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景気回復にほど遠い数値

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【景況速読 2014秋】

● 景気回復にほど遠い計量数値ばかり

 高橋洋一の『俗論を撃つ!』(2014.09.18 ダイヤモンドオンライン)の、『最近の金融経済情勢と金融政策運営
(2014.09.16 日本銀行)の景況報告の読解によると、(1)消費増税の影響は、東日本大震災で消費低迷した2011
年3月〜11月の9ヵ月連続減以来の長さで、統計が容易に入手できる1982年4月以降、32年間で最悪であり(上図1)、
(2)過去に消費税増税した1989年、1997年との比較でも、7月の数字をみると、89年7月0.0%、97年7月3.0%と
過去の消費増税時には消費はほとんど戻っていたが、今回は▲5.7%。7月段階で4〜7月の平均は▲0.6%、97年7
月では▲1.2%であり、今回の▲5.2%はそれらと比べてもダントツに悪い(同上図2)。(3)金融政策と財政政策
を一体とし発動の影響で回復していたが、今年4月からの緊縮政策により、潜在GDPの試算(高橋洋一による)で
は、実際のGDPとのギャップは12兆円(同上図3)で、景気低迷しているといい、(4)景気回復には、5%への
消費減税。あるいは、軽減税率を導入して、全品目5%の軽減税率の適用、あるいは、事後所得税減税、あるいは、
これまで増税した分をすべてはき出すような減税と財政支出が必要と指摘している。 


さらに、『やはり景気はよくない ツッコミどころ満載の麻生財務大臣発言』(2014.10.02 同ダイヤモンドオンライ
ン「高橋洋一の俗論を撃つ!」)では、(1)前期比で見た各四半期GDPの伸び率は上図1のごとく、1〜6月期
を平均しプラスにみえるが、それ以前の巡航速度の2%より――可処分所得減による消費減で――下回っている。ま
た、(2)8月の家計調査、住宅着工、鉱工業指数(9月30日公表)、7月の機械受注(9月10日公表)でも同傾向
を示す(上図3参照)、(3)図4の在庫循環図の典型的なパターン――景気回復の初期には、まず出荷の増加に伴
ってそれまで積み上がっていた製品在庫が減少に転じる。次に、在庫調整が進展して在庫が適正水準に近づくと生産
の増加テンポが速まって在庫の減少が止まる。さらに、景気が成熟化して出荷の増勢が鈍化すると在庫が増加に転じ、
最後は、景気後退局面で、出荷が減少する中で、在庫が積み上がっていく――が。 ぐるっと一周すると危険領域なの
だが、8月のデータでついにほぼ一周になっているとし、景気循環の終わりを示唆していると警告している。

このように、景況を表す諸計量数値に対し、わたし(たぢ)は素直に受け入れる――反論があれば、それに反駁検証
提示、あるいは、根拠計量数値を示し低て欲しい――立場にある。さて、同ダイヤモンドオンラインでは、真壁昭夫
信州大学教授の『なぜ政策を総動員しても景気回復が本格化しないか?−金利低迷と期待収益率で考える資本主義の
終焉リスク』 (2014.09.02)で、「資本主義の終焉」の云々の議論はさておき、次の文章が眼を惹いたが――アベノ
ミクスが国内外から注目された理由の1つは、わが国社会を変革する可能性を信じたからに他ならない――の指摘こ
そ、わたし(たち)が抱え込んでしまっている"タブー"を破壊する「新しい革新的政策原理の構築」――これらはこ
のブログで掲載してきた『デジタル革命』の第4基本則(デフレーション)と密接に絡む「処方箋」と関連する。


 そうした状況を解決するためには、単に中央銀行がお金を印刷して供給すればよいというものではない。人々の
 リスク回避的心理状況を氷解させることと、行き詰まった閉塞感を打ち破る改革(イノベーション)を提示する
 ことが必要になる/たとえば、人口減少・少子高齢化が進むわが国でも、今まで存在しなかった革新的な新製品
 が開発されるとき、人々はそれを購入するだけの購買力を十分に持っている。それが現実のものになると、消費
 は盛り上がるはずだ/アベノミクスが国内外から注目された理由の1つは、わが国社会を変革する可能性を信じ
 たからに他ならない。問題は、効果的なイノベーションを実現できるか否かだ。構造的な改革によって社会全体
 の効率が上がると、企業が儲けられる案件も出てくるだろう。何よりも、期待収益率が上昇することによって、
 資本主義の終焉を避けることが可能になるはずだ。


                                              この項了

 
【大容量を超低消費電力で扱えるネットワーク技術】

国内の通信ネットワークの総トラフィックは年率20%から40%で増大しているという(上図参照)。今後のインター
ネット上の動画、高精細映像の普及、放送と通信の融合などによる、トラフィックの需要の増大が続き、現在の千倍
以上のトラフィック容量になると予想している。現在、ルータでパケットと呼ばれる単位で情報をやり取りするネッ
トワークが使われている。比較的小さな情報の取り扱いに適すが、情報量の増大に比例し、消費電力が増大に、今後
の高精細映像など大きな情報量のトラフィックの需要に対し、ルータの消費電力増大が大きな制限要因となる。この
ため、激増する情報、特に大容量の映像情報を抜本的に低消費電力で扱うことのできる新しいネットワーク技術の開
発が望まれていた。




この問題の解決に、産業技術総合研究所は電子的なルータを使わない、光スイッチ回線交換型の新しい「ダイナミッ
ク光パスネットワーク
」を提案し、このネットワーク実現に向けてプロジェクトを開始し、2010年にはこのネットワ
ークのプロトタイプを公開実験で低消費電力性を実証(2010.08.24)。今回、情報の粒度に応じパス(経路)を切り
替えるスイッチを開発し、これらを階層的に配置。小粒度から大粒度の情報を扱えるようにする。また、これにより、
利用者を多く収容し、超低消費電力で、高精細映像などの大きな情報を扱うことができるネットワークを実証すると
いう。

● 本件のネットワーク技術の特徴

1.約6 kWの消費電力で現在の国内全通信情報量の約36倍にあたる90 Tbpsを収容可能
2.光パス(経路)のネットワークの利用者数を数千万までに拡張可能
3.8Kスーパーハイビジョンなど超高精細映像コンテンツでた実証実験 

【二酸化炭素からポリウレタン原料を効率的に合成】 

また、前述の産業技術総合研究所は二酸化炭素(CO2)とアミン、スズアルコキシド化合物とを反応させて、芳香族
ウレタンを高収率で得る新しい反応プロセスを開発した。芳香族ウレタンは、現在医農薬品などに用いられる化学物
質であるが、ポリウレタンの原料として非常に有望であると公表(2014.09.30)。現在、ポリウレタンの製造には、
猛毒で腐食性の強いホスゲンが原料として用いられ、製造過程で多量の廃棄物が副生するため、より環境に調和した
製造プロセスへの転換が強く望まれていた(上図参照)。今回は安価で豊富に存在するCO2とアミン、アルコールを原
料に用いることで、理論上廃棄物が全く生成しない理想的な環境調和型ウレタン合成法の開発に取り組んできたが、
これまでに開発した技術では合成できるウレタンの種類が限られ、ポリウレタン原料の元になる芳香族ウレタンを合
成できなかったが、今回、CO2加圧下でアミンとスズアルコキシド化合物を反応させると、芳香族ウレタンが高収率で
合成できたという。

 

●  本件の合成技術の特徴

1.二酸化炭素を用いてポリウレタンの原料を合成する新しい反応プロセス
2.二酸化炭素とアミン、スズアルコキシド化合物との反応で芳香族ウレタンが高収率で生成
3.猛毒のホスゲンを使わない、環境に調和したポリウレタン製造プロセスの実現に期待

※ 特開2006-022043カルバミン酸エステルの製造方法 

尚、今回の発明合成法は、スズアルコキシド化合物をアミンと同量以上用いるものの、反応後にスズ残留物を回収し、
水を取り除きながらアルコールと反応させるとスズアルコキシド化合物が再生。次の反応に再使用できるため、反応
プロセス全体で消費されるのはCO2と芳香族アミン、アルコールだけで、化学式上の副生成物は水だけで、この方法で
は、原料などに塩素を一切使用しないことが特長。このため、再使用可能なスズアルコキシド化合物を用い、プロセ
ス全体では、CO2、芳香族アミン、アルコールから、ポリウレタン原料の元となる芳香族ウレタンを、効率的に合成で
きるので、環境調和性、経済性に優れた反応プロセスで、ポリウレタン製造プロセスの革新につながる可能性がある。



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