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冬の伊吹うどん我が家風

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             力ある者は疾(と)くもって人を助け、財ある者は勉めて
             もって人に分ち、道ある者は勧めてもって人に教う。      
                              
                                墨子 『尚賢』

                                                                                                                                                  

      ※ 単に"人材を尊べ"という徳目ではない。能力よりも縁故や情実がものをいう社会を、墨子
               は痛憤する。それは人々を無気力にし発展を阻止するものだ。能力あるものを正当に評価
               せよ、身分や感情で差別するな、と。ここにおいて、無差別を説く「兼愛」と、能力主義
               を説く「尚賢」とは表裏一体をなすのである。 


        尚賢 - 人の能力を正当に評価せよ 

【中国の思想: 墨子Ⅴ】
 
  公輸――墨子と戦争技術者
  尚賢――人の能力を正当に評価せよ
 兼愛――ひとを差別するな
  非攻――非戦論
 節葬――葬儀を簡略にせよ
 非楽――音楽の害悪
 非命――宿命論に反対する
 非儒――儒家批判
 親士――人材尊重
 所染――何に染まるか
 七患――君子の誤り七つ
 耕柱――弟子たちとの対話
 貴義――義を貴しとなす
 公孟――儒者との対話 

《解説》「尚賢」は字義どおりに解釈すれば、賢人をとうとぶことである。だが、かれのいわんとするとこ
ろは、しかく単純ではない。かれはいう。「官に常貴なく、民に終賤なし」(尚賢・上)――貴族がいつま
でも貴族であっていいはずはなく、人民がいつまでも卑賤であっていいはずもない。上のものが、いつまで
も上にいられると思うな。政治を、無能な貴族の手から解放せよ。当時、世襲的な貴族政治は、人々を窒息
させようとしていた。どんな才能があっても、低い身分に生まれた者に、門はかたく閉ざされていた。墨子
は、かれらの声を代弁した。したがって、「尚賢」は不平等と差別に対して平等無差別を主するものであり、
「兼愛」に通ずる。この停滞した社会の危機を救うものは「尚賢」であり、権力争奪の惨禍を救うものは「
兼愛」である、というのだ。なお、「尚賢」は上・中・下とあり、ほぼ同じ論旨だが、ここには最も整って
いる下編を訳出した。 

 

【ミッドナイトのレイモンド・カーヴァー】


   父さんの財布

   自分の死について考えるようになるずっと前から、

   死んだら両親のとなりに埋めてくれよと

   父さんは言っていた。両親の死んだことが父さんには

   とても辛かったのだ。

   父さんは何度も繰り返して言っていたから

   母さんも僕も

   そのことはよく覚えていた。しかし

   最後の息が肺を出て、命のしるしがまさに失せんとするとき

   父さんは自分がそこに収まりたいと切望していた場所から

   五百十二マイルも離れた町にいた。

   そういうのが僕の父さん。死んでからも

   落ち着きのない男。死んでからもまだもういっぺん

   旅行するつもりなんだものな。

   生まれついての放浪好きで、やれやれ

   この期に及んでまだどこかに行こうとしている。

   大丈夫です。おまかせ下さいと

   葬儀屋は言う。ほの暗い光が

   窓から射してほこりっぽい床に落ち

   僕らはそこでじっと待っていた。その午後。

   やがて男が裏手の部屋から出てきて

   ゴム手袋を手から剥がした。

   彼の体には防腐剤の臭いがついている。

   大きな方でしたなあ、と葬儀屋は言った。

   それから彼はこういう小さな町に住むっていいもんですよと

   僕らに話し始める。

   この男さっき父さんの血管を切開してきたばかりなのだ。

   どれくらいお金かかるんでしょう? と僕は訊ねる。

   男はメモ帳と鉛筆を取り出して

   書き始める。まずは処置費。

   次に遺体の移送費があって、これが

   1マイルにつき25二セント。

   私は往復せにゃならんから

   その料金。それに加えて食事が、ええと、6回

   モーテルに二泊。まだ計算はつづく。

   時間料金と手間賃が210ドル追加。

   しめてこれだけですな。

   彼は値切られることを覚悟していた。

   計算を終えて顔を上げると

   両方の頬にひとつずつ小さな

   赤みがさしていた。ほの暗い光が

   ほこりっぽい床の同じほの暗い場所に

   射していた。わかりましたというように

   母さんはうなずいた。でも母さんには相手の言うことなんて

   一言もわかっちゃいない。

   父さんと二人で家を出たときから

   何かどうなっているのか全然

   わかっちゃいないのだ。わかっているのは

   何はともあれお金がかかるらしいってことだけ。

   母さんはハンドバッグから父さんの財布を

   取り出す。その午後

   小さな部屋の中に僕らが三人。

   息づかいまで聞こえる。

   僕らはしばしその財布を見つめる。

   誰も何も言わない。

   その財布からは生命の温もりがすっかり消えうせていた。

   古くて、ほころびて、汚れていた。

   でもそれは父さんの財布だった。母さんはそれを開けて

   中をのぞき、金をひとつかみ取り出す。

   このとんでもない最後の旅行のために消えるさだめの

   その金を。


                                   My dad's wallet


    Long before he thought of his own death,
    my dad said he wanted to lie close
    to his parents. He missed them so
    after they went away.
    He said this enough that my mother remembered,
    and I remembered. But when the breath
    left his lungs and all signs of life
    had faded, he found himself in a town
    512 miles away from where he wanted most to be.

    My dad, though. He was restless
    even in death. Even in death
    he had this one last trip to take.
    All his life he liked to wander,
    and now he had one more place to get to.

    The undertaker said he'd arrange it,
    not to worry. Some poor light
    from the window fell on the dusty floor
    where we waited that afternoon
    until the man came out of the back room
    and peeled off his rubber gloves.
    He carried the smell of formaldehyde with him.
    He was a big man, this undertaker said.
    Then began to tell us why
    he liked living in his small town.
    This man who'd just opened my dad's veins.
    How much is it going to cost? I said.

    He took out his pad and pen and began
    to write. First, the preparation chares.
    Then he figured the transportation
    of the remains at 22 cents a mile.
    But this was a round-trip for the undertaker,
    don't forget. Plus, say, six meals
    and two nights in a motel. He figured
    some more. Add a surcharge of
    $210 for his time and trouble,
    and there you have it.

    He thought we might argue.
    There was a spot of color on
    each of his cheeks as he looked up
    from his figures. The same poor light
    fell in the same poor place on
    the dusty floor. My mother nodded
    as if she understood. But she
    hadn't understood a word of it.
    None of it had made any sense to her,
    beginning with the time she left home
    with my dad. She only knew
    that whatever was happening
    was going to take money.
    She reached into her purse and brought up
    my dad's wallet. The three of us
    in that little room that afternoon.
    Our breath coming and going.

    We stared at the wallet for a minute.
    Nobody said anything.
    All the life had gone out of that wallet.
    It was old and rent and soiled.
    But it was my dad's wallet. And she opened
    it and looked inside. Drew out
    a handful of money that would go
    toward this last, most astounding, trip.

 

 Hike & Fly Monte Cimone




【創作レシピ: 冬の伊吹うどん我が家風】

ご近所の方から頂いた大根が余っているというので、それじゃお昼は雪見うどんにしてはと逆提案する。と
ころで、ここで言う”雪見”は、大根おろしをさすが、山芋(長芋)、チーズ、玉子とじなどの白いものを
総称して世間ではそう言うらしいが、そのまま「大根のおろし」とか「大根おろし」とも呼んでいる。また、
うどんは乾麺も生麺があり、それをゆで、そのままだしに入れるか、夏場などは冷水や氷で冷やし、水切り
スープ(だし)なしで「ぶっかけ」のようにして頂いたりする二通りある。おろした大根を堅め(加減は好
みで)、だしあり、だしないのうどんに乗せる。この場合、大根おろし単品でトッピングするか、あるいは
なめこ、納豆、たまご、山芋などを合わせ和えたりした上で、さらに、七味、一味、花鰹、梅干し、醤油、
わさび、ショウガ、昆布茶、柑橘類の絞り汁などを振りかけるがそのバイオレーションは様々である。今日
の彼女のレシピは、うどん玉と市販の本だし顆粒でスープをつくり、ネギ、竹輪を具材として一味(唐辛子)
を振りかけたものをつくる。冬場は暖かいスープをすすり飲めば身体がホカホカになる。

ところで、おろした大根の水気をうどん鉢のうえでよく切って盛らないとスープに解け風味、食感を喪失し
てしまうと彼女は言う。それじゃ、うどんにスープを注ぎ入れたら、片栗(くず)粉を水で溶きショウなど
の具材を香り付けに加え加熱し、玉子綴じの様に餡にしてうどんに掛け、その上にたっぷりとおろし大根を
のせれば、餡が絡み冷めにくく、食感や風味が生かされより美味しくなるのではと提案する。メニューのネ
イミングは「冬の伊吹うどん我が家風」として、夏場は「ぶっかけ」として「夏の伊吹うどん我が家風」と
してはどうかと手応え感がやってきたという話である。 

 


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