御仏に供へあまりの柿十五
御仏にそなへし柿のあまりつらん 我にぞたびし十あまりいつゝ
正岡子規
● 最新の柿育種工学
古の万葉集に歌われることはなかった柿は渋柿だが、時を経て甘柿に育種され、いまでは、
甘くて上品な西吉野からの柿が届くようになっている。奈良と言えば柿と思っていた。いま
は岐阜県が生産量でトップだろいう。さて、農研機構は、良食味で、種なし果の生産が可能
な晩生の完全甘ガキ1)新品種「太豊」を育成に成功した(上図クリック)。「太豊」の果実
は「富有」並みかそれ以上に大きく、「富有」とほぼ同時期の11月中下旬頃収穫する。果肉
は柔軟で多汁、サクサクとした食感をもち、雌花が多く、受粉樹2)を周囲に混植しなくても
早期落果が少なく、後期落果もしないため、種なし果の安定生産が可能。さらに、「太豊」
は夏秋期の気温が高い地域に適応し、「富有」の栽培地域で栽培が可能だという優れた特徴
をもついう。
【オールバイオマスシステム完結論 Ⅲ】
● バイオマス産業都市構想の推進
バイオマス活用推進を背景とした、バイオマス産業都市構想が動き出した。
バイオマスの活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とした「バ
イオマス活用推進基本法(2009年法律第52号)」が2009年9月12日に施行され、2010年12月17
日に同法20条に基づく「バイオマス活用推進基本計画」が閣議決定。この基本計画に基づき
関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
)の連携の下、バイオマスの活用を推進されることになっていたが、今月10日、農林水産省
は、新たに6地域のバイオマスを活用した地域づくりを支援すると発表。 新たに6地域を
選定。今回バイオマス産業都市に選定されたのは、バイオマス産業都市構想を有する、富山
県射水市、兵庫県洲本市、島根県隠岐の島町、福岡県みやま市、佐賀県佐賀市、大分県佐伯
市の6地域。
このプロジェクトが成功に終わるかどうかわからないが、ブログで掲載している『オールバ
イオマスシステム完結論』の具体的な計画展開である以上、これらの動きを看ながら、先行
する『オールソーラーシステム完結論』の後追いを加速させていく方法を考え展開させてい
こう。
● 電気代を「60%削減」したローソンの省エネ工学
ローソンは2014年11月12日、愛知県に新店舗「ローソン豊橋明海工業団地店」を開店。最大
の特徴は電気使用量が2010年比で約60%削減できる。これは同社の店舗として最大の削減率
同社は最新の省エネルギー技術を導入した環境配慮型の実験店舗を2008年から各地で展開し
てきた。今回は7店舗目(上図に新店舗内に配置したエネルギー関連技術の位置を示す―導
入した技術は大きく3種類に分かれ、3種類の技術を色分けし明示。建物の断熱・遮熱性能
向上(赤)、自然エネルギーの活用(緑)、機器性能の向上(青)。図では左上側が南。導
入した15種類の技術のうち、最も効果が高いものは2つ。『CO2冷媒冷蔵ケース』と『LED照
明』。CO2冷媒冷蔵ケースは冷媒にフロンではなく二酸化炭素を利用した機器。同社が2013年
に立ち上げた環境配慮型の実験店舗でも効果を発揮した技術だ。扉付きのショーケースとす
ることで冷気漏れを防ぐなど、効率向上策を講じている。
また、店舗の照明は一様であることが多いだろう。今回の新店舗ではセンサーを利用して(
直管型LEDを)調光するため、例えば日光が入りやすい店舗の入口側の明るさを抑えることが
たやすい。天候(日照)の変化に応じた制御もできる。上図で赤く示した建物の断熱・遮熱
性能向上に役立つ技術は5つあり、店舗前面ガラスの二重化(ダブルスキン)し、店舗入口
側にペアガラスフロントサッシを設け、さらに2重。その間に店舗内で暖まった(または冷
やされた)空気を通し、断熱性をより高める。テントによる外壁面の二重化は、店舗の南外
壁に施された工夫だ(下図)。外壁の外側に白色のテントを張ることで直射日光を遮り、店
舗内への熱の侵入を防ぐ効果がある。この他、太陽電池モジュール設置し屋根の二重化や壁
面緑化、断熱性能の向上などを導入し実現した。それにしても、60”削減とは恐れ入やの鬼子母
神ですねぇ~。
地中熱利用空調システムの原理と仕組み
【オールソーラーシステム完結論 31】
『無線給電舗装工学』で掲載していたことが、オランダ(SolaRoad)で実現され始めている。
そう、2014年11月12日、オランダで世界初の道路「SolaRoad」が完成、開通式が開催された。
太陽電池セルを組み込んだ部材を利用して作られたという意味で世界初である。アムステル
ダムの北西約15キロメートルに位置し、長さは百メートル。3年間の実証実験の形で運用さ
れることになっている。この実験では、実証実験の計画では、発電能力は道路の長さ百メー
トル当たり一般家庭3世帯分。実験開始時は発電した電力を系統にそのまま接続している。
設置前の見積もりによれば、寿命(20年)以内に投資を回収できるという。現在は投資回収
期間を15年以内に短縮する。
オランダは大都市における交通システムに革命を起こそうとしている。首都アムステルダム
市は2040年までに段階的に私有車を全て電気自動車化計画を打ち出し、その電力を生み出す
のに最も自然な方法として、車両の下に長く伸びる道路だ。道路を「無駄に」照らしている
太陽光を利用――この考え方は既に2009年以前に控訴していて社内提案もしていた――する。
SolaRoadにつながるアイデアを2009年に打ち出したのは、オランダ応用科学研究機関(TNO)
である。オランダの年間総消費電力は約1200億キロワットアワー。発電に適した建物の屋根
全てに太陽電池を設置すると、総量だけを考えた議論ではあるものの、このうち4分の1が
を賄える。さらに太陽電池を増やそうとすると、道路が適切であるという。オランダの道路
総延長距離は約14キロメートル。面積に換算すると450平方メートルになる。これは屋根の
総面積よりも広い。
とことで、道路から取り出した電力を(無線で)電気自動車に送り込む。これはSolaRoadに
とっての最終的な目標だ。そこに至る前の段階では、系統に接続する、道路照明に利用する
道路に隣接する家屋に供給するといったさまざまな用途がある。実証実験では一般道路では
なく、自転車専用道路を対象としている。自転車専用道路は一般道路と比較して加重負荷が
少ない他、路面を取り外して実証実験中に改良を加えやすいためだという。なお、オランダ
は自転車保有率が世界一(約110%)であり、自転車専用道路が約1万5000キロメートルも延
びている。一般道路に展開する前に、実証された技術を展開する場が広がる。
SolaRoladの基本単位は3.5m×2.5mのコンクリートパネルだ。厚さははっきりと公表されてい
ないものの、写真から20センチメートル前後だと分かる(上図)。コンクリートパネルの表
面は端面付近を除き、厚さ1センチメートルの強化ガラスで覆われている。その内部に結晶
シリコン太陽電池セルが配置されており、下面の強化ガラスとの間に挟まれている。つまり
一般的な太陽電池モジュールをコンクリートとガラスで作り上げた形だ。SolaRoadによれば、
現時点では道路用の特別な太陽電池セルを開発する必要はないという。上図では、中央の人
物の前後で表面の様子が違う。SolaRoadでは「2車線」のうち、図手前の1線のみに太陽電
池を組み込んでいる。同じ道路で従来と似た路面と、新しい路面の影響を比較しやすい。実
証実験のコストも低くなる。このような「モジュール」に求められる性能は何だろうか。
SolaRoadによれば4つある。(1)まずは光を通しやすいこと(光を反射しにくいこと)
(2)次に可能な限り汚れをはじくこと。(3)残る2つは道路用の部材としての性質であ
る。強度が高いことと、車両が横滑りを起こさないの4点。強度の高さとは、車両の重量は
もちろん、落下物の衝撃に耐えること、寒暖の差に耐えること、塩害を受けないことが前提
条件である。また、横滑りに対する対応策は、ガラス表面のコーティングだ。歩行者、車両
ともグリップが効くようなコーティング材料を用いる。SolaRoadによれば一般的な自転車用
道路と比較して、横滑り抵抗力は平均以上。この他、モジュールを組み合わせたときに要求
される性質が1つあり、走り心地だ。モジュール同士に高低差があると、わずかな差であっ
ても車両内部に響く。そこで、モジュール同士が相互に連結して高低差が生じない構造を採
った(上図)。下地の土壌が完全に平たんでなくてもよい。さらに温度変化による収縮・膨
張の影響も受けにくいということであはある。
以上、今夜はてんこ盛りなってしまったが。『デジタル革命渦論』を理解する上にはこれほ
どわかりやすい事例はないと考える。実に面白く楽しいニュースだ。