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デフレ脱却と安定成長への道 Ⅳ

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● デフレ脱却と安定成長への道 Ⅳ

デフレ基調に増税しリセッションに入り自ら政策能力の無能さを晒しているようなも
のだが、それにバネにして――これを「背水の陣」つまり、中国の史記『淮陰侯伝』
の故事。それによると、漢と趙との戦いで、漢軍の兵士は寄せ集めばかりだったが、そ
こで漢の韓信は、あえて川を背に陣を敷き、兵士遥か退けば溺れるほかない捨て身の態
勢にするが、趙の軍は兵法の常識を映り、川を背にして陣をとった漢の軍を見て大笑
いしたが韓信の目論見ともリ漢軍の兵は決死の覚悟で戦い、見事勝利をあさめる。こ
の故事から、失敗の許されない状況で全力をあげて事にあたることを、「背水の陣を敷
<」「背水の陣で臨仁」というようになった――という故事に習って総選挙に打ってでた
構図となっている。マスコミの選挙情勢は自民圧勝と報じられている。また、アベノ
ミックスは、それより先立つ、わたしの成長戦略『双頭の狗鷲』と基本的には変わる
ところがないことを前提としつつも、今回の投票行動は、野党結集強化が必要という
結論――比例区は『生活の党』、小選挙区は、自民・共産・民主の三つどもえとなっ
ているため『民主党』と――苦肉の妥協策ではあるがそう決めている。


                         

先回につづき、今夜で『そして、日本の富は略奪される』、『アベノミクスの逆襲』
とも終わる。この2冊を比較して、TPPを巡り、前者は、「断固反対」、後者は「
合コン論」と大きく意見が異なり、また、アベノミクスの第一の矢の金融政策でも違
いをみせる。その意味で、菊池英博の金融政策の考え方とわたし(たち)は立ち位置
を異にする。

 ← 詳細はこちらをクリック

 


                    【朝日ボツ原稿】リフレ派の勝利に終わった金融政策論争

  アベノミクスは、金融政策(第一の矢)、財政政策(第二の矢)、成長戦略(
 第三の矢)から構成されている。成長戦略もおもしろい論点であるが、本稿では
 金融政策と財政政策というマクロ経済学の分野に絞って論じたい。なお、成長戦
 略に関心がある人は、筆者の『「成長戦略」の罠』(祥伝社、2014年)を参照し
 てほしい。

  まず、第一の矢の金融政策から述べたい。初めに学界ではどうなのかというと、
 金融政策については長い間論争の対象だった。主な論点は、①金融政策で物価を
 コントロールできるか、②金融政策によって生産や雇用の水準を高めることがで
 きるか、③金融緩和を行なうと財政破綻などの大きな危険があるのかどうか、で
 ある。

  ここで、この点を詳しく論じるのは本稿の趣旨ではない。幸いにも、金融政策
 について、顕著な効果があるということに肯定的で弊害が少ないという立場(リ
 フレ派)の学者と、その逆に、効果がなく弊害が大きいという立場(デフレ派)
 の学者の両方が共同で書いた本、原田泰・斉藤誠編著『徹底分析アベノミクス』
 (中央経済社、2014年)が最近出版された。

  これまで、それぞれの立場の学者の書いた本はかなりあるが、両者の立場の学
 者を含む、対比する形で書かれた本はなかった。日本でアベノミクスに関心が集
 まり、その検証をせざるをえなくなったわけだ。筆者も、金融政策に肯定的な立
 場から、同書中に一つの論文を書いている。同書と、これまでのデータ(特に消
 費税増税を行なうまで)を見ていただければ、どちらが正しかったかは明らかで
 ある。この意味で、金融政策が有効かどうかという、いわゆるリフレ論争は一つ
 の決着を見ている。

  ここでは、日本のアカデミズムにおけるリフレ論争を振り返っておこう。
  筆者は1998年から2001年まで米プリンストン大学にいたが、知的刺激にあふれ
 た時期だった。前FRB(連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ教授、2008年
 にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らが、日本を題材にして非伝統
 的金融政策を毎週のセミナーで侃々房々と議論されていたのはおもしろかった。
  一言で言えば、金融緩和政策を大胆にやれば、デフレから脱却できるというも
 のだった。

  2001年に帰国後、経済財政諮問会議を手伝うことになったが、その当時の日本
 のアカデミズムに驚いた。一部のマイナーな人たち(今ではリフレ派といわれる)
 を除き、主流派の人たちは、クルーーグマンらのいうことは信じてはいけないと
 公言していた。
  たとえば、諮問会議の民間議員だった吉川洋・東京大学教授から「高橋さん、
 貨幣数量説を信じているの?」といわれたこともある。それに対して、「マネー
 をマネタリーベースにすれば、通貨発行益があるので、長期的には成立すると思
 います」と答えたが、吉川教授は否定的だった。

  こうした学界を変えるように運動すべきという人もいたが、筆者は、頑迷固階
 な学者を説得するには実社会で証明するほうが近道と考えていた。もちろん、米
 国アカデミズムの賢人たちと同じ考えだから、失敗はないという確信があった。
  幸いなことに、小泉政権時の竹中平蔵大臣や中川秀直自民党政調会長には、筆者の
 説明を納得してもらった。2003年3月の日銀人事で福井俊彦氏が総裁になったが、
 デフレ脱却を約束したため、量的緩和はすぐできた。

  ところが、ゼロ金利になると、どんな金融政策も無効になるという主張が出て
 きて、量的緩和の足を引っ張るような動きになった。斉藤誠・一橋大学教授のブ
 ラックホール論だ。モデル式もあるので、日本のアカデミズムで受け入れられて
 いた。
  しかし、その論文を読むと、経済学の大学院生にはわからないが、数学科の学
 生なら簡単にわかる誤りがあった。筆者はそれを『経済セミナー』(2003年5月
 号 日本評論社)に書いた。斉藤教授はびっくりして筆者にメールを送ってきた
 が、その中で筆者の指摘に再反論はなかった。もちろん、表での再反論もない。
 日本のアカデミズムでは、筆者のような行動はありえず、「なかったこと」にな
 っているらしい。

  小泉政権での量的緩和は不徹底であったが、データ分析すれば日本経済に好影
 響を与えたことがわかる。だが、それすら日本のアカデミズムの主流派は怠った
 (数少ない例外は関西大学の本多佑三教授)。
  前掲した『徹底分析アベノミクス』の編著者の万人は、斉藤誠・一橋大学教授
 であり同教授は日本を代表するマクロ経済学者である。11年前に斉藤教授の批
 判論文を書いた筆者は、今回も金融政策に効果があったとして、斉藤教授の見解
 を否定している。ところが前回も今回も斉藤教授からは反論がない。長年にわた
 る日本におけるリフレ論争が、リフレ派の勝利に終わったと筆者が考える所以で
 ある。 

        朝日新聞社に「掲載拒否」された"アベノミクス批判"批判コラム
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

        【朝日ボツ原稿】インフレ目標に言及しない『朝日』の編集委員

  こうした状況において、メディアが果たす役割は何だろうか。学界において、
 学者が一つの立場を主張するのは、どのような立場であれ、学者として理解でき
 る。それが学者の本分である。それが間違っている場合には評判を失うという、
 学者なりの責任の取り方になっている。
   これは、学者が普通のサラリーマンではないからできることだ。しかし、メデ
 ィアの場合、書き手はほとんどがサラリーマンである。筆者はサラリーマンでな
 い個人で頑張っている人を知らないわけではないが、日本で、個人のフリージャ
 ーナリストはごく少数しかいない。多くは会社に属しているサラリーマン・ジャ
 ーナリストである。
 
  そうしたサラリーマンであると、きちんとした個人の意見は出てこないし、個
 人で取れる責任もない。これでは事後検証しても意味がないことになる。
  また、メディアの人は、きちんとした学問の訓練を受けていないために、高度
 な専門知識に欠けている。このため、学界でも意見の割れるような分野をきちん
 と報道できない。
    ややもすると、学界で割れている意見の一方のみを過大に扱い、中途半端な理
  解であたかも自分の意見のように書く場合もある。そうした実例として、朝日新
  聞編集委員の原真人氏が書いて『朝日新聞』に掲載されたものを取り上げてみよ
  う。2012年12月19日付の「高成長の幻を追うな〈政権再交代〉」である。以下、
  一部を引用する。


 〈自民党圧勝を受けた金融市場は新政権を歓迎し、安倍晋三総裁が望んだ円安・
 株高が進んでいる。だが市場はしばしば誤ったメッセージを発するものだ。
 財政と金融の両方でお金をばらまこうという「アベノミクス」は、短期の相場を
 考える金融市場の人々には心地よく響くが、日本の将来にとっては危うい路線で
 ある。
  量的緩和政策はデフレ解消や成長促進への効果が薄く、副作用が大きい。それ
 がこの2007年、日本銀行が試みを重ねた末に学んだ答えである。にもかかわらず
 安倍氏はデフレ脱却のため日銀に「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」よう求
 めている。
  このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか。経済は好転せず人々の給料が
 上がらないまま、金利や物価だけが上昇しかねない。その先にはギリシャのよう
 な危機連鎖が持っている〉
 〈民主党政権も理解していたとは言えない。「コンクリートから人へ」といいつ
 つ、整備新幹線の着工など大型公共事業を進める逆行政策が目立った。
  さらにそれを加連させんとする安倍氏には、「名目3%成長」という人口増時
 代の高い潜在成長率の感覚があるようだ。日本が人口減少の成熟社会となった今、
 そこにこだわれば、政策のゆがみは大きくなる〉
 〈新政権がアベノミクスにとらわれ続けるなら、持続可能社会の実現をさらに連
 ざけるだけだ。そうなれば、私たちは遠回りのコストをまた負担させられること
 になる〉 

  安倍総裁が、〈「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」よう求めている〉とし、
 〈このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか〉と書く表現は、悪意に満ちた
 感情論である。当時の安部総裁は、「インフレ目標における目標のインフレ率を
 達成するまで、金融緩和を無制限に続ける」よう、世界標準のインフレ目標政策
 を求めているだけだ。実際、この日本の世界標準政策は、ダボス会議などの国際
 会議などで賞賛を浴び、ノーベル賞経済学者クルーグマン・プリンストン大学教
 授らの世界の経済学者からは高く評価された。
 
  それだけでも原氏の論説は的外れであったのが明らかだ。もっとも、この部分
 は、前述したように、日本のアカデミズムにも大きな責任があるが、その尻馬に
 乗った原氏の責任も免れないだろう。
  いずれにしても、なぜ原氏は「目標のインフレ率を達成するまで」という部分
 を書かないのだろうか。この点について、当時の安倍総裁はきちんと発言してお
 り、原氏が意図的に発言を歪めたとしか思えない。

  さすがに原氏も、金融政策において、インフレ目標が日本以外の先進国で行な
 われていることを知っていただろう(もし知らなければ、このような記事を新聞
 に書く資格はない)。
  だから、「インフレ目標」に言及したくないとともに、安倍総裁の真意を歪め
 る報道をしたのだろう。
  他にも、お粗末な記述はある。〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜
 在成長率〉という記述であるが、原氏は、日本以外の先進国の名目経済成長率や
 人口増加率を知らないのだろう。そうした無知の下で、日本は人口減少なので経
 済成長できないと思い込んでいるとしか思えない。


 
  原氏に限らず、日本のメディアのデータ・リテラシーはきわめて低い。官庁の
 サイトからデータをエクセル形式でダウンロードし、グラフを書けるジャーナリ
 ストはきわめて少ない。筆者は役人時代に記者クラブの記者たちの相手をしてい
 たが、その中で、役所のサイトのどこに統計データがあるのかも知らない記者ば
 かりだった。当然、そのデータを読み、グラフ化することもできなかった。

  原氏の〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜在成長率〉という記述が
 いかにデタラメであるかを示すには、世界の先進国の名目経済成長率と人目増加
 率を知ればいい。
  筆者が大学の講義で大学生に教えていることを紹介しよう。こうした国際的な
 ものを調べるには、国際機関が便利である。どこでも似たようなデータベースを
 公開しているが、ここでは国際通貨基金(IMF)をとる。そのサイトの中に、
 「World Economic Outlook Databases http://www.imf.org/external/pubs/ft/
 weo/2014/01/weodata/index.aspx)」 がある。
 
  そこには、先進国の名目GDPと人口数の時系列データがある。それらをダウ
 ンロードして、各国ごとに、名目GDPと人目について、各年の伸び率を計算し
 2000年から2012年までの平均をとり、各国を一つの点として散布図にしたものが
 図1である。
  これを見ると、日本の名目経済成長率は先進国の中で最下位の低水準であるが、
 他の国では3%どころか4、5%でも高いほうではないことがわかる。しかも、
 日本より人口減少の激しい国がいくつもあることもわかる。それらの国を見れば、
 名目経済成長率は日本よりも高いこともわかる。
 
   しかも、人口増加率と名目経済成長率との相関係数は0.01と無相関である。つ
 いでに、人目増加率とインフレ率も無相関である。人口減少がデフレの原因など
 という人もいるが、データから見れば関係ない。
  繰り返すが、この散布図は、筆者の教える大学の大学生でも、インターネット
 からのデ-タによって1、2時間ほどでつくれるものだ。この程度のことで、前
 掲の新聞の記述はウソであると読者から見透かされているのだ。 

         朝日新聞社に「掲載拒否」された"アベノミクス批判"批判コラム
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

財政出動を機動的に出動するオバマ米国大統領政策を時系列的に検証しその正統性を
解説し、日本型資本主義の骨格――①新自由主義・市場原理主義から決別、②「官民
協調」路線で国家を再建すること、③輸出立国から内需中心の福祉国家へ転換するこ
と、④産業構造を内需主導型に転換し「社会的共通資本」の整備・拡充を重視するこ
と、⑤預貯金を日本国民のために使うこと、⑥株主の利益よりも国民の雇用を重視す
る国家理念を確立すること、⑦古い設備を捨て、設備の更新を図ること、⑧農業は株
式会社組織ではなく組合組織で、食料自給率向上と輸出産業化を図ることを提案した
上で、新たな財政規律の指標――①基礎的財収支均衡政策の撤廃と新しい財政規律の
指標を設定すること、②目標とする物価の指標を「消費者物価」から「GDPデフレ
ーター」に変更すること、③「5年100兆円の政府投資計画」など長期デフレ解消
策をとること、④格差を縮小させる政策をとるを、提案する。

しかしながら、マネタリズムの否定、インフレターゲットの廃止、日銀廃止・地方分
権推進・一院制導入などの改革の否定など中央集権・国家官僚制の強化など閉鎖的な
保守的側面が目立つようだが、彼が提唱する「日本型資本主義」を開放的な高度消費
資本制(前社会主義)社会にチェンジできれば世界の垂範となるだろう。      

      TPPに参加してもGDPは10年間で実質3・2兆円増に過ぎない

  内閣府は日本がTPPに参加すると、10年後のGDPが実質3.2兆円増加する
 と発表している。「10年間で」わずか「実質」3.2兆円という数字は、現在の
 GDPの0.66%に過ぎない。驚くべき低い数字だ。しかも10年間での話である。
 さらに、ここで「実質」と言っていることから、国民の生活実感から見た「名目」
 に引き直してみると、デフレが継続しているので、「実質プラス成長」は「名目
 成長ではマイナス」になる。この理由は、「実質成長率=名目成長率ーGDPデ
 フレーター」であるから、デフレの下ではGDPデフレーターがマイナスである
 ために、実質成長率がプラスになっているだけであり、日本の名目GDP(経済
 規模)はマイナスになると見られる(第6章参照)。

 政府白身、TPPに参加すれば、日本はデフレが進み、マイナス成長になること
 を認めているのだ。「15年継続するデフレを解消しよう」という安倍首相の方針
 に真っ向から反する結論が出ている。デフレ解消政策をとるのであれば、TPP
 には参加すべきではない。

 日本の中国への輸出は2010年では全休の19.4%であって、中国は最大の輸出
 国である。日本がTPPに参加すれば、アメリカと日本を条約で結びつけること
 になり、対中貿易は対米貿易よりも条件が悪くなる。実質的に中国を敵視するこ
 とになり、中国側がTPP非加盟国とFTA自由貿易協定)を締結すれば、日本
 は対中国輸出面で大きなマイナスになる。

 そこで中国は、TPP非加盟国とFTAを結んで、アメリカと日本を牽制するこ
 とが予想されよう。さらに、中国がEUとFTAを締結するとすれば、日本の対
 中輸出はさらに減るであろう。TPP参加を表明している国のうちシンガポール、
 マレーシアは日本とすでにFTAを結んでおり、日本がTPPに加盟しても、こ
 の2カ国に対してはなんのプラスもない。アメリカとの関係で見ると、アメリカ
 の自動車輸入の関税率は現在の2・5%で据え置かれることがすでに事前協議で
 決まっており、なんの影響もない。そのほかの国に対しても、現地生産が進んで
 おり、日本の輸出はTPPによる関税引き下げがなくても順調に推移しているの
 で、TPPの参加の可否は輸出には関係しない。むしろTPPに参加することで、
 かえって参加していない国との貿易・資本取引面でマイナスになるであろう。
 
                                    第7章 TPPはアメリカの日本占領政策
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』

 

                日銀マネーはアメリカの超金融緩和縮小に利用され、日本経済を破壊する

 ここで、2012年12月末から2013年11月末までマネタリーベースとマネ
  ーサプライの推移を見てみよう(第6章の図表6-I「マネタリーベースとマネ
  ーサプライの関係」参照、211ぺージ)。この間、マネタリーベースは 132
 兆円から58兆円増えて190兆円になったにもかかわらず、マネーサプライは113兆
 円から117兆円と わずか4兆円しか増加していない。マネタリーベースの資金量
  をいくら増やしても、国内のマネーサプライはほとんど増えておらず、増加分の
  差額である54兆円は海外へ流れている。

 アメリカのバーナンキFRB議長は、2013年12月20目に超金融緩和の縮小の第一
  歩として、2014年1月から市場で買い上げる国債などの金額を現在の月850債ドル
  から月750債ドルに縮小すると発表した。ニューヨーク市場では「アメリカの
 景気は量的緩和縮小を受け止められるほど回復している」との見方が広がり、株
 式市場では安心感が広がっている。バーナンキが2013年6月に超金融緩和の
 縮小方針を述べたあとで、内外の株価や発展途上国の為替相場が混乱したのとは
 大きな違いである。アメリカの景気回復が進んでいることは事実であるとしても、
 ウォール街では、日銀が超金融緩和を継続し、FRBのマネー縮小を補い、これ
 がFRBの超金融緩和の出口戦略を支えていくことが期待されている。まさに、
 日本財布論が具体的な数字で表れているのだ。

 アメリカでは、現在、超金融緩和の縮小(訟tl兵)に伴って「量的緩和の罠」
 という問題が議論されている。金融緩和を縮小していくと、長期国債の価格が下
 がり、長期金利が上昇する。そうなると、設備投資を抑制することになり、景気
 回復にプレーキがかかる。超金融緩和を縮小する過程で、いかにして長期金利の
 上昇を抑えるかが問題であり、この点については過去の実例はなく、未知の世界
 へ模索していくことになる。

 黒田総裁はマネタリーベースを270兆円まで増加させる方針であるから 2014年中
 にさらに80兆円の国債等を買い上げ、日銀マネーを市場に放出していくだろう。
 しかし、これらのマネーは日本国内では使われず、ニューヨーク市場の投機資金
 に使われるだけだ。しかも、現在の日銀は超金融緩和の出口戦略をまったく考え
 ていない。無謀な超金融緩和をやめて、国土強靭化を中心とする公共投資の裏付
 けとなる金融や国内の実需に見合った資金需要に限定すべきである。 

                               終章 こうすれば新自由主義の侵略を阻止できる
                               菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』



                    機動的な財政支出は長期間継続して初めて効果が出る 

 2013年3月に総額12兆円の補正予算が成立し、そのうち10兆円は東日本大震
 災の復興関連と社会的資本の復旧と更新投資であり、ある程度、経済効果が期待
 できる。しかし、1回限りの公共投資ではその場しのぎに過ぎず、民間投資を引
 き出す効果はほとんどない。2年目以降も長期にわたって継続することであり、
 とくに現在は、社会資本が回収超過なので、社会資本の拡充に努めるべきである。

 日本の社会資本は2007年から回収超過で、新規の投資が減価償却(投資の回
 収減耗)を下回っており、これが社会資本の老朽化となっている。さらに、社会
 資本への投資(公共投資)が減ると、民間投資も減少する関連性が確認されてお
 り、事実、その通りになっている。国土強靭化政策を基盤として、長期的に財政
 支出を継続することだ(図表8-1「日本は民間も政府も投資不足」参照)。

 投資の乗数効果は毎年投資を継続するから「1」を上回る効果があるのであって、
 単年度で終わらせると、投資「1」に対して所得「1」しか増えない。経済成長
 の理論がない新自由主義・市場原理主義では、この点を理解できず、内開府は公
 共投資を抑えるために意図的に投資乗数効果が出ないモデルをつくっている。



 第6章に戻って図表6-6「5兆円の公共投資を継続的に増加させたときの経済
 効果」をご参照願いたい(226ぺLン)。公共投資の乗数効果が「1」以下の
 モデルは、内閣府だけであって、ほかの民間のモデルの乗数効果は「3年で1.5~
 3.0」、5年で「2.0~3.5であり、内閣府モデルは信用できない。それまで日本経
 済の成長のベースとなっていた経済モデルは、経済企画庁時代に宍戸数太郎氏ら
 が中心になって作成した
 
 マクロ経済モデルが中心であり、民間の経済モデルと整合性のある適切なモデル
 であった。しかし、現在の内閣府モデルは、2001~2002年頃、竹中平蔵
 氏が経済・財政担当大臣であったときにつくられたものと言われている。2001年
 から始まった構造改革というデフレ政策は、内閣府の経済モデルまで偽装してデ
 フレのペースをつくっていたのである。このモデルで公共投資を削減してデフレ
 を長期化させ、余った国民の預貯金は米国情へ投資させる政策をとったのだ(
 6章参照
)。 

                              終章 こうすれば新自由主義の侵略を阻止できる
                               菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』

                                 この項了   

 


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