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人為的地球温暖化の記録

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  楚軍の弱点を利用せよ: 甲午の日、晦日、夜が明けると、楚軍は晋陣のまぢ
       かにせまって陣を布いた。晋軍の士兵に動揺の色が現われた。晋の范匃(范文
       子の子)は、厲公の前に進み出た。「こうなったら決戦です。長居は無用、井
       戸を埋め、かまどを取りこわして、出撃の準備を整えましょう。晋も楚も、も
       とをただせば天がつくった対等の国、楚を恐れるにはあたりません。これを聞
       くと范文子はかんかんに怒り、戈をとってわが子を迫いかけた。「国の存亡は
       天が決めることだ。おまえのような若造に何かわかる」だが、晋軍の内部では、
       積極論が優勢を占めた。欒書は言った。「楚軍は軽挙盲勤しているだけです。
       こちらが守りを固めて三日も持ちこたえれば、必ず退却します,その機をのが
       さず迫撃に移れば、勝利はわがものです」郤至も言った。「禁軍には六つの弱
       点があります。これを利用しなければいけません。まず第一に、二人の卿(子
       反と子重)の間が不仲であること。第二に、共王の親兵がすべて旧臣であるこ
       と。第三に、楚陣の一翼をになう鄭の陣が不備であること。第四に、かりあつ
       めた蛮族の軍が陣の布き方を知らぬこと。第五に、陣を布くのに縁起のわるい
       晦日を選んだうえ、物音をたて放題にたて行動を秘密にしなかったこと。しか
       も、陣を布いてからも、あのようにざわざわと落ち着かずにいること。第六に
       兵士たちが戦いが終わったあとの刑罰を恐れて、最初から戦意を失っているこ
       と。これが六つの弱点です。旧臣が必ずしも精鋭とはかどりません。そのうえ、
       忌むべき晦日を選んでいるのです。勝利は必ずやわが軍のものです」
       
       〈縁起のわるい晦日〉 戦いには陽を貴ぶ。晦日は月の終りで陰である。

Aug. 9, 2017
 
【珊瑚が人為的地球温暖化を記録】

8月21日、海洋研究開発機構らの研究グループは、父島(小笠原諸島)・喜界島(奄美群島)に生息
する、サンゴの一種、ハマサンゴの骨格のホウ素同位体比(注1)および炭素同位体比を分析し、海洋
酸性化による海水の pH低下が、石灰化母液のpHをも低下させ、石灰化に悪影響を及ぼし始めている可
能性があり人為的気候変化に伴う水温上昇の結果、サンゴ礁は近年頻度と強さが増しつつある白化現象
の脅威にさらされ、海洋酸性化もまたサンゴの石灰化に影し始めている可能性を示唆。サンゴ礁生態系
の未来を予測する上で重要な知見が得られたことを公表する。

♞ 公表ポイント

測定が難しい生物源炭酸カルシウムの、ホウ素同位体比の高精度分析に成功 過去100年間の人為起源の二酸化炭素の地球表層への排出に伴う海洋酸性化の履歴を、サンゴ骨格
のホウ素・炭素同位体から明らかに 海洋酸性化がハマサンゴの骨格形成に悪影響を及ぼしている可能性を示唆。

産業革命以降、大気中の二酸化炭素の濃度は上昇し、海水のpHも急速に低下しつつある。海洋酸性化は、
炭酸カルシウム(CaCO3)骨格を生成する海洋生物(サンゴ、貝、ウニなど)の石灰化阻害を通じて海
洋生態系だけでなく、人間の経済活動にまで悪影響することが懸念される。

従来、海洋酸性化による海水のpH低下は、石灰化母液のpHを大きく低下させることはないという説が一
般的であった。石灰化母液にはホメオスタシス機能(恒常性:人間の体温のように、環境の変化によら
ず状態を一定に保とうとする生理作用)があり、サンゴが能動的にpHを調整している可能性が指摘され
ている。しかしながら、本研究の結果は、先行研究の予想に反して石灰化母液のホメオスタシス作用の
機能が低下している可能性を示唆するものである。pH指示役と共焦点顕微鏡を用いて石灰化母液のpHを
可視化した別の先行研究からも、石灰化母液のpH低下は、炭酸カルシウム飽和度を低下させ、最終的に
石灰化を阻害することが示唆されている。従って、海洋酸性化は父島・喜界島に生息する塊状ハマサン
ゴの石灰化母液に対してすでに悪影響を及ぼし始めていると考えられる(上/下図ダブクリ参照)。 


♞ 今後の展望

塊状ハマサンゴは造礁サンゴの中でも特に環境ストレスに対する耐性が高いことが分かっており、赤道
湧昇や火山性の二酸化炭素漏出によって自然状態で海水が酸性化しているガラパゴス諸島やパプアニュ
ーギニアなどでもその生息が確認されている。従って、塊状ハマサンゴよりも海洋酸性化に対して脆弱
な他の造礁サンゴは、より大きな影響を被っている可能性がある。今後は、ハマサンゴ以外の造礁サン
ゴの骨格についても、ホウ素同位体測定を行い、海洋酸性化による影響をより詳しく評価する必要があ
る。

 Keita Fukumoto

【未来の農業:培養肉時代とは何か】

培養肉(ばいようにく:Cultured meat )とは、動物の個体からではなく、可食部の細胞を組織培養する
ことでつくられた肉のこと。動物を屠殺する必要がない、厳密な衛生管理が可能、食用動物を肥育する
のと比べて地球環境への負荷が低い、などの利点があり、従来の食肉に替わるものとして期待されてい
る。現在のところ、高価であることが培養肉の課題11つである。しかし、技術の発展によって、従来
の食肉と同等程度までに低価格化することができると予測されている。一方で、人工的に生産された肉
を食することに否定的な意見もあるなか、21世紀において、いくつかの培養肉研究プロジェクトが実施
されている。2013年8月にオランダのチームによって世界初の培養肉ビーフバーガーが実現し、ロンドン
でデモンストレーションとして食されている(ヤバすぎる!「培養肉ハンバーグ」の衝撃 ,東洋経済オン
ライン、 2014.12.27)。 

  Cultured meat < Wikipedia

2013年8月、マーストリヒト大学のマーク・ポスト博士が、世界で初めて 再生医療に用いられているも
のと同じ多くの組織工学技術を用いて製造され、ロンドンで「カルチャー・ビーフ・バーガー・パティ
ー」として公表されている。日本でも理化学研究所の精神生物学研究チームのメンバーである福本景太
氏――培養ベンチャー技術責任者は培養肉を大量生産する目標を掲げ、牛の胎児の血清(1リットル10
万円)代替ビール酵母を使い成長因子のタンパク質(不詳)を加え製造(特許出願中?)――らが研究
開発を行っている。申請中の特許はわからないが、下のような関連特許※で示されている「ミオシンや
アクチンなどの筋肉タンパク質を含む原料」を「代替ビール酵母」の導出(あるいは遺伝子改変)タン
パク質を使えば、保健的機能性と嗜好性向上効果に優れた新しい食品に変換できる。でも、でも、何か
気味悪い感じは拭えないね。

※ 関連特許

❏ 特開2017-086079  メイラード反応を利用して機能性を強化した素材および
                        これを用いた食品・ペットフード

【概要】

家畜、家禽、魚介類等の筋肉タンパク質(ミオシンやアクチン)をプロテアーゼ処理(タンパク質を分
解)して得られる分解物中には、血圧降下ペプチドや抗酸化ペプチドなどの生理活性ペプチドが見つか
っている。筋肉タンパク質(豚骨格筋アクトミオシン)分解物中から Asp-Leu-Tyr-Ala、Ser-Leu-Tyr-Ala、
Val-Trpといった抗酸化ペプチドを発見し、これらの経口投与が抗疲労作用等の保健的機能を示すことを
明らかにしている。また、筋肉(畜肉および魚肉)タンパク質をプロテアーゼ処理(酵素分解)させる
ことにより得られるペプチド性素材が、嗜好性向上効果を有することも見出している。一方、動物(家
畜、家禽、魚類等)の皮膚、骨、軟骨、腱などを構成する重要なタンパク質としてコラーゲンがある。
コラーゲンをプロテアーゼ処理(分解)して得られるペプチド(コラーゲンペプチド)も、食品や化粧
品などに利用されている。しかし、コラーゲンが極端に偏ったアミノ酸組成(グリシン33%、プロリ
ン+ヒドロキシプロリン22%、アラニン11%)であるために、分解により生成するペプチドの機能
は非常に限定され、抗酸化活性も筋肉タンパク質分解物と比べるとかなり低く、嗜好性の面でも魅力を
欠く。そこで、保健的機能性(抗酸化作用)や嗜好性の面で魅力に乏しいコラーゲンペプチドを、食品
やペットフードに利用できる付加価値の高い素材にするために、メイラード反応を利用。すなわち、コ
ラーゲンペプチドに還元糖を加え、これを加熱処理することによりメイラード反応生成物を生じさせ、
保健的機能性(抗酸化作用など)と嗜好性向上効果を備えた食品・ペットフード素材を完成させる。

 JP 2017-86079 A 2017.5.25

すなわち、上図の様にミオシンやアクチンなどの筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理(タ
ンパク質を分解)して得られるペプチド含有物にペプチド含有物に対し、重量比で0.1~2の還元糖
を加え、これを加熱処理することによって得られる素材で、加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成
物と残存するペプチドにより保健的機能性と嗜好性向上効果に優れた素材を得る。

【特許請求範囲】

筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理して得られるペプチド含有物に、該ペプチド含
有物に対して重量比で0.1~2の還元糖を加え、これを加熱処理することによって得られる素
材であり、前記加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成物と残存するペプチドとを含むことを
特徴とする、保健的機能性と嗜好性向上効果を備えた食品素材またはペットフード素材であって、
前記保健的機能性が、抗酸化作用、抗ストレス作用、または抗健忘作用によるものである食品素
材またはペットフード素材 筋肉タンパク質がミオシンおよびアクチンである、請求項1記載の食品素材またはペットフード
素材プロテアーゼがパパインである、請求項1または2記載の食品素材またはペットフード素材 加熱調製時にpH調整剤を添加して調製される、請求項1~4のいずれかの項記載の食品素材
またはペットフード素材 加熱調製時にpH調整剤を添加して調製される、請求項1~4のいずれかの項記載の食品素材ま
たはペットフード素材 pH調整剤が炭酸ナトリウムである、請求項5記載の食品素材またはペットフード素材 請求項1~6のいずれかの項記載の素材を用いて製造した食品またはペットフード 筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理して得られるペプチド含有物を、還元糖を含む
組成物に加え、これを加熱処理することによって調製される食品またはペットフードであり、前
記加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成物と残存するペプチドを含むことを特徴とする、保
健的機能性と優れた嗜好性を備えた食品またはペットフードであって、前記保健的機能性が、抗
酸化作用、抗ストレス作用、または抗健忘作用によるものである食品またはペットフード

           

 ● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

        第4章 欠陥品「厚生年金」がつぶれるのは当然だった 

               天下り役人に食い物にされた「厚生年金基金」

    本来、性質の違う厚生年金の「代行部分」と「上乗せ部分」を無理やりくっつけるべ
    きではありませんでした,木に竹を接いだようなものです。
    少し考えればわかるようなものなのに、なぜ、こんな不合理な制度をつくってしまっ
   たのでしょうか。

    それは、厚生省の役人にとっても、金融機関にとってもメリットがあったからです。
   上乗せ部分(三階部分)に厚生年金の代行部分(二階部分の一部)を合わせて基金を
   つくると、金額が大きくなります。基金の運用を担当する金融機関にとっては、運用談
   が大きくなって利益が増えます。

    厚生省の役人は、厚生年金基金を天下り先にすることができます。厚生年金は国の制
   度ですが、厚生年金基金は、企業、業界ごとにつくられる私的年金ですから、天下り先
   がたくさんできます,

    業界で厚生年金基金をつくると、加盟各社が、運営するための事務員を出さなければ
   いけませんが、加盟各社は事務員を出すのを嫌がりました。「じやあ、うちから出しま
   しょうか」と厚生省が中し出ると、「それは、ありがとうございます」と業界の人はみ
   んな喜びます。こうして、厚生省からたくさんの人が天下りしました。厚生省にとって
   は、厚生年金基金は天下り先として非常に重要だったのです。

    AII投資顧問事件をきっかけに、厚労省が厚生年金基金への天下りを調べたところ、
   厚生年金基金の約三分の二に当たる366基金に天下りしており、その時点で、国家公
   務員のOBは721人に上っていることがわかりました(2012年3月厚生労働省公
   表),

    基金のほうからすると、厚労省から役人を迎えているから大丈夫だと思っていたよう
   です。ところが、制度に欠陥がありましたので、多くの基金が結果的に破綻してしまい
      ました。天下りを受け入れたのに破綻してしまって、基金の人たちは困惑しました。
      天下った厚労省の役人たちも、制度の欠陥をよく知らないで天下っているので、破綻
   して驚いたのではないかと思います。天下った人たちは、石もて追われるような状態に
   なりました,

    かつては厚生年金基金の加入者は1000万人くらいいましたが、厚生年金基金が成
   り立だなくなり、多くの基金が解散をしたことで、確定給付企業年金などに移行してい
   ます。確定給付企業年金は、厚生年金の代行部分はなく、厚生年金とは分離されていま
   す。企業による純粋な私的年金です。

               第4章3節 天下り役人に食い物にされた「厚生年金基金」

   
                    「国民年金基金」も役人の天下りに利用された

    私が大蔵省にいたころ、厚生省のある役人が、「実は、国民年金についても、厚生年
   金基金と同じスキームで基金をつくりたい」と相談を持ちかけてきたことかあります。
    私は、一階部分の国民年金にしか入っていない自営業者などには、二階部分に相当す
   るものとして、民間の年金保険の保険料を全額控除にしてあげたらどうかと奨めました。

    保険料を所得から全額控除できるようにすれば、その分だけ所得税が安くなります。
    個人年金は「生命保険料控除」の晨高額が五万円(現在は四万円)でしたが、それを
   「社会保険料控除」の扱いで全額控除にしてあげれば、メリットが大きくなります。基
   金をつくらなくても民間の保険でも同じことができますので、あえて基金をつくる必要
   はないと思っていました。
    しかし、それでは厚生省にとって「うまみ」かおりません。基金をつくらないと天下
   りができないからです。その意図は、見え見えでした。
    国民年金基金は、一九九一年に制度が施行されました。都道府県ごとの地域型国民年
    金基金と、同種の事業による職能型国民年金基金があります。結局、地域型四七基金、
    職能型25基金の計72基金がつくられました。

    2012年時点で、厚労省は72の国民年金基金のうちの約9割の63基金に、厚労
   省と日本年金機構(社会保険庁)のOBが159人天下りしていたと公表しています。
    国民年金基金をつくった役人は、天下り先をたくさんつくったというわけです。皮肉
   を込めていえば、国民の老後ではなく、自分たちの老後の仕組みを考えていたのです。
    驚いたことに、私のところに「国民年金基金をつくりたい」と相談しにきた厚生省の
   役人は、その後、国会議員になりました。100人以上の天下り先をつくったのですか
   ら、役人にとっては大ヒット企画ですし、さぞかし厚生省の同僚から「よくやった」と
   熹ばれたのでしょう。役人は、天下り先をつくることに間しては、本当に知恵が働きま
   す。

    国民年金基金は、全額控除の考え方は取り入れています。それならば、基金をつくら
   なくても民間の年金保険を全額控除してあげれば、まったく同じことができたはずで
   す。民間の年金保険も、国民年金基金も、運用をしているのは信託銀行や投資顧問です
   から、運用に間しては同じです。
    民間の商品に悦の恩典を付けるだけでできるものを、あえて余計な組織をつくったの
   は、天下り先の確保のためでしょう。こうした役人たちのもくろみで、年金制度は食い
   物にされているのです,
    ただし、国民年金基金が厚生年金基金と決定的に運うのは、国民年金基金には代行部
   分はなく、国民年金と完全に切り離されている点です。したがって、どんなに運用に失
   敗しても、国民年金に穴が空くことはありません。
    私は、国民年金基金の話が持ち上がったときに、「厚生年金基金と同じ仕組みをつ
   くったら破綻する」と強く主張しました。それを間いてくれたのか、国に納める国民年
   金部分と、私的年金である国民年金基金は別立てになっています。
    保険料の納付先も、国民年金は日本年金機構ですが、国民年金基金は、それぞれの基
   金に納めます。

    《性質の迫う二つの基金》

    ・厚生年金基金――公的年金の「代行部分」あり
    ・国民年金基金――公的年金と分離

    繰り返しますが、厚生年金基金のように運う性質の保険を一体化させて運用すること
   は、困難なことです。国民年金基金の場合は独立していますから、厚生年金基金のよう
   な運用の複雑さはなく、制度の安定性は高くなっています。
    国民年金基金の加入員数は平成二十七年度末で約四2万7000人。全額社会保険料
   控除されるという税制の恩典かおりますから、貯蓄代わりに利用している人も多いよう
   です。

                      第4章4節 「国民年金基金」も役人の天下りに利用された

※  「厚生年金基金問題」についての指摘  厚生年金基金は年金制度を冒すガンである
                   (「金融財政事情」1994年11月21日号 より転載)

    11月14日号では、公的年金には財テク運用は不適であることを指摘した。今回は、現在の
   わが国年金制度の問題点として、実態は企業年金という私的年金でありながら、公的年金である
   厚生年金の一部を「代行」する制度を俎上に上す。

     運用問題が制度の欠陥を浮き彫りにする
     最近の報道によれば、日米金融協議がいよいよ佳境に入っているようである。


    官庁や業界の担当者は日夜大変であろうが、部外者からみると、意外に興味深いものが含まれ
   ている。その代表例は年金資産の運用問題である。
    といっても、本邦系対外資系、信託・生保対投資顧問(銀行・証券)といった内外業際問題で
   はなく、運用問題を媒介としてみた年金制度問題である。年金資産の運用のおり方を検討すると、
   年金制度問題の本質が浮彫りにされる(図8)。

   
    年金資産の運用問題において、おもなアメリカの要求は、各々の積立金の運用について、

   ①厚生年金では投資顧問会社を参入させよ(享年要求)、
   ②厚生年金基金では(すでに投資顧問会社が参入しているので)運用規制を緩和せよ享年基金要
    求)、
   ③適格年金でも投資顧問会社を参入させよ(通年要求)、
  という三点であると報じられている。
  「享年要求」については、本誌(11月14日号36ページ)において現在の厚生年金では適切な
  リスク管理が行われていないことなどから投資顧問による財テク運用には重大な問題があることを
  指摘した。
   そこで、ここでは、「享年基金要求」と「通年要求」を通じて厚生年金基金と適格年金という企
  業年金のおり方を論ずることにしたい,

   ところで、前回の議論の前提として、諸外国において、公的年金では制度の永続性によって受給
  権が保証されているので賦課方式〔給付の原資を現在の保険料で賄う方式〕をとり、積立金は少な
  く所得移転による世代間扶養(世代と世代を思いやりの心で給ぶこと)の投割に徹している。一方
  私的年金では積立金により将来の年金給付を確保する必要があるので積立方式〔給付の原資を過去
  の掛金の積立金とその運用収入で賄う方式〕を採用しているが、積立金は年金受給者各々の老後の
  給付に要する貯蓄の総計であるので、受給者の代わりに一括して運用することが重要になっている
  ことを紹介した。

   企業年金の本質は私的年金である

   しかし、日本では、厚生年金基金(サラリーマンの上乗せ年金)や国民年金基金(自営業者の上
  乗せ年金)について、それらは任意加入の積立方式で運営されながら「公的年金」と称されている。
  その証拠に、掛金の税制上の取扱いは社会保険料控除の対象とされ、テレビコマーシヤルでも有名
  女優が「公的年金ですからお得」と加入を呼びかけている。しかしながら、それらは、いずれも任
  意加入で積立方式により自分の掛金で自分の老後をみる自助努力であるが世代間扶養の役割はない。
  このため、諸外国の基準からみれば「私的年金」といわざるをえない。なぜ、「公的」と称されて
  いるかといえば、それらが単に官製の制度であるからにほかならない。まずこの点を指摘しておき
  たい。

   また、周知のとおり、適格年金は任意加入でその財政運営は積立方式となっている。
   したがって、厚生年金基金と適格年金のいずれも、世代間扶養の役割はなく、自助努力により自
  分の老後のために自分の掛金を積み立て、その運用が不可欠な要素となっていることから、「私的
   年金」であるといってもよいであろう(ただし、厚生年金基金の代行部分を除く),
   私的年金の積立金について、効率的な運用が必要であるため投資顧問会社の参入など運用委託先
  の多様化を図ることや自己責任に基づき運用を行うために運用規制を緩和することは基本的な方向
  として正しい。とりわけ、適格年金は私的な上乗せ年金としては世界中で採用されている標準的な
    スキームであり、運用委託先の多様化や運用規制の緩和をぜひとも推進すべきである。

   厚年基金の代行制度は一元化に反する

   ただし、厚生年金基金には、この考え方をストレートに適用できない事情かおる。
   それは、厚生年金基金の代行制度である。つまり、厚生年金基金は、厚生年金の老齢年金給付を
  政府に代わって行い(代行)、さらにそれ以上(三割以上)の上乗せ給付を行う目的で設立されて
  いる。この結果、厚生年金基金の加人員は、厚生年金基金が代行している老齢年金給付に相当する
  保険料を政府に納めないで、その保険料を含む掛金を厚生年金基金に払い込むこととなり、その積
  立金の一部は厚生年金の資金ともいえるのである。

   そもそも、この代行制度は、年金専門家から財政運営が技術的に困難であるなどの問題点が指摘
  されており、世界中でもイギリスを除き採用されていないきわめて特殊な制度である。また、日本
  では、なぜ代行制度が必要であるのか、これまでまともに議論されたこともなく、その理由は必ず
  しも明確ではない。しかるに、現行の代行制度は、次のような現実問題を抱えている。
   まず第一に、代行制度は公的年金制度の一元化に反する。つまり、代行部分の保険料は本来厚生
  年金の給付のための原資となって世代間扶養のために使われるべきものであるが、代行制度のため
  脱漏してしまう。
   一方、各種の公的年金制度全体を長期的に安定化させるために、年金制度間調整などを行いつつ、
  199年をメドに年金制度の一元化が進められている。ところが、今後代行制度による脱漏額は巨
  額になることが予想され、この一元化の足かせとなりかねない。たとえば、1994年財政再計算
  による厚生年金の財政見通しや今後の厚生年金基金残高の伸びを一定(13%程度)と見込み、代
  行部分をその半分して、将来の姿を試算すれば、あと20年程度で厚生年金の本体分の積立金はほ
  とんどなくなる(図9)。

 

    なお、20年後における企業年金残高と公的年金残高の比率、つまり厚生年金基金残高(代行
   部分を除く)と適格年金残高(厚生年金基金の代行部分と同じと仮定する)の合計と厚生年金残
   高(代行部分を含む)の比率はI・九程度であるが、これは現在のアメリカにおける企業年金残
   高と公的年金残高の比率とほぼ同じであり、この試算の妥当性を示すものといえよう。

      厚生年金本体の財政を悪化させる

    第二に、代行制度はいわゆる逆選択を生じさせ、厚生年金本体に悪影響を与える。厚生年金基
   金を設立した場合、政府に納めないですむ保険料を免除保険料というが、免除保険料でより有利
   な給付が可能になることがある。これはいわゆる代行メリットといわれ、一般的には年齢構成の
   若い加入者を有する企業が享受することが多い。このような企業は、厚生年金基金を設立し、代
   行部分は厚生年金本体から抜け落ちる。
    この結果、厚生年金の本来の役割である世代間扶養に振り向けられる資金は減少するのみなら
   ず、抜け落ちた代行部分の代行メリットは、厚生年金本体のデメリットとなり、その財政を悪化
   させる。

    第三に、厚生年金基金の事務管理費が高いことである。その理由は、代行事務かおるからであ
   るといわれているが、このような社会保険事務は、個々の厚生年金基金でバラバラに行うより、
   すべて国等の窓口で一元的に行うほうが効率的である。 

    第四に、厚生年金基金に係る資産運用制度や税制上の優遇である。厚生年金基金は、官製の制
   度であるがゆえに、これまで多くの税制上の優遇を受けてきた。もっとも、最近、適格年金に対
   する税制が改正され、一定の適格年金については、厚生年金基金と同様に代行給付の2・7倍相
   当額まで特別法人税が免除されているので、厚生年金基金と適格年金の差はかなり少なくなって
   いる。
    しかし、資産運用面では、厚生年金基金について、信託・生保による運用のほか、残高の三分
   の一までではあるものの、投資顧問会社による運用が可能である。一方、適格年金については、
   信託・生保による運用のみで投資顧問会社による運用は認められていない。諸外国では、企業年
   金といえば適格年金をいい、その積立金の運用は投資顧問会社に最もふさわしいものとされて
   いる,                                   (日野利一)

                                                            この項つづく

  ● 今夜の技術

強誘電体]など空間反転対称性の破れた結晶構造を持つ物質は、p-n接合を形成しなくても光起電力が発
生することが知られていた。この光起電力は、シフト電流と呼ばれる量子力学的な光電流発生機構で生
じることが近年理論的に提案されている。シフト電流は、エネルギー散逸がほとんどない電流で、光電
変換効率の大幅な向上につながる可能性がある。しかし、シフト電流である明確な証拠は実験的に得ら
れておらず、実証に適した物質系も不明なままだった。東大などの研究グループは、今月21日、この
シフト電流=量子力学的な光電流の発生を、有機分子性結晶のtetrathiafulvalene-p-chloranil(TTF-CA)で
実証できたことを公表する。このことで異なる光照射条件でも駆動する環境発電デバイスなどへの応用
につながるというのだ。途方もない幾何級数的(exponentially)な科学進歩の社会に改めて驚かされる
と同時に、大きな溜め息をついている。


   


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