畳薦 牟良自が礒の 離磯の 母を離れて 行くが悲しさ 刑部虫麻呂/万葉集
吾が聞きに 懸けてな言ひそ 刈り薦の 乱れて思ふ 君が直香ぞ 大伴像見/万葉集
■ 真菰筍解体新書
農協の「野菜館」で買ってきたいというマコモダケ(真菰筍)をごま油で炒めた金平風―
惣菜の一つで、繊切りにした材料を砂糖・醤油を用い甘辛く炒めたもの。材料としてはゴ
ボウ、レンコン、ニンジンなどの根菜類が一般的だが、厚めに剥いたダイコンの皮や、ヤ
ーコンなどで作っても美味しい。味付は味醂、醤油を基本とし、好みで鷹の爪、ゴマなど
を加える――の小鉢料理が余りにも美味しかったので、突拍子に「美味い」と声を出して
しまったほどだ。そのことを彼女に聞くと、最近よく売られているのでということだった
が、興味を惹いてしまった。
マコモ(Zizania latifolia、真菰)は、イネ科マコモ属の多年草で、別名ハナガツミと言い、
東アジアや東南アジアに分布、日本では全国に見られるという。水辺に群生し、沼や河川
湖などに生育。また食用にも利用される。成長すると大型になり、人の背くらい成長し、
花期は夏から秋で、雌花は黄緑色、雄花は紫色。葉脈は平行。マコモダケとして食用され
るほか、マコモダケから採取した黒穂菌の胞子をマコモズミと呼び、お歯黒、眉墨、漆器
の顔料などに用いられてきたというので、無知さ加減はさておき、大いに感心する ^^;。
最大の特徴は、黒穂菌(くろぼきん)の一種(Ustilago esculenta)に寄生されて肥大した新
芽がマコモダケ(真菰筍、茭白。マコモタケ)と呼ばれ食材にされていることで、古くは
万葉集に登場し中国、ベトナム、タイ、ラオス、カンボジアなどのアジア各国でも食用や
薬用とされている。食材としては、たけのこを優しくしたような適度の食感と、ほのかな
甘味、ヤングコーンのような香りがあり、くせがなく、さっと茹でたり、グリル焼き、炒
めものにも向いているほか、新鮮なものは生食してもおいしい。細かく刻んで餃子、ハン
バーグ、チャーハンなどに用いることもできる。収穫は秋で、新芽の根元が充分に肥大し
たらすぐに収穫し、収穫が遅れると組織内に真っ黒な胞子が混じるようになり、食感・食
味も落ちて商品価値は失われるという。
● マコモの育ちやすい環境
マコモには水質浄化の働きと多くの生物の生育環境をつくってくれるといわれる。対象に
は、霞ヶ浦や琵琶湖を始め、ラムサール条約に指定されている伊豆沼・内沼(宮城県)が
ある。マコモの柔らかい芽や茎の回りは餌場、産卵場所、そして隠れ場所として様々な水
棲生物に活用されてて、冬は白鳥などの水鳥が餌としてついばみにやってくるが、最近で
は、環境破壊が進んだことで、湖、沼や河川の生態系が徐々に崩れていき、河川や田んぼ
などの水路はコンクリートなどで覆われてしまう環境の増加で、マコモが減少していると
いう現状があるという。
● マコモダケの浄化作用
マコモは水を腐らせる湯垢や体から出る老廃物を、マコモの耐熱菌が分解して浄化するこ
とにより起こるといわれ、 例えば、マコモの葉やマコモの粉は漆のつや出しや、粽(ちま
き)、羊羹(ようかん)をマコモの葉で巻き、そしてマコモの根を粉末状にしてお風呂に
入れると、水が腐らないなどともいわれ、マコモはすぐれた体内浄化作用も持ち合わせて
いるので、アトピーや切り傷などに最適だともいわれている。
● マコモダケの効果
マコモダケには便通を促す食物繊維が含まれており、腸内環境をスムーズにして、美容の
大敵である便秘の解消に役立ち、食物繊維は腸内に溜まった不要なものを排出するだけで
なく、余分なコレステロールを体外へと運び出したり、糖質の吸収抑制作用など、生活習
慣病の予防にも働きかけたりと、様々な生理機能を持つ。マコモダケに含まれるカリウム
は、人間にとって欠かせない成分のひとつで、カリウムは、多くの酵素を活性化させる働
きを持ち、筋肉のエネルギー代謝や神経伝達、そして筋肉の収縮を間接的に補助する働き
があり、カリウムは肝臓における老廃物の排出を促し、むくみをとる働きがあるともいわ
れている。また利尿作用を持ち、体内の不要なものや余分な水分を排出する働きがあるた
め、デトックス効果が期待できとも言われている。これらの機能性のほかにも最近の研究に
より、マコモダケには神経細胞に働きかける作用のほか、骨粗しょう症予防効果も報告されている。
●マウス神経膠腫細胞を対象に、マコモダケの有効成分Makototindoline を投与したところ、マ
ウス神経膠腫の細胞増殖を抑制したことから、マコモダケは神経細胞調節作用を持つと
考えられている(上図)。
●マコモダケには、破骨細胞抑制作用を持つ機能性成分が含まれていることから、マコモダケは
骨の健康、更年期障害予防効果を持つことが期待されている(上図)。これ以外にマコモダ
ケは乳白色で柔らかく,タンパク質やビタミンB2を含む風味の良い野菜として中国料理で
利用され、豚肉や鶏肉とのいため物が美味しく、最近では日本でも特産品として栽培が始
まっているといわれる。
以上、掲載できる許容範囲を超えるボリュームのため、後日再度考察することになる。
● たまには熟っくりと本を読もう
高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』
さて、この刺激的な章のタイトルから読み進めていくのだが、「第1の矢」の金融政策に
関わる日銀の政策については著者と同じ立ち位置であり、このブログでも「日銀解体論」
として掲載してきたのでコメントなしで読み飛ばすことにする。
第1章 「三本矢」は、そろわない
■ 戦国大名の故事とアベノミクスの関係
アベノミクスの「3本の矢」を1本ずつ論じる前に、おさらいしておこう。
政治的イシューにしては珍しく、「3本の矢」という表現は多くの日本人に受け入
れられ、耳目に馴染んだ。これはやはり毛利元就の故事に負うところが大きいのでは
ないか。
毛利元就が死の間際、隆元、元春、隆景、3人の息子を枕元に呼び、「1本の矢は
すぐに折れる。しかし3本を束ねれば簡単に折れることがない。お前たち兄弟3人は
力を合わせ、毛利家を守れ」と言い残した。息子たちは父の教えを忠実に守ったとい
うものである。
ところが、この故事は史実とは異なるらしい。元就の没年は1571年(元亀2
年)だが、長男の隆元はその8年前に40歳で夭折している。したがって元我が3人の
息子を前に遺言を残すことはありえないのだ。
それでも、戦前の教科書に「三矢の教え」(毛利元就の三本の矢の教え)として掲
載されるほど日本人の記憶に刻まれたのは「父の遺訓」「子どもたちの結束」「家を
守る」などのモチーフが、国民性にマッチしたからだろう。ちなみに元就は還暦を過
ぎた1557年(弘治3年)『三子教訓状』という息子たちに宛てた書状を認め、兄
弟結束の大切さを説いている。
日本史のおさらいはここまでとして、アベノミクスのほうを今一度おさらいする。
こちらの「3本の矢」とは「まえがき」に記したように、①金融政策(大胆な金融政
策)、②財政政策(機動的な財政政策)、③成長戦略(民間投資を喚起する成長戦略)
である。
首相官邸のウェブサイトは、ご丁寧なことに図解入りで次のように謳っている。
(「どれだけ真面目に働いても暮らしがよくならない」という日本経済の課題を克服
するため、安倍政権は、「デフレ※からの脱却」と「富の拡大」を目指しています。
これらを実現する経済政策が、アベノミクス「3本の矢」です。
※物価が持続的に下落する状態のこと》
《すでに第1の矢と第2の矢は放たれ、アベノミクス効果もあって、株価、経済成長
率、企業業績、雇用等、多くの経済指標は、著しい改善を見せています。
また、アベノミクスの本丸となる「成長戦略」の施策が順次実行され、その効果も
表れつつあります。
企業の業績改善は、雇用の拡大や所得の上昇につながり、さらなる消費の増加をも
たらすことが期待されます。こうした「経済の好循環」を実現し、景気回復の実感を
全国津々浦々に届けます。》
(首相官邸HPから。振り仮名と傍点は引用者
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html)
個別に見てみると、以下のような平易な説明文が付されている。
《第1の矢 大胆な金融政策
金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭》
《第2の矢 機動的な財政政策
約10兆円規模の経済対策予算によって、政府が自ら率先して需要を創出》
《第3の矢 民間投資を喚起する成長戦略
規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ》
(同前)
首相官邸HPには、国民に期待を抱かせるような文言が満載である。「第1の矢」
でスーツ姿だった図解のサラリーマンが、「第3の矢」ではスーパーマン(もどき)
に変身しているのが笑える。
これら3本の矢は、毛利元就の故事よろしく、合体して強剱な経済効果を産み出
すのだろうか。「デフレ脱却」と「富の拡大」を実現するのか。サラリーマンのお兄
さんがスーパーマンになれるのか。それができるにこしたことはないのだが、私は不
可能だと断言する。
今のままの「3本の矢」は、そろわない。
3本を束ねても、1本の脆弱性ゆえに折れてしまうだろう。その脆弱な1本こそ、
本書の眼目である成長戦略なのである。
■「改訂版」の成長戦略
6月24日に閣議決定した成長戦略を、政府は(「日本再興戦略」改訂2014―未
来への挑戦―)と名づけた。「改訂」の2文字が入っているのは、1年前の2013
年6月に一度、「日本再興戦略」を閣議決定しているからである。
このときの臨時閣議では、経済財政諮問会議による「経済財政運営と改革の基本方
針」(骨太の方針)と、規制改革の細目である「規制改革実施計画」も併せて決定し
ている。
マスコミの中には、安倍総理の「経済の好循環を力強く回転させ、全国津々浦々に
届けるのがアベノミクスの使命だ。すべては成長戦略の実行にかかっている。成長戦
略に聖域もタブーもない」という談話を受け「日本再興戦略」「骨太の方針」「規制
改革実施計画」の3点を十把ひとからげにして「新成長戦略」と扱う向きもあった。
その捉え方は、総論としては誤りではないのでよしとしよう。いや、むしろ3点は
相互に関運しあうし、「新成長戦略」イコール「アベノミクス第3の矢」なのだか
ら、3点をひとまとめに見るのも分かりやすくていいだろう。
マスコミが伝える《新成長戦略の主な施策》は次のとおりだ
・法人税減税(実効税率を20%台に)
・雇用制度改革(労働時間規制の見直し、女性の就労支援、外国人の活用)
・医療制度改革(混合診療の拡大)
・農業改革(農業委員会や農協の改革、農産物の輸出促進)
・公的資金の運用見直し(GPIF=年金積立金管理運用独立行政法人の運用方針
改革)
・国家戦略特区(いわゆる「岩盤規制」の打破)
こうした施策のために、予算編成や制度設計、法整備が新たに検討されてゆく。私
がここで指摘しておきたいのは、制度設計も法整備(立法・法改正)も、その実務を
官僚たちが担うということである。官僚=霞が関の主導であるからこそ、「第3の矢」
が脆くならざるを得ないのだ。
官僚主導による成長戦略の欠陥については次章で詳しく検証するが、その脆弱性を
浮き彫りにする意味でも、まずは金融政策と財政政策、「2本の矢」を概観してゆき
たい。
■ 日銀の政策が変化した理由
2013年3月20目に第31代日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏は、翌月の日銀金
融政策決定会合で「量的にも質的にも、これまでとはまったく次元の違う金融緩和を
行なう」と明言し、マネタリーベース(資金供給量)を2年間で2倍に拡大する金融
政策を導入した。アベノミクスの中核「第1の矢」として、目本の金融政策は大きく
変わった。
すなわち2%のインフレ目標がしっかりと定められた。それまでの日銀はインフレ
目標を否定的に考え、結果として金融政策に失敗していたのだから、黒田総裁の蛍八
次元緩和〃はそれを一変させたという意味においても、日銀としては画期的なことで
あった。
これで日銀は、周回遅れながら、ようやく世界の中央銀行に並ぶことができたと言
える。このアベノミクス「第1の矢」=大胆な金融政策は、高く評価してよい。
「第1の矢」を放ち、日本の経済状況はどうなったか。一定の客観的データで裏づけ
るために、黒田総裁の就任からちょうど1年後の2014年3月末時点に立ち返り、
1年間の期限を区切って金融政策の実績を見てみよう。
まず日銀は、2013年4月の「経済・物価情勢の展望」(いわゆる「展望リポー
ト」。4月と10月の年2回、金融政策決定会合を経て日銀政策委員が発表する)で、
2013年度(2013年4月1日~2014年3月31日)の経済見通しとして、次
のように発表した。
・実質GDP 2・4%~3・O%(中央値2・9%)
・生鮮食料品を除く消費者物価指数 O・4%~O・8%(中央値O・7%)
どちらの数字も対前年度比の成長・上昇率を示している。
そこで実質GDPだが、2013年4月~6月期から10月~19‐月期までの3四
半期の平均は2・O%だった。このとき私は、2013年度の実質GDPは2・3%
程度だろうと予測したのだが、やはり2014年4月、2・3%という結果が出た(
内閣府「国民経済計算」)。つまり日銀が1年前に見通した数字には、やや達しなか
ったことになる。
一方、消費者物価指数については、2013年4月から2014年1月までの10
カ月の平均がO・7%で、日銀見通しの中央値と一致。さらに2013年度通年では
全国平均でO・8%となり、高めのほうの数字が確定した(総務省統計局が2014
年4月25日に公表)。
総じて言えるのは、実質GDPには下振れがあるが、物価は許容範囲内だろうとい
うことだ。前述のように日銀はインフレ目標を掲げている。だからそれに忠実に、し
かも形式的に目標達成だけを考えていればよい。そうした意味で、この1年間の日銀
の金融政策は及第点であろう。
ちょっと難しい話になるが、このことは物価連動債から見た予想インフレ率(BE
I/Break Even Inflatio rate ブレーク・イーブン・インフレ率)からも分かる。
2014年3月末時点のBEI(5年物)は2・4%程度。消費税増税の物価上昇寄
与分はO・6%~1・O%程度と推計されたので、これを引くとインフレ率は1・4
%~1・8%程度となる。やはり物価面では及第点にあることが窺えるのだ。
■ インフレの予感と実質金利
「まえがき」でも指摘したように、マクロ経済政策である金融政策と財政政策は抽象
度が高く、一般には難解な代物である。金融政策が効くかどうか、あるいは効いてい
るのか、実際のところよく分からない。
ひとつ言えるのは、日銀が金融政策で「資金供給量を増やす」(マネタリーベース
を2倍にする)とアナウンスすれば、予感として誰でも「インフレになりそうだな」
と思いはじめるということだ。インフレ=金利上昇を予感する。ただしひと口に「金
利」と言っても、金利には「名目金利」と「実質金利」があることを理解しておかな
ければならない。
名目金利とは、預金金利や債券の表面利率などのことだ。この名目金利から予想イ
ンフレ率を引いたものが実質金利である。
金融緩和のアナウンスに接し、「インフレになりそうだな」と思っても、このとき
はまだ名目金利は上がらない。実はそれに対して、実質金利は下がるのである。実質
金利が下がれば、経済理論から、為替が安くなるとともに「消費」と「投資」と「輸
出等(投資収益)」が増えるということが証明されている。その消費・投資・輸出等
の増加へ至る過程で、株価も高くなる。
すなわち実質金利が下がると、副産物として株高・円安が見られるのだ。事実、ア
ベノミクス「第1の矢」で日経平均は上昇し、外国為替相場は円安に振れた。また金
融緩和を実行すると、少し時間はかかるものの、結果的にGDPは上がり、インフレ
で失業率は下がる。
こうした意味でも「第1の矢」は、政策的にミスはなく、たしかな効果があったと
言えるのだ。
高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』
この項つづく