滕文公(とうのぶうんこう)篇 / 孟子
※ ”議論ずきな男よ"と悪口をいわれながらも孟子の論敵に対する攻撃はや
まない。それを支えるものは、自分の思想こそ乱世に平和をもたらす唯一
のものだという自信と使命感――「われ、あに弁を好まんや。已むを得ざ
ればなり――本篇は、孟子のそうした気魄と姿勢を浮き彫りにし、かつ墨
家や農家など当時流行の思想をうかがわせる、いわば論争の記録である。
こ と ば
「もし薬瞑眩せずんば、その疾は癒えず」
「心を労する者は人を治め、力を労する者は人に治めらる」
「幽谷より出でて喬木に選る」
「尺を枉げて尋を直くす」
「おのれを枉ぐる者にして、いまだよく人を直くする者あらざるなり」
「われ、あに弁を好まんや。われ已むを得ざればなり」
【省エネ事業篇:最新ダイヤモンドパワー半導体製造技術】
● 反転層型MOSFETとは
電気の効率的利用――発電から消費に至るまで多段に亘る電力変換(交流・直流変換、周
波数変換)――が行われ多数の半導体パワーデバイスが用いられている。これら半導体パ
ワーデバイスの電力損失を低減は、省エネルギー化に重要なテーマとなる。ダイヤモンド
は、半導体材料として広く用いられているシリコンに対し、ワイドバンドギャップであり、
更に融点、熱伝導率、耐絶縁破壊性、キャリア速度限界、硬度・弾性定数、化学的安定性
及び耐放射線性が高く、電子デバイス材料、特に半導体パワーデバイスの形成材料として、
極めて高いポテンシャルをもつ。
しかし、ダイヤモンドは他の半導体材料と異なりイオン注入法等の不純物ドープが困難で、
n型不純物ドープ領域の選択的形成上、目的に応じたデバイス設計を行うことができない
問題がある。これまで結晶面が制御されたダイヤモンド基板に形成した段差形状の底角を
起点にn型不純物ドープダイヤモンド領域を結晶成長することで、n型不純物がドープさ
れたダイヤモンドの選択的形成に成功、ダイヤモンド半導体装置の開発に注力されている
ものの、半導体パワーデバイスを含む種々の素子構成からなる電子デバイスを具体的に構
築する方法が課題として残され、よりデバイス設計の自由度が高いダイヤモンド半導体装
置及びその製造方法―――特に、狙った位置に不純物がドープされたダイヤモンド領域と
ドープされていないダイヤモンドの絶縁領域を選択的に一体形成して、これらの領域で素
子分離可能とする素子構造を構築することで、ドープ領域周辺を絶縁領域で分離し、ドー
プ領域周辺の素子領域のみをチャネル長として規定されたFET(電界効果型トランジス
タ)構造を有するダイヤモンド半導体装置の実現できる――デバイス設計の自由度が大幅
に高められるとともに、ダイヤモンド半導体装置を効率的に製造することができる。
このように、次々世代候補との呼び声が高いダイヤモンドの研究開発が活発化。「究極の
半導体材料」ともいわれるダイヤモンドはSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリ
ウム)といった次世代パワーデバイス半導体材料よりもバンドギャップが大きく、移動度
や絶縁破壊電界そして熱伝導率などあらゆる物性で優れ注目されている。徳田規夫金沢大
学准教授らの研究グループは独自のダイヤモンドの原子的表面・界面構造制御技術を応用
することで、2016年に世界で初めて反転層型ダイヤモンドMOSFETの動作実証に成功する
(特許6124373 ダイヤモンド半導体装置及びその製造方法 国立研究開発法人産業技術総
合研究所 他 2017年05月10日)。
さて、デバイス設計の自由度を大幅に高めるとともに、効率的に製造可能なダイヤモンド
半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。上記特許の特徴は、下図のよ
うに、ダイヤモンド基板1と、ダイヤモンド基板1の{001}の結晶面を有する基板面
上に略垂直に隆起して配されるダイヤモンド段差部と、n型のリンドープダイヤモンド領
域5a、5bと、ダイヤモンド絶縁領域6a、6bと、を有す。ダイヤモンド段差部は、
側面が{110}の結晶面を有する第1段差部3と、側面が{100}の結晶面を有する
第2段差部4a、4bとが一体に形成され、リンドープダイヤモンド領域5a,5bは、
第1段差部3の段差形状の底角を起点に第1段差部3の側面及びダイヤモンド基板1の基
板面を成長基面として結晶成長させて形成され、ダイヤモンド絶縁領域6a、6bは、第
2段差部4a、4bの側面及びダイヤモンド基板1の基板面を成長基面として結晶成長さ
せて形成されることにある。
【符号の説明】
1,11,21,21’,31,31’ ダイヤモンド基板
2,12a p型ダイヤモンド層
2’,12a’,22’,32’ ダイヤモンド段差部
3,13,23 第1段差部
4a,4b,14a,14b,24 第2段差部
5a,5b,15a,15b,25,35 リンドープダイヤモンド領域
6a,6b,16a,16b,26 ダイヤモンド絶縁領域
7a,7b,17a,17b,27,37b ゲート電極
8,18,28,38 ソース電極
9,19,29,39 ドレイン電極
10,20,30,40 ダイヤモンド半導体装置
12b p+ダイヤモンド層
12b’,12b’’ p+コンタクト領域
22,32 p型半導体層
37a ゲート絶縁膜
41 p+領域
W 線幅
H 高さ
D 空乏層
S 間隔
※ 図3は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(3)
【図面の簡単な説明】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(1)
【図2】第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(2)
【図3】第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(3)
【図4】第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(4)
【図5(a)】ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(1)
【図5(b)】ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(2)
【図5(c)】ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(3)
【図5(d)】ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(4)
【図6】第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(1)
【図7】第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(2)
【図8】第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(3)
【図9】第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(4)
【図10(a)】第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す
説明図
【図10(b)】図10(a)の部分平面図
【図11】第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す説明図
【図12】様々なゲート電圧におけるドレイン電流-ドレイン電圧の特性を示す図
【図13】ドレイン電圧が-10Vにおけるドレイン電流-ゲート電圧の特性を示す図
【特許請求の範囲】
一の面側に第1p型半導体層が形成されるダイヤモンド基板と、第2p型半導体層で形成
されるとともに前記ダイヤモンド基板の{001}の結晶面を有する前記一の面を基板面
として前記基板面に対し略垂直方向に隆起して配され、その隆起された上面及び側面と前
記基板面とで段差形状を形成するダイヤモンド段差部と、n型のリンドープダイヤモンド
領域と、ダイヤモンド絶縁領域と、を有し、
前記ダイヤモンド段差部は、側面が{110}の結晶面を有する第1段差部と、側面が
{100}の結晶面を有する第2段差部とが一体に形成され、
前記リンドープダイヤモンド領域は、前記第1段差部の前記段差形状の底角を起点に前記
第1段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させ
て形成され、
前記ダイヤモンド絶縁領域は、前記第2段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基
板面を成長基面として結晶成長させて形成され、
平面視で細長のライン状に形成される前記第1段差部の両側面にそれぞれ形成された前記
リンドープダイヤモンド領域にゲート電極がそれぞれ形成され、
前記第1段差部を胴部としていずれかの端部位置に形成される前記第2段差部上にソース
電極が形成され、
前記ダイヤモンド基板の前記第1p型半導体層が形成される前記基板面と反対側の面上に
ドレイン電極が形成されることを特徴とするダイヤモンド半導体装置。
この様に、高品質な酸化膜/ダイヤモンド半導体界面構造の形成が極めて困難で、パワーデ
バイスにおいて重要なノーマリーオフ特性を持つ反転層チャネルのMOSFETはこれまで実
現できず、ダイヤモンドについては「ウエハーがない」。このため、革新的な結晶成長・
スライス・研磨技術を用いた高品質かつ大面積ウエハーの低コスト製造技術の開発が必要
で、さらなる大きな投資とマンパワーが必要とする。ミニマルファブの活用で、ダイヤモ
ンドデバイスの早期実現が可能になると視られている。これは、ダイヤモンド半導体デバ
イスは実化の初期段階にそれほど数量が出るものではない上に、物性が優れているため他
の材料に比べてデバイスサイズを小型化できる。用途としては新幹線などの電鉄用途、飛
行機、宇宙船、電力インフラやロボットなどへの採用に期待。もちろん大面積ウエハーが
実現すれば、車載用途や、さらに市場が大きい低・中電圧インバーターにも展開可能であ
り、省エネ・低炭素社会の実現に貢献できる。高耐圧かつ低損失の次世代パワー半導体デ
バイスへの応用により、パワーエレクトロニクスの将来の世界市場規模は,現在の6兆円
から2030年には20兆円まで拡大すると見込まれている。
● 3つのダイヤモンドワイドギャップ半導体の特徴
さて、まとめに入ろう。ダイヤモンドパワー半導体の特徴は3つ――(1)300℃を超える温
度の動作可能、冷却システムなどのコストを削減、(2)従来のパワー半導体の10倍の高電圧
に対応でき、かつまた、多くの材料を必要とせずシンプルである。(3)さらに、電力損失の低
減を可能とし90%以上の電力効率動作する。
Sep. 7, 2017
● 特開2017-160087プラズマCVD装置及びダイヤモンドの成長方法
【短歌トレッキング:「旅の途次を読む」から】
「旅」はひとつの生き方である。ツアーや留学、転居など旅に類する移動は多くの歌人の
年譜のどこかに挿み込まれる挿話だが、それは本質的な「旅」ではない。帰るべき場所を
もたず、精神の居場所を本質的に失っていることが「旅」なのだ。旅を宿命とし、旅を生
きるほかない生き方というものがあって、そうした「旅」こそば、近代の近代らしさを凝
縮した文学スタイルでもある。(「旅」という文学スタイル、川野聡子、「歌壇」2017年
11月号)
例えば斎藤茂吉はドイツに留学したがそれは一時期の挿話に見える。彼の精神性は「旅」
ではなくはるかに強く「家」に依って形作られている。東北の「家」から、東京で大病院
を営む斎藤「家」へ。不本意ではあってもそこには「家」を運命とし、居場所として生き
た精神のあり方が感じられる。その葛藤の痕跡が彼の文学の根の一つとなってもいよう。
それに対して啄木や牧水にはそのように生きるはかない「旅」が刻印されている。そもそ
も彼らの親が村々から請われて住職となる憎侶であり医者であり、先祖代々の土地を守る
ような「家」を持たない職業の人々であったことも無関係ではなかろう。彼らはそうした
出発を背景に、さらに彼ら自身の近代人の新しい生き方として居場所を喪失した「旅」を
生きた。と書き、牧水と茂吉の「旅」の差異(スタイル)を評されている。
何となく汽車に乗りたく思ひしのみ汽車を下りしにゆくところなし 啄木『一握の砂』
人いまだゆかぬ枯野の今朝の霜を踏みてわがゆくひたに億直ぐに 牧水『黒松』
四、五年前から四国遍路をしている。もちろん歩き遍路。ときどき車を使うこともあるが、
おおむね歩き。四国遍路だから、関東に住む私にとっては四国に着いただけで目的地到着
ということになるのだが、しかしそこから歩き始めるわけである。札所に指定された寺が
目的地だが次々に巡るので、巡ることそのものが目的であり途次でもある。奈良吉野の金
峯山寺のお坊さんの話を聞いた。吉野、熊野、高野の霊場巡りの話だったが、霊場をつな
ぐ道自体がすでに修行、霊場に着くことが目的ではなく、その過程が大事なのだという。
また、巡礼は日常を抜けて非日常に触れて歩くことで、非日常を聖なるもの、日常を俗な
るものという。その俗と聖を行き来する装置が巡礼だということだ。四国巡礼をしてみる
と実感できる。一番札所から二番札所へ歩いていくわけだが、その間、歩くという行為と
時間がいかに貴重なものか。いま、私たちはあまりにも便利になりすぎて、見過ごしてし
まうものが多すぎる。多すぎると気がつくのも歩いてみたからで、歩くことが人間の呼吸
にあっていると初めて実感を持つ。(同歌壇より「時間・空間 あいだの妙、沖ななも)
ゆっくりと目的に近づくたのしみといふにあらねど鈍行に乗る 馬場あき子『渾沌の鬱』
いまわれはジェット機といふ龍のなか恐竜およぐ夢を見てゐき 坂井修一『スピリチュアル』
いくつかの旅往き復りあきかぜに骨洗はるるやうなさびしさ 小島ゆかり『馬上』
「旅」ひとつとってもかように多様で趣をことにして表現されるその歌人の感性の"プラッ
トフォーム"を汲み取り、日本語の素晴らしさに感心しながら一歩一歩、歌えないこころの
リハビリを進め、参考にさせていただいている。