されて
きていことを確認することとなった。