わが生や涯りあり、而して知や涯りなし
「養生主」(ようせいしゆ)
※ なにも、世捨人になることではない。世俗に生きつつ同時に世俗を超越する
ことこそ真の超越である。煩雑で桎梏(しつこく)多きこの現実の世に、自
己の生を全うするにはどうするか。「生を養うための主(根本原理)」を説
くのがこの篇であり、荘子の処世知がここに濃縮されている。
※ 知に従えば安らぎはない
人間の生命には限りがあるが、知のはたらきには限りがない。生命のこの有
限性を度外視して、知の赴くままに無限を追究すれば、安らぎは訪れるはず
がなかろう。われわれは、この道理を承知していながら、しかも知から離れ
ることができない。われわれは知をはたらかせては善悪をあげつらう。だが、
善といい悪といっても、それは名声や刑罰を基準にした評価にすぎない。だ
からこのような善悪にとらわれず、自然にのっとり、自然のままに生きるこ
とだ。それでこそ、安らかで充実した生涯を送ることができるのである。
● 世界初 筒状炭素分子「カーボンナノベルト」の合成に成功
14日、6個の炭素原子でできた正六角形の構造が環状につながった新しい分子「カーボンナノ
ベルト」の作製に、名古屋大学の研究チームが成功した。60年前に存在が予言されたが誰も作
れなかった「夢の分子」で、半導体や発光材料など様々な応用が考えられるという。14日付の
米科学誌サイエンスで発表。伊丹健一郎教授(合成化学)らが作製したカーボンナノベルトは、
正六角形の構造が12個つながり、直径約100万分の1ミリの環状になっている。これまで正
六角形が帯状につながったものを丸めて環状にする研究が進んでいたが、六角形構造をひずませ
るのが隘路だったが、六角形構造が出来上がっていない段階で先に環状にすることで、課題を解
決。ナノベルトに炭素原子を付け足す反応を繰り返せば、筒状の分子「カーボンナノチューブ」
も作製できる。ナノチューブは様々な応用が進んでいるが、現在の作製方法だと太さがそろわず
性質もバラバラのでもできてしまう。ナノベルトを元にすれば、太さのそろったナノチューブを
つくることも可能。化学者が夢見ていた分子をつくることができた。未知の機能が見つかる可能
性もあると話す。
♞ Synthesis of a carbon nanobelt, Kenichiro Itami et al. Science 14 Apr 2017:Vol. 356, Issue 6334,
pp. 172-175 DOI: 10.1126/science.aam8158
この成果により、「カーボンナノベルト」は今後のナノカーボン科学を一新する分子です。今回
得られたカーボンナノベルトは赤色蛍光を発する有機分子(上図)で、発光材料や半導体材料と
して各種電子デバイスに搭載できる可能性があります。さらに、カーボンナノベルトをテンプレ
ートにした製法で単一構造のカーボンナノチューブが得られれば、軽くて曲げられるディスプレ
イや省電力の超集積CPU、バッテリーや太陽電池の効率化など、非常に幅広い応用が期待され
るとのこと。なにやらギュウギュウと濃縮されている状態ですね。新星誕生前夜の予感。
【量子ドット工学講座36】
● ペロブスカイト薄膜太陽電池で変換効率60%超の可能性
パデュー大学の研究チームは、ペロブスカイト系材料を用いた薄膜太陽電池で、変換効率60%
超を実現できる可能性がある。従来のシリコン太陽電池では発電に利用することが困難だった思
われていた「ホットキャリア」と呼ばれる高エネルギーの電荷を利用できるので変換効率の大幅
に向上する可能性があるとする。ところで、シリコン太陽電池の変換効率には「ショックレー=
クワイサー限界」と呼ばれる理論限界があり、単接合の場合、およそ33%が変換効率の上限。
変換効率制限要因の1つとして、高エネルギー状態の電荷であるホットキャリアの寿命が極めて
短いため、ホットキャリアのエネルギーを太陽電池外部に電流として取り出す前にエネルギーが
熱に変換され失われる。
♞ Long-range hot-carrier transport in hybrid perovskites visualized by ultrafast microscopy, Science 07
Apr 2017: Vol. 356, Issue 6333, pp. 59-62 DOI: 10.1126/science.aam7744
太陽電池のバンドギャップを超えるエネルギーをもった光が入射すると、電子または正孔が高エ
ネルギー状態に励起し、ホットキャリアが生成されるが、シリコン太陽電池の場合、ホットキャ
リアの寿命は1ピコ秒程度と極めて短く、その間にホットキャリアが移動距離は最大でも、10
ナノメートル程度しかないため、ホットキャリアのエネルギーは電流として外部に取り出す
ことができず、太陽電池の内部で熱に変わる。
研究チームは、レーザーを用いた超高速過渡吸収顕微鏡法で、ペロブスカイト薄膜(ヨウ素、鉛、
メチルアンモニウムのハイブリッド材料)のホットキャリアの動きと速度の測定した結果、ペロブ
カイト薄膜では、ホットキャリアの寿命が100ピコ秒程度まで伸び、その移動距離が200ナ
ノメートル超に達することを確認する。このことで、ペロブスカイト系薄膜太陽電池では、ホッ
トキャリアの移動距離が太陽電池の膜厚以上になるため、電流として外部に取り出せる可能性が
ある。ホットキャリアを利用した場合の太陽電池の変換効率は60%以上になり、従来のシリコ
ン太陽電池の理論限界のおよそ2倍の値まで向上できる。研究チームは、次の研究課題として、
ホットキャリアを外部回路に抽出するための適切な電極材料・構造の開発を挙げている。また、
商用化を考えたときには、ペロブスカイト薄膜で使用されている鉛を、より無害な他の材料で代
替する必要があるとしている。
● 材料とデバイスの特性
尚、量子ドット太陽電池の開発では「ホットキャリアを外部回路に抽出するための適切な電極材
料・構造の開発が進行中である。最速で特許取得チームはどこだ?!
【「電力会社を破壊する技術」に投資する東電の理由】
● 東電HD、英の蓄電池制御ベンチャー・モイクサに3%出資
今月4日、東京電力ホールディングスは、英モイクサ――モイクサは2006年に創業したベンチャ
ーで、一般住宅向けに太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムを提供している――への出資
を発表。蓄電池には、昼間に太陽光で発電して使いきれなかった電気や、料金が安価な夜間の電
気を貯めておく。この電気を料金が高い昼間や、太陽光が発電しない夜間に使うことで、電力会
社に支払う電気料金を引き下げることが可能になる。こうした使い方は「ピークシフト」と呼ば
れる。日本では、太陽光発電による電気は「固定価格買取制度」(FIT)を活用し、地域の大手電
力会社に固定価格で買い取ってもらうのが一般的だ。これは大手電力会社の電気料金よりもFITの
買取価格の方が高いため、太陽光による電気を自分で使う(自家消費)よりも、FITで売電した方
が得する。
Apr. 6, 2017
ところが海外では、FITの条件の切り下げや制度自体の廃止によって、太陽光による電気を自家
消費した方が得になるケースが出てきている(蓄電池導入で「安い電力」になってきた太陽光、
日経ビジネスオンライン、2017.04.11)。この時、蓄電池を組み合わせてピークシフトすること
で、太陽光による電力を余す所なく活用できる。太陽光発電や蓄電池の価格が安くなってきたこ
とで、やりようによっては、これまで電力会社に支払ってきた電気料金よりも、トータルのエネ
ルギーコストが安くなる。いま、世界各国で太陽光の自家消費と蓄電池を組合せたシステムを提
供するサービス事業者が誕生しつつある。
● モイクサの蓄電池システムは10年で投資回収可能
モイクサは英国で350の家庭に蓄電池システム「Maslow」を販売した実績があった。Maslowの特
徴は、コンパクトで安価であること。中国製のリン酸鉄型リチウムイオン電池を採用、容量2kWh
で2000ポンド(約28万円)。現在、米テスラが販売しているリチウムイオン電池「パワーウオ
ール」が7kWh以上の容量であることを考えると、容量は3分の1以下と小さい。蓄電池は安く
なったといっても、まだまだ高価な商品だ。ライトCTOは、「テスラの電池は家庭向けには大き
すぎる。電気料金を引き下げるのが目的なら2kWhで十分」と説明。初期投資が安くなれば、導入
へのハードルも低くなる。✪モイクサの試算では、ピークシフトによる電気料金の節約額は年間
80~130ポンド(1万1000~1万8000円)。これだけだと、蓄電池システムの投資回収に15~25年か
かる計算。多くのメーカーが蓄電池システムの保証期間を10年に設定していることから、投資回
収は少なくとも10年以内にする必要がある。
そこで登場するのが「VPP」である。モイクサは複数の顧客の蓄電池に溜まっている電気を遠隔
制御することでアグリゲーションし、あたかも1つの発電所であるかのように取り扱う。こうし
て集めた電気を、例えば、英国の系統運用機関であるナショナルグリッドが運用する「アンシラ
リーサービス」への入札や卸電力市場で取引する。そこで得た対価を蓄電池利用者に分配する。
アンシラリーサービスとは、電力網を運用する系統運用機関が周波数を調整し停電を防ぐために
実施する周波数調整市場である。
そこで、モイクサは取材当時、VPP運用によって得られる対価分として、年間76ポンド(約1万
円)を固定価格で5年間支払う。ピークシフトとVPP運用による対価を合算すると、1軒当たり
年間で約200ポンドの節約となり、顧客は蓄電池の初期投資を約10年で回収できる計算になる。
英国も再生可能エネルギーの導入量が増加しており、系統安定化コストは増加傾向にある。今後、
周波数調整市場の価格は上昇していくと見られている。そうなれば、モイクサのVPP運用による対
価も上昇し、蓄電池のコスト回収期間も短くなると予想している。
「国の意向もあり出資したという事実が非常に重要」。ある東電関係者は、こう明かす。となれ
ば、わずか3%、7000万円の出資にも合点がいく。東電グループの再建計画「新・総合特別事業
計画」が3月末に区切りを迎えるタイミングであったことも、矢継ぎ早に出資を決めたことと相
反しない(モイクサへの出資は3月31日で、4月4日は発表日)。日本は今後、人口減少や省エ
ネの進展、分散電源の導入拡大によって、電力需要は減少していく。これは抗いようのない事実
だ。であるならば、大手電力会社は長年培ってきたビジネスモデルを変革していくことが必要と
館柄れている。東電HDのモイクサへの出資が、仮に「出資ありき」の意思決定だったとしても、
近い将来、モイクサのようなビジネスモデルへの取り組みを求められる日が必ずやってくる。既
存ビジネスによる売り上げを失うことがあったとしても、企業としてさらなる成長を求めるので
あれば避けては通れない(東電が出資した「電力会社を破壊する技術」日経エネルギーNext,
2017.04.14)。
✪ 毎日、毎日、エネルギー関係のニュースが飛び込みできるだけ、大切なことはコミットしてきてい
るが、ここにきて心身とも疲れがとれないでいる。ひこにゃんが11歳の誕生日を迎えて「ひこに
ゃん、エネルギーフリー社会を語る」というヘッドラインが頭を過ぎる。関連する、振興事業も見
えているものの、具体的な行動は、日々の情報処理に追われ、手づかずにいる。誰か力を貸してく
れ "I don't want to miss a thing." と悲鳴をあげる自分がいる。午後4時すぎ久しぶりに、二人
で「徳兵衛」へ出かける。客は二人、後から二人入ってくるものの、貸し切り状態。注文もスマー
トパッドで入力。様変わりに驚く。ネタは新鮮で、持ち帰り二人分買ってご機嫌で帰ってくる。息
子たちも絶賛していた。