だから私はこの学校を変えたい。このヘンテコな世界を変えたい。
春菜ツバメ / 『学校のカイダン』
● 予想を超えた海面上昇 世界各地の沿岸部の地形が一変 ?!
8月26日、NASAは92年以降に世界の海面水位が平均8センチメートル昇し。従来
の予想が甘かったことを指摘した。今後、温室効果ガスの排出量が増加せず、気温上昇
が2℃以内に抑えられたとしても、世界各地の沿岸部の地形が一変するほど海面が上昇
するおそれがあることを公表(2015.09.01 ナショナル・ジオグラフィック日本版)。
● 92年以降、地球の海面水位は平均で約8センチメートル上昇
それによると、(1)地球温暖化により、海面水位は今後数百年のうちに数メートル上
昇する可能性――気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3年前に出した陸氷の融解
を含まない予測では、温室効果ガスの排出量次第で、海面水位は2100年までに28
~98センチメートル上昇するとされていた。(2)海面水位の上昇は50年前より速
いペースで進んでいることは把握されているも、極地氷床の融解速度がわからず予測が
難しい。(3)NASAの22年分の人工衛星による観測データでは、海面上昇は平均約8
設置メートル、複雑な海洋変化で、米国西海岸沖など一部の海域では海面水位が低下す
るものの、次の10年で逆転し、太平洋沿岸部の海面水位は他の海域より速いペースで
上昇すと予想。(4)8月中旬には、グリーンランド西部のヤコブスハブン氷河が割れ
て短期間のうちに約13平方キロメートルもの氷の塊が失われたが、人工衛星が撮影し
たが、この氷河が全て融解すると、30センチメートル以上地球の海面水位が上がると
予測されているが、IPCCの予測では、氷床融解が過小評価されている。
※ NASAの科学者が作成したグリーンランド氷床の3Dモデル
予測幅は広いが、世界の10大都市のうち8都市は沿岸部にある。来世紀以降、東京、
ニューヨーク、上海、ムンバイなどの巨大都市は海面上昇に脅かされることになるだろ
うと結んでいる。いよいよ断末魔か?、わたしたちは人類はこの危機を乗り越えること
ができるのか? ^^;。
19世紀の半ば過ぎに、メンデルは生物の形質発現を担う実体を想定し、遺伝の
法則を仮淀した。メンデルはこの実体を要素と呼んだが、それは今日では遺伝子の
名で呼ばれている。
遺伝子の本体はDNA(一部のウイルスではRNA)と呼ばれる物質であること
がわかっており、それは細胞分裂に伴って複製される。
DNAは自分と同じDNAをつくるのである。
原核植生物のDNAは環状の二本鎖DNAであり、その大部分は機能をもち、た
んばく質などに対応している。一方、真核生物のDNAは線状で、通常染色体を形
づくっており、その大部分は機能をもたない(少なくともいまのところ機能不明で
ある)。通常、遺伝子は機能をもつDNAのことであるから、真核生物の遺伝子は
DNAの大海の中にポツン、ポツンと浮かんでいることになる。
さらに真核生物の遺伝子は、たんぱく質に対応している部分(エキソン)と対応
していない部分(イントロン)からなるニとがわかっている。これは原核生物には
見られない真核生物だけの特徴である。
分子シャペロンのダンス
真核生物では、遺伝子のエキソン部分の情報だけをつなぎ合わせてmRNAがつ
くられ、これにしたがってたんぱく質の一次構造がつくられる。簡単なたんばく質
では一次構造がつくられさえすれば、自動的にたんぱく質の立体構造がつくられる
こともあるが、複雑なたんぱく質では、分子シャペロンと呼ばれる特別なたんぱく
質の介在なしには、正常に機能する立体構造はつくれない。このことから、遺伝子
は一義的にたんぱく質に対応しているわけではないことがわかる。
遺伝子によってつくられたたんぱく質は、細胞内のシステムの条件にしたがって、
その枠内でのみ機能する。したがって、システムが異なったり、条件が異なったり
すれば、同じ遺伝子がさまざまな異なる機能を担ったり、異なる遺伝子が同じ機能
を担ったりする。生命現象にとって真に重要なのは、遺伝子そのものよりこのシス
テムであり、遺伝子はシステムの部品にすぎないと考えたほうがよい。
池田清彦 著『新しい生物学の教科書』
遺伝子という言葉は、21世紀を象徴する言葉になりそうだね?と問いかければ、多く
のひとはうなずくだろうは、あまりにも基礎的で核心的で膨大な意味を包み込んだ「言
葉」だけに、その了解にも時間がかかってしまいそうだが、「生命現象にとって真に重
要なのは、遺伝子そのものよりこのシステムであり、遺伝子はシステムの部品にすぎな
いと考えたほうがよい」という著者の結びは、この思いに拍車をかける。
【目次】
はじめに
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人―「普通」から「下流」への典型パターン
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人―個人に依存する政府
第6章 自分でできる自己防衛策―どうすれば安らかな老後を迎えられるのか
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
おわりに
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人―個人に依存する政府
《8つの視点からの制度批判-まとめ》
ここまで8つの視点から、現在の社会保障や社会システムの不備によって下流老
人が生み出されていることを明らかにしてきた,繰り返しになるが、下流老人に陥
るのは個人の能力不足や怠惰のせいなどではない。正すべきは、過度に経済優先の
社会システムであり、ひいては人間疎外に慣らされたわたしたちの意識と感情であ
る。
だからこそ、制度疲労を起こしている施策や時代錯誤的な政策に、強い意志をも
って介入していきたい。団塊の世代が高齢期に突入し始めた今がまさに、制度の根
本的な見直しを図るべき転換地点なのだ。
《コラム3 下流老人の生き血を吸う「貧困ピジネス」》
高齢者を搾取する者は、振り込め詐欺などの犯罪者集団だけではない。巧みに高
齢者を囲い込み、人権擁護を傘にして営利利用する「貧困ビジネス」の俘在が、明
らかにされている。
下流老人の周辺で暗躍する貧困ビジネスでは貧困ビジネスとは、どんなものを指
すのだろうか。
社会活動家で反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏は、著書『反貧困』「すべ
り台社会」からの脱出』で、貧困ビジネスを「貧困層をターゲットにしていて、か
つ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化するビジネス」であると指摘し
ている,
要するに、生活困窮が‥を対象にビジネスを行い、そこから抜け出すような支援
はせず、生かさず殺さず搾収し続ける事業者のことだとIaえる。これらの業種は、
公的機関が介入しない(あるいはできない)分野に大きな市場を形成する特徴があ
る。一時しのぎの場として需要があり、利用者も多いが、いったんそれらのシステ
ムに組み込まれると貧困から脱却することが非常に困難になるという恐るべき性質
がある。
近年、この貧困ビジネス被害者からの相談件数は顕著に増えている,はたして、
生活困窮層や下流老人は、どのようにこの貧困ビジネスに搾取されてしまうのか
その実例を見ていこう。
下流老人を大量生産する「無料低額宿泊所」
貧困ピジネスのなかでも、とくに問題睨されているのが「無料低額宿泊所」だ。
無料低額宿泊所とは、社会福祉法弟2条第3項に規定されている弟2種社会福祉事
業の弟8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し
付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」である。
筒単に言えば、住む家のない生活困窮者に、一時的に安価に利用できる部屋を提
供する事業者を指す。この宿泊所は届出をするだけで、誰でも比較的筒単に開所で
きるため、近年さまざまな事業者が参入してきている。しかしこの無料低額宿泊所
の利用者からの相談が、後をたたない。
相談者が抱える悩みは、高額な施設利用料、劣悪な居住環境、粗末な食事、運営
者への不満、転居支援を含めた自立支援の少なさ、不当あるいは違法行為の横行な
ど、多岐に及ぶ。一部の宿泊所では、運営者による暴言や暴力による虐待があった
り、無断で通帳をつくられ金銭管理をされているといったケースもある。
事業者のやり口はじつに巧妙だ。まず、病院から退院しても帰る場所がない大や
ホームレスに「力になりますよ」と声をかけて、生活保護申請を行う。そして、そ
の生活保護費の大半を「利用料」として徴収する。
悪質なのは、支給される生活保護費の7~8割程度をもっていかれるうえに、口
座を管理されているため、脱出したくともそのための資金を貯めることができない
ことだ。
なかには福祉事務所が、相談に来た人々を貧困ビジネスヘ紹介して送り込む事例
さえある。
これらの宿泊所を運営する事業者は、得体の知れない者も多い。たとえば埼玉県
では、2014年に「ユニティー出発]という事業者が宿泊所の運営によって利益
を得ていたが、税務申告をせず、数億円という多額の脱税によって逮捕される11
件が発生した,また、「NPO法人幸興友会」という団体は、2013年に宿泊所
利用料の業務上横領によって、代表者を含む数名が逮捕された。その事業関係者は、
NPO法人を隠れ蓑にした元暴力団員であったことも報じられている。
わたしのもとにもこれらの無料低額宿泊所の利用者から頻繁に相談が寄せられて
おり、これまで刑事告訴や民事提訴などの手法で争ってきた。だが不正が明らかに
なった団体は氷山の一角に過ぎず、埼玉県内だけを見ても依然として無数の貧困ビ
ジネスがはびこっている。
このように一例をとっても、無料低額宿泊所がどれだけ危険な存在であるかは明
らかだ。ところが宿泊所はなくならないばかりか、むしろ利用者は年々増えつつあ
る。理由は単純で、住居を求める人々(需要)に対し、受け入れる社会資源(供給)
が少なく、需要と供給のバランスが崩れているため、宿泊所がどれだけ劣悪なサー
ビスを提供しても市場から排除されないのだ。また、役所の福陸課に相談しても、
彼らも時間をかけて住居を探す余裕がないため、安易にこのような宿泊所を紹介し
ているといった現状もある。
近年の社会福祉では、大規模な施設への収容に依存しない「脱施設化]が掲げら
れ、高齢者も在宅で生活ができるような支援施策が整えられてきた。だが無料低額
宿泊所は、そのような社会福陸の流れとは逆行するような施設形態であろう。宿泊
所のさまざまな問題は、こうした社会福祉がとりこぼした部分に発生している。ど
れだけ違法な宿泊所を取り締まろうとも、セーフティネットのほつれ自体を修復し
なければ、貧困ビジネスによる生活困窮者の搾取はなくならない。
そのため、今後は無料低額宿泊所に代わる新しい社会資源の創造が求められる。
たとえば、①不動産業界と連携してアパートでの「居宅保護」を推進し転居支援を
すること、②一時通過型シェルターの設置(宿泊所のシェルター機能化)、③対象
を選別しない小規模グループホームの設置、④公営住宅の活用、などである。これ
らは決して実現不可能なことではないはずだ。劣悪な宿泊所に対しては、今以上に
行政の介入を期待したい。
藤田 孝典 著『下流老人』
これに対する活動(脱貧困ビジネス社会運動)もあるようだから、ここではそれを期待
したいところだが、原則だけを付け加えると、ボイコット(不買・不同意同盟)に、よ
り多くの人が参加し、風通しのよい、開明的な運動が展開できればと期待している。次
回は第6章へ。
この項つづく