● 植物で組織ごとに異なる体内時計が働く
植物は組織ごとに異なる生物時計が働いていることを京都大のチームが発見し、29日付の
英科学誌ネイチャー電子版に発表した。水や養分を運ぶ管が集まる「維管束」の時計機能
を阻害すると花が遅れて咲くことも判明。チームの京大の遠藤求助教(植物生理学)は「
遺伝子を組み換えずに、花の咲くタイミングを自由にコントロールできる成長調節剤の開
発につながる可能性がある」と話す。チームはシロイヌナズナの葉に光を当て、葉全体と
葉肉、維管束それぞれの時計遺伝子の働きを測定。その結果、時計遺伝子の働くリズムや
量が、葉全体や葉肉と、維管束の間で大きく異なったという("植物、組織ごとに異なる生
物時計 成長調節に応用も" 2014.10.30「東京新聞」)。この手の話は少し専門知識があ
り、ブログ(『亜鉛シグナルと概日時計―24時間リズムを生み出す 遺伝子発現調節機構
―』)でも掲載してきたので詳細は割愛するが(上図クリック)、今回の研究成果のポイ
ントは以下の3つだと報告している。
(1)植物ではこれまで困難――植物は動物の脳に当たる中枢機能がないため、組織ごと
の体内時計はこれまで解析事例がなく、細胞同士が固く接着しているため、時間の経
過とともに発現量が変化する時計遺伝子の測定は難しかったが、遠藤助教らは超音波
と酵素の処理を組み合わせてシロイヌナズナからの組織単離を30分以内に短縮――で
あった組織単位での「時計遺伝子」発現の定量解析に初めて成功。
(2)維管束の時計遺伝子の機能を阻害するだけで花の咲くタイミングを遅らせることが
できた。
(3)植物組織の体内時計機能は、植物の精密な生長調節法開発のターゲットとして期待
される。
具体的には、(1)組織単離時間を従来法の1/3以下に短縮、(2)時計遺伝子の発現
を非侵襲で測定できる「TSLA法」を世界で初めて開発、(3)維管束に存在する時計
遺伝子の性質が他の織と大きく異なり、隣接する葉肉組織の時計遺伝子の発現に影響して
いることを解明、(4)維管束の時計機能を阻害するだけで植物の花の咲くタイミングを
遅らせることに成功している。
● Tissue-specific luciferase assay(TSLA)法とは?
ルシフェラーゼ(LUC)を断片化したもの(nLUCとcLUC)を、それぞれJun遺伝子とFos遺伝子
の部分断片を改変したもの(c-Jun b-ZIPとA-Fos)と融合させる。その後、一方を目的の組
特異的プロモーター、もう一方を時計プロモーターで発現させる。たんぱく質に翻訳された両者は
JunとFosを介して特異的に結合し(Junたんぱく質とFosたんぱく質は結合することが知られて
いる)、断片化されていたルシフェラーゼが再構築される。2つの発現が重なる時間・空間のみで
ルシフェラーゼを再構成させることで、目的の組織で目的の時計遺伝子の発現が発光リズムとし
て検出できるというもの(下図参照)。
この方法で安全に「概日リズム」を制御できれば、『真菰筍解体新書』で記載している、
果実ではなく根元に出来る肥大した茎だけれど、マコモダケの収穫期をずらすことができ
れば、極端な話、通年安定して収穫できるかも知れない。これは大変面白い話となる。
● たまには熟っくりと本を読もう
高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く
ここで記載されている財務省の「歳出権拡大」は官僚機関のコア権力であり、国土交通
省などでの「許認可権拡大」と置き換えて良いものだ。資本があるいは欲望と置き換え
ても良いが、最後には目的そのものを転倒させて限なく自己増殖を続けるという特徴を
――植木等が歌い流行した「分かっちゃいるけで止められない」と喩えられそうなもの
もつ。例えば、景気動向が財務省や日銀、あるいは経産省、内閣府などから報告される
がこれなど、各省が調査の外部監査作業などを含めてたワークフローを政策行政のアル
ゴリズム――ノーベル賞受賞級の宇宙物理学者などシステムエンジニアリングをに依頼
し、 "官僚作文のデジタル化"に、政策システム工学変換し、民間の調査機関に依頼し、
内閣府などで一本化し定期的報告するようにすれば、二重行政や重複行政をなくせて、
随分とスリム化するのではないかと考えたりしてきたが、そのことはさておき、今夜も
昨夜に引き続き官邸内の体験を語ってもらおう。
■ 予算編成の数字に見る増税の虚妄
国の一般会計は、夏に各省庁からの概算要求があり、それを12月末までに財務省主
計局が削って予算の「政府原案」を作る。その政府原案は、翌年1月から国会で審議
され、3月末までに成立して予算となって、4月から予算執行される。
2014年度予算は、まず8月の概算要求段階で事実上、シーリング(概算要求基
準。財務省が省庁ごとに示す限度額の基準)がなく、青天井になっている。これは概
算要求としては異例のことである。青天井になったので、一般会計概算要求の総額は
99・3兆円にまで膨らんだ。
その後、財務省と各省との予算折衝を経て政府当初予算案が決まるのだが、両者に
は安定的な経験則がある。2001年度から2013年度まで、リーマンショックに
対応せざるを得なかった2009年度を除き、当初予算は概算要求を4%程度カット
した水準で決まっている(下図のグラフ①と②)。
2014年度の当初予算は95・9兆円だ。概算要求総額99・3兆円を4%カットする
と、《99・3×(100-4)÷100=95.328》で、みごとにこれまでの経験則どおりの
数字である。要するに、4月からの消費税増税が見えていたので、青天井で要求させ
ておき、その水準からお決まりの「4%カット」をしただけなのである。
これでやはり「増税は財政再建ではなく歳出権拡大のため」なのが分かるだろう。
さらにグラフから分かることがある。以前の自公政権と政権交代後の民主党政権(
2009年9月から2012年12月まで)では、歳出規模の水準で民主党政権のほう
が、リーマンショック、東日本大震災という特殊要因を除いても大きい。だが、ふた
たび自公政権になっても、同様の歳出規模を踏襲したということである。
なお、「4%のカット」は当初予算の見せかけのためでしかないことを付言してお
きたい。当初予算はしばしば補正予算で修正される。その場合の歳出総額は、リーマ
ンショックに対応せざるを得なかった2009年度と、東日本大震災(2011年3
月11日)で予算規模を膨らませざるを得なかった2011年度を除き、5%程度の
追加補正が組まれている。結果として、もともとの概算要求を1%程度上回る水準に
本予算が決まるのである(下図・グラフ③)。
■ 官僚は手段を選ばない
財務省はマスコミを龍絡して、"何とかのひとつ覚え"のように「財政再建のための
消費増税」をアナウンスする大キャンペーンを張った。龍絡の餌は「軽減税率」であ
る。特定品目の消費税率を標準税率よりも低く設定することだが、これを新聞に適用
し、「あなたのところは負けてあげるから」と唆した。
それに乗ってしまう新聞社もどうかと思うが、官僚のやり方はえげつない。
財務省もなかなかしぶとく、餌として軽減税率をちらつかせながら、最後までカー
ドを切らない。するとマスコミのほうは、餌にありつくまで、ずっと「財政再建のた
めの消費増税」を連呼することになる。
とにかく手段を選ばない。それが官僚の習性のひとつである。
そんな財務省の増税路線に"乗ってしまった"という点においては、8%への消費増
税を断行した安倍総理も同様であり、これはいかんともしがたい。
ただ消費増税の法案自体は、民主党政権時代に法案が通ってしまっている(201
2年8月改正「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための
消費税法等の一部を改正する等の法律」)。安倍氏自身、「法案が通っているから、
それをひっくり返すのはなかなか大変なんだ」という趣旨のことを言っていた。
ここで繰り返すが、財務省官僚の言う「財政再建」は表向きの建前であって、本音
は歳出権を増やしたいだけの話なのだ。歳出権を握った官僚がお金を配る。
増税をすれば、実勢経済の歳入とは関係なく、予算上の歳入が増える。予算上の歳
入が膨らむと、予算上の配分するお金の金額も膨らむ。その膨らんだ金額を各所に配
分したいから財務省は増税を言う。この単純なロジックを、日本国民は知っておくべ
きだ。
■ 過去2回の消費増税から2014年を予測する
「金融緩和しながら消費税を増税するということは、プラスとマイナスを一緒に行
なうようなもの」であると前述した。せっかく「第1の矢」効果でプラスの方向へ動
き出した日本経済なのに、増税がマイナス方向に効いてくる。私は4月の消費増税実
施前から、そう懸念していた。
黒田日銀総裁の就任1年後の時点で、日銀政策委員による「2014年度実質GD
P見通し」は、1・O%~1・5%(中央値1・4%)だった。実質GDPが下振れ
している状況下で、消費税増税に耐えうるのだろうかという懸念である。
消費税のマイナス効果を考えてみよう。今回を別にすると、消費税はこれまで19
89年4月(3%へ)、1997年4月(3%から5%へ)の2回、増税されている。
増税前後を比較すれば、どちらも成長率が低下していることが分かる。それはGD
Pの大きな構成要素である「消費」が低下するからである。
増税前後2年間の平均で見ると、実質GDPでは、1989年の増税前に6・2%
だったのが、増税後には5・3%に低下した。それから1997年の増税の前には
2・5%だったのが、増税後に▲(マイナス)O・8%へと、こちらも低下。低下幅
はそれぞれO・9%と3・3%である(上図のグラフ)。
1989年はバブル景気、1997年は「失われた20年」の中でのしばしの景気回
復だった。それぞれ消費税率の上げ幅は3%と2%である。今回の引き上げ幅は3%
であり、そのマイナス効果は1989年のときと同じである。
現在はまだ増税から4ヵ月で、データを取るには期間的に短い。そこで1989年
と1997年のそれぞれのショックと同じものに、今回も見舞われるという機械計算
をしてみよう。
2014年度の実質GDP成長率がどうなるかを見ると、実力は2%だが、駆け込
み需要の反動減で1・4%。1989年並みならO・5%、1997年並みなら▲1・
9%になる。
1989年と1997年とで、どちらが今と似ているかといえば、1997年のほ
うだろう。唯一の救いは、今のほうがまともな金融政策が行なわれていることだ。ま
ともな金融政策(第1の矢)のおかげで、1997年の再来ということは避けられる
と思う。しかし、かといって、1989年並みのマイナス効果ですむとも思えない。
というわけで、財政政策なしで消費税のマイナス効果だけを見ると、実質GDPは
▲O・1%程度まで落ち込むと頭の中では予測できる。実際の経済成長がどうなるか
といえば、これに補正予算などの財政政策で上乗せするのだが、2014年度の実質
GDPは、日銀見通しの下限である1・O%まで達しないだろう。なお、この数字は
2014年度について、対前年同期比で見たときの平均であることをお断わりしてお
く。
高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』
この項つづく
● たのんます メッセンジャー