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鴨嘴な風力発電

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                    リスクが富を生む。    /    ピーター・ドラッカー

 

                                                     

                             Peter Ferdinand Drucker
                                          Nov. 19, 1909 - Nov. 11, 2005                                     

  

【RE100倶楽部:スマート風力タービンの開発 12】

● 事例研究:バイオミメティクスを応用したブレード形状

【特開2016-188697  とんぼの翅構造の一部を模した翼】

 
ディズニーチャンネルのテレビアニメキャラーのカモノハシパリーがなんともかわいい、「フィニアス
とファーブ」。ところで、この鴨嘴を模った流線型の新幹線への設計反映は、産業の技術開発や物づく
りに、生物が持っている優れた機能を模倣して生かそうとする「バイオミメティクス」の一例である。

このように、生物の中で、とんぼは、特別の飛行能力を有している。とんぼは、長い2対の翅を持って
いて、これをそれぞれ交互にはばたかせて飛行するが、翅を止めて滑空することも出来る。また、高速
移動をしたり、空中でホバリングしたり、瞬時にスピードや方向を変えることすら出来る。さらに、飛
行時の騒音もほとんどなく、しかも驚くほどの省エネ飛行を実現している。しかし、このトンボのよう
に自由自在に空を飛ぶことの出来る機械はまだ存在しない。通常の航空機等の翼と比較してみたい。航
空機の翼やプロペラ、風力発電の翼、タービン翼、スクリュー、扇風機の羽根、へリコプターやオート
ジャイロの回転翼、ドローンのプロペラなどをはじめ翼構造が使われている機械は多く存在する。これ
を風力発電のブレードに応用しようとする新規考案が提案されている。

これらの航空機や風力発電等の翼やプロペラは長年の技術革新の積み重ねで現在のものとなっているが、
今なお、世界各地でトラブルを起こすことがしばしばある。これらの翼に対して、とんぼの翅は軽く丈
夫にできている。翅脈というスジが,網の目のようになって骨組みとなり,その間に透明な膜が張られ
ている。とんぼの翅の断面を見てみると折れ線グラフのようにがたがたしている。一見すると、この翅
でどうして飛べるかとても不思議である。しかし、良く調べてみると、気流の中では、とんぼの翅の凹
部では気流が渦となってくるくるとボールベアリングのように回転する。これによって、とんぼの翅上
面の流れは翅下面と比較すると非常に早く流れることからベルヌーイの定理により、揚力を得て翅は上
方に浮くこととなる。

従来の翼理論からすると、とんぼの翅に気流の渦が出来ることは失速しやすく、性能が劣ると考えられ
ていた。しかし、とんぼの持つ4枚の翅は1枚が消失しても飛ぶことが出来るほど高性能なものであるこ
とが見出された。とんぼの翅の特性を生かし、バイオミメティクスという将来の技術の一つとして産業
に生かそうという動きが出てきている。しかしながら、とんぼの翅は上述のように極めて細い骨組みと
ごく薄い膜で構成されており、その断面は航空機などの翼とは全く異なりでこぼこで華奢に出来ている
ため、このままではごく小さな模倣機械であれば開発可能ではあるが、少しでも大型のものを作ろうと
すると、その脆弱さが障害となって、とても産業に役立たせることは出来ないという問題がある。

この改善策として、カーボンファイバー製の骨組みに薄膜を貼り付けるなどの方法も考えられるが、極
薄の翅である限り、その強度では、その使途も限られたものになり、とても風力発電用風車や実際の航
空機等には利用は出来ないという大きな欠点がある。事実、とんぼの翅状態では産業に生かせるほどの
ものにはなってはいない。さらにバイオミメティックスの中でも、とんぼの翅に関して現時点において
は公開された技術は見当たらない。

Nov. 4, 2016

【要約】

気体、液体、気液混合体のいずれか一の中で使用する翼6において、該翼6の上部をとんぼの翅構造の
一部を模した外板1とし、該翼6下部は航空機の翼の下部形状を持つ外板2とし、該両外板1、2を合
体させ、両外板1、2内部を構造体5としてなることを特徴とする。望ましくは、該航空機の翼の下部
形状を持つ外板2はほぼ平らであるもの、下にややふくらんだもの、逆に上に反ったものの中から目的
に合わせて一を選択する。さらに望ましくは、該翼6にウイングレットやフクロウのセレーションを模
した突起を設けるとさらに効率が上がる揚力が大きく失速しずらく強度の強いとんぼの翅構造の一部を
摸した翼を得る。

 【符号の説明】

1 翼上部外板 2 翼下部外板 3 翼前縁 4 翼後縁 5 翼構造体 6 翼 7 前縁脈 8 結節 
9 縁紋 10 透明膜 11 翅脈 12 三角室 13 とんぼの翅14 気流 15 渦 16 補助翼 
17 翼弦長 18 中心線 19 最大 翼厚 20 最大キャンパ 21 翼弦線 22 ブレード 
23 風 24 回転軸 25 支持具 26 垂直尾翼 27 胴体 28 水平尾翼 29 ウイングチッ
プフェンス 30 突起 31 ウイングレット

本発明は、上記のとおり構成されているので、次のような14項目の効果がある。

1.とんぼの翅は非常に華奢に出来ているが、本発明の翼は、その上部をとんぼの翅構造の一部を模し
    た外板とし、該翼の下部を航空機の翼の下部形状を持つ外板とし、該両外板を合体させてなること
  から、該翼内部に構造体、燃料タンク、支柱、制御装置、高揚力装置などを格納するスペースを設
  けることが可能であるという大きな利点がある。
2.このため、該翼の構成材料にもよるが該翼の強度を大きくすることが可能となるという利点がある。
3. これにより、従来は模型程度でしかとんぼの翅の性能を生かせなかったが、本発明の翼は産業化を
  大きく前進させられるという大きな利点がある。
4.特に航空機の翼やプロペラに本発明の翼を使用すると、揚力が従来の翼よりも大きくなるため、低
    速度であっても失速したりせず、これにより燃料消費を抑えることが出来、経済的であるなどの大
    きな利点がある。
5.さらに、風力発電用風車に本発明を使用すると、使用する翼の揚力が大きいことから微風でもスム
     ースに回転させることができるため、発電量が他の風車に比べて大きくなるという利点もある。
6. このことは、本発明の翼を水力発電用プロペラや水車、あるいは海洋発電用プロペラにも使用可能
  である。
7. 従って、再生可能エネルギーの一端も担えるという大きな利点がある。
8.しかも、本発明は、翼構造を持つあらゆる機械等に組み込み可能であるという大きな利点がある。
9.さらに、本発明を模型や玩具の翼やプロペラにも使用することも出来るという利点がある。
10.本発明の翼の末端にウイングチップフェンス、ウイングレット、レイクドウィングチップの中のい
  ずれか一を加えて設けると、燃費、効率が上がるため航空機に本発明を使った際には経済的になる
  という利点がある。
11.また、本発明の翼の一部にフクロウの翼のセレーションを模した突起を加えて設けると、騒音を大
  幅に減少させることができることから、風力発電用風車の騒音で近隣住民を悩ますような負担を軽
  減できるという利点がある。
12.本発明の翼は、強度に優れ、しかも揚力が大きく、従って微風でも作動することから、飛行機の翼
  やプロペラ、ヘリコプターの回転翼、水中翼、水力・風力発電の翼、タービンブレードの翼、人力
  飛行機の翼、翼構造とした飛行船などをはじめとして、ありとあらゆる翼に取って代わることが可
  能であるという大きな利点がある。
13.また、本発明の翼を一体成型で作ることも可能であるため、比較的小さな翼やプロペラなどは生産
  性の向上が見込めるという大きな利点がある。
14.本発明の翼は、従来の翼とは異なり曲面より平板で構成される部分が多いため、比較的容易に製造
  出来るとという利点がある。

【実施例7】

図19は実施例7であり、本発明の一実施例である。図10の本発明のブレード22(翼6)等の端部
にウイングチップフェンスを設け、さらにブレード22(翼6)の翼下部外板1の一部にフクロウの翼
にあるセレーションを模した突起を設けたものの右側面図である。図中、29はウイングチップフェン
ス、30は突起である。1~6は図18と同様である。一般的に翼6の上方と下方を流れる気流の流速
が著しく異なるため圧力差が出来る。このため、翼6の上では翼6の下よりも気圧が低くなる。したが
って、飛行中の翼6の下側から上側に渦となって気流が回り込むという現象が起き揚力が減少する原因
となる。そこで、この減少を食い止めるため、翼6の端部にウイングチップフェンス29を設けること
により、揚力の減少がある程度抑えられ効率的になる。このことは、風力発電用風車の翼や、プロペラ
などでも同様におきることから、ウイングチップフェンス29は翼構造を持つものに対しては非常に有
効であり、省エネルギーにつながる。なお、ウイングチップフェンス29に換えてレイクドウイングチ
ップまたは後述のウイングレットを設けても良い。また、ふくろうの翼に並ぶセレーションと呼ばれる
細かなやや曲がった櫛のような突起30は翼6が飛行中に風を切る音を消すので、これを風力発電用風
車のブレード22(翼6)の一部に設けると、近隣住民が現在騒音に悩まされているが緩和されるとい
うメリットがある。この該セレーションは非常に細かなため、図19~図23において記載の該突起
30は理解のため誇張略記してある。

【実施例8】

本発明の一実施例である。図10の翼の端部にウイングレットを設けたことを示す右側面図である。図
中、31はウイングレットであり、1~6、22、30は図19と同様である。本図に使用するウイン
グレット31は、図19の説明と同様に航空機等の翼端に発生する渦が翼6の上では翼6の下側よりも
気流の流れが早くなり気圧が低くなるため翼6の下から上に気流が渦となって上側に回りこみ折角の揚
力を減少させてしまうが、翼端に本図のようにウイングレット31を設けると、翼6の上側に回りこむ
渦を減少させることが出来るという利点がある。また、本図のブレード22(翼6)にも図19と同様
に突起30を設けてある。この突起30は前述のようにフクロウの翼のセレーションという突起30で、
風切り音を低減するという効果がある。図22は、図21の正面図で翼端部分である。図中、1、2、
6、22、30、31は図21と同様である。本図にあるように、本発明のブレード22(翼6)端部
にウイングレット31を設けてある。また、翼6とウイングレット31の下側には図21と同様に突起
30を設けてある。

【実施例9】

図23は、実施例9で、本発明の一実施例である。図中、1、2、6、22、30、31は図22と同
様で、24、25は図14と同様である。本発明のブレード22(翼6)に突起30とウイングレット
31を設けた風力発電用風車の正面図である。本図の風力発電用風車はとんぼの翅構造を生かした効率
的なものであるため、微風でも回転して電気エネルギーを生み出すことが可能である。また、ブレード
22(翼6)が2枚であるが、それ以上のブレード枚数を増やすことも可能である。

このように、わたし(たち)イメージしている風力発電のブレードは、①微風でも発電でき、②静粛性を保てるという
基本設計にある。 



                                                           この項つづく

       

【量子ドット工学講座31:最新高効率太陽電池技術事例】

● 特開2016-219740  光電変換装置

従来の単接合タイプの光電変換装置は、光電変換層を形成する材料としてシリコンを用いているが、実
用上の光電変換効率はせいぜい15%程度が実態。シリコンの半導体基板上に、シリコンよりもバンド
ギャップの大きい量子ドット集積膜タイプが提案されている。下図8は、光電変換装置の電流-電圧線
の概念図。図8において、実線はシリコン基板の電流-電圧曲線、破線はシリコン基板よりもバンドギ
ャップの大きい量子ドットの集積膜105の電流-電圧曲線に対応する。

光電変換効率は、開放電圧をVoc、短絡電流密度(短絡電流Iscを太陽電池の受光面積で割った値
)をJscとしたときに、おおかた、これらの積を入射光強度で割った値として示される。また、吸収
できる光の波長領域は光吸収層(光電変換層という場合がある)を構成する材料のバンドギャップ(シ
リコン基板の場合、約1.1eV)を上限とする領域に限られる。このため光電変換装置の光電変換効
率を向上させるには、より高いバンドギャップを有し、自ずと開放電圧(Voc)を高めることのでき
る光吸収層の形成が必要になってくる。

しかし、量子ドット集積膜は、シリコン基板に比べて、バンドギャップが大きい分、照射される光量に
対する発電量(最大出力(Pmax))の変化が大きく、日照量の低い条件下では、短絡電流(Isc)
が大きく低下。光電変換層の機能を果たすどころかほぼ絶縁体になってしまう場合があるため、シリコ
ン基板上に量子ドット集積膜を積層した光電変換装置は、シリコン基板で出力される電流を外部に出力
させることが困難になるおそれがある。この新規考案は、量子ドット集積膜を有していてもシリコン基
板から出力される電流を外部へ出力できる光電変換装置の提案である。

 Dec. 22, 2016

 【要約】

第1の導体層1と、シリコン基板3と、シリコン基板3よりもバンドギャップの大きい光電変換層5と、
第2の導体層7とが、この順に配置されており、光電変換層5に、第1温度T1のときに、シリコン基
板3と第2の導体層7との間がオープン状態となり、第1温度T1よりも低い第2温度T2のときにシ
ョート状態となるスイッチ部材9を備えている。スイッチ部材9は、正の温度特性を示すサーミスタ、
もしくは光電変換層5よりも熱膨張係数の小さいセラミックス部材11aと、シリコン基板3と第2の
導体層7との間を接続する金属部材11bとを有する複合体11を構造とする、量子ドット集積膜を有
していてもシリコン基板から出力される電流を外部へ出力させやすい光電変換装置を提供する。

下図1 は、本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面模式図であり、(a)は、光電変換
装置が高い温度に置かれている場合、(b)は、光電変換装置が(a)の場合よりも低い温度に置かれ
ている場合である。上図2は、本実施形態の光電変換装置の電流-電圧線の概念図であり、(a)は、
陽射しが強く、光電変換装置の温度が高い第1温度T1の状態、(b)は、陽射しが弱く、光電変換装
置の温度が低い第2温度T2の状態である。

【符号の説明】

1 第1の導体層 3 シリコン基板 5 光電変換層 7 第2の導体層 9 スイッチ部材
11 複合体

上図1に示す光電変換装置Aは、第1の導体層1と、シリコン基板3と、シリコン基板3よりもバンド
ギャップの大きい光電変換層5と、第2の導体層7とが、この順に配置された構成となっている。この
光電変換装置Aでは、シリコン基板3とバンドギャップの大きい光電変換層5とは、第1の導体層1と
第2の導体層7との間で電気的に直列接続された状態にある。この場合、光電変換層5にスイッチ部材
9が設けられている。このスイッチ部材9は、光電変換層5を挟むように設けられているシリコン基板
3と第2の導体層7との電気的な接続の状態を温度の変化によって変化させる機能を有する。

例えば、高、低、2つの温度を設定し、高い方の温度を第1温度T1とし、第1温度T1よりも低い温度
を第2温度T2としたときに、スイッチ部材9を含む光電変換装置Aが、例えば、高い方の温度である
第1温度T1に達した場合に、スイッチ部材9は、シリコン基板3と第2の導体層7との間をオープン
状態(絶縁された状態)とする。このとき、シリコン基板3と第2の導体層7との間では、電流(また
は、キャリア(電子e、ホールh))は光電変換層5内を流れることになる。

反対に、スイッチ部材9を含む光電変換装置Aが低い方の温度である第2温度T2になった場合には、
図2(b)に示すように、光電変換層5の短絡電流(Isc)が低下するのに併せて、スイッチ部材9
がシリコン基板3と第2の導体層7との間をショート状態(短絡した状態)に変化させる。これにより、
シリコン基板3と第2の導体層7との間を流れる電流(または、キャリア(電子e、ホールh))は、
主として、スイッチ部材9内を流れるようになる。


図2(a)(b)を基に、図1(a)(b)に示した2つの光電変換装置Aの電流-電圧特性を比較す
ると、シリコン基板3と、これよりもバンドギャップの大きい光電変換層5とが組み合わさった光電変
換装置Aの場合、バンドギャップが約1.1eVのシリコン基板3の方は、陽射しの強弱によって異な
る温度になっても短絡電流(Isc)の変化は小さい。一方、バンドギャップの大きい光電変換層5の
方は、光電変換装置Aの温度が低くなると短絡電流(Isc)が大きく低下してしまう。つまり、光電
変換層5は、バンドギャップが約1.1eVであるシリコン基板3に比べて、バンドギャップが大きい
分、照射される光量に対する発電量の変化が大きいことから、日照量の低い条件下では、温度の低下と
ともに、光電変換層5としての機能を果たし難くなり絶縁性が高くなってしまう。このため、シリコン
基板3上に、これよりもバンドギャップの大きい光電変換層5を直列接続した光電変換装置Aでは、シ
リコン基板3から出力される電流を外部に出力させることが困難になる。



これに対し、本実施形態の光電変換装置Aでは、バンドギャップの大きい光電変換層5が日照量の低下
によって絶縁体化するような条件下においても、光電変換層5に設けたスイッチ部材9中を電流(また
は、キャリア(電子e、ホールh))が流れるようになることから、シリコン基板3において生成した
キャリア(電子e、ホールh)を外部へ容易に移動させることができる。

図3は、本実施形態の光電変換装置の第2の導体層と光電変換層との界面を平面視した模式図であり、
(a)は、スイッチ部材が光電変換層の面内に配置されている場合、(b)は、スイッチ部材が光電変
換層の側面(周囲)に配置されている場合である。図3は一例である。

スイッチ部材9は、図3(a)に示すように、光電変換層5の面内に複数個が均等に分布するように配
置されるか、または、図3(b)に示すように、光電変換層5の側面(周囲)において、向かい合う側
面間で対称的に配置されることが望ましい。上記した接続性能を示すスイッチ部材9としては、例えば、
正の温度特性を示すサーミスタを挙げることができる。具体的には、チタン酸バリウムを主成分とし、
これに微量の希土類元素を含有させたセラミック製のPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミス
タを用いるのが良い。

図4は、スイッチ部材の他の例を示すもので、管状のセラミック部材に軸芯として金属部材を導体とし
て組み込んだ複合体を示す模式図である。スイッチ部材9の他の例として、図4に示すような、セラミ
ック部材11a中に光電変換装置Aの使用環境下で導電性を示す金属部材11bを組み込んだ構造の複
合体11であっても良い。この場合、金属部材11bを取り囲むセラミック部材11aは熱膨張係数が
光電変換層5を構成する材料よりも小さいことが望ましい。例えば、光電変換層5がシリコンよりもバ
ンドギャップの大きいCuGaSe2(1.65eV)によって形成されたものであった場合、セラミ
ック部材11aとしては、CuGaSe2の熱膨張係数(10×10-6/℃)よりも熱膨張係数の小
さいコージエライト(熱膨張係数:2×10-6/℃)やチタン酸アルミニウム(熱膨張係数:1×
10-6/℃)が好適である。金属部材11bとしては、貴金属、卑金属、アルミニウムおよびトタン
など、種々の金属を適用することができる。

図5は、セラミック部材中に金属部材を組み込んだ構造の複合体をスイッチ部材として用いたときの複
合体の温度の違いによる長さの変化を示した断面模式図であり、(a)は温度が高い第1温度T1のと
き、(b)は温度が低い第2温度T2の状態のときを表す。このような複合体11をスイッチ部材9と
して適用すると、光電変換装置Aの温度が低い、いわゆる第2温度T2の状態のときに、シリコン基板3
側および第2の導体層7側の両表面に接した状態としておいても、光電変換装置Aの温度が第2温度T2
よりも高い第1温度T1に変化した際には、光電変換層5の厚み方向の熱膨張の方が複合体11の熱膨
張よりも大きいために、複合体11の端面に露出させた金属部材11bは第2導体層7の表面から離れ
てしまう。

 つまり、陽射しが強く、光電変換層5が発電する場合には、光電変換層5は高い温度T1の状態となる
が、スイッチ部材9の部分だけはシリコン基板3と第2の導体層7との間が断線状態となることから、
光電変換層5内およびシリコン基板3内に生成したキャリア(電子e、ホールh)は、光電変換層5内
およびシリコン基板3内を移動することになる。

 一方、陽射しが弱く、光電変換層5の温度がT2の状態となるときは、光電変換層5は発電し難くなり、
絶縁性が高くなるが、スイッチ部材9はシリコン基板3および第2の導体層7に接するようになるため、
シリコン基板3内に生成したキャリア(電子e、ホールh)は、スイッチ部材9である複合体11の軸
芯に設けられた金属部材11b内を移動する。

この場合、スイッチ部材9は、光電変換層5を貫通している貫通体であることが望ましい。スイッチ部
材9が光電変換層5を貫通している貫通体であると、光電変換層5の面内に複数のスイッチ部材9を均
等に配置させることが可能になることから、シリコン基板3と第2の導体層7との間に流れる電流によ
るインダクタンスを低くすることができる。これによりシリコン基板3から出力される電流の外部への
出力がより容易になる。

本実施形態の光電変換装置Aでは、光電変換層5がシリコンの量子ドット集積膜であることが望ましい。
光電変換層5がシリコンの量子ドット集積膜であると、ペアを成すシリコン基板3のバンドギャップ(
約1.1eV)に対して、光電変換層5のバンドギャップを1.5eV以上、粒径によっては1.7e
V以上にできることから、より高い開放電圧(Voc)を得ることができ、発電の最大出力(Pmax)
をさらに高めることができる。

また、シリコン基板3および光電変換層5がともにシリコンにより形成されたものであるため、材料の
格子定数の差がほとんど無いことからシリコン基板3と光電変換層5との間の格子の不整合を減少させ
ることができるため、シリコン基板3と光電変換層5との境界付近のキャリアの移動度を高めることが
できる。


次に、本実施形態の光電変換装置の製造方法について説明する。図6は、本実施形態の光電変換装置の
製造方法を示す工程図である。ここでは、バンドギャップが1.1eVのシリコン基板3の他、第1の
導体層1にアルミニウム、第2の導体層7にインジウム錫酸化物(ITO)を、さらに、光電変換層5
として、シリコンの量子ドット(バンドギャップ:1.7eV)を、それぞれ適用し、スイッチ部材9
として、上記したチタン酸バリウムを主成分とするPTCサーミスタと、コージエライト-ニッケル
(Ni)製の複合体11を適用した例を基に説明する。

上図6(a)に示すように、まず、一方の主面に第1の導体層1としてアルミニウムの金属膜を形成し
たシリコン基板3を用意する。第1の導体層1の形成には、例えば、蒸着法を用いる。次に、(b)に
示すように、シリコン基板3の第1の導体層1側とは反対の表面に、スイッチ部材9を形成する。スイ
ッチ部材9としては、PTCサーミスを用いた場合と複合体11を用いた場合の2種類を作製する。こ
のとき、複数個のスイッチ部材9を均等な配置とし、同じ高さになるようにする。次に、(c)に示す
ように、シリコン基板3の表面のスイッチ部材9の周囲に、光電変換層5として、シリコンの量子ドッ
トを含む溶液をスピンコート法により成膜して量子ドット集積膜を光電変換層5として形成する。

最後に、光電変換層5の表面に蒸着法により第2の導体層7を形成する。以上のような基本的な工程を
経ることにより、図6(d)に示すように、本実施形態の光電変換装置Aを得ることができる。
なお、比較例となるスイッチ部材9を有しない光電変換装置を形成する場合には、スイッチ部材9を形
成する工程((b)工程)を省いて行う。

得られた光電変換装置Aおよび比較例となるスイッチ部材9を有しない光電変換装置について発電性能
を評価する。評価方法としては、正午頃の日中と、朝夕に近い時間帯とに発電させて、そのときの短絡
電流を測定して比較する。

①スイッチ部材9を備えた光電変換装置Aは、スイッチ部材9を有しない光電変換装置に比べて、朝、
夕時に測定した短絡電流(Isc)が5倍ほど高かった。②また、スイッチ部材9の比較では、複合体
11を用いたものはPTCサーミスタの場合に比較して、短絡電流が1.1倍ほど高いという結果が得
られている。

                                                                                      (了)

   ● 今夜の一曲

モーツァルト 弦楽四重奏曲 String Quartet No.14, in G, K.387

ハイドンにささげられたいわゆる「ハイドンセット」6曲の第1曲。第4楽章のフーガ風ソナタの運動
が素晴らしいとされる。  


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