● 世界初!有機半導体でドーピング増感現象を発見!
無機半導体産業においては、pn制御によって種々の半導体接合を形成することによっ
て、LSI(集積回路)、LED(発光ダイオード)に代表されるデバイスを自由自在に作
製するが、有機半導体は無機半導体に比べて半世紀遅れ、有機半導体のpn制御は分子
科学研究所らのグループが2年前に確立。その後、同研究グループが、加えた不純物
の分子(ドーパント)の個数に対する発生電子の個数(ドーピング効率※)が、有機
半導体の場合約10パーセントと、無機半導体(シリコン)の室温ドーピング効率が百
パーセントと比べ大変低い値。今回、同研究グループは、2つの有機半導体が混合さ
れた共蒸着膜ではドーピング効率が単独膜よりも大きくなるドーピング増感)ことを
発見した。
※ シリコン半導体では、シリコン(Si)結晶中にリン(P)をドーピングすると、ドー
パントであるPが母体のSiに電子を与えることで、n型化する。P+イオンのプラス
電荷に弱く束縛された電子が自由な電子になる効率をイオン化率といい、ドーピ
ング効率にほぼ等しい。Siでは、室温でほぼ100%である。今回の結果は、有機半
導体中のCs2CO3+ドーパントに束縛された電子が自由になる効率(イオン化率)
を10%から百%に増大できたことを意味する。
典型的な有機半導体として、フラーレン(C60)と無金属フタロシアニン(H2Pc)から成る
共蒸着膜(C60:H2Pc)に、ドナー性ドーパント分子(Cs2CO3)をドーピングした系につい
て、ケルビンバンドマッピング法※によって発生した電子数を測定。下図1にドーピ
ング効率のCs2CO3ドーピング濃度依存性を示します。H2Pc単独膜(青)、C60単独膜(
黄)の約10%に比べて、C60:H2Pc共蒸着膜(比率1:1)(赤)は、約50%と非常に増大。
下図2に、ドーピング効率の共蒸着膜中でのH2Pc比率依存性を示す。H2Pc比率99%まで
ドーピング効率は増え続け、97%に達した。このように、共蒸着膜にドーピングでドー
ピング効率が増大、「ドーピング増感効果」が起こっていることを確認。
※ 金属電極とn型有機半導体を接合すると、下に凸のバンドの曲がりが形成される。
本方法では、電位の有機半導体膜厚依存性からバンドの曲がりを直接描画し、曲
がりの幅と大きさから直接生成した電子の数を求められる。
そこで、C60:H2Pc共蒸着膜を、C60とH2Pcから成る超格子と仮定、電荷分離超格子モデ
ルを考案(下図3)。H2Pc, C60へのCs2CO3ドーピングでは、ドナードーパント(Cs2
CO3)は、H2Pc, C60双方に電子を与えることができ、両者をn型化します(下図3左)。
H2Pc, C60単独膜では、ドーピング効率は10%で、10個に1つのドナーがイオン化し
する。ここで、C60:H2Pc共蒸着膜にドーピングの場合、青矢印で示したH2PcからC60へ
の電子移動が引き続いて起こり、最終的にはすべてのドナー(Cs2CO3)がイオン化し
生じた電子はすべてC60側に移動、ドーピング増感が引き起こされる(下図3右)。
なお、H2Pcはキャリア供給層として働いていることになるので、H2Pc比率が増えると、
ドーピング効率も増える(上図2)。
有機太陽電池においては、励起子を解離(イオン化)して光電流を発生させるために
H2PcからC60への電子移動(青矢印)を利用。(光電流増感)。今回のドーピング増感
は、ドーパントをイオン化するために、全く同じ電子移動を利用し、光電流増感のド
ーピング版と考えているという。なお、アクセプタードーピングに関しても、同じド
ーピング増感現象を観測しており、これは、一般的に起こる現象だとしている。
今回の発見とイオン化率増感を説明する電子移動モデルは、世界で初めて。有機太陽
電池の光電流を高効率で発生させるために、1991年に提案した混合接合(バルクヘテ
ロ接合)のドーピング版に相当する意味を持つ。ドーピングによるpn制御技術は、
有機太陽電池のみならず、有機トランジスタ、有機LED等の有機デバイス一般に波及
効果がある。将来、有機半導体エレクトロニクスという新しい分野・産業を創造でき
る基本技術になると考えられるから、超ノーベル賞級?の発見となるに違いない。
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参考:「1種類の有機半導体による太陽電池の作製が、全ての有機半導体で可能にな
った!」2012.09.07
参考:特開2012-219355 真空蒸着成膜方法、真空蒸着成膜システム、結晶性真空蒸
着膜
● 最新ワイヤレス充電技術
ワイヤレス蓄電システムは、このオールソーラーシステムでは宇宙太陽光発電システ
ム用のウェイトは低いが地上の分散システムでは重要な技術分野となる。ここでは、
3つのワイヤレス蓄電の最新技術を考察する。上図の特開2014-220499「互いに置き
換え可能な給電側共振器および受電側共振器を有する無線送電システムの変換器」は
構成機器類の互換性を高め部品点数を減らし、メンテナンス性を改善する特徴――無
線送電システム10は、電気車両20のための無線充電システムの一部として使用。
給電側変換器12内の給電側共振器コイル、および受電側変換器16内の受電側共振
器コイルは、実質的に同一であり、互いに置き換え可能である。変換器12、16内
の共振器を保持する構造、ならびに給電側変換器12および受電側変換器16内の共
振器24に接地面を提供する板もまた、実質的に同一であり、互いに置き換え可能で
ある。各共振器は、キャリア巻取り器またはボビンで形成され、このキャリア巻取り
器またはボビンは、磁心を封入する実質的に同一でかつ互いに置き換え可能な2つの
半体を有し、電線コイルを巻装――をもつ。
また、上図の特開2014-223018「無線電力送信システム」では、マイクロ波エネルギー
が、1または複数の適応位相調整されたマイクロ波アレイエミッタを有する電力送信
機によってビーコンデバイスからビーコン信号が受信されるのに応答する位置に集中
する。充電されるデバイス内のレクテナは、マイクロ波エネルギーを受け取って整流
し、それをバッテリーの充電および/または主電力用に使用することで、無線電力送
信は、マイクロ波エネルギーを経て電子/電気デバイスに無線充電と主電力を供給す
るためのもの。
これは、電磁(EM)信号が単一の電力源から電力送信されると仮定するとEM信号は、距
離rに対して係数1/r2の割合で強度が減少する。従って、EM送信機から遠く離れたところ
で受信される電力は、送信された電力のうちのほんのわすかとなる。また、受信信号の電力
を増大するには、送信電力を上げなければならない。送信信号がEM送信機から3センチメ
ートル離れた位置で効率的に受信されると仮定すると、同じ信号電力を3メートルの有用な
距離から受信するには、送信電力を1万倍に上げることが必要。そのような電力送信は、生
体組織に有害の恐れがあり、すぐ近くの電子デバイスのほとんどと干渉する可能性が高いし、
熱として散逸することもあり、危険で無駄である。
また、指向性アンテナを利用するにはいくつかの課題があり、その一部として、アンテナがど
こを示しているかを認識することと、アンテナを追跡するのに必要な機械デバイスにノイズが
あって信頼性に欠けることと、送信の見通し線にあるデバイスの干渉が発生する。指向性電
力送信は、一般に信号を正しい方向で示し、電力送信効率を高めることができるようにデバ
イスの位置を知る必要があり、デバイスが正しい位置にあるときでさえ、受信するデバイスの
パスまたは近くにある物体の反射および干渉により、効率的な送信は保証されないなどの問
題解決に考案。
上図の特開2014-217044「セキュアな充電プロトコルを用いたワイヤレス充電システム」
は、ワイヤレス充電システムでは、電力受信機が、電力送信機から無線で電力を受け
取ることができるが、送信機と受信機との間で行うワイヤレス充電方法には、リプレ
イ攻撃、盗聴、無許可充電、無許可アクセスなど、様々なセキュリティ上の脅威が存
在する。例えば、攻撃者が正規の電力受信機になりすますことで、電力送信機から無
許可で充電を受けることが考えられる。また、攻撃者が、電力受信機と電力送信機と
の間で交換されるデータを盗取することが考えられる。
この問題解決として、タグ装置と、タグ装置を備える電力送信機と、電力送信機から
電力を受信する電力受信機を備える対象物と、電力送信機を制御する充電コントロー
ラと、からなるワイヤレス充電システムにおけるワイヤレス充電方法。充電コントロ
ーラが、対象物から充電要求を受信した場合に、チャレンジを生成して、このチャレ
ンジを、対象物を介してタグ装置に送信する。タグ装置は、受信したチャレンジに対
応する応答を、チャレンジおよび充電コントローラとの間で共有されている第一の秘
密データに基づいて生成し、対象物を介して充電コントローラに送信する。充電コン
トローラは、受信した応答が、送信したチャレンジと、第一の秘密データに対応する
ものである場合に、対象物が所定の範囲に位置するかを確認し、対象物が所定の範囲
に位置する場合に、電力送信機に対して電力を無線で送信するよう指示することで、
セキュアなワイヤレス充電プロトコルを用いたワイヤレス充電システムを提供もので
ある。
● 太陽光電力-商用電力自動切替調整機
ネクストエナジー・アンド・リソースは本日、太陽光発電システムと商用電源を自
動的に切り替える小型の装置「NR-PC1000」を発売する。価格は2万9700円(税別)。
現在、太陽光発電システムとして脚光を浴びているのは屋根上や遊休地などに太陽
電池モジュールを設置し、パワーコンディショナーを介して商用電源(系統)と接
続(連系)する方式。太陽光発電システムには連系を前提としないタイプの使い方
もある。オフグリッドと呼ぶ。そもそも商用電源が利用できない山間部や無人の島
などでの利用だ。個人が家庭などで利用することもある。太陽電池モジュールを蓄
電池と直結し、蓄電池をインバーター(直流交流変換器)につなぐ。インバーター
には交流のコンセントが備わっており――候や時間帯によって太陽電池の出力が下
がると、蓄電池の出力が次第に低下する。放っておくと、家電の電源が突然落ちて
しまうことを防止――家電などの利用が可能。欧米で先行する「マイクロインバー
ター」と同じ機能。
※ NR-PC1000は2つの電源と接続して使う。インバーター(変換器)からの入力と
商用電源(交流100V)からの入力だ。常時インバーター入力の電圧を監視して
おり電圧が低下すると15ミリ秒以内に商用電源に切り替わる。内蔵リレーを用
いており、切り替えは自動だ。太陽電池の発電が回復すると、再度インバータ
ー入力に戻す。
● 世界初、あらゆるICT機器に対応する高電圧直流給電システム
NTTファシリティーズは、販売中の高電圧直流(High Voltage Direct Current)給電シ
ステムについて、500kW級大容量HVDC整流装置(最高効率98%)および、HVDC
整流装置から出力されたDC380Vの電力をAC200VやAC100V、DC-48Vに変換する変
換装置:マイグレーション装置を開発、2013年6月より販売。HVDC給電システムは、
データセンター等におけるICT機器への給電電圧を約380Vにすることで、多くの実
績を有する通信用直流給電システムの高い品質を維持しつつ、交流給電システムと
比較して消費電力量を最大20%削減、給電信頼度10倍向上、電源スペース最大40%
削減の効果が期待できるものであり、交流給電システムと同等レベルの費用で構築
が可能だ。変換効率をさらに向上させた大容量HVDC整流装置をラインアップに追加
し、省エネルギーに貢献。また、マイグレーション装置をラインアップに追加する
ことで、あらゆるICT機器へのHVDC対応が可能となり柔軟なシステム構築が実現。
従来の交流給電(下図/左上)、低圧の直流給電(同/右上)、高電圧直流給電
(中央)について交流と直流の変換段数や、UPSとの接続を下図に示した。高電圧
直流給電は変換段数が少ないため、電力の変換ロスを抑えることできる。UPSと直
結することで信頼性も高い。細いケーブルを長く引き回すことができるため設置の
自由度が高くなる。ただし、高圧の直流を使おうとすると、交流とは異なる問題が
生じる。交流と違ってコンセントの設計が難しい。交流は電圧が最大値(例えば
100V)から0Vへ、さらに負の最大値へと1秒間に50回(または60回)変化する。こ
のためコンセント(ソケット)からプラグを引き抜くと、電圧が0になった時点で
電流が止まる。ところが直流は電圧が一定だ。さらに高圧であるため、引き抜いて
も短時間アーク放電が起きる。感電の危険性がある。
● 世界初 400V級直流給電用コンセントが米国安全規格「UL認証」取得
NTTファシリティーズと富士通コンポーネントは、このような課題を解決する400V
級直流給電用コンセント(ソケットとプラグ)を開発、2010年11月から販売を開始
している(下図)。ソケットとプラグはいずれも最大電圧430V、最大電流10Aに対応
する。絶縁耐圧は2500V(1分間)。挿抜回数は5000回だ。ソケットの寸法は41×41
×49ミリメートル、プラグの寸法は40×21.5×54.2ミリメートル。電流遮断時のア
ーク放電を防止に、ソケット側にアーク消弧モジュールを取り付け、通電・遮断制
御を確実にするほか、プラグが誤って抜けることを防ぐためにソケットに開閉スイ
ッチを内蔵。このスイッチと機械的スイッチが連動することで、感電を防ぎ、ソケ
ット、プラグとも難燃性素材を使用し、高電圧直流の危険性を減すことで、2014年
11月27日、両社はこのコンセントがUL認証を取得。認証の種類はUL 2695。直流給
電用ソケットとプラグの安全規格である。世界で初めての取得である。UL認証は電
気製品などの安全性を保証するものとして、米国で標準的に利用される。
「電力は貯められない」というのは昔の話である。今では蓄電池を使って、昼間に
余った電力を夜間に利用することができる。電力会社では高低差のある2つのダム
を組み合わせた「揚水発電」を利用して、余剰電力を水力エネルギーに変えて貯め
ておける。それでも電力が余ってしまう、だから再生可能エネルギーを急に増やさ
ないでほしい、と電力会社は主張する」(余剰電力で水素ガスを作る「Power to Gas」
2014.11.28 スマートジャパン)と掲載しているが、これは『再エネが一番安い時
代』(2014.11.28)で掲載引用した記事(日本ビジネスプレス「原油安でも再生エ
ネの方が安い、が世界の新常識 本来は先を行くべき日本が周回遅れになる危険性
も」2014.11.28)と期せずして同期している。そして、ならば水素がある。余った
電力を使って水を電気分解すれば、水素ガスと酸素ガスを発生させることが可能だ。
電力(パワー)からガスを作るので、欧米では「Power to Gas」と呼ぶ。電力を貯め
る新しい方法として、ドイツをはじめ先進国で研究開発が活発になってきたという
から、これこそわたしが提唱する『オールソーラーシステム』と合致し、その背景
としての『デジタル革命渦論』があるというわけだ。そろそろ次のステージ展開の
準備ということになるのだが・・・。
● 彦根城フェスのフィナーレイベント 流鏑馬
流鏑馬(やぶさめ)は、疾走する馬上から的に鏑矢(かぶらや)を射る、伝統的な騎射技術
稽古・儀式のこと。馬を馳せながら矢を射ることから、「矢馳せ馬(やばせうま)」と呼ばれ、
時代が下るにつれて「やぶさめ」と呼ばれるようになったといわれる。流鏑馬という言葉か
ら、連想したことは儀式としてのそれでなく、「状況(時代)を先導する所作」というイメージ
に突き当たった。それはそれまでの人知れぬ鍛錬、シャドーワークそのものであり、『愚図
にあやかる』(内村剛介)や『(人の本性は)知行不一致』(吉本隆明)の言葉に突き当たる
ものがある。そう思い当たったら、精神が昂揚し、天候の悪い中を押し、ウィスキーを買い
に出かけていた。