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量子スケール工学(4)

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【オールソーラーシステム完結論 20】 

● 量子スケール工学(4)

国内大手の家電・ソーラーパネルメーカー(シリコン系)は今年に入り、軒並み、次世代ソーラーの変換効率
目標を25%超へ照準を合わせた。中でも、量子ドット(量子スケール)シリコン結晶系ソーラーパネルの開
発研究(量子ドット型太陽電池)は、理論的には変換効率を60%以上にまで高められ、実用化に向けた期待が高まっ
ている。周知のごとく、量子ドットの直径を変えることで、吸収する光の波長を制御する量子サイズ効果を利
用し、紫外光から近赤外光にわたって幅広い光を電力に変換することでエネルギー変換効率を高めることがで
きる高効率の量子ドット型太陽電池は、サイズの異なる量子ドットで、多層量子ドットアレイ構造作製するこ
とにより実現可能である。下図10は、理想的な量子ドット型太陽電池の概念的断面図で、シリコン基板81
上に母材となるSiO2膜82中にサイズの異なるSi量子ドット84が順に整列している(富士通株式会社)。




また、上図11・12は、量子ドットサイズとバンドギャップの関係の説明図であり、Siの最高占有分子軌
道と最低非占有分子軌道は、分子、クラスター、ナノ粒子、バルクと原子の数が増加するにしたがって順次分
離する特性をもつ。右端に示すように、バルクになると各軌道が連続し、LUMO(最低非占有分子軌道)は
伝導帯となり、HOMO(最高占有分子軌道)は価電子帯となるので、集合する原子数を少なくすればバンド
ギャップが大きくなる。実際に、QDIP(Quantum Dot Infrared Photodetector:量子ドット型赤外線検知素子
において、量子ドットのサイズが小さくなると吸収波長が短波長側にずれることが確認されている。図12は
従来の量子ドット型太陽電池の製造工程の説明図であり、まず,図12(a)に示すようにシリコン基板81
上に、SiO2膜82とSiOx(x<2)膜83を交互に積層する。次いで、図12(b)に示すように、
熱処理を行うことでSiリッチなSiOx膜83中でSi量子ドット84が析出して、量子ドットアレイ構造
が形成される。このようなSiOx膜83中でのSi量子ドット84の析出は、SiO2と比較してSiリッ
チなSiOxの構造が不安定であり、SiとSiO2に分離した方がより安定となるために起こる現象である。
なお、SiOx膜83はSi量子ドット84の析出によりほぼSiO2組成の酸化シリコン膜85となる。


しかし、従来の製造方法では作成される量子ドットのサイズや位置のバラツキが大きいため、デバイスを作成
した際に特性のバラツキを生じてしまうという問題があり、その事情を上図13を参照して説明する―図13
に示すように、従来の方法では、熱処理前に大きさの揃ったSiクラスターは存在しないので、熱処理による
SiOx層83中でのSi量子ドット84の形成は偶発的に起こるもので、形成されるSi量子ドット84の
サイズもバラツキが大きくなる。したがって、量子ドットアレイデバイスの製造方法において、形成されるSi
量子ドットのサイズや位置の制御が目的となる。

開示する一観点からは 基板上に化学量論比の組成SiAからなる第1の層を成長させる第1の成膜工程と、第
1の層上に化学量論比よりSiリッチな組成SiA1−x(x<1)からなり、内部に面内方向位で位置制御さ
れたSiクラスターを含む第2の層を成長させる第2の成膜工程とをSiクラスターが積層方向で互いに投影
的に重なるように交互に成長させて積層構造を形成する工程と、積層構造を熱処理することで、Siクラスタ
ーを成長核としてSi量子ドットを成長させる工程とをもつことを特徴とする量子ドットアレイデバイスの製
造方法で、この開示の量子ドットアレイデバイスの製造方法では、形成されるSi量子ドットのサイズや位置
を制御することが可能となり、量子ドットアレイデバイスの特性のバラツキを少なくすることができるという
新規考案である。

● 事例1

 

次に、上図2・3を参照し、実施例1の量子ドットアレイデバイスの製造工程が説明されている。図2(a)
に示すように、Si基板11上に、プラズマCVD法を用いて、厚さが2ナノメートルのSiO2層12を堆
積した後、引き続いて、厚さが4ナノメートルのSiリッチなSiOx層13を堆積。なお、x=1.00と
する。次いで、図2(b)に示すように、クラスターイオンビーム法を用いてSi原子数が100個のSiク
ラスター14をSiOx層13上に30ナノメートルのピッチで堆積させる。次いで、図2(c)に示すよう
に、厚さが4ナノメートルのSiリッチなSiOx層15を堆積する。次いで、図2(d)に示すように、厚
さが2ナノメートルのSiO2層12を堆積した後、引き続いて、厚さが4メートルのSiリッチなSiOx
層13を堆積している。

次いで、図3(e)に示すように、Siクラスター14の堆積、SiリッチなSiOx層15の堆積、SiO2
層12の堆積、及び、SiリッチなSiOx層13の堆積を交互に繰り返すことによって、積層構造16を形
成する。繰り返し数は6回とする。 次いで、図3(f)に示すように、1100℃で熱処理することによっ
て、Siクラスター14を成長核としてSi量子ドット17を析出させる。この時、SiOx層13及びSi
Ox層15は一体化してほぼSiO2組成の酸化シリコン層18となる。このように、本発明の実施例1にお
いては、クラスターイオンビーム法を用いてクラスターサイズの揃ったSiクラスターを位置制御して堆積さ
せているので、熱処理により析出するSi量子ドットの位置とサイズを精度良く制御することが可能になる。

● 事例2

次に、図4・5を参照して、本発明の実施例2の量子ドットアレイデバイスの製造工程を説明する。まず、図
4(a)に示すように、Si基板11上に、プラズマCVD法を用いて、厚さが2ナノメートルのSiO2層
12を堆積した後、引き続いて、厚さが10ナノメートルのSiリッチなSiOx層19を堆積する。なお、
x=1.00とする。次いで、図4(b)に示すように、クラスターイオンビーム法を用いてSi原子数が
1万個のSiクラスター20をSiOx層19中に30ナノメートルのピッチで打ち込む。次いで、図4(c)
に示すように、厚さが2ナノメートルのSiO2層12を堆積した後、引き続いて、厚さが9nmのSiリッ
チなSiOx層21を堆積する。

次いで、図5(d)に示すように、SiリッチなSiOx層21中にSi原子数が5000個のSiクラスタ
ー22を30ナノメートルのピッチで打ち込む。SiO2層12の堆積、SiリッチなSiOx層の堆積、Si
クラスターの打ち込みをSiOx層の厚さが順次薄くなり、SiクラスターのSi原子数が順次少なくなるよ
うに交互に繰り返すことによって、積層構造31を形成する。繰り返し数は6回とし、図における符号23,
25,27,29はSiリッチなSiOx層であり、符号24,26,28,30はSiクラスターである。

次いで、図5(e)に示すように、1100℃で熱処理することによって、Siクラスターを成長核としてSi
量子ドット32〜37を析出させる。この時、SiOx層19,21,23,25,27,29はほぼSiO2
組成の酸化シリコン層38〜43となる。このように、事例2では、クラスターイオンビーム法を用いてクラ
スターサイズの揃ったSiクラスターを位置制御して打ち込んでいるので、熱処理により析出するSi量子ド
ットの位置とサイズを精度良く制御することが可能になる。また、SiリッチなSiOx層の堆積工程を半分
にすることができる。また、Si量子ドットのサイズを積層方向に沿って順次小さくしているので、広い波長
範囲で感度を有する太陽電池を構成することが可能になる。

 
● 事例4

次に、下図8・9を参照して、本発明の実施例4の量子ドットアレイデバイスの製造工程を説明する。まず、
図8(a)に示すように、n型SiC基板61上に、MOCVD法を用いて厚さが2ナノメートルのSiC層
62を堆積した後、引き続いて、厚さが2nmのSiリッチなSiCx層63を堆積する。なお、x=0.5
とする。次いで、図8(b)に示すように、開口部65を有するレジストパターン64を設ける。次いで、図
8(c)に示すように、レジストパターン64をマスクとしてクラスターイオンビーム法を用いてSi原子数
が100個のSiクラスター66をSiCx層63中に30ナノメートルのピッチで打ち込む。図9(d)に
示すように、レジストパターン64を除去した後、SiC層62の堆積、SiリッチなSiCx層63の堆積
及び、Siクラスター66の打ち込みを交互に繰り返し、最後にp型SiC層67を成膜することによって、
積層構造68を形成する。繰り返し数は6回とする。



次いで、図9(e)に示すように、1200℃で熱処理することによって、Siクラスター66を成長核とし
てSi量子ドット69を析出させる。この時、SiCx層63はほぼSiC組成の炭化シリコン層70となる。
この時、Si量子ドット69のサイズはSiCx層63の厚さに規定されて2nm程度の粒径になるので、7
30ナノメートルの単色光に近い狭い波長帯で発光する赤色発光ダイオードとなる。このように、事例4では
母材を半導体で構成しているので、サイズの揃った量子ドットによる単色発光ダイオードを実現することがで
きるという。

 


以上、長々と掲載してしまった。この作業の間、疲れの睡魔に何度も、何度も襲われてしまい、作業を中断。
アルコールの力も借りなんとか記載できた。多忙を極めた彼女は彼女で、無理をせずコンビニで加工食品を買
って用をたせばいいのにと忠告したにも拘わらず、夕食仕度の途中、包丁で指先を切傷していた。こんなこと
も、ここ暫くは続くだろう。
 

 


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