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それでも着実な未来

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         文公14元年:(‐613)~宣公18年(- 591)/ 楚の荘王制覇の時代 


                                                

   ※ 誰が霊公を殺したか:秋九月、霊公は武装具を伏せておき、酒宴にことよせて怨府
     を招いた。やはり殺す算段である。趙盾の車右の提弥明か寸前にこの陰謀を見抜い
     た。彼は宴席に駈けあがり、「臣下が主君の御宴に侍して、三拝以上酒を頂戴する
     のは礼に反しますぞ」と叫んで、趙盾を強引に堂からひきずり下ろした。気づかれ
     たと知って、霊公は二人に猛犬をけしかけた。だが、犬は提弥明かなぐり殺した。
     「わかしを殺すのに、人間でなく犬を使うとは情けない。いくら獰猛でも、犬畜生
     に何かできよう」。趙盾はそう叫んで、伏兵と切り結びつつ外へ逃れた。提弥明は、
     逃れきれずに、斬り死してしまった。趙盾が危地を脱したについては、わけがある。
     以前に趙盾が竹山へ狩猟に出掛けたときのことである。宿泊地の翳桑というところ
     で、霊輒という男が飢えて行き倒れているのにぷつかっか。

     「病気か」と趙盾がきくと、
     「三日のあいだ何も食べておりません」という返事である。ふびんに思って食物を
      あたえたところ、その男は半分食べ残した。
     「どうして全部食べないのだ」
     「わたしは奉公に出て三年になりますが、その間一度も母を見舞ってやることがで
     きませんでした。ここから在所まで程近いので、これを土産に持って行きたいと存
     じまして・・・」

     趙盾はその孝心に感服し、残り全部を食べさせたうえ、別に男の母親のために飯と
     肉とを竹の箱に詰め、袋に入れて持ちかえらせた。
     趙盾を襲った伏兵の中に、この男が加わっていたのである。かれは相手が恩人の趙
     盾だと知って、ホコ先を霊公の伏兵に向け加え、趙盾の脱出を助けたのであった。
     そうとは知らぬから、趙盾は不思議に思って男にたずねた。

     「どういうわけでわたしを助けてくれたのか」
     「わたしはいつか翳桑で行き倒れになっていたところを助けていただいたものです」
     趙盾は感謝し、男の名まえと住所をたずねた。だが、男は何も笞えずに引きさがり、
     それきり行方をくらましてしまった。

     乙丑の日、趙盾の一族の超穿が、霊公を桃園に攻めて殺した。趙盾は、亡命途中、
     まだ国境の山を越えないうちに、その知らせに接し、急遽、来た道を引き返した。
     すると大史の董狐が、「趙盾、その君を弑す」と記録に書きつけて、朝廷内に公示
     した。
     「事実無根だ」
     趙盾は抗議したが、大皮は欧り消そうとしない。その言い分は、こうである。
     「あなたは正卿の身で、逃亡なさった。ところが、亡命を果さず、おめおめ国境へ
     向う途中から引き返してしまった。してみればまだ正卿の身分は残っているわけだ
     から、反逆者を討ってしかるべきです。それを果たさなかったのだから、主君を弑
     した責任者は、あなたでなくて誰でしょう」、趙盾は、こう言って嘆いた。「ああ、
     ”わが思いの深さが、かえって悲しみのもと”(逸詩)とは、まさにわたしのこと
     だ」

     後日、孔子はこの二人を次のように批評した。

     「董狐は立派な史官であった。法を曲げずにけばからず直書した。は立派な大
     夫であった。法のために甘んじて汚名を受けた。それにしても趙盾は借しいことを
     したものだ。国境を越えてさえいれば、汚名を被らずにすんだろうに」

     その後、趙盾は趙穿を奸計として、文公の子の黒臀(成公)を周から迎え入れ、霊
     公の跡を継がせた。壬申の日、黒臀は武公の廟に詣て即位した。

   ★ 史官董狐の論断はいかにも痛烈である。まさに春秋の筆法である。いさぎよくこれ
     に服した趙盾の態度はさらにあっぱれであった。かれは、文公の娘の生んだ異母弟
     趙括を自分の後継盾として推し、自ら引責隠退したのであった。


 

 No.47

 【RE100倶楽部:環境配慮エネルギー事業篇 Ⅷ】

● 寄棟屋根でも太陽光パネルを10キロワット以上搭載

今月28日から積水化学工業は、寄棟タイプの屋根に大容量太陽光パネルを搭載した鉄骨系住宅「スマート
パワーステーションGR」を販売開始する。これは今年1月に発売した「スマートパワーステーション“百%
Edition”」に続く、「エネルギー自給自足百%」の実現を可能とする住宅の第2弾。この商品の特徴はは太
陽光パネル一体型の寄棟タイプ屋根(「スマートGルーフ」)で、延床面積30坪台の一般的な住宅でも10
キロワット以上の太陽光パネルが設置可能できることにあり、“百%Edition”タイプでは、13.9kWの太陽光
パネルと、12kWhの蓄電池を搭載、電動車両の蓄電池と連係する「VtoHシステム」を採用する。電気自動車
(EV)に30kWhの蓄電池がある場合、理論上、「エネルギー自給自足」が実現できる。なお、太陽光パネ
ルは京セラ製。

 Jul. 7, 2017

このほかにも、ZEH(ゼロエネルギー住宅)仕様を標準化した。サッシ枠に断熱材を追加した「高断熱アル
ミ樹脂複合サッシ」を採用。標準仕様はペアガラスで、オプションとしてトリプルガラスタイプも用意。基
礎の断熱材は厚さ2倍、幅1.5倍に、天井の断熱材は厚さ1.4倍に増強し、寒冷地エリアの断熱仕様を一
般地で標準化した。販売価格は、3.3平方メートルあたり74万円台から(税別)。なお、販売価格は延
床面積127.13平方メートルモデルプランの試算で、建物本体材料費と工事費のほか、太陽光発電システム
9.09キロワット(パネル・パワーコンディショナー含む)、蓄電池5.0キロワットアワー、HEMS、オ
リジナル全室空調システム(快適エアリー)の価格を含み。初年度700棟、次年度以降は年間千棟の販売
予定。これらの商品は、フレキシブルエネルギータイリング事業の「ソーラータイル」部門の一般住宅領域
1つの先駆事例となる。それにしても寄せ棟だけで10キロワット超とは驚きだ。

 


【ピエゾタイルの技術事例】

❏ 特開2016-134404  振動発電素子及びそれを用いた振動発電デバイス

今回は、産業機械、自動車、鉄道車両、航空機等の運転/操縦により発生する振動、あるいは、これらに伴
う道路、橋梁や建築物等の振動など人体の運動による環境振動を電気エネルギーに変換振動発電装置とその
製造方法をエプソン社の特許事例参考にし小考してみたい。

環境振動を電気エネルギーに変換方法には、✪電気-機械変換能力を有する圧電体層を電極で挟持する振動
発電素子――振動発電素子の変位が大きいほど高い発電量が期待でき、電気エネルギーの変換効率の向上を
狙い、振動発電素子と環境振動との共振利用する方法があり、✪一方、環境振動は一般に200Hz以下の
周波数をもち、通常構成の振動発電素子の共振周波数よりも低い範囲で、種々の用途等に応じた振動発電素
子の構成が要求される制約があり、その共振周波数を環境振動の周波数レベルにまで十分に低下させること
がと難しいが、これを効率的に発電――圧電体薄膜の下にある金属基板を薄くし、共振周波数の低下を図る
一方、破壊靱性低下を防ぐ材料を選定して構成――方式が提案されているが、❶圧電体層の圧電定数を向上
させ、❷また共振周波数の低下を図り環境振動との共振を好適に利用することにより、環境振動に応じた大
きな変位を得て効率的に変換できる振動発電素子/振動発電デバイスを、下図1のように、基板に、第1電
極60と、少なくともPb、Nb及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電体層
70と、第2電極80と、が順次積層され、圧電体層70を構成する結晶は正方晶の構造を有し、この結晶
は基板10に{100}配向しており、この結晶の格子内には、積層方向に対して垂直な(100)面及び
(001)面を有する各領域が混在させることにより、環境振動との共振を利用した大きな変位を得て効率
よく電気エネルギーに変換できる振動発電素子を具備する振動発電デバイスを実現する。以下、関連事項抜
粋掲載(詳細は図をダブクリ参照)。

【符号の説明】

1,1A~1F  振動発電デバイス、  10  基板、  11  隔壁、  12  空間、  13  インク供給路、  14  連通路、 
15  連通部、  20  ノズルプレート、  50  振動板、  51  弾性膜、  52  絶縁体膜、  60  第1電極、  70  圧電
体層、  70a  下地層、  70m  メイン層、  71  ドメイン、  80  第2電極、  120  回路、  121  配線、  300 
振動発電素子

【図1】実施形態1に係る振動発電素子を示す分解斜視図
【図2】実施形態1に係る振動発電デバイス及びその変形例を示す断面図

【概説】

✪この提案基板に、第1電極と、少なくともPb、Nb及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合
酸化物からなる圧電体層と、第2電極と、が順次積層され、圧電体層を構成する結晶は正方晶の構造をもち、
結晶は基板に{100}配向しり、格子内には、積層方向に対して垂直な(100)面及び(001)面をもつ各領域
を混在させた振動発電素子。このように、90°ドメイン回転を利用し変位させる圧電体層の圧電定数を向
上させることができる。圧電特性の優れた大きな変位を得られるので高い発電量が期待でき、環境振動を電
気エネルギー変換でき有利であり、その上、圧電体層全体の剛性を低下できるので、大きな変位がさらに得
られる。また、圧電体層全体のヤング率の低減に伴う共振周波数の低下により、共振周波数を環境振動の周
波数レベルに十分に低下できる。

✪ ここで、前記圧電体層のうち、少なくとも一部の層を構成する複合酸化物は、下記の一般式(1)で表
されるものであることが好ましい。
 
  xPb(Mg,Nb)O3-(1-x)PbTiO3・・・(1)
  (0.20≦x≦0.60)

これによれば、90°ドメイン回転を利用して変位を生じさせる振動発電素子の圧電定数をり向上でき、共
振周波数を環境振動の周波数レベルまで十分に低下できるため、環境振動との共振を利用した大きな変位を
得てより効率よく電気エネルギー変換できる振動発電素子になる。

✪また、前記結晶の結晶子径D(002)が15nm以下であることが好ましい。これによれば、結晶サイズが
小さい分、効率よく90°ドメイン回転を起こせるため、圧電体層の圧電定数がり向上でき、共振周波数を
環境振動の周波数レベルまで低下できる。よって、環境振動との共振を利用した大きな変位を得て効率よく電
気エネルギー変換できる。また、前記結晶格子における結晶子径D(200)及び結晶子径D(002)の比(D(200)
/D(002))が3より大きいことが好ましい。これによれば、結晶子径D(002)が結晶子径D(200)より小
さい分、効率よく90°ドメイン回転を起こすことができ、圧電体層の圧電定数をより向上でき、共振周波
数を環境振動の周波数レベルまで低下できる。 

✪また、この圧電体層は、第1電極側に形成された下地層と、下地層上に設けられたメイン層と、を具備し
下地層は、メイン層を構成する複合酸化物のc軸と1%未満の格子整合性を有し、かつメイン層を構成する
複合酸化物のa軸及びb軸と1%以上の格子不整合を有することが好ましい。これによれば、メイン層とな
る圧電材料の配向制御が容易となり、正方晶である圧電材料のc軸成分を安定化でき、圧電体層の圧電定数
を向上ができ、共振周波数を環境振動の周波数レベルまで低下できる。また、前記メイン層を構成する複合
酸化物のc軸とa軸の比(c/a)が1.026~1.015であることが好ましい。これによれば、効率
よく90°ドメイン回転を起こし、圧電体層の圧電定数をより向上でき、共振周波数を環境振動の周波数レ
ベルまで低下でき、環境振動との共振を利用した大きな変位を得て更に効率よく電気エネルギーに変換でき
る振動発電素子となる。

✪また、下地層がPZTであることが好ましく、メイン層となる圧電材料の配向制御が更に容易となり、共
振周波数を環境振動の周波数レベルまで低下でき、環境振動との共振を利用した大きな変位を得て効率よく
電気エネルギー変換できる振動発電素子となる。また、この圧電体層全体のショートモードにおけるヤング
率が、下地層のショートモードにおけるヤング率の25%未満であることが好ましい。また、圧電体層全体
のショートモードにおけるヤング率が、圧電体層全体のオープンモードにおけるヤング率の50%以下であ
ることが好ましい。オープンモードに対してショートモードのヤング率が小さい分、圧電体層全体が、圧電
効果の寄与が大きく電気-機械変換能力に優れ、環境振動を電気エネルギー変換に極めて有利である。

✪この基板と、基板により少なくとも一部が画成された空間と、空間の上部に設けられ、何れか一つに記載
の振動発電素子と、を具備することを特徴とする振動発電デバイスでは、90°ドメイン回転を利用し変位
を生じさせる圧電体層の圧電定数を向上でき、圧電特性に優れ大きな変位を得ることができ、高い発電量が
期待でき、環境振動を電気エネルギー変換に有利で。その上、圧電体層全体の剛性を低下でき、大きな変位
に有利で、圧電体層全体のヤング率の低減に伴う共振周波数の低下により、共振周波数を環境振動の周波数
レベルまで低下さできる。

【実施の形態】

図1は本発明の実施形態1に係る振動発電素子を搭載した振動発電デバイスを示す分解斜視図である。図2
(a)~(b)は発電振動デバイスの断面図であり、特に図2(b)は、振動発電素子が並設された発電振
動デバイスの変形例を示している。図示するように、基板10には、該基板10の少なくとも一部(隔壁
11)によって区画された空間12が形成されている。基板10は、例えばシリコン単結晶基板を用いるこ
とができる。 基板10の一方面側には振動板50が形成されている。振動板50は、例えば基板10上に
設けられ、二酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられ、酸化ジルコニウムからなる絶
縁体膜52と、により構成できる。ただし、前記の例に制限されず、基板10の一部を薄く加工して弾性膜
として使用することも可能である。

絶縁体膜52上には、例えばチタンからなる密着層を介して、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極
80と、で構成される振動発電素子300が形成されている。ただし、密着層は省略することが可能である
。図1では省略しているが、振動発電素子300の第1電極60及び第2電極80からは配線121が引き
出され、回路120に接続されている。環境振動に対して上記の振動板50や振動発電素子300が共振し
て空間12内に大きく撓み変位し、振動発電素子300の電気-機械変換能力によって電気エネルギーが生
成されて配線121を介して回路120から取り出される。

圧電体層70うち少なくとも一部の層は、電圧印加時に主として変位特性に寄与するメイン層70mとされ
ており、特に本実施形態の圧電体層70は、詳しくは後述するが、第1電極60側に形成された下地層70
aと、下地層70a上に設けられたメイン層70mと、を具備するように構成されている。ただ、下地層7
0aは省略可能であり、圧電体層70全体がメイン層70mとなるように構成することもできる。

本実施形態では、振動発電素子300と該振動発電素子300の駆動により変位が生じる振動板50とを合
わせてアクチュエーター装置と称する。また、振動板50及び第1電極60が振動板として作用するが、こ
れに制限されない。弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方又は両方を設けずに、第1電極60のみが振
動板として作用するようにしてもよい。また、振動発電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにし
てもよい。何れにしても、基板10により少なくとも一部が画成された空間12の上部に振動発電素子300
が設けられている、すなわち、環境振動に応じた振動発電素子300の撓み変形領域が空間12によって好適
に確保されているようになっていればよい。 

尚、振動発生素子300の上方に、所定の空間を確保するとともに振動発生素子300を包囲する包囲板を
設けるようにしてもよい。これにより、振動発生素子300を保護することができ、また振動発生素子300
が薄膜(厚さが3μm以下、例えば0.3~1.5μm)である場合には、振動発電デバイスのハンドリン
グ性も向上させることができる。包囲板による振動板50の拘束条件が振動板50や振動発生素子300に
影響を与える場合には、かかる影響を考慮することが好ましい。


【図3】実施形態1に係る振動発電素子について説明する図
【図4】実施形態1に係る振動発電素子について説明する図

✪第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられている。上記の第1電極60やこ
の第2電極80の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、白金(Pt)、イリジウム(Ir)
等の貴金属が好適に用いられる。振動板50及び振動発電素子300の変位の向上や共振周波数の調整のた
め、第2電極80上に金属層(金属材料からなる重り)を設けるようにしてもよい。ここで、本実施形態に
係る振動発電素子の構成及び機能について、図3~4を用いて説明する。このうち図3は、いわゆる90°
ドメイン回転等について説明する図であり、図4は、圧電体層全体のヤング率、共振周波数及び圧電特性の
関係を示す概念図である。ここで、本実施形態に係る振動発電素子の構成及び機能について、図3~4を用
いて説明する。このうち図
3は、いわゆる90°ドメイン回転等について説明する図であり、図4は、圧電体層全体のヤング率、共振
周波数及び圧電特性の関係を示す概念図である。

実施形態の振動発電素子300は、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、が順次積層されて
おり、圧電体層70を構成する結晶は正方晶の結晶構造を有し、この結晶は基板10に{100}配向して
おり、この結晶の格子内には、積層方向に対して垂直な(100)面及び(001)面を有する各領域が混
在するものである。尚、積層方向は、振動発電素子300の厚み方向とも言い換えることができる。圧電体
層70のうち、少なくとも一部の層を構成するメイン層70mは、擬立方晶であるPb(M’1/3,Nb2/3)
O3と、正方晶であるPbM’’O3と、が固溶した正方晶セラミックスを含む、下記の一般式(2)で表さ
れる複合酸化物からなるものとして構成とされている。このようなペロブスカイト型構造、すなわち、AB
O3型構造では、Aサイトに酸素が12配位しており、また、Bサイトに酸素が6配位して8面体(オクタヘ
ドロン)をつくっている。一般式(2)においては、AサイトにPbが、BサイトにNb、M’及びM’’
が位置し、M’としてMg,Mn,Fe,Ni,Co,Zn等の+2価を取りえる金属種が用いられ、M’’
としてTi,Zr等の+4価を取りえる金属種が用いられる。ここでは、M’としてMgが、M’’として
Tiが用いられている。


✪つまり本実施形態では、メイン層70mは、ニオブ酸マグネシウム酸鉛(Pb(Mg,Nb)O3;PM
N)と、チタン酸鉛(PbTiO3;PT)と、が固溶した正方晶セラミックスを含み、更にABO3構造の
化学量論より鉛が過剰に存在する下記の一般式(3)で表される複合酸化物からなる構成とされている。こ
れにより、圧電定数の更なる向上が図られる。
  
  xPb(M’1/3,Nb2/3)O3-(1-x)PbTiO3      ・・・(2)
  xPb1+a(Mg1/3,Nb2/3)O3-(1-x)Pb1+aTiO3・・・(3)

(0.20≦x≦0.60が好ましく、0.30≦x≦0.45がより好ましい)

式中の記述は化学量論に基づく組成表記であり、ペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合
や元素の一部欠損等による不可避な組成のずれは勿論、元素の一部置換等も許容される。例えば、化学量論
比を1とすると、0.85~1.20の範囲内のものは許容される。M’やM’’の金属種は単独に限られ
ず複数種類が用いられても構わない。図4に示すように、メイン層70mでは、積層方向(振動発電素子300
厚み方向)に対して垂直な(100)面及び(001)面を有するドメイン71が結晶格子内に混在しており、
電場Eの印加により正方晶のa軸成分及びb軸成分がc軸成分に90°回転し、これにより圧電特性が発揮
れるようになっている。この本実施形態では、圧電材料の結晶の結晶子径D(002)が20nm以下、特に好
ましくは15nm以下とされており、焼成界面を介して配置され薄膜を構成する各柱状粒内に、強誘電体性
のドメイン71(いわゆるナノドメイン)が形成されている。これにより、効率よく90°ドメイン回転を
起こすことができ、圧電体層70の圧電定数を更に向上させることができる。

ちなみに、このような90°ドメイン回転を利用して変位を生じさせるメイン層70mを具備する圧電体層
70とは別に、90°ドメイン回転を伴わない圧電体層も知られている。しかし、かかる圧電体層は、90°
ドメイン回転のような角度関係で変位していないため、両者は根本的に異なったものである。また、実施形
態のメイン層70mとは別の、強誘電体性のドメイン内の電気双極子モーメントの誘起によって圧電特性を
発揮する圧電体層(例えばPZT)は、結晶構造が変化するモルフォトロピック相境界付近で圧電定数が極
めて大きくなる性質を利用して所定の組成比を実現するようにすることが多い。一方、本実施形態のような
90°ドメイン回転を利用するメイン層70mにおいて、特に上記の組成比から外れる範囲では、上記のP
ZTをも凌駕する変位が得られるようになる。


【図5】実施形態1に係る振動発電素子及び振動発電デバイスの製造例を示す図
【図6】実施形態1に係る振動発電素子及び振動発電デバイスの製造例を示す図

❏ 製造方法

次に、本実施形態の振動発電素子の製造方法の一例について、振動発電素子が複数並設される態様の振動発
電デバイスの製造方法の一例とあわせて説明する(上図5~6)。

まず、シリコンウェハーである基板用ウェハー110の表面に振動板50を形成する。図5(a)に示すよ
うに、振動板50は、基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(弾性膜5
1)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(絶縁体膜52)
と、の積層からなる振動板50を形成した。振動板50上に更に密着層を形成するようにしているが、密着
層は省略が可能。

次いで、振動板50上の密着層の全面に第1電極60を形成する。この第1電極60は、例えば、スパッタ
リング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液
相成膜などにより形成することができる。次に、図5(b)に示すように、第1電極60上に、下地層70
aを形成する。下地層70aの形成方法は限定されないが、例えば、金属錯体を含む溶液を塗布乾燥し、さ
らに高温で焼成することで金属酸化物からなる下地層を得るMOD(有機金属分解法)法やゾル-ゲル法等
の化学溶液法を用いて下地層を製造できる。その他、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、パル
ス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法など、液相法でも固
相法でも下地層70aを製造することもできる。尚、必要に応じ下地層70aは省略できる。

次に、図5(c)に示すように、第1電極60を、下地層70aと同時にパターニングする(第1電極パタ
ーン)。ここでのパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンミリング等のドラ
イエッチングにより行うことができる。尚、必要に応じて第1電極60のみをパターニングした後に、下地
層70aを形成もしくは省略してもよい。また、第1電極60及び下地層70aのパターニングを行わず、
後述するメイン層70mと同時に一括パターニングを行っても良い。

次に、メイン層70mを積層形成する。メイン層70mの形成方法は限定されないが、例えば、金属錯体を
含む溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層(圧電体膜)を得るMO
D法やゾル-ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層を製造できる。その他、レーザーアブレーション法、
スパッタリング法、PLD法、CVD法、エアロゾル・デポジション法など、液相法でも固相法でもメイン
層70mを製造することもできる。

メイン層70mを化学溶液法で形成する場合の具体的な形成手順例は、以下のとおりである。すなわち、金
属錯体を含むMOD溶液やゾルからなり、メイン層70mを形成するための前駆体溶液を作成する。そして
この前駆体溶液を、第1電極60上に、スピンコート法などを用いて塗布して前駆体膜74を形成する(塗
布工程)。この前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間乾燥させ(乾燥工程)、更に乾燥した前駆体膜を所
定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。前駆体膜を所定温度に加熱して保
持することによって結晶化させ、図5(d)に示すメイン層70mを形成する(焼成工程)。

上記の塗布工程において塗布する溶液は、焼成によりPb、Mg、Nb及びTiを含む複合酸化物層前駆体
膜を形成しうる金属錯体を混合し、当該混合物を有機溶媒に溶解または分散させたものである。Pbを含む
金属錯体としては、酢酸鉛等が挙げられる。Mgを含む金属錯体としては、酢酸マグネシウム等が挙げられ
る。Nbを含む金属錯体としては、ニオブペンタ-n-ブトキシド等が挙げられる。Tiを含む金属錯体と
しては、例えばチタニウムテトラ-i-プロポキシド等が挙げられる。メイン層70mを形成した後は、図
5(e)に示すように、メイン層70m上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、
各空間12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、必要に応じて更に
白金膜を作製するとともにパターニングし(第2電極パターン)、これにより第1電極60と圧電体層70
と第2電極80とからなる振動発電素子300を形成する。

後は、図6(a)に示すように、基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。そして、基板用ウェハー
110上に、マスク膜を新たに形成し、所定形状にパターニングする。基板用ウェハー110をマスク膜を
介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、図6(
b)に示すように振動発電素子300に対応する空間12等を形成する。尚、空間12の形成は、基板用ウ
ェハー110の振動発電素子300とは反対側からエッチング除去する手法のほか、基板用ウェハー110
の振動発電素子300の側方にある凹部71から形成するようにしてもよい。これによれば、いわゆる片持
ちの振動発電デバイスを作製しやすくなる。

その後は、常法に従い、基板用ウェハー110の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断
することによって除去し、所定のサイズに分割することによって、振動発電デバイスとする。実施形態の振
動発電素子の製造方法の一例について、振動発電デバイスの製造方法の一例とあわせて説明したが、振動発
電素子300の製造後、第1電極60及び第2電極80の間にバイポーラーの振動波形からなる電場を印加
するようにしてもよい(Wake-up処理)。電場は例えば40V以上、好ましくは45V以上が好適であり、
振動波形は三角波とすることができる。これにより、圧電材料における(001)配向成分の割合を高める
ことができる。このような効果は、チタン酸鉛の含有比が高いほど大きい。



【図7】理想状態やWake-up処理前後のドメイン構造について説明する図
【図8】実施形態2に係る振動発電デバイスの構成例を示す分解斜視図

一般的に、正方晶構造の圧電体では、c軸a軸長比(c/a)に起因する内部応力を緩和するため、図7(
a)に示すような90°ドメインを形成する。この時、外場の影響を受けない理想状態では、図中の符号C
で示すCドメイン(面直方向に分極を持つドメイン)と、図中の符号Aで示すAドメイン(面内方向に分極
を持つドメイン)の存在確率は1:1である。一方、本実施形態では圧電体層70、特にメイン層70mを
前駆体溶液を塗布することによる塗布法によって形成した。このため、前駆体溶液からの溶媒及び配位子の
分解/脱離に伴う膜体積の収縮と、基板と前駆体膜との熱膨張係数差から、前駆体膜に引っ張り応力が加わ
り、応力が無い状態と比較して基板面内に引き伸ばされた構造となっている。即ち、本実施形態ではAドメ
インが形成しやすい外場が存在しており、本来安定な90°ドメインを形成できず、図7(b)に示すよう
に内部応力的にエネルギーが高い準安定なAドメインとして一定数存在している。

 一方、Wake-up処理によってドメインの再配列が起こり、内部応力的に安定な状態へと推移しやすくなると
考えられる。但し、外場による引っ張り応力の影響はWake-up処理後も存在するため、理想的な1:1の存
在確立とならず、図7(c)に示すようにWake-up処理後もAドメインが多い存在比となる。このような変
化は、例えばX線によるピーク強度に基づいて確かめることができる。加えて、チタン酸鉛側ではc/aが
大きくなる、即ち内部応力が大きくなるため、Wake-up処理後のCドメインの存在比率は大きくなる。以上
説明した本実施形態によれば、環境振動との共振を利用した大きな変位を得て効率よく電気エネルギーに変
換することができる。本実施形態の振動発電デバイスは、いわゆる圧力室構造型、すなわち空間の四辺を画
成する隔壁11によって振動板50が保持された構造であるので、強度にも優れたものとなっている。ただ
し、振動発電デバイスは上記の構造に限られず、種々の変形が可能である。



【図9】実施形態3~6に係る振動発電デバイスの構成例を示す断面図
【図10】実施例での分極量(P)と電圧(E)との関係を説明する図
【図11】実施例でのX線回折パターンを説明する図
【図12】実施例でのX線回折パターンを説明する図



【ナノスーツという事業】

2013年に日本の研究チームが、昆虫などを生きたままで走査型電子顕微鏡にかけられたり、金属等の酸化腐
食防止コーティングとしても利用できる、真空から生体を保護できるコーティング技術「ナノスーツを」開
発されているが、害虫の侵入や付着を防止するためのフィルムとして応用展開されてきている。従来のフィ
ルムでは害虫忌避剤がすべて揮散してしまうと、害虫の忌避効果がなくなる。そのため、害虫の忌避効果を
長期間にわたって維持できない。そこで、下図の特許技術――複数の凸部をもつ凹凸構造を一方の表面にも
ち、凸部間の平均間隔が400nm以下の虫滑落性フィルムを、表面を水平方向に対し傾斜/表面を水平方
向に対し垂直にした状態で配置し、表面から虫を落下させ、表面の上方/背後に虫が侵入阻止する脱出防止
方法――が提案されている(特開2017-023151  虫侵入防止材、出防止材、虫侵入防止物品、虫脱出防止物
品、虫侵入防止方法および虫脱出防止方法 三菱レイヨン株式会社)。 


このように、ナノスーツを施すことにより、真空中でも生物を生かしたまま電子顕微鏡観察できたり、癌細
胞などの非真空下で三次元的観察できる時代にきている。「ネオコンバーテック」その対象領域は拡張し続
けている。大規模気候変動の断末魔模様下(あるいは、ラスト・ジャスティス)にあるかような昨今。ナノス
ーツを纏うことでわたし(たち)は、着実に未来を切り拓くという確信を抱いている。

                                              

 


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