母が生死を行き交う間、 御嶽山の噴火のニュースが持ち切りであったため、これほど多くの人が被
害に遭った火山災害が、1991年(平成3年)の雲仙普賢岳以来です。登山者が巻き込まれた噴火とし
ては、 明治以降悪の火山災害にもかかわらず、コメントできずにいた。多くの人が被害に遭った理
由は(1)突然の噴火だったから、(2)大勢の登山者が山頂付近にいたためだと解説されている
(NHK「時論公論」2014.09.30)。それによると、気象庁や専門家は噴火を予知できなかった理由
が、火山学上、噴火の規模が小さかったから――専門家や防災機関などで作る火山噴火予知連絡会は
「小規模な噴火だったがらと分析している。
噴火には3種類あります。一つは、マグマだまりの熱で地下水が熱せられて起きる「水蒸気噴火」。
今回は「水蒸気噴火」。一方、「マグマ噴火」は、マグマそのものが激しく噴き出し、溶岩流や高温
の火砕流も起こす。1991(平成3)年の長崎県の雲仙普賢岳、1985(昭和61)年の伊豆大島の噴火な
どのように、規模も大きく長期間続くことがある。もう一つは、この中間にあたる「マグマ水蒸気噴
火」。 噴火の予知に有効なのは、このマグマだまりや上がってくるマグマの動きを見極めることで
だが、マグマが上がると、火山性の地震が増えたり、山が少しだけ膨らんだりします。それに、マグ
マが岩盤の割れ目に入り込むと、火山性の微動が増える。ところが、今回は、山が膨らむなどの地殻
変動は観測できず、マグマがそれほど上昇しないまま起きる水蒸気噴火は、地殻変動や火山性微動が
起きないこともあり、兆候を確実にとらえられるほど研究も進まず予知は難しいとされる。
これに対し、直前まで地殻変動や火山性微動がなくても、もう一つの判断材料である火山性地震は1
か月前から起きていた。予知に生かせなかったのか?今月10日には52回、11日は85回観測。
ただ、その後は減って、噴火の前の日は6回、当日も直前の11時40分までは6回しか起きていな
い。しかも、火山性微動が始まったのは11時41分と、噴火のわずか11分前。 ただ、この11
日の85回というのは、前回噴火した7年前以来の多さ。気象庁や専門家は、地殻変動がなかったの
で噴火はすぐには起きないと判断――また、御嶽山はこの35年間に4回、水蒸気噴火が起きている
が、昭和54年10月に起きた中規模の噴火の際は、まだ観測態勢が整っていなかった。平成3年の
ごく小規模な噴火では、噴火の2週間以上前から増えていたほか、地殻変動も観測されていたという。
つまり、過去2回は、今回よりさらに規模が小さかったにもかかわらず、だいぶ前から、微動や地殻
変動といった兆候があった――したが、今回は地震はあったものの、地殻変動はなく、微動も直前で
あったため裏目にでたと解説しているが、現在ののように科学技術が進歩して日本で予測不可能だっ
たのかという問いに、結果論でしかないが、わたし(たち)はそれは半々だと考えている。つまり、
それは、取り組み姿勢次第というわけだ。
● 巨大カルデラ噴火のメカニズムとリスク
ところで、神戸大学の巽好幸教授と鈴木桂子准教授は、日本列島で過去12万年間に起こった火山噴火
の規模と発生頻度を統計的に解析し、以下の知見を公表(10月22日、文部科学記者会)している。そ
れによると次の3点に集約される(下図参照)。
噴火が起きることが判りった。巨大カルデラ噴火を引き起こすマグマ溜りは、自らの大きさに
起因する浮力によって亀裂が生じ、噴火にいたると考えられる。 巨大カルデラ噴火を起こす火山は、地殻の変形速度が小さい地域に位置することが判った。こ
のような場所では、粘り気の高いマグマが効果的に、次々と地殻内を上昇して、巨大なマグマ
溜りを形成すると考えられる。 日本列島で今後百年間に巨大カルデラ噴火が起こる確率は約1%。この確率は、兵庫県南部地
震 (阪神・淡路大震災) 発生前日における30年発生確率と同程度。すなわち、いつこのような
巨大噴火が起こっても不思議ではないと認識すべきもの。最悪の場合、巨大カルデラ噴火によ
り1億2千万人の生活不能者が発生すると予想される。
さらに、巨大地震は日本に甚大な被害を与えます。例えば、今後30年の発生確率が70%といわれる南
海トラフ巨大地震の死亡者数は30万人を超えるとも言われ、一方で巨大カルデラ噴火は、日本という
国を消滅させると言っても過言ではない。死亡者数に発生確率を乗じた災害の「危険度」を比較する
と、巨大カルデラ噴火が如何に重大な脅威であるかを理解できるとまで言っている。今後すべきこと
の1つは、厚さが約30キロメートルもある地殻の真ん中あたりに形成される厚さ数キロメートル以
下で薄く広がるマグマ溜りの状態を正確に捉える技術を確かなものにし、巨大カルデラ噴火の危険地
帯である九州島の地下のモニタリングを行うこと。また、過去の巨大カルデラ噴火の規模と発生年代
そして噴火の経緯に関するデータを精密化することも忘れてはならないと結んでいる。
因みに、7300年前に噴火した「鬼界アカホヤ噴火――完新世(約1万年前以降)における地球上
で最大の噴火」(上図参照)では、この噴火の総噴出量は堆積物量に換算して170 km3 を超える。幸
屋火砕流とアカホヤ火山灰は,南九州の縄文文化と自然環境に壊滅的なダメージを与えるとともに,
西日本から東日本にかけても降灰による甚大な影響を及ぼしたと言われている。最新の噴火からすで
に7300 年が経過していることから,日本列島全体でみれば次のカルデラ噴火は徐々に迫っていると
言えるであろう。また,鬼界カルデラを含め,個々の火山ではカルデラ噴火が必ずしも特定の周期で
発生しているわけではないようにも見える。ここでたとえばカルデラ噴火がランダムに発生しており,
ポアソン分布モデルに従う事象であるという仮定をした場合、今後百年でVEI 7 級の噴火が日本列島
でおこる確率は1% である。一方世界では,このクラスの噴火は最近2千年間で少なくとも4回発
生しており,今後百年での発生確率は18% である。VEI 7 のタンボラ噴火から2百年経つが、同規模
の噴火が近い将来おこる可能性は決して低くなく、もしVEI 7 の噴火がおこれば、その影響は全球規
模で何らかの異常現象として捉えられるはずであるというから、目が眩むんでしまうようかな情報である。
国土地理院は、日本全国各地に電子基準点(GPS受信機)を設置し、これら電子基準点を観測点と
して地殻変動を監視するGPS連続観測システム(GEONET:GPS Earth Observation Network System)
を構築し、このGPS連続観測システムによる観測データ(測位データ、変動データ)を公開してい
る。また、世界各地にも電子基準点を設置し、例えば大陸プレート、海洋プレートの地殻変動の観測
データなども公開されている。従来、このような観測データを用いて様々な研究機関で異常地殻変動
解析が実施されているが、多くの異常地殻変動解析では、電子基準点で観測された地球重心座標を平
面直角座標系等に変換した上で、ある電子基準点を固定点(観測基準点)に設定し、固定点に対する
他の観測点の相対変位を求めるとともに地殻の歪み速度、応力速度を算出して、地殻の変動を追跡す
る方法を用いるか、固定点に対する他の観測点の相対変位を求め、時系列変位グラフを作成し、安定
と想定される過去の期間の変位の空間微分(歪)と、観測したい年の同期間の変位の空間微分との比
較等から歪の変化を捉えて、地殻の変動を追跡する方法を用いている。
しかしながら、上記の異常地殻変動解析では、固定点と観測点の相対位置から変位を求めているため、
固定点の選び方によって変位場(歪場)が影響を受けることになり、解析時に用いる「安定と想定さ
れる変位場」の抽出を誤ると、解析精度の低下ひいては解析結果の信頼性の低下を招くことになる。
また、電子基準点で観測された地球重心座標を平面直角座標系に座標変換することによっても解析精
度が低下する。
この対策に、地球重心を固定点とし、この固定点に対する観測点のX,Y,Z直交座標(3次元直交
座標)を観測し、異常地殻変動解析を行う新規考案が提案されている、この手法によれば、常に安定
した地球重心を固定点にし、さらに、固定点から観測点のX,Y,Z座標を求めて座標変換を不要に
することで、解析精度、解析結果の信頼性を向上させることができるというのである(下図参照)。
しかし、歪を検出のための日々の安定変位場が定量的に取得できないため、あるいは、日々の地殻変
動追跡システムが構築されていない現状では、日本全国の日常的な歪場の変化を追跡できない。そし
て、これに伴い異常地殻変動解析の研究結果のほとんどは、地震が発生した後に歪が地震発生前から
どのように変化してきたかを求める過去予知作業に限定され、次の問題を抱えている。
(1)東日本大震災のような広域にわたる地殻変動である場合には、観測基準点自体も滑ってしまい、
相対的に見ている観測点の大きな滑りを検出できない。
(2)各電子基準点の安定変位トレンドや安定歪みトレンドを把握しないまま、日々(前日比として
)の変位・歪み変化のみを追跡しているため、異常を捉えることができない。
(3)地殻変動や地震予測研究を行う際には、東西南北高さ座標系(ENU座標)の利用が原則化さ
れており、例えば東北全域など、広範囲の地殻変動監視に対しては限界がある。
● 新規考案の要約と特徴
地球の重心を原点とする各観測点の3次元直交座標上の位置を観測し、各観測点の位置の変動量を3
次元直交座標の各成分毎に求める。複数年分の時系列的な各観測点の各成分毎の変動データから、異
常地殻変動が発生していない年の安定変動データを複数抽出し、地殻の可逆変動/非可逆変動のノイ
ズ成分を除去した複数の安定変動処理データに基づいて年変動歪周期の基準線11を設定する。新た
な変動データ12を基準線11と対比し、基準線11に対する新たな変動データ12の乖離によって
異常地殻変動が発生すると判定する。また、複数の安定変動処理データに対し、予め設定した期間の
移動平均値を求め、この移動平均値から年変動歪周期の基準線11を求めることで、解析精度、解析
結果の信頼性を向上させつつ、地殻変動を監視して異常地殻変動が発生する前の地殻変動を精度よく
監視する方法及び地殻変動監視システムを提供するものである。
この考案によれば、観測点変動観測工程では、常に安定している地球の重心Gを固定点(あるいは地
球の重心Gを通るX,Y,Zの直交座標上の任意の位置を固定点)として各観測点MのX,Y,Zの
軸毎の位置を観測し、複数の観測点Mが歪計として利用され、日々変化する各観測点Mの各成分毎の
変動量△L、ひいては歪が精度よく算出される。演算手段により精度よく算出された歪を縦軸に、時
間を横軸にした下図4に示すような時系列的な各観測点MのX,Y,Zの軸毎の変動データ10の作
成が行われ、次に、年変動歪周期の基準線設定工程を行っている。この年変動歪周期の基準線設定工
程では、年変動歪周期の基準線設定手段3により、複数年分の時系列的な各観測点MのX,Y,Zの
軸毎の変動データ10から、図4に示す、異常地殻変動が発生していない年の安定変動データ10a
を複数抽出する。さらに、これらの安定変動データ10aから地殻の可逆変動/非可逆変動のノイズ
成分を除去し、下図5に示すノイズ成分を除去処理した複数の安定変動処理データ10bを取得。図
4に示す各安定変動データ(X軸)10aはバラツキが認められるが、これら安定変動データ10a
からノイズ成分を除去すると、図5に示すバラツキが大幅に小さくなった安定変動処理データ10b
が得られる。ここで、例えば、地殻の可逆変動のノイズ成分は、(1)積雪(2)磁気嵐(3)豪雨
(4)気圧の谷などに伴う地殻の変動が挙げられ、地殻の非可逆変動のノイズ成分には、受信機交換、
ピラー(pillar:柱)傾斜、樹木の繁茂、噴火、地震、低周波微動などに伴う地殻の変動が挙げられる
という。
以上の清水建設株式会社の新規考案システムを適用すれば、近未来には地殻の非可逆変動のノイズ成
分から「火山活動による噴火予知データ」の取得可能かも知れないが、これ以外の変動検出データを
加える――例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素などの同位体濃度検出とか特定周波数の電磁波
強度検出――を加えることで予知精度が格段に上がるのではないかと思ったりしている。