【遺伝子組み換え作物論 33】
解説
世界の食料支配を狙うパイテク企業
「それほど遺伝子組み換え食品が素晴らしいものであるのなら、なぜ世界中で反対運動が起きて
いるのか」「匪界中で消費者や農民が反対しているのに、なぜ遺伝子組み換え作物が拡大している
のか」この二つの本質的な問いに対する回答が本書である。
周知のように、米国政府と巨大企業の結びつきは極めて根深い。まるで企業が政府を形成してい
るかのようであり、その仕組みが本書で紹介する「回転ドア」である。日本の「天下りは省庁から
民間企業や独立法人、行政法人などの外郭団体へと上から下ヘの一方通行だ。それに対して、アメ
リカは、政府や官庁と民間企業との間を往来する。「回転ドア」は、農業や食晶業界にとどまらず、
金融や軍事などあらゆる分野に存在する。さらに問題なのは、政権が交代しても「回転ドア」は継
続することである。たとえばバイテク産業では共和党のブッシュ政権の時代から「回転ドア」が形
成されたが、民主党に政権交代してもそれは続いている。民主党のオバマ大統領は2008年の大
統領選挙では公約として「遺伝子組み換えの食品表示の義務化」をすることを.一時主張していた
が、当選後はいっさい語らなくなったし、それどころか「米国食品医薬品局(FDA」上級顧問と
して、モンサント社の副社長マイケル・テラーを任命している。
ちなみに2012年の大統領選挙と同日に、カリフォルニア州では、「遺伝子組み換え表示の義
務化」に対する住民投票が行なわれた。97万人以上の署名が集まり、事前調査の段階では賛成
60%、反対25%たった、ところが、住民投票の結果は賛成47%対反対53%で、否決されて
しまったのである。バイテク企業が4560万ドルを投じ、テレビやラジオで約二週間、集中的に
反対キャンペーンを展開したからだ。資金を拠出した企業はモンサント(810万ドル)デユポン
540万ドル)、ダウ・ケミカル(200万ドル)、BASF(200万ドル)、シンジエンタ(
200万ドル)バイエル(200万ド)となど本書に登場するバイテク企業だけではない。ペプシ
コーラ(214万ドル)、クラフトフーズ(195万ドル)、コカ・コーラ(170万ドル)、ネ
スレ(131万ドル)、ケロッグ(79万ドル)、デルモンテ(87万ドル)、キャンベル(50
万ドル)、ハインツ(90万ドル)など日本でも有名な大手食品4企業も参加した。企業による反
対キャンペーンでは、「遺伝子組み換え食品の安全性は米国政府が保証している」とアピールし、
「わざわざ表示すれば食品価格が上がる」という脅しが消費者に対して功を奏したのである。本書
でも2002年にオレゴン州で実施された「住民投票潰し」の事例が紹介されているが、カリフォ
ルニア州では、オレゴン州の時の10倍近くの費用をかけて反対キャンペーンが展開された。
「なぜ、アメリカ人は皆、遺伝子組み換え食品を積極的に推進するのか」という疑問をよく聞く
が、実は米国内でも日本より数多くの団体が反対運動を行なっている。しかし、マスコミが遺伝子
組み換えの問題や危険性を報道することはほとんどないし、巨大企業と一体となった政府・官庁の
政策をくつがえすことは極めて困難な状況である。福島第一原子力発電所で大事故が起きた後でさ
え、脱原発が進まない日本の状況と重ね合わせてもらえば理解していただけると思う。
今やモンサント社は世界の種子の23%、大豆の70%を支配している。そしてモンサント、デ
ュボン(ハイオニア・ハイブリッド)、シンジエンタの3社が世界の種子の半分を支配していると
いわれる。
暴走する遺伝子組み換え作物
すでに米国の大豆の93%、トウモロコシの88%は、遺伝子組み換え作物に切り替わった。私
は、1996年に米国で商業栽培が始まってから2年〜3年に一度は、米国を視察する機会があっ
た。毎回、現地で感じたのは、「遺伝子組み換え作物は、崩壊に向かって暴走している」という思
いである。
本書で指摘しているように、除草剤に枯れない、"スーパー雑草"ほどこの大豆畑でも見かけるよ
うになった。すでに除草剤耐性雑草は12種類にも増えており、遺伝子組み換え作物の商業栽培が
始まって13年(1996年〜2008年)の間に、遺伝子組み換え作物の生産農家は、一般の作
物生産農家より、17万2400トンも多くの除駆剤を使用したと言われる。
害虫抵抗性トウモロコシを食べた「根切り虫(ルートリーム)が死なずに生きのびているという
報告か増えており、害虫の発生エリアも拡大している。
しかし、こうした問題は、「想定外」どころか、当初から専門家たちが指摘したように「耐性」
を雑草や害虫が身につけた結果である。もはやモンサント杜もこの現実を心定しない。それどころ
か2010年には新商品「スマート・スタック」を打ち出した。それまでの遺伝子組み換え作物は
除草剤耐性と害虫抵抗性のため3〜4種類の遺伝子を導入していたが、それではもはや効果が薄く
なりつつある。そこでこの新商品は、8種類もの遺伝子を導入しているのだ。それは、「芯食い虫
(コーンボアラー)」に殺虫性をもつ3種類の遺伝子と、「根切り虫(ルート・リーム)に殺虫性
をもつ5種類の遺伝子、そして「ダウ・ケミカル社」と「モンサント社」の除草剤に耐性をもつ2
種類の遺伝子である。今のところ種子代が高価なため利用する農家は少ないが、いずれこの新商品
が普及した場合、雑草と害出は耐性を身につけ、対策がさらに困難になるとの問題が指摘されてい
る。遺伝子組み換え作物の有効性は失なわれつつあるのだ。
ところがもはや米国では、非遺伝子組み換え作物の生産が困難になっている、種子が手に入らな
いからだ。一般種の需要が少なすぎるため、次々に種子会社が撤退した。たとえばトウモロコシの
一般種子の開発・販売を行なっている大手種子企業は、「パイオニア・ハイブリッド社」だけにな
っている(ただしかつては世界第1位の売上高を誇った「パイオニア社」も1999年に「デュボ
ン社」に買収されて100%子会杜になっており、主要な販売種子は遺伝子規み換えである).米
国農務省USDA)の調査によれば、非遺伝子組み換えトウモロコシの作付面積は12%存在して
いることになるが、「パイオニア・ハイブリッド社」による独自の調査と試算では、もはや4%程
度しかないと推測している。
しかも非遺伝子組み換えトウモロコシの種子を開発・生産している同社でさえ「遺伝子組み換え
種子の混入率については上限を設定していない」と言う。もはや米国では交雑・混入を防ぐことが
できなくなったため、有機農業を断念する農家が増えている,しかも遺伝子汚染は米国だけの話で
はない。遺伝子組み換えナタネの商業栽培を認可していないEUでも全域で確認されている。、オ
ーストラリアでは、隣人が栽培した遺伝子組み換えナタネに汚染されたために有機認証を取り消さ
れた農家が、隣人を相手取って訴訟を起こした。
リーズ、アンディ 著 『遺伝子組み換え食品の真実』
この項つづく
● 植物培養工学:オゾン水殺菌
植物工場が本格している。なかでも、固形培地や水中に根系を形成させ、生育に必要な栄養成分を液肥
と希釈水とを所定比率で混合した養液(培養液)を介して与えて、土壌を用いることなく作物などの植
物を栽培する養液栽培はそのコア技術あるいは装置/機構である。ところで、養液栽培で発生する植物
の主な病害としては、青枯病、萎ちょう病、根腐病などがあり、これら病害における病害虫の侵入経路
の多くは、(1)種子による伝染、(2)空気中からの伝染、(3)水や養液による伝染、(4)およ
び育苗資材や(5)ホース・水道管などからの伝染である。特に、栽培ベッド内や養液タンク内の養液
に病原菌が混入した場合には、壊滅的な被害に拡大するリスクがあり、これが養液栽培の生産安定や面
積拡大の阻害要因の一つとなっている。
病害防除の対策には、(1)紫外線照射による方法、(2)超音波による方法、(3)加熱殺菌による
方法などが研究されているが、いずれも実用化していない。(4)近年、オゾンを用いた消毒・殺菌に
よる方法が検討されているが、(1)オゾンを直接吹き込む法は、過剰オゾンガスが、培養液調整槽上
部の排ガスパイプを経由して栽培ベッドが設置されている栽培施設内の空気中に排出され、植物のクロ
ロシス(白化)障害が生じたり、作業者への健康被害や関連設備什器の劣化なるどのリスクがある。ま
た(2)培養液中の微量成分が酸化物を生成し、沈殿物として析出し培養液組成が大きく変化、あるい
は、植物に栄養障害が発生するリスクがある。なお、培養液の成分中、マンガン>鉄>カルシウムの順
に酸化されやすく、高濃度のオゾンガスは比較的酸化されにくいカルシウムまでも酸化するため、栄養
障害が生じる。
因みに、未溶解のオゾンガスが栽培施設内の空気中に排出され、オゾンガスによる植物の障害が生じる
が、0.3ppmのオゾンガス濃度で植物に致命的な障害を与えるとされる。
そこで、上図のように、植物が配置される栽培ベッド1と、このベッドに供給する養液タンク2と、原
水から所定濃度のオゾン水を生成し、生成したオゾン水を養液タンク2と栽培ベッド1のいずれか一方
か双方に供給する電解型オゾン水生成装置3を備える養液栽培設備100で、植物がオゾンガスによる
障害を受けにくく、オゾンによる養液を殺菌でき、さらにオゾン養液殺菌の養液組成の変化を少なくし
たオゾン水を用いた養液栽培設備と養液栽培方法の提案されている。
図2は、この電解型オゾン水生成装置3が固形電解質膜61の一面と他面とに、直流電圧を印加した陽
極電極62と陰極電極63とを重ね、陽極電極62側に供給された水道水を図に示すように、この電解
型オゾン水生成装置3は、固形電解質膜61の一面と他面とに、直流電圧を印加した陽極電極62と陰
極電極63とを重ね、陽極電極62側に供給された水道水を(正確には、陽極電極62側に供給された
水道水、および陰極電極63側に供給された水道水の双方を)電気分解して、陽極電極62側において
オゾン水を得るように構成されている。
また、図3は、電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水における時間経過に伴うオゾン
水濃度の減衰傾向を示すグラフ。図4は、電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水に
おける時間経過に伴うオゾンガス脱気量の増加傾向を示すグラフ。この図に示すグラフの横軸は、経過
時間(分)であり、縦軸は、オゾン濃度(mg/L)である。また、図における電解方式で生成された
オゾン水の温度は、12.1℃、ガス溶解方式により生成されたオゾン水の温度は、10.1℃である。
このように、ガス溶解方式により生成されたオゾン水では、オゾン水濃度の半減期(オゾン水濃度が半
分になる時間)が10分〜15分程度であるが、電解方式により生成されたオゾン水では、60分以上
である。尚、混合後のオゾン水濃度が0.01mg/L以上、好ましくは3.0mg/L以上であるこ
とが望ましい。
上図の浄化装置は、循環水を循環させる循環経路(11)を備え、循環経路(11)は、相互に切換え可能
で、水浄化ユニット(60)を有する浄化経路(12)と、浄化経路(12)を経由しない通常経路(13)と
で構成。浄化ユニット(60)は、循環水中で放電を行う放電部(62)と循環水に超音波を照射する超音
波発生部(94)を有している。放電部(62)は、循環水中で放電を生起する電極対(64,65、464,465、
564,565、664,665)と、電源部(70)とを有し、放電によって循環水中に水酸ラジカルを生成するよう
に構成、超音波発生部(94)は、生成した水酸ラジカルが変化して生成する循環水中の過酸化水素を水
酸ラジカルに変換するように構成することで、水耕栽培システムの循環水を簡単な設備で効率良く浄化
できる。
過酸化水素濃度が十分に上昇した後、水に超音波を照射すると、水中の過酸化水素が分解され再び水酸
ラジカルが発生する。超音波照射により発生した水酸ラジカルは再び結合して過酸化水素に戻る。この
ため、上図に示すように過酸化水素から水酸ラジカルへの変換と、水酸ラジカルから過酸化水素への変
換とが循環して生じる。但し、殺菌等の水の浄化に使われた水酸ラジカルは水に変化するので、放電を
停止して超音波照射のみを行った場合には、過酸化水素の濃度は徐々に低下する。過酸化水素により水
を十分に殺菌しようとすると、水中の過酸化水素の濃度を高くしなければならず、過酸化水素は、低濃
度では比較的安全であるが濃度が高くなると植物に悪影響をおよぼすおそれがある一方、水酸ラジカル
は、過酸化水素と比べてはるかに高い殺菌能力を有している。従って、低い濃度においても水を十分に
殺菌することができるが、水酸ラジカルは不安定でありすぐに反応して過酸化水素となってしまう。こ
のため、水酸ラジカルにより水の殺菌を行うためには、水酸ラジカルを連続的に発生させなければなら
ない。放電の場合、水が分解されて水酸ラジカルが発生し、連続的に運転を行うと水中の過酸化水素濃
度がどんどん上昇する一方、超音波照射の場合には、過酸化水素から水酸ラジカルへの変換は生じるが
、水の分解は生じないので、水酸ラジカルの生成を連続的に行っても、過酸化水素の濃度が上昇するこ
とはない。従って、放電により過酸化水素を発生させ、超音波により水酸ラジカルを発生させることに
より、放電のみを用いて殺菌を行う場合よりもはるかに効率良く殺菌を行うことができ、過酸化水素の
濃度を低く抑えることができる。
最近はオゾン水製造システムも改善されてきている。上図は、その1つ事例で、オゾンガスの原料にな
る気体を導入する気体吸込手段と、オゾンガスを発生するオゾン発生手段とで液体を混合し、オゾン液
を生成する気液混合手段と、オゾン液を気液分離する気液分離手段とが循環経路で接続されたオゾン液
生成装置で、気液分離手段は、外部からの気体を導入する気体導入機構を備えていることを特徴とし、
オゾン液の濃度が低下させることなく、オゾン液を安定供給できるオゾン液生成装置が実現できるとい
うもの。
ここでは、水耕栽培の培養水の殺菌であったが、根菜類の培土の殺菌をオゾンガスを定期的に吹き込む
ことで、培土の有用成分(酵素や栄養素またはバクテリア)に与えるダメージを極力抑制することも考
えている。これに関しては残件扱いとする。