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温度差エネルギー変換工学

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積水化学工業株式会社が、下水熱利用システム「エスロヒート下水熱-管底設置型」
を12月1日より発売する。これは下水道管路の底部に敷設した集熱管で下水熱を回収
し、地上に送るシステムで、あらゆる管形状に対応が可能。下水の温度は年間を通し
て外気温よりも安定しているので、冬場は温熱源として、夏場は冷熱源として活用で
き、空気熱源ヒートポンプシステムと比較して電力コストを約30%削減できる。管
底に敷設した集熱管を通し下水の熱を熱媒体(水・不凍液)に回収し、この熱媒体を
循環させて地上部へ熱を供給する。「エスロヒート下水熱-らせん型」(下図)と同
等の採熱性能を有し、高い省エネ性と二酸化炭素の排出削減効果が期待できる。

  

 

積水化学工業は樹脂パイプ生産のトップメーカでもあり、樹脂ライニングによる下水
道配管の独自リフォーム技術を保有しているが、今回の温度差を利用したエネルギー
変換方式は、『脱ロスト・スコア論 Ⅶ』で掲載したエナジーハーベスト(環境発電)
で熱電変換素子方式ではなく、少ない投入エネルギーで、空気中などから熱をかき集めて、
大きな熱エネルギーとして利用するヒートポンプ方式。身の回りにあるエアコンや冷
蔵庫、最近ではエコキュートなどにも利用されている省エネ技術。ヒートポンプを利
用すると、使ったエネルギー以上の熱エネルギーを得ることができるため、大切なエ
ネルギーを有効に使え、二酸化炭素排出量も大幅に削減できるが、熱電変換素子と比
べ、システム容積が桁違いに大きくことがデメリットになる(下図クリック)。

ところで、このメーカから提案されている下図の新規考案では、太陽エネルギーを最
大限に利用可能なエネルギー供給システムで、電気などのライフラインから切り離さ
れてもエネルギー供給システムから安定しエネルギー供給され、自立型住宅や自立型
地域に提供できる太陽エネルギーを利用したエネルギー供給システムであり、太陽光
発電装置と熱生成装置、蓄電装置、電気式冷熱生成装置と、熱生成装置の熱から冷熱
を生成する吸収式冷熱生成装置と、生成された冷熱を蓄熱する蓄冷槽を備えている。
ここで、熱生成装置は、発電を同時におこなう太陽熱コジェネ装置でもよく、電気式
冷熱生成装置は、ヒートポンプ冷凍装置で構成されるシステムを踏まえ、下水熱利用
システム「エスロヒート下水熱-管底設置型」が発売された。



つぎに、下水道は、通常地中に埋設されているから、下水道を流下する下水は外気の
影響を受けにくく、年間を通してほぼ一定の水温に維持され、下水を熱源として降雪
地域の融雪等、各種用途に利用することが提案されている。 例えば、下水道管の外周
面に沿って採熱管を配設し、採熱管をヒートポンプユニットの熱交換器に配管接続し、
熱交換媒体を採熱管と熱交換器の間で循環させることで、下水熱を熱交換媒体に回収
し活用できることも知られている。また、熱交換媒体の送り接続部と戻し接続部が設
け、その間にアンダ状の経路を形成した熱吸収マットを下水道管の管底部に敷設し、
下水熱を熱交換媒体に回収することも提案されているが様々な問題をもつため、下図
のように、既設管または、新設管の内周面の管底部長手方向に熱交換媒体を流通可能
な複数本の採熱管を敷設し、既設管または、新設管やマンホールで折り返し、各採熱
管を流下する熱交換媒体が、通常管底部を流下する流体と直接接触する採熱管を介し
施工区間の2倍の長さにわたって継続して熱交換でき、各採熱管は折り返されてほぼ
同一長さに形成、配管抵抗が均一、熱交換媒体を均等に分配して循環でき――この結
果、道路等を開削することなく地中に埋設された管内を流下する流体熱を効率よく回
収することが提案されている。

 
さらに、下図新規考案によれば、管内設置型の熱交換システムにおいて、下水から大
量の熱を回収するため、(1)下水道管内の熱媒導入管と熱媒導出管の設置距離を長
くなれば、分岐する熱媒流路の数も増え、熱媒体を多数の採熱管に均等に分配するこ
とが困難になり、(2)また、熱媒輸送管自体が長くなることと、これに分岐接続さ
れる採熱管のが増え、熱媒輸送管の圧力損失が極めて大きくなりコスト逓増と効率低
下する。この問題解決法として、ヒートポンプユニット2と、複数の採熱管7と、ヒ
ートポンプユニット2と採熱管7との間で熱媒体を循環させる5組の熱媒輸送管3と、
を備える管内設置型の熱交換システム1で、5組の熱媒輸送管3はそれぞれ異なる長
さを有し、5組の熱媒輸送管3および複数の採熱管7は、1組の熱媒輸送管3とこの
熱媒輸送管3に分岐接続される1群の採熱管群8とを1つの配管系統とする、5つの
配管系統21,22,…に分かれ、5つの配管系統21,22,…における採熱管群
8が、下水道管16の延長方向に並ぶように配設することで、熱媒体を各採熱管に均
等に分配し、かつ、圧力損失の極端な増大を抑えるとともに、システム全体としての
高効率運転が可能となるという新規考案である。

 

以上、積水化学工業の水熱利用システム「エスロヒート下水熱-管底設置型」の技術を俯瞰
してみたが、印象的なことは、"人体の血管網様態"の熱交換システムの応用展開であった。
地熱発電装置などにも使えそうだし、それは従来法の剛体ではなく柔軟体としての熱交換シ
ステムの進化の可能性である。これは面白い。


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