現状のように「体制-反体制」の対立や左翼性が消滅した時代が続き、その都度の
「イエス・ノー」が時代を動かすことになるんじゃないでしょうか。
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012
Tribunal Rejects Beijing’s Claims in South China Sea July 12, 2016 The New York Times
【国際仲裁裁判:中国の南シナ海支配を認めず】
12日、南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判で、裁判所は中国が主張する南シナ
海のほぼ全域にわたる管轄権について、「中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はない」などと判断
し、中国の管轄権を全面的否定。中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張しているのに対し、フィリピ
ンは「国際法に違反している」などとして33前、仲裁裁判を申し立て、国際法に基づく判断を求めてい
た。
オランダのハーグで審理を行った仲裁裁判所は、この中で、裁判所は、南シナ海に中国が独自に設定した
「九段線」と呼ばれる境界線の内側に「主権」や「管轄権」、それに「歴史的権利」があると主張してい
ることについて、(1)中国が、この海域や資源に対して歴史的に排他的な支配をしてきたという証拠は
ないと指摘し、(2)九段線の内側の資源に対し中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はないと中国
側の主張を退け、(3)さらに、中国が最近行った大規模な埋め立てや人工島の造成は、仲裁手続き中に
紛争を悪化させたり、拡大させたりしないという義務に反すると判定し、南シナ海の問題を巡り、国際法
に基づく判断が初めてしまされた。仲裁裁判では原則として上訴することはできず、今回の判断が最終的
な結論となる。
中国政府は日本時間の12日夜、「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」で、中国人は南シナ海
で2000年以上の活動の歴史がある。中国は南シナ海の島々と周辺海域を最も早く発見して命名し、開
発していて、最も早く、持続的、平和的、かつ有効に主権と管轄権を行使し南シナ海の領土の主権と関連
する権益を確立したとし裁定を拒否。これに対し、フィリピンのペルフェクト・ヤサイ外相は、「この画期的な判
断が南シナ海を巡る問題の解決に向けて重要な役割を果たすと確信していると述べた上、現在、判断の詳細につ
いて検討をしているが、関係者には、抑制的に、かつ落ち着いて対応するよう呼びかけているし、判断を歓迎する
一方で、中国に対する配慮もにじませる。
また、台湾の総統府は、12日夜、声明を発表し、今回の裁判の過程で、台湾が実効支配する太平島が「島」では
ないとして排他的経済水域を認めない判断意見は求められなかったとして手続きに不満を示し、絶対に受け入れ
られず、法的な拘束力はない」として、強く反発する一方、平等な協議を基礎に、関係国と共同で南シナ海の平和
と安定を促進することを願うとして、対話を通じて平和的に問題を解決すべきだとの立場も示した。
この裁定に岸田外務大臣は、日本は、海洋を巡る紛争の解決には法の支配と力や威圧ではなく平和的な手
段を用いることの重要性を一貫して主張してきた。当事国は、今回の仲裁判断に従う必要があり、日本と
しては、当事国がこの判断に従うことで、今後、南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくこ
とを強く期待するとし裁定を歓迎した。
フィリピンと同様と中国と対立するベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官のコメントを発表。裁判所が
最終的な判断を示したことを歓迎する」と述べベトナム政府として国際法に基づく判断が示されたことを
評価した上で、地域の平和と安定のため、南シナ海の問題が武力や脅迫ではなく、外交プロセスや法律な
ど平和的な手段で解決されることを強く支持することを表明している。
さらに、シンガポールの外務省は、小さな都市国家であるシンガポールとしては、法に基づいて秩序が維
持され、すべての国の権利が守られることを求めるとして慎重な表現をしながらも中国を念頭に今回の判
断を尊重するよう求め田植えで。すべての関係国に対し、法と外交的な手続きを尊重し域内での緊張を高
める行動を控えるよう求めると述べ、各国に、挑発的な行動を取らないよう呼びかけた。
一方、韓国は、公式の見解は発表せず静観。韓国としてはこれ以上、中国との関係が冷え込むことを避け
たい考えで、裁判所の判断にどのような立場を示すのか難しい判断を迫られている。
米政府は12日、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものと見なすべきであり、緊張を高
める理由にしてはならないとの見解を示す。アーネスト米大統領報道官は、判断を挑発行為に関与する機
会として用いないよう、すべての当事者に求めると呼びかけ、またこれに先立ち、国務省のカービー報道
官は、南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するものとした上で、「米国はす
べての当事者がそれぞれの責務を順守するよう希望すると述べている。
アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」の電子版は、今回の裁判は国際的な影響力を強める中国に
とって重要な岐路になる。周辺の国々は、中国との交渉のしかたについてモデルが示されるだろうと期待
していた。裁判所は中国の南シナ海での活動を非難する決断を下した。インドネシアなどの国々は、この
判断が中国の主張に疑問を投げかけ、自国の経済水域の保護につながることを望んでいると伝えた。
また、イギリスの公共放送BBCはオランダのハーグ、フィリピンのマニラ、それに中国の北京からそれ
ぞれ記者が中継を行い、関心の高さをうかがわせ、このうち、マニラの記者はフィリピンのヤサイ外相の
記者会見について、フィリピン政府の反応は控えめなものだった。ドゥテルテ大統領は裁判所の判断に対
する控えめな反応の見返りに、中国から投資の約束を取り付けようとしているという見方も出ていること
を指摘している。(NHK NEWS WEB 2016.07.15 18:16 など参考)
以上、関係国の報道を俯瞰してみた。国際法を無視した国家行動により、中国政府は窮地に追い込まれ、
どのような反撃に出るのか要注視(主要注意:Zhǔyào zhùyì)。
Beijing rejects tribunal's ruling in South China Sea case | World news | The Guardian July 12, 2016
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【参考:南シナ海仲裁判断、なぜ重要か】 ロイター 2016.07.12 (抜粋)
2013年、フィリピンは、中国が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反し、同条約で認められた200カイリの排他的
経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う自国の権利が制限されているとして、仲裁裁判所に提訴した。
中国は、フィリピンの提訴によって審理を進められることに対して繰り返し警告し、聴聞会への参加も拒否してきた。
裁判官を任命する権利も無視している。仲裁裁判所には権限がなく、南シナ海における中国の歴史的権利と主権
は、UNCLOSが定められるより以前から存在していると同国は主張。
UNCLOSは主権に関する問題は扱わないが、海上における行動のみならず、さまざまな地理的特徴から国が主
張できることを規定している。同条約は島嶼(しょ)や岩礁から12カイリを領海とし、ヒトが持続して居住可能な島か
ら200カイリをEEZと定めている。EEZは主権のある領海ではないが、同水域内において漁業や、石油、ガスなど
の海底資源を採取する権利は与えられる。
中国とフィリピンを含む167カ国がUNCLOSに署名している。米国はそのなかに含まれていないが、南シナ海に
おける海上パトロールなどにおいて、同条約を国際的な慣例法として認識している。
※ 国連海洋法条約 Wikipedia
※ 大洋に面した主な国連海洋法条約の非締結国としてアメリカ合衆国、トルコ、ペルー、ベネズエラが
ある。
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【帝國のロングマーチ 16】
● 折々の読書 『China 2049』36
秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」
ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
【目次】
序 章 希望的観測
第1章 中国の夢
第2章 争う国々
第3章 アプローチしたのは中国
第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
第5章 アメリカという巨大な悪魔
第6章 中国のメッセージポリス
第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
第8章 資本主義者の欺瞞
第9章 2049年の中国の世界秩序
第10章 威嚇射撃
第11章 戦国としてのアメリカ
謝 辞
解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか
森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)
第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)
難知如陰、動如雷震
――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如し
『孫子』軍争篇
わたしが人民解放軍の資料や文書で見つけた、もう一つの重要な誤解は、中国が勢と時流を自国
に有利な方向に傾けるために、「打撃増勢一を実行しようとしていることだ。「打撃増勢」という
言葉はしばしば中国軍の教科書に登場し、軍内部で議論されているが、「力強く叩き、勢を高めよ」
という意味である。近年の歴史で中国が武力を行使したのは、領土を広げるためではなく、むしろ
政治的な理由から、すなわち、心理的ショックを与える、危機的状況をひっくり返す、あるいは既
成事実を作り上げるためだった(注40),1950年の朝鮮戦争への介入(注41)、インド(19
62年)、ソビエト連邦(1969年)、ベトナム(1979年)への驚くべき攻撃に見られるよ
うに、中国の指導者は、軍事衝突では先制攻撃が結果を左右し、それによってより幅広い政治的討
論(領土紛争など)の土台を築くことができると信じている。特に1950年というアメリカの軍
事力がはるかに勝っていた(核を独占し、鴨緑江を越えて北へ進軍可能な10万の部隊、射程距離
に迫る航空母艦を持っていた)時代に、朝鮮戦争に介入し、英米を敵に回したことは正気の沙汰で
はなかった。1950年当時の、中国の指導者の計算は、軍事バランスの正当な評価に基づくもの
ではなかったのだ。そして現在、米中間で軍嘔衝突が起きるとしたら、最も可能性が高いのは、中
国の指導者の誤解と、「打撃増勢」をしても大規模な戦争に拡大することはないという計算による
ものだろう。
Thomas C. Schelling
公に述べられることはめったにないが、中国を扱うアメリカの政策立案者と防衛専門家は揃って、
中国の指導者に深く根づく疑念は米中のどちらも望まない戦争をもたらす、と考えている。199
7年から2000年まで東アジア・太平洋問題担当の国務次官補代理を務めたスーザン・シャーク
は、「台頭する中国との避けがたい衝突は、非常に現実味を帯ぴてきている」と警告する。それは、
「発展し経済的に成功すればするほど、中国は不安と恐怖を募らせていく」からだ(注42)。台頭
する中国へのアメリカのアプローチの仕方によって、「その責任感を強化することもできるが、逆
に感情的な性質に火をつけることにもなる」と論じる(注43)。他の中国の専門家もこの見方を繰
り返している。CIA分析官として長い経験をもつロバート・シュティンガーは中国上層部の政治
的意思決定システムは「不透明で、風通しが悪く、信用できず、頑なに官僚的で、指導者の意向に
おもねる傾向があり、その戦略思考は教条的である」と見る(注44)。
「打撃増勢」を実行するために、人民解放軍は殺手蹟を必要としている。中国の官僚は軍部が殺手
胴を開発していることについて、アメリカ人に話すのをひどく嫌がる。わたしが高位の軍事戦略家
にそれについて尋ねたとき、彼は、そんな言葉が使われるはずがない、と言った。しかしわたしは、
3冊の軍の本と、中国の現代の軍事戦略家による20扁以上の論文に目を通し、その断片的な記述
をつなぎ合わせて、中国人が議諭し、すでに作っている殺手鐗の兵器の概要を描くことができた。
殺手鐗は、それが破壊する兵器よりはるかに安価である。そして可能なかぎり秘密裏に開発され
ている。戦時においては、敵が準備を整える前の、決定的瞬間に使用される。それが敵に与える影
響は、混乱、衝撃、恐れ、そして圧倒されたという感覚だ。2002年に国防総省が議会に提出し
た中国の軍事力に関する報告書にあるように、中国の戦略は「敵の軍事行動を指揮するハイテク能
力を混乱させることにより、敵の軍事行動をスタートから妨害し遅延させる作戦と、大いなる脅威
である敵のハイテク兵器の種類と場所を特定する作戦を含む」と強調する(注45)。
昔話に語られる殺手鐗は一つの武器だったが、現代の殺手鐗は、非対称兵器全体を指す。中国空
軍の上級大佐、ヤン・ジボは記す。「殺手鐗を作るには、中国はまず、開発プログラムを完成させ
なければならない。それは困難な組織的プロセスであり、開発する新兵器は一つや二つではない。
それはあらゆる軍務が利用するものだ。全軍で、あらゆる場所で使用される、陸、海、空混合シス
テムである( 注46)」
Civil-Military Change in China
中国の元首席、江沢民は、殺手綱の強力な推奨者で、中国がその計画に着手したのは、1990
年代の彼の指示によるものだった。1999年、江沢民は軍の指導者に、「国の主権と安全を守る
ために必要な殺手鐗を、可能な限り迅速に手に入れる必要がある」と語った(注47)。その年の後
半に、江は、中国は「主権と安全を守るために、できるだけ速く、いくつかの新しい殺手鐗に習熟
しなければならない」と繰り返したる」と語った(注48)。その年の後半に、江は、中国は「主権
と安全を守るために、できるだけ速く、いくつかの新しい殺手鐗に習熟しなければならない」と繰
り返した(注49)。また2002年には、「中国は大国として世界の覇者と戦うために、いくつか
の殺手鐗兵器を作るべきだ」と述べた(注49)。そして、同じ年、台湾との紛争の可能性について
論じる時に、「いくつかの殺手謂兵器を精力的に開発し、装備することが必要である」と言った
(注50)。その翌年、江は再び、「新しい殺手鐗は、われわれの国家の主権と安全を守るために必
要だ」と強調した(注51)。あるアメリカ人の専門家は、北京にこの任務を遂行するための公式な
オフィスがあると断言する。
となると、疑問が浮かび上がる。江沢民はだれに対抗して中国の主権を守る必要があると考えて
いたのだろうか。答えは、「世界の覇者と戦う」という言葉が示す通り、アメリカである。現代の
軍事状況では、殺手鐗の構想はすべて、アメリカの弱点を突いて、アメリカを無力にする方法を見
つけることに注がれている。中国の国防大学の外国軍事研究部門の長であるリ・ジユン少将が、ア
メリカの軍事的弱点を詳述した64名の軍の著者による論文をまとめた書籍を出版したのはそのた
めだ(注52)。その本の主題は、殺手鐗戦略をもってすればアメリカを敗ることができる、という
ものだった。
よく知られるアメリカの弱点の一つは、ハイテク情報システムに頼りすぎていることだ。そして
世界において中国ほど、アメリカの軍、経済、情報、インフラに関わるコンピューター・システム
の防御態勢と脆弱性の探究に熱心な国はない。米中経済・安全保障再検討委員会の委員を務めたラ
リー・ウオーツェルによれば、「中国政府がアメリカに対して大規模なサイバー諜報活動を指示し、
実行していることを示す強力な証拠があがっている(注53)」。中国は常に、そのような攻撃を否
定するが、人民解放軍には16のスパイ活動部門があり、「サイバー・ペネトレーション(コンピ
ューターの弱点の発見)、サイバー諜報活動、電子戦に専念している(注54)」。
12日、ワシントン・ポストは、オバマ政権が核兵器なき世界を目指す新たな核政策の検討に着手し、選
択肢の中に核兵器の先制不使用を宣言することも含まれていると報じたが、これは勇気ある行動である。
先回(「帝國のロングマーチ 15」)の反植民地主義(=ロシアマルクス主義遺制)の過度な軍事戦略
の特徴を見てきたが、今回は米国の過剰な軍事行動のミラー(写像)的側面から考えてみた。そこに、オ
バマ大統領の「核兵器の先制不使用構想」と国際仲裁裁判の「中国の南シナ海支配を認めず」の情報が入
ってくる。仮に、後者の主張が米国議会で承認されれば、押し進めれている中国の「開発独裁」と「軍事
的覇権」の2つの政策は国際的に窮地に立たたされる。それでも強引に「ロングマーチ」をつづけるだろ
うが、それは、ロシアと同様に、巨大なドラゴンの後進性を世界に露わにするだけなのだが、どうする?
この項つづく