Wild Rice Salad with Asparagus and Baby Corn
■ 続・真菰筍解体新書
● マコモは捨てるところがない
最近、耕作放棄地だった田んぼを再利用してマコモを栽培する農家が、全国的に増えてい
る。その理由として、耕作放棄された田んぼを再利用する際に、米から転作する農作物と
して「手間がかからない、環境にやさしい、食べておいしい」作物であるという。 もう1
つマコモはイネ科の多年草だが、池や湖沼にも自生するが、雑草系マコモの茎は肥大化し
ないという特徴がある上に、葉はしめ縄やムシロを編むほか、畑のマルチング(地表を稲
わらやビニールシートなどで覆うことで温度調整、水の蒸発の抑制、害虫対策)にも使わ
れ、さらに、葉や根には殺菌効果があり、ネットに入れて風呂に沈めておくと水が腐らな
く、マコモが窒素やリンを吸収して水質悪化を防ぐ効果もあるし、実はワイルドライス(
穀物)として収穫されるという――(1)耕作放棄地や休耕田を利用して転作できる(2)
葉から根まで捨てるところがないエコ作物(3)水をきれいにする働きがある(4)稲作
と違って田んぼの水を抜かないので水棲生物が増える(5)無農薬で栽培できる(6)栽
培に手間がかからない(7)おいしくて、さまざまな料理に使える7つの特徴をもつとい
う(2012.03.31「愛が地球を救うように、マコモが耕作放棄地を救う」)。
● 耕作放棄地の転作に向いている理由
最初に田起こしをしたり、畔を作ったりする手間はかかる。ただし、マコモダケの場合は
株間をたっぷりとるから苗の数も少なく、植えるのはが簡単。田んぼ内の草とりは、収穫
までに2回ほど。
● 栽培の課題
9~10月の収穫期には、何百本というマコモダケが一斉に食べごろを迎え、それを集中的
に穫るため、それをうまく長期保存する工夫がいる。黒いゴマ粒みたいな黒穂菌は、時間
が経つにつれて増え、見た目が悪くなり、味には全然関係ないが商品価値が逓減する。
電磁波冷凍の試験、研究が行われた。電磁波冷凍とは、冷風と電磁波を利用して食材の内
外を瞬時に凍らせる方法。これによって、解凍時に出てしまっていた水分とうま味成分を
保つことができる。この方法で試作された冷凍食品「CAS冷凍マコモタケ」が商品化され
れば、いつでも新鮮そのもののマコモタケが食べられるようになる(「マコモタケ商品開
発モデル事業」 瑞浪商工会議所 - 20年度本体事業 : 特産品 : 岐阜県 | feel NIPPON)。
マコモダケは乾燥しないようにナイロンなどの袋にいれ冷蔵庫で保管。通常野菜は生えて
いる状態で、根元を下にして立てて保存するほうが良い、マコモダケの場合は逆に根側を
上にしたほうが鮮度を保ちやすい。また、マコモダケは生のまま冷凍すると、解凍したと
きにふかふかの状態になってしまい、冷凍保存するときは、あらかじめ用途に応じて切り
分け、スライスやスティック上にしたものをさっと固めでし、バットなどに薄く広げて凍
らせる。凍ったものを保存袋などに移して冷凍する。用途は炒め物や汁物、煮物に使い、
調理は凍ったまま投入する。
●マコモダケに関する新規考案(参考)
・特開2014-185144 化粧料及び角化細胞賦活剤 御木本製薬株式会社
・特開2011-211957 幹細胞の未分化維持剤及び増殖促進剤 日本メナード化粧品株式会社
・特開2011-093880 抗炎症組成物ならびにそれを含有する皮膚外用剤、化粧料および健康
食品 株式会社ゲオ
・特開2010-158192 糖型バイオサーファクタント生産能を有する微生物及びそれを用いる
糖型バイオサーファクタントの製造方法 三和酒類株式会社 他
・特開2009-280472 有機物系植物栽培用素材の製造方法。 林 芳信
以上のように、マコモダケについて考察してきたが、まだまだ未知な分野も残されている
のだが。独自に調査を進めるには時間がない。このため、中途半端であるが一旦この項を
了としたい。
● たまには熟っくりと本を読もう
高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く
この項では、リーマンショック前後の小泉政権からの著者の経験が多く語られており、
へぇ~、そんなことがあったのだと、自分の似たような経験を記憶から探し出し重ね合
わせみたりするが(例えば、協力企業への資材コスト削減要求を「やり過ぎてはいけな
い――実際はやり過ぎてしまったことを間接的に忠告され、経済活動には"匙加減"が必
要なのだと悔やんだことなど)――財政再建のために必要なのは、増税ではなく「名目
経済成長」なのである。このことは、過去のデータから一目瞭然だ――との核心にすべ
てが集約されるのだが、それがまた、財務省の「不都合な真実」を炙り出すことに繋が
ることになる。
第1章「3本の矢」は、そろわない
■ 官僚主導を覆した日銀総裁人事
私が「第1の矢」を評価するのは、経済データ上の効果からだけではない。「霞が
関を敵に回した男」(私のこと)としては、政治家と官僚組織の関係という側面から
も「第1の矢はよかった」と断言する。それは安倍総理の日銀総裁人事である。
ご承知のとおり、日銀の正副総裁と6人の審議委員は、衆参両院の議決を経て内閣
が任命する(国会同意人事)のだが、こと総裁人事に関しては、歴代総理は必ず日銀
官僚(日本銀行も官僚の集団である)の意見を取り入れてきたという歴史がある。と
ころが安倍総理は黒田氏を起用するにあたって、日銀官僚の意見をまったく聞かなか
った。総理として初めてのことだった。
私が知るところでは、安倍氏は自民党総裁選(2012年9月)のころから「大胆
な金融政策が必要であり、そのために適した日銀総裁を任命しなければならないと
いうことを承知していた。その安倍氏が政治的に勝利を収めたので、黒田氏の人事と、
かつてない金融政策が実現したわけである。
これがもしも、安倍氏ではない総理が日銀官僚の意向を受け、総裁人事と金融政策
を"日銀任せ"にしていたら、どうなったか。結果は言わずともお分かりだろう。
前著『官愚の国』で指摘したように、日本の官僚は「無謀性の神話」に胡坐をかい
て、とにかく自らの間違いを認めない。そのうえ「今までやってきたことは絶対的に
正しい」という前例踏襲主義の人たちだから、変わることができない。つまり政策を
官僚に任せている限り、「私たちのやっていることは正しい」と言いつづけるため、
アベノミクス「第1の矢」のような政策は出現しない。
本来なら政治家が官僚に対して「まあ、そんなことを言わないで。前例にないこと
でも、俺の責任で変えてあげるよ」と言わなければいけない。それが政治主導でもあ
るのだが、この国では政治主導ができず、政治家が官僚の前に屈するのが当たり前だ
った。
この官僚主導の構図を、安倍総理は日銀総裁人事をきっかけに、上手にひっくり返
した。「第1の矢」を私が評価する所以である。
■「第1の矢」の首を絞めかねない「第2の矢」
では「第2の矢」である財政政策のほうはどうか。財政政策とは国が歳入・歳出を
通じて行なう経済政策のことだが、平たく言えば、金融緩和をきちんと実行していれ
ば財政政策も効いてくる。だからきちんと予算を組み、粛々と行なえばよい。
アベノミクスの1年目は、前述した金融政策の効果もあり、経済政策(金融と財政)
総体としてはよかった。ところが、2年目(2014年度)は消費増税というまった
く逆効果の政策に手をつけてしまった。「金融緩和をすれば財政政策が効く」と書い
たが、消費増税をすると、マイナスという意味で""効いて"くるのだ。
効果にはプラスもあればマイナスもある。金融緩和しながら消費税を増税するとい
うことは、プラスとマイナスを一緒に行なうようなもので、愚策である。
なぜ、こんなことになってしまったのか。消費増税の本丸、財務省は錦の御旗のご
とく「財政再建のための消費増税」と言っている。しかし、それは論弁である。
旧大蔵省時代から、財務省は歴史的に「財政再建」を立派な目標に掲げてきた。財
政再建自体はどの国も掲げているし、中には憲法の条文に盛り込むところまである。
ただし、財務省が言う「その手段としての増税」というのが論弁であり、はっきり言
って真っ赤な嘘なのだ。
時間を遡って見てみよう。政府が2014年度予算案を閣議決定したのは2013
年12月24日である。一般会計の総額は95兆8,823僚円で過去最大となった。当時のマ
スコミ報道は、予算案の概要を伝えつつも、すでに「財政再建のための消費増税」を
織り込んでいた。
私の経験則で内幕を明かすと、マスコミが年末の時期に報じる予算関連のニュース
は、ほとんどが「予定原稿」なのだ。テレビであれ新聞であれ、「経済部」の記者は
国家予算に関する知識をほとんど持ち合わせていない。国民からすればまことに不思
議なことだが、事実だから仕方がない。そうした記者たちに対して財務官僚が一度に
多くの予算内容をレクチャーしても、記者が消化不良を起こしてしまい、満足に記事
にできないのである。
それでどうするかと言えば、役所(財務省)があらかじめ記事にできそうなところ
を資料にまとめ、「記事原稿資料」として「解禁日時つき」で記者たちに渡しておく
のである。経済関係の記者は、その資料に基づいて記事を書き、解禁日を待って報道
する。要するに、年末の予算ネタは、"官製広報"の垂れ流しにすぎないのだ。
2013年末の新聞各紙を見てみるとよい。どのマスコミも、2014年度予算案
を《消費増税などによる家計の負担増に対して、それを軽減する対策》と位置づける
構成になっている。それに続けて、"役所寄り"と思われる有識者による《歳出の切り
込み不足》(財政再建は不透明)といった論評が載る。ステレオタイプの記事ばかり
であった。
そもそも、増税が財政再建に寄与するかどうかは、シンプルな命題である。すなわ
ち、
・景気がよければ、財政再建の効果はある。
・景気が悪ければ逆になる。
たったこれだけのことである。
もっと本当のことを言うと、景気のよいときには税収が上がっているのだから、増
税をする必要などない。以上の意味で、増税は財政再建にプラスの効果をもたらさな
い。普通に考えても分かるだろう。
それでも日本のマスコミは「消費増税は財政再建のため」という財務省の論弁を無
批判に受け入れ、さらには同調し、官製広報を流しつづけた。
私は著書やデジタルメディアのコラムなどを通じて何度も警鐘を鳴らしてきたが、
ここであらためて言おう。消費増税は財政再建のためではなく、ひとえに財務省とい
う官僚組織の権限拡大を目的としたものなのだ。財務省官僚が予算総額を膨らませ、
お金を自由に差配できるようにするための増税なのである。
お金を差配できる権限を「歳出権」と呼ぶ。「歳出」とは、家計で言えば「支出」
のことだ。すなわち「増税は財政再建ではなく歳出権拡大のため」なのである。こう
いう視点で見れば、増税による経済対策は歳出権拡大の実践であって、財政再建が遠
のいても当然の話となる。
■ 財政再建は「建前」なのか
私は1980年に財務省(当時は大蔵省)に入省した。同期23人のうち、唯一の理
系出身(数学科)という"異分子"で、官僚になったのも「大学の同級生が国家公務員
試験を受けるから、自分も受けてみようかな」程度の動機からである。まあ、まった
くの偶然で財務省に入ったようなものだ。
そんな私も予算編成に関わる仕事をする時期があった。あるとき、当時の幹部から
言われたことを思い出す。
「高橋くん、君は数字に強くてとても優秀だが、ひとつだけ分かっていない」
何のことかと首を傾げていると、その幹部は、
「(予算を)本気で削るな。相手が頭を下げに来る程度でいい。そこで予算をつけれ
ば感謝されるから」
それでは財政再建はどうするのですか? と私が聞いたところ、
「重要な建前だ」
と、かわされてしまった。
財務省の庁舎にいると、いろいろな記者がやって来るのが見て取れる。もちろん彼
らは遊びに来ているわけではなく、目的は取材(情報収集)である。ただし全員が
「増税は財政再建のため」という「建前」を信じ込んでいる人たちだ。おそらく、そ
の建前に疑問を感じる記者は、「財研」(財政研究会。財務省の記者クラブ)にはいら
れないのだろう。
前項で紹介した「解禁日時つきの原稿資料」は、財研に加盟する記者しか人手でき
ないことになっている。だから「増税は財政再建のため」という「踏み絵」を、多く
の記者は何の疑問もなく踏むし、万が一疑問に思ったとしても、記事を書くためには
踏まざるを得ない。
後述するが、財政再建のために必要なのは、増税ではなく「名目経済成長」なので
ある。このことは、過去のデータから一目瞭然だ。
■ 財務省にとっての「不都合な真実」とは?
私はかつての小泉純一郎政権時代、政権運営に関わっていたが、そのときの体験も
「財政再建のための増税」が真っ赤な嘘であることを示している。
小泉氏は政治家としての勘が非常に優れていた。そして「自分の任期中は消費増税
をしない」と言い切った。その一方で、官邸スタッフには「財政再建はよろしく」と
も伝えていた。この言葉を耳にして、財務省から官邸に出向していた官僚が憤慨して
いたことを覚えている。それは、増税なしでは財政再建などできないと思い込んでい
たからである。
私は元より、増税しないほうが財政再建は簡単にできると考えていた。
「増税する」と言い出せば、予算上の歳入(家計なら収入)が膨らむ。それは誰の目
にも明らかなので、各省庁の予算要求も膨らむ。すると、膨らんだ要求をなかなかカ
ットできなくなり、結局、財政再建が遠のくと思っていたからだ。
反対に「増税しない」と言えば、歳出要求は収まり、財務省は概算要求シーリング
(要求上限)を低く設定できる。となると歳出総額は抑えられる。当時は現在ほど大
胆ではないにしても、日銀が量的緩和策をとっていたため、円安になって経済成長が
でき、それで税収も上がる。その結果、財政再建は容易になる。
前者(増税する)と後者(増税しない)の違いは、単に「事前の予算上の歳入を増
やす」か「事後的な決算上の歳入を増やす」かの違いである。「増税」と「増収」の
どちらを目指すかと表現してもいい。私は、財政再建を目指すなら増税より増収だと
考えていただけである。と同時に、歳出権の拡大を目指すなら、増収ではなく増税に
なることも、財務省での経験から知っていた。
小泉政権では、小泉氏の「消費増税しない」発言が裏付けるように、本当の意味で
財政再建を目指していたと言えるだろう。この方針に対し、財務省は消極的だったの
で、やはり財務省の本音は歳出権拡大なのだと私は確信した次第である。
2001年4月に発足し、2006年9月までの5年半にわたった小泉政権だが、
増税なしの財政再建の成否はどうだったか。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス。税収など正味の歳入と、国債償還費と
利払いを除いた歳出の収支。家計で言えば借金。利払いを除いた収入と支出の釣り合
い)で見ると、その赤字幅は政権発足時の2002年度に28兆円もあったのが、20
07年度には6兆円にまで縮小した。リーマンショック(2008年9月)がなけれ
ば、日本は2008年度にも財政赤字を解消し、財政再建を達成することができたと
思う。
これは「歳出権拡大」を目論む財務省にとって「不都合な真実」となった。そのせ
いか、財務省は「小泉政権時代に、これだけの財政再建のパフォーマンスがあった」
とはマスコミにレク(レクチャー)しようとしない。したがって記事にもならなかっ
たのである。
高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』
この項つづく