未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん / 論語
※ 季路問事鬼神、子曰、未能事人、焉能事鬼、
曰敢問死、曰未知生、焉知死。
いまだ人に仕えることもできないのに、
どうしてよく神や先祖の霊に仕えることができようか。
孔子 B.C. Sep. 28, 552 - Mar. 9, 479
【錬金術立国への夢:水素大量製造型酸化物ナノ複合化陽極材料】
時代は確実に、不確定な、憂鬱な、動乱色に染まりつつある。それを横目に寡黙に問題解決の任務をこなす
アドホックな技術集団がいるとすれば、それは現代の墨子であろう。さて、
9日、産業技術総合研究所の島田寛之らの研究グループは、水素社会の実現に向け、水を電気分解(電解)
て水素を合成する技術の1つである固体酸化物形電解セル(SOEC)による水電解で、水素製造に必要なエネ
ルギーを従来の水電解技術より20~30%削減でき、白金などの貴金属電極が不要な、セル面積あたりの
水素製造量(合成速度)が多い酸化物ナノ複合化陽極材料の開発の成功を公表。
それによると、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)とサマリウム添加セリア(SDC)の
一次粒子をナノレベルで均質化させたナノ複合構造の二次粒子を設計し、噴霧熱分解法――球状で
粒子径が揃った微粒子が合成可能2相以上からなる複合微粒子を単一プロセス――で合成する二次
粒子である酸化物ナノ複合粒子内には電子とイオンそれぞれの伝導経路が構成、広い反応場と高い
電気伝導性を示す。この材料を用いてSOECで高温水蒸気電解を行い、電解電流密度は2.3 A/cm2
(450 ℃、電解電圧1.3 V)であった。また、セル面積あたりの電解水素の合成速度も、高分
子形の水電解での合成速度の2倍以上を達成し、電解セルのコンパクト化を可能とする。
【成果】
水電解による水素製造技術としては、固体高分子形やアルカリ形があるが、作動温度が低く電解電圧が高い
ためエネルギー変換効率に限界がある。一方、SOECを用いた高温での水蒸気電解は、電解電圧が低くシス
テム内で無駄なく熱を利用できるため、高効率でエネルギーキャリアを製造できる次世代の水電解技術とし
て期待されているが、電解電流密度が低いためセル面積あたりのエネルギーキャリア合成量が十分ではなか
った。
SOECの陽極は、電気伝導率が高く電極抵抗が小さいほど、高い電流密度が得られる。現在、SOEC陽極材料
として一般的に使用されている電子伝導性のペロブスカイト型構造材料La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)では、
イオン伝導性材料のガドリウム添加セリア(酸化セリウム):GDC)と複合化して、電極内に電子とイオンそ
れぞれの伝導経路を形成すると同時に、反応する点を増やすことにより、電極抵抗を低減させている。
これによると、SOEC の電解電流密度を飛躍的に増加させる高性能陽極として、高電子伝導性のペロブスカ
イト型構造材料SSCと高イオン伝導性材料のSDC をナノメートルレベルの一次粒子とし、両者が均質な三次
元ネットワークを構成する酸化物ナノ複合構造の二次粒子を設計。噴霧熱分解法により、このナノ複合化構
造二次粒子を合成、この粒子からなる陽極材料を作製。
今回用いたSSCは、LSCFよりも高い電子伝導性を示す材料であり、また わずかながらイオン伝導性も併せ
持つ。しかし、このSSC自体がもつイオン伝導性のために、SDCやGDC等の高イオン伝導性材料と複合化し
ても陽極性能を向上させる効果を得ることが難しかった。また、これらのイオン伝導性材料と複合化すると、
電極内のSSCのネットワークが途切れ電子伝導率が低下してしまうために、これまではSSC単体で用いられ
ていた。今回、マイクロ構造による電極内の電子伝導経路を構築して、SSC自体の電子伝導率を低下させる
ことなく、ナノ構造により二次粒子内にイオンの伝導経路を構築して電極の反応点数を大幅に拡大させた
(上図1)。これにより、SSC単体では得られなかったSDCとの複合化効果が得られるようになり、電極性
能が著しく向上する。
ナノ複合化により、これまでSOECを用いた高温水蒸気電解の最大の損失要因であった陽極の電極抵抗を大
幅に低減できた。今回開発した材料を陽極として用いたSOECの電流密度は、2.3 A/cm2(750 ℃、電解電圧
1.3 V)であった(下図)。これは、既存の水電解技術であるアルカリ水電解や高分子形電解、これまでの
SOEC 高温水蒸気電解の2~10倍である。また、実用化の目安であるSOECの容積1dm3(想定電極面積
1200 cm2)あたりの水素製造量1 Nm3/hを達成するには2 A/cm2の電解電流密度が必要とされている。
今回開発した陽極を用いたSOECの電解電流密度はこれを上回っており、水素ステーション用などの水素製
造装置に適用でき、電解装置を従来よりもコンパクトにできる。また、開発した陽極材料を用いたSOECで
の電解水素の合成速度は、高分子形電解やアルカリ水電解と比べ、セル面積あたり2倍以上の水素を合成で
きた。電解熱中立点で電解することで、外部から供給する電力を従来より20~30%削減できるという
SOECによる水電解の利点に加え、今回の陽極材料により大量水素製造できることで、再生可能エネルギー
を活用した水素製造時のコストを低減、水素社会の実現を促進する。
ここで、鍵となる「高温水蒸気電解法」と「噴霧熱分解装置」の最適と思われる特許事例の2例を以下のよう
掲載しておく。いつものことなのだが、短時間で膨大なデータから2つだけ取り出すのも「情報処理リテラシ
ー」が問われ、あれも掲載したい、これもふれておきたい拡散し、肝心なことが抜けてしまうことをおそれる
が、今日は土曜とあって湖北ドライブを楽しんできた(疲れた)こともあり、「ナノテク」は「デジタル」(
電算機)抜きには語れず、かつまた冒頭の「錬金術立国への夢」の実現できない。そんなことを踏まえ、「ネ
オコンバーテック」を駆使した環境システムの開発と未来を担えるのはわたし(たち)だと確信しつつ、今夜
は適当なところで切り上げる。
● 高温水蒸気電解法を用いるメリット
高温水蒸気電解法を用いるメリットを具体的に説明する。水の電気分解に必要なエネルギー(ΔH)
は次式(1)で表される。ここで、ΔGはギブスエネルギー差、TΔSは可逆反応熱を意味し、Δ
Gは電気エネルギーで、TΔSは熱エネルギーで与えられる。
ΔH=ΔG+TΔS (1)
ΔHは温度による変化が小さいのに対し、ΔGは高温になるにつれて小さくなる。このため、高温
環境下で水蒸気の電気分解を行うことにより、水の電気分解に比べて電気分解に必要な電気量を低
減することができる。この性質により、室温での水の電気分解よりも30%程度少ない電力で同じ
水素製造量が得られるため、高いエネルギー効率で水素製造を行うことができる。
さらに、原料が水であるため、二酸化炭素を生じない再生可能エネルギーによる電力と二酸化炭素を生じな
い熱源を用いれば、全く二酸化炭素を排出せずに水素製造が可能となる。また、製造した水素を一時的に貯
蔵する方法としては、(1)圧縮して高圧水素ガスにする、(2)液化水素にする、(3)水素吸蔵材料に
吸蔵する、という3つの水素貯蔵方法が知られている。これらのうち、水素吸蔵材料は一般的に水素を吸蔵
するとき発熱して、水素を放出するときに吸熱する。
このため、水素を水素吸蔵材料に吸蔵する水素貯蔵方法は、熱エネルギーが水素製造に及ぼす寄与が大きい
高温水蒸気電解法との組み合わせに適している。
下図の特許事案は、株式会社 東芝の「水素製造装置、水素製造方法及び電力貯蔵システム」で、水素製造
に係る入熱を低減して、高い水素製造効率を実現する製造装置、方法及び電力貯蔵システムである。
【解決手段】水素製造装置10は、供給された原料水を加熱して水蒸気を発生させて、所定の温度
まで昇温させる第1加熱部12と、水蒸気を入力して、高温水蒸気電解により水素と酸素とを生成
する電解セル17と、生成された水素と電解未反応分の水蒸気とを入力して、水素吸蔵材料の水素
化反応に必要な温度よりも高い温度で、水素と水蒸気とを分離する水分分離器18と、分離された
水素と水素吸蔵材料との混合物を水素化反応させて、水素を水素吸蔵材料に吸蔵させる水素化反応
器21と、を備えている。
● 噴霧熱分解装置の最適化
噴霧熱分解装置には、セラミックス製の炉心管と、電気ヒーターとが備えられている。そして、噴
霧熱分解装置では、炉心管を電気ヒーターにより加熱して、原材料を炉心管内部で熱処理される。
電気ヒーターによる加熱、熱分解処理を行うため、原材料の大量処理が困難である。また、イニシ
ャル・ランニングコストの面においても、スケールアップが困難である。さらに、セラミックス製
の炉心管のため、昇温、降温に時間がかかるなど作業性が低減する。炉心管としてセラミックスチ
ューブが使用されていることが一般的となっている。この場合には、電気ヒーターで加熱する際に、
ヒートショックが起こり、炉心管が割れてしまう等の不具合も生じやすい。更に、セラミックスチ
ューブ製の炉心管の一部が剥離してしまう等の問題もある。炉心管の一部が剥離してしまうと、炉
心管の割れた破片が製品へ混入してしまい、製品の品質を著しく低下させてしまう。
また、直火式噴霧熱分解装置では、原材料を熱分解処理する熱分解処理部で、加熱の際に、局所的
な高温部が生じてしまい、品質低下を生じさせやすい。さらに、局所的な高温部を生じさせないよ
うにするために、温度制御することも難しい。このため、大川原化工機株式会社の下図特許事案
「噴霧熱分解処理装置、及び噴霧熱分解処理方法」では、噴霧熱分解装置の大型化、製品の高品質
化、及び製品の大量処理が可能となる噴霧熱分解処理装置を提供されている。
【解決手段】原料液滴を噴霧する噴霧器9と、噴霧器9から噴霧された原料液滴を、高温雰囲気下
で加熱、分解させる円筒状の反応炉3と、反応炉3の外周3aを、反応炉3の鉛直方向下側から上
側に向けて、熱風を通過させる通風部7と、を備える。上記反応炉3は、金属製からなり、通風部
7を通過する熱風を反応炉3に当てて、反応炉3内で原料液滴を加熱、分解させる噴霧熱分解処理
装置1。
「イッツ・マイ・ライフ」はアメリカ合衆国のロックバンドのボン・ジョヴィの楽曲である。こ
の楽曲は、彼らの7枚目のアルバム『クラッシュ』に収録され、アルバムからの最初のシングルと
して日本では2000年5月10日にリリースされた。各国の週間シングルチャートは、ドイツ
で2位、イギリスで3位、オーストラリア、アイルランドで5位などとなった。