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米菓と狗鷲

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例の山椒あられかおかきなのか定かでないが平和堂で買ってきたので食べてみて、こ
れなら思い出での「鬼山椒」と同じだねといことで戴いた。正確には「一口おかき鬼
山椒」といって大津市の中西永生堂の製造になるものだ。山椒が効いているので細か
く割りお茶漬けにして食した方が良いのかもしれと思った。ところで、「あられ」と
は。米菓でももっとも小さなものにあたるという。餅を小さく切り(欠き)、乾燥さ
せたものを表面がきつね色になるまで炙った米菓で、小粒なものをあられと呼ぶが、
本来はもち米をそのまま炒ったものをあられ、なまこ餅(ナマコに似た形状に成形さ
れた餅)を切って干し、焼いたもの(かき餅)をおかきと呼んでいた。しかし現在で
は同じ餅を原料とした焼き子を大きさで区別しているに過ぎないというから区別し難
いのは致し方ない。ところで、かき餅は豊臣秀吉の好物とされ、太閤となっても間食
として身辺から離さなかったとされるからこの時代から普及多様化したのではないだ
ろか。 

 


"Wikipedia"によれば、米菓(べいか)とは、米から作った菓子で、煎餅をはじめおか
き、あられなど、日本人に古くから親しみのあるものが多く、主にもち米、うるち米
で作られる。米菓は、新潟県を中心に全国で広く生産されており、主に焼いて作られ
ているが、揚げて作られるものもあるなど多様性があるとか。また原料とする米の種
類がもち米であるものを「あられ(おかき)」、うるち米であるものを「煎餅」といい、
大きく2つに分けられる。「あられ」は「おかき」の小さいもので、製造方法に大き
な違いはない。なお、煎餅には小麦粉やそば粉など米以外を原料とするものもあり、例
えば瓦せんべい、南部煎餅、炭酸せんべいなどがありあられ(霰)とはあられ餅(霰
餅)の略で、米餅を長さ2、3センチ、縦横5ミリ程度の長さに切り、火で炙った菓
とある。炒った豆(表面をコーティングする)を使用するものもあり、一般的には火
で炙るが、油で揚げた揚げ餅もあるという。この「鬼山椒」はたまり醤油で熟っくり
と焼き上げてつくられているとメーカの説明である。さてこのあられ騒動?これにて
一件落着 ^^;。

   こちらは「鬼サラダ」

 

 



● デフレ脱却と安定成長への道

わたしが成長戦略『双頭の狗鷲』を構想したのは鳩山民主党政権誕生前後であった(
「リフレ派宣言」「日銀解体論」「未来国債」「日本列島高架線埋設化」「高速道路
無料化」などもをその前後で掲載)から、アベノミックスの"デフレ脱却路線"と同じ
立ち位置にあると思っている。それ間違いないか?その意味でこの著書の精読は大切
な作業となっている。

 

                失業率を大きく下げる役割を担うのは「厚生労働省」ではない

 日本で「失業率を大きく下げる役割を果たすのは、どの役所?」と聞くと、ほと
 んどの人は「厚生労働省」と答える。マスコミの記者の人たちも厚生労働省だと
 考えている。
  アメリカで記者たちに同じ質問をすると「FRB」と答える。それが正解だ。
  失業率を大きく左右できるのは中央銀行、日本でいえば日銀である。
  残念ながら、厚労省の政策で失業率が大きく下がることはない。ハローワーク
 がどんなに頑張っても、失業率の大幅改善にはほとんど関係ない。失業率の絶対
 水準を左右するのは金融政策だ。金融政策によって失業率は下がっていく。

  ただ、どんなに優れた金融政策をしても、一定のところから先は失業率は下が
 らなくなる。三%の前半あたりで止まる。そこから先は、雇用のミスマッチの問
 題などがある。その部分を担当するのが厚労省だ。ミスマッチを減らすという点
 では厚労省の施策は意味があるのだが、失業率の水準を大きく増減させるほどの
 インパクトは持っていない。また、ミスマッチは個人個人の問題なので、簡単に
 は解決せず、厚労省がどんなに頑張っても限界がある。
 
  失業率を改善させるのは、厚労省ではなく、日銀の仕事である。日銀の金融政
 策の目的は失業率改善である。
  もちろん物価の安定といってもいいのだが、物価と失業率は連動している。数
 値が連動しているときには、数学的には一つの数値だけをいえばいいことになる。
  世の中の人にとって最も大切なことは「物価」よりコ雇用」だと思う。だから
 私は、経済政策の中で指標をIつしか選べないとしたら「失業率」を選ぶ。
  その視点で見ていくと、アベノミクスの第一の矢(金融政策)の最大の効果は、
 失業率を改善し、就業者を増やしたことである。

  民主党政権の前は、失業率は4~5%程度で、仕事に就いている就業者数は6300
 万人くらいだった。鳩山由紀夫政権以降の民主党政権下で失業率は5%台が続き、
 就業者数は6280万人程度にまで減少した。第二次安倍政権が誕生して以降は好転
 し、失業率は4%台から3%台まで低下している。就業者数も6360万人程度へと
 上昇傾向である。2014年7月の就業者数は6,363万人で、前年同月比20ヵ月連続の
 増加となっている。失業率は3.5%である。
 
  失業率が下がれば、自殺率や犯罪率が低下することが知られている。生活保護
 率も下がる。問題となっているブラック企業も求人が困難になって、自ずと淘汰
 されていく。いずれにしても、失業率は最も重要な指標である。
  アベノミクスの効果として「株価」がよく注目されるが、アベノミクスの最大
 の成果は「失業者を減らした」ことである。この点を見過ごしてはいけない。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


                      デフレを解消しないままの雇用政策は、むしろ逆効果の可能性もある

 デフレの時代が長く続き、不安定な非正規雇用が増えたことで、厚生労働省など
 が非正規社員を正社員にさせる法規制を強化し続けてきた。非正規社員で一定年
 数働いたら、継続雇用をするには、正社員として雇わなければならないという規
 制だ。こういう労働政策は単に現象に対応しているだけで、結果として大きな効力がな
 い。デフレを解消しないで法規制することは、むしろ歪みやひずみを生み、ブラ
 ック企業を増やす可能性がある。
 
 雇用政策に血道を上げたがる人々は、「デフレは脱却できない」という思い込み
 があるから、表面的な規制を強化しようとするのだろう。
 だが、デフレ下では、できるだけ労働コストを安くすることが企業にとって合理
 的な行動になってしまう。無理に正規雇用にさせると、どこかでコストを削ろう
 とするから、社会保険料を払わなかったり、精神的に追いつめて辞めさせようと
 したりする会社が出てくる。つまり、ブラック企業が増えてしまうのだ。それで
 は何のために正社員にさせたのかわからなくなる。おそらく他にも水面下でいろ
 いろな違法行為が横行するだろう。
 
 デフレ下では、企業にとって従業員を正社員にするインセンティブが何もない。
 政府が規制しても企業は政府の意図どおりには動かない。隠れてブラック化する
 恐れがある。デフレを止めれば、正社員にしないと人が集まらず企業は競争に敗
 れる。デフレが解消された環境下では、デフレ下と状況が反転して、正規雇用を
 進めることが企業にとっての最適行動となる。規制をしなくても、正社員を増や
 さざるをえなくなる。デフレ下で無理に対症療法をすると歪みを生む。非正規雇
 用を多く生み出す理由の根幹であるデフレをなくすことが、労働政策として最も
 効果が高いのである。アベノミクスのデフレ脱却は、ここに手を打ったといって
 よい。デフレ脱却がブラック企業潰しにも大きな役割を果たす。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


              デフレさえ止めればブラック企業の頭の悪い経営者は淘汰される

 ブラック企業とは、賃金を叩いて、長時間働かせて、人を使い捨てのようにして
 利益を上げている企業だ。正社員を減らし、非正規にして賃金を抑える。不要に
 なったら辞めさせる企業もある。しかし、アベノミクスによってデフレ脱却へ向
 かい、状況は一変した。ブラック企業として話題になっていた企業が、人手不足
 で閉店に追い込まれているというニュースも出ている。これは当然の成り行きだ
 と思う。

 私はデフレ脱却によってブラック企業が淘汰されると予測し、アベノミクスが始
 まったころにいくつかの記事に書いた。実際、そのとおりになりつつある。ブラ
 ック企業というのは、ある意味で、デフレ下において合理的な経営モデルだった。
 デフレ下では賃金を下げれば下げるほど利益が出る。正社員より非正規にしたほ
 うが利益が出る。ところが、物価が上昇し、インフレになると状況は一変する。
 アルバイトが集まらなくなり、賃金を上げざるをえなくなる。非正規を中心にし
 ていると、先はどのニュースの例のように、人手不足で閉店に追い込まれる可能
 性が高くなり、安定した経営はできなくなる。正規社員にしたほうが安定的に利
 益を出せる。非正規で賃金を叩いて使い捨てにする企業は、自ずから淘汰されて
 いく。

 ローソンを率いていた新浪剛史氏は、アベノミクスでデフレ脱却が起こると予測
 して、いち早く「雇用を増やします」「正規社員にします」と宣言した。実際、
 アルバイトを正規社員にし、賃金も上げている。このあたりが賢い経営者と頭の
  悪い経営者の違いだ。
 
 賢い経営者は、デフレという条件と、インフレという条件では、経営行動を変え
 なければいけないとわかっている。「賃下げ、非正規化」はデフレ下では最適行
 動だが、インフレ下では逆になり「賃上げ、正規化」が正しい経営行動となる。
 新浪氏のような経営者はそれがわかっているから、すぐに正規化、賃上げを表明
 したのである。
 
 ブラック企業の頭の悪い経営者たちは、デフレという条件下で、単に、賃金を下
 げ、非正規にして使い捨てていただけなのに、それを自分の経営手腕や能力、努
 力の賜物だと思い込む。要するに、経済のメカニズムや自社の収益のメカニズム
 を理解していないのだ。だから、前提条件が変わっても行動を変えられない。デ
 フレに慣れきってしまって、いまだに労働者の使い捨てが、さも正しいことであ
 るかのように思い込んでいる。真の経営能力はないから、「二十四時間働け」と
 いった精神論でしか経営ができない。そういうブラック企業が、デフレ脱却によ
 って淘汰されるのは良いことだと思う。経済のメカニズムを理解している人は、
 インフレ下で安定的に利益を上げるための最適行動は、「賃上げ、正規社員化」
 だと知っている。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

                 「経済は予想インフレ率で勣いている」と、どうしていえるのか 

 金融緩和の効果を信じられない人は、なぜ金融緩和で企業が行動パターンを変え
 るかが理解できない場合が多いようだ。私が強調するのは、「経済は予想インフ
 レ率で動いている」ということだ。予想インフレ率は実質金利に影響を与える。
 式を書くと次のようになる。

                   実質金利=名目金利I予想インフレ率 

 企業の経営者は予想によって動いている。「今後、景気は良くなるだろうか」「
 物価は上がるだろうか」といったことを考えて、設備投資をするかどうか、借入
 れをするかなどを判断している。過去の実績も考慮に入れるが、今後のことを予
 想しなければ経営判断はできない。企業経営者の先行き予想を調査しているのが
 三ヵ月ごとに発表される「日銀短観」である。

 各業種の企業が三ヵ月後の業況を予想し、それが数値としてまとめられている。
 この日銀短観の調査に2014年3月分から、「企業の物価見通し」というのが加わ
 った。一年後、三年後、五年後の物価上昇率を予想したものだ。

 2014年6月の調査では、物価上昇率は、一年後「1.5%」、三年後「1.8%」、五
 年後「1.7%」と予想されている。始まったばかりの調査で企業側も慣れていな
 いかもしれないが、この先、予想の変化を見ていけば、重要な参考数値となる。

 この物価上昇率の予想(予想インフレ率)が、経済の中では非常に大きなポイン
 トなのである。企業の投資判断に影響を及ぼすのは、実質金利だ。先に挙げた式
 の中で、「現在のインフレ率」ではなく、「予想インフレ率」を引いているとこ
 ろがポイントである。この式を最初に日本で提示したのは私だった。それまでは 
 実質金利を出すときに、名目金利から「実現したインフレ率」を引いていた。し
 かし、実現したインフレ率は投資行動にはほとんど影響しない。行動を左右する
 のは将来の予想だ。
 
 たとえば、お金を借り入れるにしても、返済するのは今ではなく将来である。金
 融機関から利息(名目金利)を提示されたときに、将来高いインフレ率になると
 予想していれば、実質的な金利は安くなるから借りようと考える。将来デフレに
 なると思えば、実質的な金利は高くなるから、借りるのをやめようと思う。

 もう少し感覚的なことをいうと、インフレ率を高く予想する人は、「将来、会社
 の収入は増えるだろう」と感じている人で、デフレを予想する人は「会社の収入
 は減るだろう」と感じている人だ。その感覚はだいたい当たる。インフレになれ
 ば、回りまわって会社の収入はいずれ増える。収入が増えそうだと思う人はお金
 を借りるし、投資をしようとする。予想インフレ率に基づいた実質金利によって
 投資行動は決まってくる。

 経済学では、消費行動や投資行動は予想で決まるというのが初歩的な理論だ。し
 かし、私が「予想インフレ率」の概念の重要性を主張したとき、経済の専門家に
 も理解してもらえなかった。政策担当者の中には「予想なんて、あいまいで、フ
 ワフワしたものじゃないか」と考える人が多かったし、「そんな予想なんていう
 雲をつかむようなものに、日本の金融政策は左右されません」という人もいた。
 私は、予想インフレ率を可視化できないかと考えた。 

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

 
            「予想インフレ率」を物価連動国債で可視化すると、物事がうまく回る

 アメリカでは1990年代に「物価連動国債」というものが発行された。実は、これ
 を使うと予想インフレ率を計算できて、グラフなどにして可視化できる。物価連
 動国債とは、物価に連動して価格が調整される国債のことである。このようなも
 のが発行されれば、マーケットの人はプロだから、真剣に物価を予想しながら植
 付けをする。金がかかっているから、アンケート調査のように「いい加減」に予
 想する人はいない。マーケットのプロたちが考える予想インフレ率の平均が、こ
 の物価連動国債によってわかる。

 たとえば、十年物の物価連動国債を発行すると、その物価連動国債の利回りが出
 る。これと普通の十年物国債の利回りの差を出す。それを十年間で平均したもの
 が「予想インフレ率」だ。アメリカはこの数値を金融政策の判断の参考にできる
 と考えて、一年債、三年債、五年債などいろいろな物価連動国債を発行している。
 それぞれの期間の「予想インフレ率」を出せる。
 
 1999年に私はアメリカに留学して、物価連動国債のことを知った。「これは金融
 政策に役立つ」と思い、帰国して2001年に経済財政政策担当大臣の竹中氏に物価
 連動国債の発行を提案した。私のオリジナルではなく、アメリカ、イギリスなど
 海外では普通に行なわれていることだ。竹中氏はその提案に乗ってくれたが、財
 務省が反対して発行を渋っていた。「高橋がいっていることだから嫌だ」という
 感情的な反発もあったらしいことは、私の不徳の致すところである。

 中には、「インフレになると償還が大変になる」という人もいた。だが、インフ
 レになれば経済成長が起こっていて税収も増えているから大きな影響はない。ア
 メリカでは、物価連動国債は国債発行額の四分の一の規模にまで達しているほど
 だ。それから二年かかり2003年に、日本で初めての十年物の物価連動国債が発行
 された。発行規模は小さいが、大きな進歩だった。マーケットは本当に正直に反
 応するもので、2008年に、デフレ脱却に消極的だった白川方明氏が日銀総裁に就
 任すると、予想インフレ率はとたんに下がり始めて、マイナスにまでなってしま
 った。つまりデフレを予想したわけである。

 それに不快感を持っていたのか、同年9月のりIマン・ショックを機に、日本で
 は物価連動国債の発行が停止されてしまった。ちなみに、リーマンショク後に物
 価連動国債の発行を停止した国は他にはない。安倍首相はさすがによくわかって
 いる人で、二度目の首相に就任すると、財務省は2013年に物価連動国債を再開さ
 せている。安倍政権の政策を受けてマーケットの予想インフレ率はどんどん上が
 っていった。

 予想インフレ率は、マーケットが将来の物価をどう考えるか、経済政策をどう見
 ているかを知る重要な判断材料となる。マーケットから算出した予想インフレ率
 とマネタリーベースの関係を調べていくと、マネタリーベースを増やすと予想イ
 ンフレ率が上がるということがわかった。これを最初に発見したのは私である。
 つまり、マネタリーベースを増やすと、マーケットはインフレを予想するように
 なるということだ。その結果、実質金利が下がって投資が増え、やがて経済が上
 向く。現在の日銀の岩田規久男副総裁は、この理論に沿って金融政策を運営して
 いる。

 物価連動国債で予想インフレ率が可視化されたため、日銀は予想インフレ率を見
 ながら金融政策の判断をしている。他の国も同様で、中央銀行は予想インフレ率
 の指標を見ながら金融政策を決めている。物価連動国債は、実は年金問題にも有
 効に働く。インフレになったときに償還される元本がインフレ率に応じて増える
 からだ。普通の国債だと元本が増えない。年金基金にとっては、物価連動国債は
 運用がしやすい。最近の報道では、財務省は年金基金による購入を見込んで物価
  連動国債の発行額を増やす方針とされている。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

 




菊池英博の『そして、日本の富は略奪される―アメリカが仕掛けた新自由主義の正体
』の多くは、このブログの「新自由主義論Ⅰ-新たな飛躍に向けて-新自由主義から
デジタル・ケイジアンへの道」(『デジタルケインズと共生・贈与』)で考察した
ヴィッド・ハーヴェイ
『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社、2007年)
の分析と重複するとことが多々あり、序章と第1章および第2章も注目し節のみピッ
クアップした。(詳細は → こちら を参照)。

                         ワシントン・コンセンサス

 1991年12月25日、69年間継続したソビエト連邦が崩壊した。このときまで、第二
 次世界大戦後の世界は、民主主義・資本主義と共産主義・社会主義の対立となり
 とくに共産主義はソ連を盟主とした独裁政治の下で社会主義を進め、東ヨーロッ
 パ諸国が共産化された。こうしたなかで、私有財産を中核とする資本主義と財産
 の国有化を中核とする社会主義の中間的な混合経済が、戦前からドイツとフラン
 スを中心に西ヨーロッパで広がっていた。しかし、これらの国は民主主義であり
 「民主主義と資本主義を守る旗手としてのアメリカ」とともに行動し、世界は民
 主主義の国々と共産主義(独裁主義)の国々に分かれ、「東西対立」と言われて
 きたのである。

 ソ連邦の崩壊は、共産主義の敗北であり、とくに戦後の冷戦の勝者は民主主義・
 資本主義であった。ソ連邦崩壊によって、それまでソ連邦との対立構造のなか、
 民主主義のリーダーとして存在意義を持っていたアメリカは、存在意義が薄れて
 きたために、新たなレゾンデートル(自らが世界のりIダーであることを鼓吹す
 る理念)をつくりあげようとした。これが現在、一般に言われている「ワシント
 ン・コンセンサス」であり、その基本理念が新自由主義・市場原理主義(グロー
 バリズム)である。

 ワシントン・コンセンサスという言葉は、ソ連邦崩壊以前の1989年に、アメ
 リカの国際経済研究所(IIE)のジョン・ウィリアムソンによって最初に使わ
 れている。中南米諸国を支配下に置きたいアメリカは、ワシントンに本拠を置く
 IMF(国際通貨基金)と世界銀行と共同で、これらの国々の経済指針をまとめ
 これをワシントン・コンセンサス(見解の一致)という名目で発表した。アメリ
 カはIMFと世界銀行への最大の出資国であり、その議案には拒否権を持ってい
 るので、これらの国際機関を巻き込んで、中南米を席巻しようとしたのだ。

 ウィリアムソンがまとめた政策は、財政赤字の是正、補助金削減などの緊縮財政
 税制改革(累進課税の緩和)、金融改革、競争力ある為替レート、貿易の自由化、
 資本取引の自由化(外資導入の促進)、国営企業の民営化、規制緩和、所有権の
 確立(外資の保護)からなっていた。まさに新自由主義・市場原理主義の基本政
 策そのものであり、IMF・世銀などの国際機関は、融資を求めにきた国に対し
 てこうした条件を強制したのである。
 
  1991年12月のソ連邦の崩壊によって、旧ソ運部内の共和国は独立し、それぞれ自
 立した経済を樹立する必要に連られた。そこでアメリカは、ロシアをはじめとす
 る旧共産主義国にシカゴ・ボーイズを中心とする経済顧問団を派遣し、ワシント
 ン・コンセンサスを政策パッケージとして採用させたのである。その内容は、国
 有企業の民営化、規制緩和、物資の価格の自由化、通商の自由化、金融自由化、
 財政規律の回復と緊縮財政が中心であり、資本主義経済に不慣れな旧社会主義国
 を短期間で資本主義化しようとした。この基本理念が新自由主義・市場原理主義
 であったため、旧社会主義国家は「体制転換による大不況」と言われる混乱状態
 に陥ってしまったのである。

 社会秩序は乱れ、どの国でもマフイアと呼ばれるような不当利得者(レントシー
 カ上を生み出した。生産性の低下で経済はマイナス成長に落ち込み、インフレが
 同時進行するなど、惨價たる経済情勢になってしまった。ロシアは1998年に国債
 の返済不能状態(デフォルト)を起こし、世界を巻き込む金融危機を引き起こし
 たのだ。

 しかし、混乱の原因は、アメリカのシカゴ・ボーイズが各国内に賛同者をつくり
 彼らを巻き込んで富を少数の投資家に集中するよう仕向けてきた政策にある。こ
 うした動乱のなかで、巨額の富を得だのが外資と国内の一部のレントシーカー(
 不当利益の追求者)であり、貧富の格差の拡大と社会的混乱は想像を絶するもの
 であった。 「富を国民全体で分かち合う」という理念をペースとしてきた旧共
 産主義国家で、短期間に「富が1%に集中する」格差社会になってしまったのだ。
 こうした混乱を背景として、2000年にロシア連邦の2代目大統領としてウラジミ
 ール・プーチン(旧KGB、国家保安委員会出身)が就任し、権威主義的政治で
 社会経済がようやく安定してきた。

 旧共産主義国家の新しい指導者は、新自由主義・市場原理主義の手法を利用して
 自らの利益になる政策を採用させることにより、富を収奪することに成功した。
 しかし、こうした事実が表面化するにつれて、ワシントン・コンセンサスには
 「民営化、自由化、規制緩和を三本柱とする新自由主義者・市場原理主義者のイ
 デオロギーであり、経済を安定的に成長させることはできない」という批判が強
 まった。とくにワシントン・コンセンサスを強く批判したのは、ジョージ・ソロ
 ス(ロンドンに拠点を置く証券投資家)とジョセフ・スティグリッツである。

 さらに、このあと述べるように、IMFは、ワシントン・コンセンサスを東アジ
 アの通貨危機の解決方法に適用することで、対象国の経済社会体制を破壊し、少
 数の投資家と利権者がその国の富を収奪するという手法をとったのである。2009
 年のG20サミットでは、イギリスのゴードン・ブラウン首相(労働党)が「ワシ
 ントン・コンセンサスは終わった」と言明し、注目された。ブラウン首相自身、
 法人税を下げて財政赤字を拡大させるなど、労働党でありながら新自由主義的政
 策をとって失敗した政治家である。彼の口から出たこの言葉は、新自由主義・市
 場原理主義を理念とする政策がいかに虚しい結果しかもたらさないかを、自戒を
 込めて表現したものと言えよう。しかし、他国の富を収奪して「1%の利得者」
 に集中させようとするワシントン・コンセンサスの勢いは、決して終わっていな
 い。

                  第2章 「自由」とは「海外侵略」のことだった
                   菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』


                       アメリカに要請された規制緩和が引き起こした通貨危機

  アメリカは、東アジア諸国に経済と金融の両面で規制緩和と自由化を求め、これ
 らの諸国は、国内体制が不十分であるにもかかわらず、外資に門戸を開放せざる
  をえなかった。アメリカは、金融を自由化させて金融先物相場を導入させ、外資
  制の廃止、短期資本の流出入の自由化を要求し、一国の経済情勢が外資によって
  左右されやすい体制をつくらせたのだ。
 
 金融自由化の結果、各国内では自国通貨よりも金利の低い外貨(大部分がドル)
  の借り入れが進んだ。その借り入れによって不動産投資や地域開発への投資が増
  加し、国内ではバブル現象が起きていた。国内経済は活況を呈し、輸入が増加し
 たために国際収支(一国のモノとサービス、投資の受払ぃの収支)は赤字になり
 その穴埋めに短期資本を受け入れていた。

 多くの企業は、金利が安い外貨借り入れを増やした。しかし、自国通貨が事実上
 のドルペッグ相場(わずかな変動幅でドルに固定する通貨制度)であったので、
 為替リスクが小さいと考え、為替リスクを回避する手段(返済に備えて外貨を先
 物市場で買っておく)をとらなかったのだ。さらに、各国政府は、先物市場やデ
 リバティブ量融派生商品)の分野の取引を自由化した場合、その影響が自国にど
 う影響するかをト分に検証しなかったため、金融市場に大きな変動が起きると、
 防御する方法もわからず、一挙に大損失を披ったのである。この損失分は、新自
 由主義者・市場原理主義者の利得であり、アジア通貨危機はまさに新自由主義者
 ・市場原理主義者に仕組まれた壮大な富の収奪であった。相手国が金融規制緩和
 の影響を理解していないうちに、一挙に富を奪うのが新自由主義・市場原理主義
 者の手法であり、当時のアメリカのクリントン大統領が先頭に立って東アジア諸
 国の富の収奪作戦を主導したのだ。

 

 1997年7月を基準としてその後の切り下げ率を見ると、タイのパーツ、韓国のウ
 ォン、マレーシアのリンギットはピークで65%まで落ち込み、50~60%の水準で
 ようやく安定した。インドネシアのルビアは20~30%の水準まで切り下げられて
 いる。短期間にいかに激しい売り込み(ドルの切りヒげ)があったかがわかるで
 あろう(図2-1「東アジア通貨為替相場(対米ドル相場指数)」参照)。歴史上、
 これほど激しい投機的な売りは初めての出来事であり、売り手はアメリカをはじ
 めとする外資系のヘッジファンド(投資信託、国際投機集団)であった。彼らは、
 各国の通貨の切り下げ分だけ投機的利益を確保し、各国はその分だけ富を奪われ
 たのである。歴史上、戦争以外の平和な時代で、これほど激しい損失を受けた独
 立国はなかったであろう。

                 第2章 「自由」とは「海外侵略」のことだった
                   菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』


                               この項つづく

 


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