襄公21年(‐553)~定公4年( -506) / 中原休戦の時代
※ 荘公暗殺:この年の五月、莒(きょ)の君主が斉に挨拶に来た。且于の役※に
ついて、斉の了解を求めるためである。斉では、甲戌の日、都の北部で歓迎の
宴を張ったが、崔杼は病気と称して列縦しなかった。その翌日、乙亥の日、荘
公は病気見舞いにかこつけて視家を訪問したが、崔家に着くとまっすぐ崔姜の
部屋へ向った。崔姜は奥に逃げこみ、夫といっしょに横の戸口から外に抜け出
した。それとも知らぬ荘公は、柱を叩いて歌をうたい、崔姜に合図をしている。
荘公のお供をして来た賈挙(かいきょ)、ほかの従特たち外に残して、自分だ
け屋敷の中に入ると、出入口を残らず閉めた。突如、武装した兵士の一群が現
われ、荘公の周囲をとりかこんだ。肝をつぶした荘公は、台の上に駆けあがっ
て、「見のがしてくれ」と頼んだが、兵士たちはききいれない。「何でも約束
するから」と言ったが、やはりききいれようとしない。最後に荘公は、せめて
先祖の廟で自刃させてくれるようにと頼んだが、兵士たちはかぷりをふり、口
々に言った。
「殿の崔杼は、ただいま病気中、じきじきに御用を承ることはできません。わ
たくしどもは、あるじ崔杼屋敷の警戒に当たるもの、不義者を見つけ次第成敗
せよとの命令を受けております。あるじの命令以外、誰の命令も受けません」
荘公は、塀にとびついて逃げようと必死になった。その背後から矢が飛ぶ。矢
は股につきささり、荘公はのけぞって地面に落ちた。兵士たちは、すかさずと
どめをさした。荘公の直属の臣下たちは、荘公のためにたたかい次々と死を遂
げた。貿挙(前出の人物とは同名異人)、州綽(しゅしゃく)邴師(へいし)、
公孫敖(こうそんごう)、封具、鐸父(たくほ)、襄伊、僂堙(ろういん)、
この八人は崔杼の邸内で討死した。
祝侘父は、高唐にある別廟の祭典に出張していたが、帰って復命をすませると、
弁の服(祭典用の服)を着たまま、崔杼のに駆けつけ討死を遂げた。申蒯(し
んかい)は漁業税担当の役人であったが、知らせを聞いて家に馳せ帰ると、執
事を呼んだ。「家内と子供を連れてすぐ逃げてくれ。わたしは主君のために死
ぬ覚悟だ」だが、執事は、「ここで逃げたのでは、臣下として面目が立ちませ
ん」と同行を申し出、主従ともども討死を遂げた。そのほか、平陰の代官鬷蔑
(そうべつ)もその領地で崔杼に殺された。
※ 〈且于の役〉 二年前、莒は斉をむかえ討ち、斉の大夫杞梁を殺した。
【エネルギータイリング事業篇】
● 最新サーマルタイル技術事例:特開2017-135968 熱電発電装置
【概要】
ゼーベック効果により熱エネルギを電力エネルギに変換する熱電発電装置に関する。特開2015−57547号公報の排熱
活用システムは、排気ガスがバイパスされるバイパス通路と、排気管の外部に付着される熱電変換素子と、内部に
排気ガスが通過して冷却水を加熱させる第1排気ガス通路と、第1排気ガス通路を開閉する第1バルブと、を備え
る。さらにこのシステムは、排気管の内周面とバイパス通路の外周面との間に設けられる第2排気ガス通路と、バ
イパス通路の後端に配されてバイパス通路を開閉する第2バルブと、を備える。
このシステムでは、車両の過負荷走行時に、第1バルブは第1排気ガス通路を閉鎖し、第2バルブはバイパス通路
を開放する。排気ガスは、第2排気ガス通路に少量流動し、バイパス通路に大半が流動する。このように排気ガス
は、大半がバイパス通路に流動して、熱電変換素子をバイパスするようになる。に開示の装置は、熱電変換素子の
劣化を抑制するために、高温流体からの熱利用を制限するバルブ等の構成を備えている。一方で、高温流体からの
熱利用を制限すると、高負荷時の排熱利用が不十分になり、熱回収性能や発電性能が低下するという問題がある。
このような課題に鑑み、この明細書における開示の目的は、熱回収性能と発電性能とを両立でき、さらに熱による
熱電変換素子の劣化を抑制できる熱電発電装置を提供にある。
すなわち、熱回収性能と発電性能とを両立でき、熱による熱電変換素子の劣化を抑制できる熱電発電装置を提供に
当たって、熱電発電装置100は、内部に第1流体が流れる管7と、内部に熱電変換素子2を有する発電モジュー
ル1と、を備える。熱電発電装置100は、第1流体よりも高温の第2流体の熱が発電モジュール1の一方側部に
熱移動するように発電モジュール1の一方側部に接触する第1保持部材3、第2保持部材4を備える。第1保持部
材3、第2保持部材4は、管7が発電モジュール1の他方側部に接触するように発電モジュール1と管とを熱移動
可能な状態に保持する。熱電発電装置100は、保持部材と管7とに挟まれて第2流体から第1流体へ熱が移動す
る熱移動経路を構成し、第2流体の流れ方向について熱電変換素子2よりも上流に設けられる熱伝導部材6を備え
てなる(下図1参照)。
【符号の説明】
1 発電モジュール 2 発電変換素子 3,103 第1保持部材(保持部材) 4,104 第2保持部材
(保持部材) 6 熱伝導部材 7 管
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の熱電発電装置の一部を示す斜視図
【図2】熱電発電装置を示す斜視図
【図3】図2の矢印III方向にみた熱電発電装置を示す平面図
【図4】図3の矢印IV方向にみた熱電発電装置を示す側面図
【図5】発電モジュールよりも高温流体流れの上流側に位置する熱伝導部材を示す部分拡大図
【図6】熱電発電装置において、高温流体流れ方向位置と温度との関係を説明するためのグラフ
【図7】第2実施形態に係る熱伝導部材を示す断面図
【特許請求の範囲】
第1流体よりも高温である第2流体の熱が前記発電モジュールの一方側部に熱移動するように前記発電モ
ジュールの一方側部に直接または間接的に接触する保持部材であって、前記管が前記発電モジュールの他
方側部に直接または間接的に接触するように前記発電モジュールと前記管とを熱移動可能な状態に保持す
る保持部材(3,4;103,104)と熱伝導性を有し前記保持部材と前記管とに挟まれて前記第2流
体から前記第1流体へ熱が移動する熱移動経路を構成する熱伝導部材(6)と、を備え、前記熱伝導部材
は前記第2流体の流れ方向について前記熱電変換素子よりも上流で前記保持部材と前記管とに挟まれる熱
電発電装置。 前記保持部材は第1保持部材(3;103)と第2保持部材(4;104)とを含んで構成され、前記第1保持部材と前記
第2保持部材は、前記管の一方側において前記第2流体の流れ方向に順に並ぶ前記熱伝導部材および前記発電
モジュールと、前記管と、前記管の他方側において前記第2流体の流れ方向に順に並ぶ前記熱伝導部材および前
記発電モジュールと、を積層して形成される積層体を挟む保持力を提供する請求項1に記載の熱電発電装置。 前記保持部材(103,104)は、前記発電モジュールの前記一方側部に直接または間接的に接触する部位の表面
と前記熱伝導部材に直接または間接的に接触する部位の表面とにおいて、母材(103a,104a)よりも熱伝導率が
高い材質が被覆されている請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置。 前記保持部材は、前記母材と、前記発電モジュールの前記一方側部および前記熱伝導部材に直接または間接的
に接触する部位の表面に接合された、前記母材よりも熱伝導率が高い高熱伝導性材(9)とを備えるクラッド材で形
成されている請求項3に記載の熱電発電装置。 伝熱伝導部材はグラファイトシートを介して前記保持部材に接触している請求項1から4のいずれか一項に記載の
熱電発電装置。 前記熱伝導部材は熱伝導性を有するグリスを介して前記保持部材に接触している請求項1から4のいずれか一項
に記載の熱電発電装置。 前記熱伝導部材はグラファイトシートを介して前記保持部材および前記管に接触している請求項1から4のいずれ
か一項に記載の熱電発電装置。 前記熱伝導部材と前記管は、一体に形成された一つの部材である請求項1から6のいずれか一項に記載の熱電発
電装置。
● 最新サーマルタイル技術事例:特開2017-153194 発電素子
【概要】
従来の熱電発電素子は、2種類の異なる金属又は半導体の両端に生じる温度勾配に比例して出力電圧が大きく変動
するという欠点がある。そのため、例えば、熱源が100℃以下といったような場合は、温度勾配も小さくなるの
で、大きな電流を発生させることが難しかった。また、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換す
るものであり、光電池とも呼ばれる。この太陽光発電素子は、一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄える
蓄電池ではなく、光起電力効果によって光を電力に変換して出力する発電機であり、シリコン太陽電池、化合物半
導体型太陽電池、有機薄膜型太陽電池等が知られている。しかし、太陽光発電素子は、太陽光の光エネルギーを電
力に変換するという性質上、曇りの日や夜間など、日射量が減少する際は、発電効率が落ちてしまうという問題が
ある。すなわち、本発明は、温度勾配や、太陽光を利用するものではない、従来の発電素子とは異なる新しい発電
素子であって、温度変化による電圧の変化が少なく、例えば、100℃以下といったような温度においても、高い
出力電圧及び出力電流を発生させることが可能な発電素子を提供することを目的とする。
本発明は、正極と負極との間に、振動エネルギーを赤外線に変換し放射する発電補助材料(A)と、半導体材料
(B)と、荷電子帯の上端のエネルギー準位が半導体材料(B)の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、か
つ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導体材料(B)の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料(
C)とを含む発電層を有する発電素子に関する。
本発明の発電素子によれば、発電補助材料(A)が存在することにより、分子の振動エネルギー(熱エネルギー)
を、半導体材料(B)及び半導体材料(C)のエネルギー準位の差を利用して電気エネルギーに変換することがで
きる。本発明の発電素子は、例えば、100℃以下の比較的低い温度帯においても、高い出力電圧及び出力電流を
発生でき、従来の発電素子とは異なる新しい発電素子を提供する。
【符号の説明】
1 発電素子 2 正極(正極板)3 ホール輸送層 4 発電層 5 負極(負極板)6 ヒーター 7 断熱材
8 温度調節器 9 温度センサ 10 抵抗負荷 11 スイッチ 12 電圧計 13 電流計
【図1】本発明に係る発電素子の一例を示す模式的な構成図
【図2】本発明に係る発電素子の出力電圧及び出力電流を測定する試験装置の概略構成図
【特許請求の範囲】
導体材料(B)の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、かつ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導
体材料(B)の伝導帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料(C)とを含む発電層を有する発電素
子。 半導体材料(B)の荷電子帯の上端と、半導体材料(C)の荷電子帯の上端とのエネルギー差が2.0eV
以下である、又は、半導体材料(B)の伝導帯の下端と、半導体材料(C)の伝導帯の下端とのエネルギー
差が2.0eV以下である、請求項1に記載の発電素子。 発電補助材料(A)が、二酸化ケイ素、シリコーン、カーボン、及びフェライトからなる群より選ばれる少
なくとも1種以上の材料を含む、請求項1又は2に記載の発電素子。 半導体材料(B)が二酸化スズである、請求項1~3のいずれかに記載の発電素子。 半導体材料(C)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化
タングステン、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の材料を含む、請求項1~4のい
ずれかに記載の発電素子。 さらに、正極と発電層との間に、ホール輸送層を有する、請求項1~5のいずれかに記載の発電素子。 ホール輸送層が、p型導電性高分子または酸化モリブデンを含む、請求項6に記載の発電素子。 さらに、負極と発電層との間に、電子輸送層を有する、請求項1~7のいずれかに記載の発電素子。 電子輸送層が、酸化アルミニウム薄層、フッ化リチウム層、又は酸化スズ層である、請求項8に記載の発電
素子。
【実施例1】
五塩化ニオブ(純正化学株式会社製)25質量部をエタノール200質量部に溶解させた。次に、該五塩化ニオブ
・エタノール溶液2.5質量部と、二酸化ケイ素の20%水分散体(日産化学工業株式会社製、「ST-O-40」、
平均粒径40nm)10質量部と、二酸化スズの20%水分散体(ユニチカ株式会社製、酸化スズゾル「AS20
I」、平均粒径7nm)1.5質量部とを、混合し撹拌した。該混合水分散体中で、五塩化ニオブは加水分解され、
酸化ニオブとなった。次に、得られた二酸化ケイ素粒子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子を含む混合水分散
体から、固形分を分離した。得られた固形分を十分に洗浄した後、100℃で乾燥させることで、二酸化ケイ素粒
子、酸化ニオブ粒子、及び二酸化スズ粒子からなる実施例1の混合粉末を得た。混合水分散体における二酸化ケイ
素の20%水分散体、五塩化ニオブ・エタノール溶液、及び二酸化スズの20%水分散体の混合割合、及び混合粉
末における各成分の含有率を、表1に示す。
【実施例2~5】
混合水分散体における混合割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、実施例
2~5の混合粉末を得た。混合粉末における各成分の含有率を、表1に示す。
発電素子を以下のように作製した。先ず、平板状の銅部材を正極2として準備した。次いで、平板状のアルミニウ
ム部材を負極5として準備し、アルミニウム部材上に1.8cm×1.5cmの窓を開けた厚さ0.8mmの両面
テープを貼り付けた。両面テープの窓に、実施例1で得られた二酸化ケイ素粒子(平均粒径:40nm)、酸化ニ
オブ粒子、及び二酸化スズ粒子(平均粒径:7nm)からなる混合粉末を充填し、発電層4を形成した。発電層4
の厚さは、両面テープの厚さと同じく、0.8mmである。最後に、上記の正極2を両面テープ上に積層させ、発
電素子を得た。実施例2~5で得られた混合粉末についても、同様の方法を用いて、発電素子を作製した。
[評価]
図2に示す試験装置を用いて、上記のようにして得られた発電素子の出力電流及び出力電圧を測定した。図2に示
す試験装置では、負極5、抵抗負荷10、スイッチ11、電流計13、正極2を、この順でリード線によって接続
し、回路を形成している。また、この回路に抵抗負荷10の両端の電圧を測定できるように電圧計12が接続され
ている。また、温度調節器8によって温度調節が可能なヒーター6上に、負極5が下側に、正極2が上側になるよ
うにして、発電素子1が設置されている。また、ヒーター6上の発電素子1が設置されていない部分には、温度セ
ンサ9が設置されており、ヒーター6の温度が測定できる。断熱材7は、正極2とヒーター6とを上下から挟み込
むように、対向して設置されている。なお、抵抗負荷10の抵抗は、1kΩ、10kΩ、100kΩ、又は∞に変
化させて測定した。電流計13及び電圧計12は、FLUKE社製のデジタルマルチメーター 8808Aを用い
た。また、Z、Cp、L、tanδは、日置電機株式会社製のLCRハイテスタ3532-50を用いて測定した。
測定は、ヒーター6の温度を29℃(室温)、または100℃に変化させて行った。測定結果を表2に示す。
※ 正極、負極:正極2及び負極5は、導電性材料であり、正極2の仕事関数が負極5の仕事関数と同じか高い
材料を用いる。正極2の仕事関数が負極5の仕事関数より高いことが好ましい。正極2としては、特に限定され
ないが、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物材料、炭素材料、銅、銅合金、SUS430
等のステンレス鋼、錫めっき銅、白金、金、又はタングステンもしくはその酸化物などを用いることができる。
正極2の材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、負極5の材料の仕事関数よりも高いことが好ましい。
例えば、負極5にアルミニウムを用いた場合、正極2の材料としては、負極5の材料より仕事関数が高く、安価
に入手できるという観点から、インジウム錫酸化物、銅、又は炭素材料が好ましい。負極5にインジウム錫酸化
物を用いた場合は、正極2の材料としては、負極5の材料より仕事関数が高いという観点から、白金、金、また
はタングステンもしくはその酸化物が好ましい。また、正極2の材料は他の金属にコーティングした形で用いて
もよい。
負極5としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、Mg-Alなどのマグネシ
ウム合金、銀、または亜鉛などを用いることができる。負極5の材料は、仕事関数を考慮して決定することがで
き、正極2の材料の仕事関数よりも低いことが好ましい。例えば、正極2に銅又は炭素材料を用いた場合、負極
5の材料としては、正極2の材料より仕事関数が低く、安価に入手できるという観点から、アルミニウム、また
は亜鉛が好ましい。正極2に白金または金を用いた場合は、負極5の材料としては、インジウム錫酸化物が好ま
しい。また、負極5の材料は他の金属にコーティングした形で用いてもよい。
正極2及び負極5の形状は特に限定されず、発電素子1の形状に応じた形状に加工することができる。例えば、
発電素子1が、平面配置型用の発電素子1である場合には、正極2と負極5が対向して配置され、正極2と負極
5の間にホール輸送層3及び発電層4が設けられる。なお、この平面配置型の発電素子1は、複数の発電素子1
の正極2と負極5とを順次、直列に接続することで直列配置型の発電素子複合体にする、或いは、複数の発電素
子1の正極2と負極5とを順次、並列に接続することで並列配置型の発電素子複合体にすることができる。
※ ホール輸送層:本発明の発電素子は、正極2と発電層4との間に、ホール輸送層3を有することが好ましい。
正極2と発電層4との間に、ホール輸送層3を有することによって、発電層4から正極2へのホールの取出しを
安定化させ、発電効率を向上させることができ、また、逆電流が生じることを防止することができる。ホール輸
送層3としては、ホール伝導が観測されるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリ(3,4-エチレ
ンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオ
キシチオフェン)-ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p-フ
ェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、グラフェン、など
のp型導電性高分子;MoO3、CuAlO2、CuGaO2、LiNiO2などのp型金属酸化物を用いること
が好ましい。これらの中でも、ホールの移動度が高く、安価に入手できるという観点から、ポリ(3,4-エチ
レンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)又はMoO3が好ましい。
※ 電子輸送層:図1には図示されていないが、本発明の発電素子は、負極5と発電層4との間に、さらに電子
輸送層を有することが好ましい。負極5と発電層4との間に電子輸送層の薄膜を設けることで、発電層4から負
極5への電子の取出し効率を安定化させ、発電効率を向上させることができ、また、正孔が負極5側に流れるこ
とを防止できる傾向にある。電子輸送層に用いる材料としては、特に制限はないが、例えば、n型半導体材料な
どを用いることができる。電子輸送層に用いる材料の具体例としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリ
ウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化リチウム、酸化マグネシウム、又は酸化カルシウム
などが挙げられる。これらの中でも、化学的に安定であるという観点から、フッ化リチウム、酸化アルミニウム
または酸化スズを用いることが好ましい。
※ 発電層:発電層4は、発電補助材料(A)と、半導体材料(B)と、半導体材料(C)とを含んだ層である。
発電層4では、例えば、発電補助材料(A)が分子の振動エネルギー(熱エネルギー)を吸収することよって赤
外線を放射し、その放射された赤外線を、半導体材料(B)及び半導体材料(C)のエネルギー準位の差を利用
して電気エネルギーに変換することができる。発電補助材料(A)は、振動エネルギーを赤外線に変換し放射す
ることが可能な赤外線放射材料であることが好ましい。赤外線放射材料としては、特に限定されないが、赤外線
の吸収強度の大きい物質、例えば、二酸化ケイ素、シリコーン、カーボン、又はフェライトなどを用いることが
好ましい。赤外線の吸収強度が大きい物質は、赤外線の放射強度も大きいため、強い赤外線を放射することがで
き、発電効率が高くなる。上記の物質の中でも、特に、赤外線の吸収強度が大きく、また安価であるという理由
から、二酸化ケイ素を用いることがより好ましい。なお、上記の赤外線放射材料は、1種単独もしくは2種以上
を組み合わせて使用してもよい。
赤外線の吸収強度は、赤外分光法、近赤外分光法、またはラマン分光法など公知の方法によって測定することが
できる。発電補助材料(A)としては、例えば、近赤外分光法を用いて測定した場合、赤外領域(例えば、波数
12500~4000cm-1)において、吸光度が1以上となるピークを有することが好ましく、吸光度が1
以上となるピークを有することがより好ましい。発電補助材料(A)が、赤外領域において、吸光度が1以上と
なるピークを有する場合は、赤外線の吸収強度及び放射強度が大きくなるため、発電効率を向上させることがで
きる。発電補助材料(A)の平均粒径は、入手の容易さや組成物作製上の問題がない範囲で各種の大きさのもの
を選択することができるが、発電補助材料(A)の平均粒径は、4~100nmであることが好ましく、4~4
0nmであることがより好ましい。発電補助材料(A)の平均粒径が4nm未満の場合は、赤外線放射材料とし
ての特徴を示さなくなる傾向にあり、平均粒径が100nmを超えると、発電補助材料(A)の体積が大きくな
るため、体積あたりの赤外線の吸収強度(放射強度)が低下し、発電効率が下がる傾向にある。なお、本明細書
において、平均粒径とは一次粒子の平均粒径をいい、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定
することができ、組成物を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
発電層4には、発電補助材料(A)から放射された赤外線を電気エネルギーに変換するために、半導体材料(B)
及び半導体材料(C)が含まれる。半導体材料(C)は、荷電子帯の上端のエネルギー準位が半導体材料(B)
の荷電子帯の上端のエネルギー準位より高く、かつ、伝導帯の下端のエネルギー準位が半導体材料(B)の伝導
帯の下端のエネルギー準位よりも高い半導体材料が用いられる。半導体材料(B)の荷電子帯の上端と、半導体
材料(C)の荷電子帯の上端とのエネルギー差は、2.0eV以下であることが好ましく、0.9eV以上であ
ることがより好ましく、1.7eV以下であることがより好ましい。また、半導体材料(B)の伝導帯の下端と
、半導体材料(C)の伝導帯の下端とのエネルギー差は、2.0eV以下であることが好ましく、0.9eV以
上であることがより好ましく、1.7eV以下であることがより好ましい。発明の発電素子における発電のメカ
ニズムは明らかではないが、半導体材料(B)が相対的に電子受容体のような役割を果たし、半導体材料(C)
が相対的に電子供与体のような役割を果たすことで、赤外線の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものと
考えられる。具体的には、次のような現象が起こっていると推測される。
半導体材料(B)および半導体材料(C)それぞれの伝導帯および荷電子帯のエネルギー差が、例えば、2.0
eV以下であることにより、赤外線が半導体材料(B)または半導体材料(C)に照射された場合、半導体材料
(B)と半導体材料(C)との接合面において、半導体材料(C)の伝導帯に存在していた電子が半導体材料(
B)の伝導帯へと移動し、半導体材料(B)の価電子帯に存在していたホールが半導体材料(C)の価電子帯へ
と移動し、電荷分離状態を形成する。そして、電子は半導体材料(C)よりもエネルギー準位が低い半導体材料
(B)の伝導帯を移動して正極2へ流れ、ホールは半導体材料(C)の荷電子帯を移動して負極5へと流れるこ
とで、外部回路に電流が流れるものと思われる。
発電補助材料(A)が熱エネルギーを吸収した場合、その熱エネルギーは、最終的に、半導体材料(B)及び半
導体材料(C)によって、電気エネルギーに変換される。このことを別の側面から見れば、発電補助材料(A)、
半導体材料(B)、及び半導体材料(C)を有する素子は、吸熱反応を行っていると捉えることもできる。従っ
て、発電補助材料(A)、半導体材料(B)、及び半導体材料(C)を有する素子は、例えば、電子機器などの
冷却手段として用いることも可能である。
半導体材料(B)は、化学的安定性や電子移動度が高いことから、二酸化スズが好ましい。半導体材料(B)に
二酸化スズを用いた場合、半導体材料(C)としては、半導体材料(B)に比べてエネルギー準位が高く、また、
正極2の材料より仕事関数が低いといった観点から、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、または酸化亜鉛
などが好ましい。上記した好ましい半導体材料(B)と、好ましい半導体材料(C)との組合せは、荷電子帯の
上端同士及び伝導帯の下端同士のエネルギー差が2.0eV以下であるという条件、さらには、0.9eV以上
で、1.7eV以下であるという条件を満たしている。なお、半導体材料(B)及び半導体材料(C)は、1種
単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
半導体材料(B)及び半導体材料(C)の平均粒径は、入手の容易さや組成物作製上の問題がない範囲で各種の
大きさのものを選択することができるが、半導体材料(B)の平均粒径は、4~100nmであることが好まし
く、4~10nmであることがより好ましい。半導体材料(B)の平均粒径が4nm未満の場合は、半導体とし
ての特徴を示さなくなる傾向にあり、平均粒径が100nmを超えると、半導体材料(B)の体積が大きくなる
ため、体積あたりの発電効率が下がる傾向にある。発電層4の構造としては、特に限定されず、例えば、積層構
造としてもよく、バルクヘテロジャンクション構造としてもよいが、発電効率を向上させるという観点からは、
バルクヘテロジャンクション構造とすることが好ましい。赤外線の照射強度は、光源からの距離の二乗に反比例
する。赤外線の照射強度の減衰を防止し、発電効率を向上させる観点からは、発電補助材料(A)、半導体材料
(B)、及び半導体材料(C)は、それぞれ粒子状のものを用いて、発電層4中に均一に分散させることが好ま
しく、発電層4中に最密充填構造又は最密充填構造に近い構造をとるように配列させることがより好ましい。
発電補助材料(A)、半導体材料(B)、及び半導体材料(C)を発電層4中に均一に分散させるためには、各
粒子を溶媒中に分散させ、その分散液を遠心分離などの公知の方法を用いて固形分と液分を分離させ、その固形
分を十分に洗浄して得られる粉末を用いて、発電層4を形成することが好ましい。分散させる溶媒としては、発
電補助材料(A)、半導体材料(B)、及び半導体材料(C)を溶解させないものであれば、特に制限はないが、
安全に使用でき、また安価であることから、水を用いることが好ましい。また、発電層4を形成する際において
、半導体材料(C)としては、上記したような金属酸化物の粒子そのものを直接、分散媒に添加するのではなく、
加水分解などによって該金属酸化物を生成することが可能な金属酸化物の前駆体を添加しても良い。金属酸化物
の前駆体としては、特に限定されないが、例えば、塩化チタン、塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化亜鉛などの金
属塩化物や、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシド、亜鉛アルコキシドなどの金属
アルコキシドを用いることが好ましい。
発電層4の全質量は、発電補助材料(A)と半導体材料(B)と半導体材料(C)との和からなる。半導体材料
(B)の含有量は、発電層4の全質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であ
ることがより好ましい。半導体材料(B)の含有量が発電層4の全質量に対して1質量%未満の場合は、赤外線
を十分に電力に変換することができず、発電効率が低下する傾向にあり、30質量%を超えても、それ以上の発
電効率の向上は見られない傾向にある。同様に、半導体材料(C)の含有量は、発電層4の全質量に対して、1
~30質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。半導体材料(C)の含有量が
発電層4の全質量に対して1質量%未満の場合は、赤外線を十分に電力に変換することができず、発電効率が低
下する傾向にあり、30質量%を超えても、それ以上の発電効率の向上は見られない傾向にある。
また、半導体材料(B)及び半導体材料(C)の混合比(半導体材料(B)/半導体材料(C))は、特に限定
されないが、質量比で、1/5~2/1の範囲にあることが好ましい。半導体材料(B)及び半導体材料(C)
の混合比が上記の範囲にあることで、赤外線を電気エネルギーへと変換する効率が向上し、発電効率を向上させ
ることができる傾向にある。発電層4の厚さは、発電素子1の作製方法によって異なり、特に限定されないが、
例えば0.05μm~1000μmの範囲内であることが好ましい。発電層4の厚さが0.05μm未満だと、
短絡を起こすやすくなる傾向にあり、発電層4の厚さが1000μmを超えると、発電層4の内部抵抗が高くな
る傾向にあり、また、電荷分離した電子とホールが再結合しやすくなることにより変換効率が下がる傾向にある。
発電層4は、発電補助材料(A)、半導体材料(B)及び半導体材料(C)の混合物によって形成された層であ
るが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の無機物や有機物を含んでいてもよい。
[発電素子の作製方法]
発電素子1の作製方法は、特に限定されず、各種公知の方法で作製することができる。例えば、正極2上に、p
型導電性高分子を滴下又は塗布することで、ホール輸送層3を形成することができる。次いで、ホール輸送層3
上に、発電補助材料(A)、半導体材料(B)、及び半導体材料(C)を溶媒に均一に分散させた分散液を滴下
又は塗布することで、発電層4を形成することができる。最後に、発電層4上に、真空蒸着やスパッタリング等
の方法を用いて、負極5を形成することができる。
こうして作製された発電素子1は、平面的な直列構造又は並列構造になるように接続することができる。複数の
発電素子1を直列に接続して発電素子複合体を構成する場合、隣り合う発電素子の正極2と負極5とを、カシメ
、圧接、ロウ付け等で接続して直列構造にすることができる。また、発電素子1を並列接続して発電素子複合体
を構成する場合、長く延びる電極に、発電素子1の正極2と負極5とをそれぞれ、カシメ、圧接、ロウ付け等で
接続して並列構造にすることができる。このような発電素子複合体は、複数の発電素子1を接続して1次元的(
直列配置)または二次元的(並列配置)に作製することができるが、厚さ方向に積層して三次元的な立体構造に
することもできる。
発電素子1や発電素子複合体において、発電素子1に水分が侵入するのを避けることが好ましい。水分の侵入防
止手段としては、周囲を封止材で充填したり、全体を封止材で覆ったりすることが好ましい。こうした水分の侵
入防止手段により、発電素子1の発電電流値の低下を抑制することができる。
このように、エネルギータイリング事業にまた新たなるニューカマーが登場する。正にエネルギー革命ど真ん中である。こ
れは面白い!