少なきを殺さざるを義として而も衆(おお)きを殺すは類を知ると謂(い)うべからず。
墨子 『公輸』
※ おそるべき新兵器が発明された。これを使って戦争の準備がすすめられている。この噂を耳
にした墨子は、発明者のもとにかけつける。技術者であり思想家である墨子は、科学技術が
何に奉仕すべきということに無関心ではいられなかった。
公輸 - 墨子と戦争技術者
【中国の思想: 墨子Ⅴ】
公輸――墨子と戦争技術者
尚賢――人の能力を正当に評価せよ
兼愛――ひとを差別するな
非攻――非戦論
節葬――葬儀を簡略にせよ
非楽――音楽の害悪
非命――宿命論に反対する
非儒――儒家批判
親士――人材尊重
所染――何に染まるか
七患――君子の誤り七つ
耕柱――弟子たちとの対話
貴義――義を貴しとなす
公孟――儒者との対話
《解説》墨子の生涯や行動を示す記録は論敵によって抹殺され、今日ほとんど伝わっていない。この編は、墨
子の足跡と人間像を知る数少ない手掛かりのひとつである。墨子はたんなる観念的な平和論者ではなかった。
弱小国を侵略の危険から守るためには、身を挺して行動に立ち上がる”行動家”であった。公輸盤との問答、
楚王との問答を通して、墨子の真面目は遺憾なく発揮されている。この一編は墨子の人間像を浮彫りにすると
ともに、”科学技術の役割”という今日的な問題をなげかける。公輸盤も墨子も、ともに当時第一級の技術者、
しかも武器の設計に長じていた。二人のちがい――それは本編にみられるとおりである。
ちなみに、春秋時代には、戦争の規模はそれほど大きくはなかった。動員される兵力はせいぜい二、三万であ
った。戦車で整然たる密集隊形を組んで交戦し、一日、二日で勝負のケリがついた。ところが墨子の生きた戦
国時代になると、戦争の方式は一変した。動ほされる兵力は十万単位になり、秦と趙との間で戦われた長平の
戦いでは百万近い大軍が動員された。戦争規程を拡大させた要因のひとつとして、武器の発達をあげることが
できる。春秋時代の武闘は、戈、矛、剣、弓、矢などが主で、銅製品であったが、戦国時代にかけて冶金術が
発達し、これらの武器は鉄製のものに変り、破壊力がいちじるしく増大。新型兵器として、射ることのできる
弩機が発明されたほか、この編にもみられるように雲梯や、「鉛拒」といわれる舟戦の兵器が登場した。
密集隊形で戦う戦闘形式は、これら新兵器の登場で不利となり、歩兵を主力とする野戦・包囲戦が支配的とな
った。そのため戦争の性格も持久戦、長期戦の様相を呈するようになった。大量の兵員を必要とするようにな
ったため、各国は徴兵制度を布いて、兵力の増強にっとめた。泰代になって確立された「郡県」制度のねらい
は、ひとつにはこの徴兵義務をスムーズに行なうためであった。この徴兵制度の制定で多くの農民が戦争にか
りたてられた。こういう大規模な戦争は、ばく大な軍事上の支出をともなうから、当然、国家の財政負担を増大させる。
そして、その負担は、民衆にしわ寄せられた。春秋から戦国にかけて、大規模な農民暴動かいくつか超ぎているが、こ
れは農民に対する苛酷な政令を示すものてある。墨子の「非攻」論は、こういう背景のもとに生まれた。
【ナショナルトレッキング構想:パラグライダーの話】
もとは、パラグラーダーは欧州の登山家の下山用の道具として生まれた。彼らは登頂したの後、パラシュート
で一気に下山できればどんなに楽かと考えた。10年前、レッドブルが欧州のアルプスを八百キロメートル以
上をトレッキングとフライトの両方を楽しむスタイルが受け入れられていく。このために小型で超軽量のパラ
グライダーや装備が次々と開発され今日に至る。
ハラゲライダー競技の原点は、ハンググライグー同様、スピードを競うレースにある。あらかじめ設定された
ルートをいかに速くゴールするかを競う。かっては、チエックポイントをカメラで撮影して通過証明したが、
現在は、GPSを駆使してチエックボイントを通過し、そのデータをパソコンに取り込んで、ルート証明する
ハイテケのレースに変化している。競技は、草大会から国内のリーグ戦、日本選手権、アジア選手権や欧州選
手権、さらに、ワールドカッフーシリーズとチャレンジできる部隊は揃りている。また、レースの他に、高度
なワザを競うアクロバット競技、ミリ単位で着地精度を競うアキュラシー競技、トレッキング+フライトで競
うハイク&フライ競技もあり、好みに合わせてチャレンジできるので、バラグライターを始めたからには、ス
キルを上げコンベにも参戦してみよう。
また、冬を迎えると、スキーやスノボーと同じように、欧州では国際的なスピード・ライディングの競技大会
が開催されている。いかに、速く華麗に下山するか?競技中は、少しでも抵抗を減らすよう、地表に接地しな
いで、浮遊、あるいはフライトしてスヒードを競うというもの。ウインタースホーツの世界では、かつてのス
ノーボードのように、インハクトかおる新しいスボーツのが生まれた。スヒード・ライディンクは、下山する
ために開発される。とかく強い風が吹く山頂では、通常のハラグライグーては風にあおられ、フライトか難し
いか、小さな翼なら強い風の中でもフライトがスムーズに行く。なにより登山する際にコンパクトになるとい
うのが利点。パラグライダーほど揚力はないがないので高く遠くには飛べないが、スピーディにに滑走する競
技である。ここは熟っくりと計画的に習得していこう。
【ミッドナイトのレイモンド・カーヴァー】
散 歩
鉄道線路の上を散歩した。
線路に沿ってしばらく歩いて、
郊外の墓地のところで下におりだ。
そこでは一人の男が二人の女房に挟まれて
眠っていた。エミリー・ヴァソ・デア・ジー、
忠実なる妻にして母親、
ぱジョソ・ヴァソ・デア・ジーの右側に、
そして二人目のヴァソ・デア・ジー夫人である、
やはり忠実なる妻のメアリは
その左側にいる。
最初にエミリーが亡くなり、次にメアリ、
それから数年後に、そのじいさんも亡くなった。
これらの婚姻から11人の子供たちが生まれた。
彼らもまたみんな既に死んでしまったことだろう。
ここは静かな場所だ。散歩を一休みして
腰をおろし、近づいてくる自分の死に
備えるには恰好の場所だ。
でも僕にはわからない。ほんとうにわからない。
それが僕の人生であれ、誰の人生であれ、
僕がこの素晴らしい、苦労の多い人生について知っていることといえば、
僕はほどなく立ちあがり、
死んだ人々にすみかを提供しているこの驚くべき場所を
あとにするであろうということだけだ。この墓場を。
そして行ってしまう。まずレールの片側の上を歩き、
次にもう一方の上を歩いて。
A Walk
I took a walk on the railroad track.
Followed that for a while
and got off at the country graveyard
where a man sleeps between
two wives. Emily van der Zee,
Loving Wife and Mother,
is at John van der Zee's right.
Mary, the second Mrs. van der Zee
also a loving wife, to his left.
First Emily went, then Mary.
After a few years, the old fellow himself.
Eleven children came from these unions.
And they, too, would all have to be dead now.
This is a quiet place. As good a place as any
to break my walk, sit, and provide against
my own death, which comes on.
But I don't understand, and I don't understand.
All I know about this fine, sweaty life,
my own or anyone else's,
is that in a little while I'll rise up
and leave this astonishing place
that gives shelter to dead people. This graveyard.
And go. Walking first on one rail
and then the other.
明日は春分の日。法要の混雑を避け墓参り、キャッスルロードで鰊そば(彼女は八割り蕎麦、といなりをいた
だき「結和」で、ほうじ茶ラテを飲む。桜の蕾はまだ堅い。帰って作業をしていると気がつけば夕食どき。時
の流れが余りにも早すぎると感じる。急がないと間に合わない。「腰をおろし、近づいてくる自分の死に/備
えるには恰好の場所だ。」の件がベタにして、心象が凝縮する。